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第64回全国消費者大会を開催しました

(主催:第64回全国消費者大会実行委員会)

開催概要

大会テーマ「平和な社会とくらしを守るために、ともに学び未来へつなごう」

【日時】2025年11月29日(土) 10:00〜16:10

【会場】主婦会館プラザエフ5階会議室およびオンライン

【参加者】会場参加58人、オンライン参加225人、ほか申込みの方に約1か月間の見逃し配信を実施

来賓挨拶:堀井 奈津子 消費者庁長官

 ご挨拶では、本日のテーマの一つである「デジタル化と消費者力」に関連して、デジタル化の進展による取引の利便性向上に対し、消費者の安心感や信頼度は改善していないというデータがあり、その背景には取引の仕組みがブラックボックス化しリスク認識が難しいこと、消費者は、情報を批判的に捉え、自ら考え、必要な情報を収集する力を持つことが不可欠とのお話がありました。また、2025年3月に閣議決定された第五期消費者基本計画では、デジタル化対応と消費者力強化を柱とし、教育や情報共有、注意喚起を通じて安全・安心な取引環境を整備するとされていること、2026年には「デジタル化と特定商取引法」に関する検討課の立ち上げを予定していることもご紹介いただきました。

第1セッション:デジタル化と消費者力
広告に潜む“誘導”のしくみ〜ダークパターンを見抜く力〜

公益社団法人日本広告審査機構(JARO) 審査部 課長  吉田 巌 氏

 ダークパターンとは、消費者の意志に反して事業者に有利な意思決定に誘導する、ウェブサイトの表示やデザイン、アプリ上の設計手法をいいます。ダークパターンと類似しているのが、ステルスマーケティングといわれているもの。広告主が第三者を装って肯定的な意見などを書き込む「なりすまし型」と、広告主がインフルエンサーなどに依頼して書き込む「利益提供秘匿型」があります。
 審査事例として

  • 解約を困難にする
  • 在庫残り僅かと表示する
  • 同意も得ず契約更新する
  • 必須と偽り会員登録させる
  • 事業者にとって都合の良い選択肢を基本設定にする
  • 通知や位置追跡機能を有効にさせる
  • 虚偽の「お客様の声」を掲載する

が紹介されました。ダークパターンやステルスマーケティングは、国内外で問題視されており、消費者保護の観点から規制の対象になりつつあります。

消費者のための広告リテラシー〜法的視点で読み解く誘導表示〜

池田・染谷法律事務所 代表弁護士  染谷 隆明 氏

 ノーベル賞を受賞した経済学者のダニエル・カーネマンは、人間の思考には直観的で反射的な「システム1」と論理的で内省的な「システム2」という2つの思考モードがあると述べています。広告やSNSの投稿や動画などのコンテンツは、深くゆっくり考える時間を与えず「システム1」に積極的に働きかけようとしています。
 ダークパターンへの対応として

  • 「システム2」を働かせること
  • ダークパターンの類型を知っておくこと
  • 不審な個人データ・クッキー情報は渡さないこと
  • プライベートプラウザを使うこと
  • 商品詳細ページの最終確認画面を保全しておくこと

があります。日本におけるダークパターンの法規制は、特定商取引法や消費者契約法などの法律を通じて進められており、諸外国の取組などを参考にしつつ、調査研究を行いながら、さらに検討されることが必要と考えられています。

午後の部 メッセージ紹介:鈴木 憲和農林水産大臣

 テーマの一つが「食料安全保障」ということで、鈴木憲和農林水産大臣からビデオメッセージをお寄せいただきました。メッセージでは、農林水産省入省以来、科学に基づく食品安全行政と消費者視点の重要性を学び、現在も消費者に納得感を持っていただくことが課題だと感じていること、2025年秋に実施した全国消団連などの消費者団体との意見交換において、米が「買えないこと」が深刻との声を受け、合理的な価格形成の検討を進めるほか、「みどりの食料システム戦略」に基づき、環境配慮の取り組みの見える化などを進め、持続可能な食料システムを確立し、食料安全保障を確保していきたいと述べられました。

第2セッション:食料安全保障
「食料安全保障政策と持続可能な食料システム」

中嶋康博さん(女子栄養大学教授、東京大学名誉教授)

 2022年〜2023年の基本法検証部会と2023年〜2025年の基本計画策定部会で、食料・農業・農村基本法を時代の変化に対応できる食料安全保障政策に見直したこと、その時の4つの懸念【1.輸入による食料供給(気候変動、国際政治不安定、経済力低下)、2.国内生産による食料供給(人口減少)、3.非常時の食料アクセス(法制度上の課題)、4.平常時の食料アクセス(経済的、地理的原因)】を紹介されました。さらに食料安全保障はFAO(国連食料農業機関)の概念整理として、供給、アクセス、利用、安定、主体性、持続可能性の観点から整理されたことが挙げられ、特にアクセスの観点では、Affordability (経済的に現実的に入手できるのか)の観点が注目されていること、今回のコメの問題や物価高全体を見て、日本でもAffordabilityの指標として考える重要性が強調されました。新しい食料安全保障政策の時代に入り、コストは最終的に消費者の理解を得ないと進めることができず、食料アクセスに経済的困難を抱える方を認識した政策が問われていると結ばれました。

「コメが足りない!この問題をどう乗り切るか?」

平澤明彦さん(農林中金総合研究所)

 主食用米の相対取引価格(集荷業者と卸売業者との取引価格)が2年連続の高騰で2023年比2.4倍になり、小売価格は2025年10月に2023年の2倍の5s4,250円弱になったことを紹介し、その要因は、供給減とインバウンド需要増を見込まなかったことによる米不足であり、2023年の不作が需給見通しに反映されなかったために翌2024年の生産が十分増えず、在庫が縮小し高値になったともベラれました。不作の原因には、高温障害による品質低下、玄米から取れる白米量(精米時の歩止まり)の減少を挙げ、玄米の単収(単位面積当たりの収量)とそれに基づく作況指数には反映されないため、2024年初めまで不作が認識されず、増産の機会を逸したと解説いただきました。今後の需給見通しの改善では、幅を持った見通し(生産量、需要量、在庫量)、備蓄の再建などを挙げた。適正米価については、消費者は2千円台、生産者は3千円台が良いという声を紹介し、差額をどうするのかという問題があると述べられました。

両講師による各講演へのコメント

【平澤さんから】基本法検証部会の第1回で、目下の問題は輸入し過ぎて国内の農業生産基盤が崩れているので農地を守ることが大事と議事録に残すことができた。食料安全保障のためには生産基盤維持の重要性が条文に明記されたことは非常によかったが、そのために輸出をするという条文になってしまったことは心配。国際的に通用する食料安全保障ということでいろいろやるようになり、みどり戦略も組み込めたことはよかったが基本理念が多すぎるので、多面的機能とは本来つなげて整理すべきで将来議論が必要。それにより環境に優しく農業を支えて生産力を上げることにつながる」など。
【中嶋さんから】大事だと思ったのは、今回は新型の不作でそれで2年連続の不足となり大きな問題を引き起こした要因の指摘。もう一つ、コメを1年に1回作って8月〜9月の切り替え時に値段を決める難しさが今回露呈したが、米価が決まる市場機能は不完全だということを肝に銘じて修正をかけなければならないこと。またコメを含む農産物価格は市場で決まると同時に品質でも決まることも書いてあるが、今は高い品質でもそれなりの品質でも全部高いことが問題。それは消費者の権利を損なっており、食料安全保障の経済的Accessができない人が食べられなくなる。バラエティに富んだ品質と価格帯を実現する生産流通の体系、品質も考えた厚みのあるマーケットを作ることが必要。また、9月に値段を決めるためには、収穫米の検査結果をリアルで把握できる仕組みも重要だと思った」など。

全体会

 初めに、2つのセッションから概要報告がありました、また、戦後・被爆80年の今年は、お二人の方から特別報告をいただきました。

特別報告1:核兵器も戦争もない世界の人間社会を

濱住 治郎さん(日本原水爆被害者団体協議会事務局長、ノーモア被爆者記憶遺産を継承する会代表理事)

 濱住さんが事務局長を務めておられる日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)は2024年ノーベル平和賞を受賞されました。授賞理由の一つは、核兵器は二度と使ってはいけないことを証言で示してきたこと、加えて核兵器の使用は道徳的に容認できないという国際規範が圧力にさらされている、核兵器は人類がかつて経験した中で最も破壊的な兵器であることを今の世界情勢の中で思い出してほしいこともポイントだったようです。
 1945年8月6日人類史上初めて原爆が広島に投下されたとき、濱住さんはお母様が妊娠三ヶ月の時お腹の中で被爆しました。お父様は爆心地近くの会社に出かけたまま帰らぬ人となりました。親戚には何の傷もない中で突然亡くなった方もいたそうです。放射能の影響と考えられます。母親の胎内で被爆し、1946年2月に生まれた濱住さんにとっても放射能の影響は計り知れないそうです。原爆は今に至るまで 被爆者の命、体、暮らし、心に被害を及ぼし続けています。核兵器は未だ世界に1万2千発あり、4000発の核弾頭はいつでも発射される状況にあります。被爆者は核兵器がゼロにならなければ安心できない、という思いだそうです。
 1956年8月10日に結成された日本被団協は、原爆被害者への国家補償(原爆被害は戦争を遂行した国によって償わなければならない)と、核兵器廃絶(核兵器は人類と共存させてはならず、速やかに廃絶しなければならない)という二つの運動を展開してきました。これは1980年厚生大臣(現:厚生労働大臣)の諮問機関である原爆被害者対策基本問題懇談会が出した「およそ戦争という国の非常事態のもとにおいては、国民がその生命、身体、財産について何らかの犠牲を受けたとしても、等しく受忍しなければならない」という受忍論を乗り越えるためだそうです。 1994年にできた「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」でも、日本被団協が求めた死没者遺族などを含んだ原爆被害の国家保障は盛り込まれておらず、今の課題だそうです。
 2021年に発効した核兵器禁止条約について、核兵器はいかなる意味でも違法だとした国際法が実現したことは、被爆者にとって大きな喜びでしたが、核保有国や同盟国が不参加で、日本政府も署名批准をしておらず、オブザーバー参加もしていませんでした。2025年に就任した高市内閣の下で非核三原則の見直しの議論も行われてきていますが、核兵器の保有と使用を前提とする核抑止論ではなく、核兵器は一発とも持ってはいけないというのが原爆被害者の心からの願いだと話されました。日本が変われば世界は変わるという思いで日本政府に核兵器禁止条約の署名、批准を求めて求めており、証言を通じて、核保有国や同盟国の核政策を変えさせる力になると考えているそうです。
 運動の継承について、被爆者の平均年齢は86歳を超えて、証言できる時間が限られてくる中、認定NPO法人ノーモア被爆者記憶遺産の会が2011年に発足して、日本被団協の運動の記録、被爆者の証言や手記や調査記録などを保存し、発信を行っているとのお話がありました。
 最後に、「人間の命と暮らしを何よりも大切にして、広島長崎の体験と憲法九条を持つ国にふさわしい、歴史的国際的な責任を果たすような国にしていきたい。核兵器をなくすためにどうしたらいいのか、被爆者の証言や運動から学び、工夫し、行動してほしい。人類が核兵器などで滅亡するまでの残り時間を示す終末時計が89秒を示しているが、核兵器も戦争もない世界の人間社会を求めて頑張っていきたい。」と結ばれました。

特別報告2:Peace Now広島2025開催報告

藤田 未来さん(広島大学)

 初めにピースナウの紹介がありました。ピースナウは全国大学生協連が主催し、全国の学生を対象に広島・長崎・沖縄の三地域で実施する体験型の平和学習プログラムです。三地域共通のテーマは「戦後被爆80年の今、私たちが語り直す」で、戦後80年という節目に、歴史を知るだけでなく自分の言葉で考え直すことを目的に掲げています。
 藤田さんが参加した広島の企画では、@広島で起きた事実とエピソードを知る土台づくり、A被爆から80年を振り返り平和観を問い直すこと、B未来を担う者として自ら「考動」すること、の三つを獲得目標にし、2025年9月2〜4日の3日間、42名の参加で開催されました。
 開催当時最高齢(96歳)の被爆体験証言者の講話や平和資料館見学、実行委員が手作りしたガイドブックを用いた平和公園内の慰霊碑を巡るフィールドワークのほか、参加者が開催期間中に折った601羽の折鶴を原爆の子の像に捧げたそうです。
 開催期間中、「80年の眼差し、事実と記憶の間にと」「平和ってなんだろう?疑う力で広く新たな価値観」「考動から咲かせる未来の花」三つのテーマでワークショップを行い、最終日には、新聞づくり、ピーストーク(学びをどう伝えるか、もし自分が国のトップなら何をするかを議論)で自分でできることを考え言葉に残す時間としたそうです。
 最後に、広島で生まれ育ち平和学習を重ねてきた自分にもまだ知らないことがある、当たり前を疑い、なんでだろうと問い続けていくこと、対話を重ねて歴史的事実の知識や新しい価値観や考えを得ていくこと、大学生ができる平和活動は本当にいろいろな形があり、私たちは可能性を信じて活動していけることの三つを学んだと締めくくられました。

実行委員長挨拶

斉藤いづみ(山梨県消費者団体連絡協議会)

 初めに、消費者を取り巻く課題が複雑化していく中、安心して暮らせる社会の実現に何が必要かを考える場として、実行委員会で検討を重ねて本日を迎えたこと、セッションや全体会での報告を通じ、今後の暮らしを築くヒントにしていきたいとの思いが述べられました。また大会が64回の歴史を重ねる中で、未来世代への継承が大きな課題となっており、全体会では次世代への継承の重要性や、大学生による活動が紹介され、希望を感じる内容だったと述べました。最後に、会場とオンラインでつながる参加者とともに、この大会が未来への一歩となり、各地での行動につながることを心から願うとの言葉で締めくくりました。

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