日 時 |
:11月13日(土) 10:00〜13:00 |
会 場 |
:弘済会館4階・萩の間 |
参加人数 |
:104名 |
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左から青山さん、伊藤さん、
志水さん、鶴谷さん |
<テーマ>
ナニ?コレ?消費者問題 〜暮しやすい地域をつくろう〜
<内容>
【1】被害の実態 【2】地域の取組み 【3】今後の期待される役割 の3つのテーマでパネルディスカッションを進めたいとコーディネーター青山さんから課題提起があった。
【1】被害の実態 について
青山氏は、消費者被害の現代のキーワードとして(1)成熟社会 (2)高度情報化 (3)グローバル化を挙げた。(1)では高齢者は相対的に豊かでありその資産が狙われている。東京都の消費生活担当課長をしていた当時の『壷商法』など単純な商法に比べ、『未公開株』を代表とする劇場型詐欺的商法などのように内容が悪質化・複雑化している。(2)により、『若者相手のネット商法』『ゼロ円パソコン』など新しい商法の現出があり 消費者被害は(3)となった。そして今や悪質商法の被害額は4兆円台となりGDPの1%に相当するまでに。そして社会が成熟すると「市民活動」が増加するはずだが、実態が追いついていない状況があると分析した。
全国大学生協の志水さんは、『大学生活110番』結果から大学生の被害の1位は架空請求(出会い系サイトにアクセス)であること。訪問販売(浄水器など)被害も多く、また昨今の就職難を背景にして就活を狙っての教材販売など、学生ならではの被害の実態報告があった。
三重県消費生活特命監の伊藤さんからも最も多い相談は架空請求(平成21年度で全体の18.3%)であること。しかし最近架空請求は減少傾向にあり、架空請求を除いた相談件数は平成13年度から横ばい状態であること。60歳以上の相談割合は平成20年度に20%を超え、平成21年度は23.3%と高齢者層の相談が増加。平均既支払額は約87万円だが、60代は125万円、70代は129万円と最近の被害の特徴について報告があった。
この実態をふまえ、青山さんから『法テラス利用状況の調査』で<法律問題で相談しなかった理由>は、20〜29歳代では「何をしても無駄」、65歳以上は「自分で解決希望」がそれぞれ3人に1人と多いことをどう考えるかと質問があった。志水さんは「被害に遭ってもどうしたらいいかわからない。解決の流れが見えないせいではないか?」と。伊藤さんは「相談の現場からみると、自分で解決を希望する高齢者が多いという結果は少々信じ難い」と。
【2】地域の取組み について
ひとえの会代表の鶴谷さんは、仕事人間として生きてきて、現役引退時点で地域との繋がりが皆無と気づき愕然。更に妻に「別々に生きていきましょう」と言われてショックだったと述べ会場の雰囲気を和ませた。そして世田谷区報で知った消費生活審議会委員・応募をきっかけに、「消費者カレッジ」「ステップアップ講座」「講師養成講座」と5年間学び、区民講師の会である「ひとえの会」に入会。自分自身が消費者として自立して暮らす知識を得、他人にも伝えつつ勉強も続けている。
そして「ひとえの会」では、食育・環境問題・消費者問題の3つの部会があり、きめ細かい講座内容の組立企画をもとに年間80〜90件の出前講座を行いつつ消費者力向上への取組みを続けていると報告があった。
志水さんは、下宿生対象の実態調査で、訪販契約は100人に4人・架空請求は100人に1人・宗教団体勧誘は100人に6人が遭遇している(2009)と報告。その原因は、行動範囲が広がる・社会の仕組みに不慣れ・トラブルの対処法を知らないことと分析し、新入生に向け冊子を発行することにより自立した消費者になる支援を大学生協として取組んでいること。また、埼玉県内の8大学と3県立高校が協力して『不当広告調査』を行い、その結果を受け埼玉県が19業者に文書指導を実施したこと。兵庫県とは「くらしのヤングクリエイター」養成の研修会を実施するなどの行政との協働に結びついた実践活動報告があった。
伊藤さんは地域の取り組みとして2つの活動を紹介。一つは消費者・事業者・行政が連携・協力して啓発活動を行う協議会『みえ・くらしのネットワーク』。いま一つ『いが悪徳バスターズ』は、(社会福祉法人)伊賀市社会福祉協議会が事務局となり地域住民が「見守り隊」を結成。啓発劇・相談・ブログなどを通じて啓発活動を行うと共に、地元の事業者を巻き込み『鑑定団』を結成。見守り隊に連絡が入れば行政に繋げ、同時に「商品・役務が価格にみあったものかどうか」を鑑定してもらう、というユニークな取組みを展開。その結果、消費生活センターのない伊賀市の地域包括支援センターや民生委員の方々からの通報電話や問合せが多い、という報告があった。
【3】今後の期待される役割 について
鶴谷さんから。
最近、製品トラブルを学ぶためにNITEに見学に行き、トラブル事例の一つとして、家族の血圧の薬を孫が飴と間違えて飲んでしまった事例を質問した時に、「医療事故は扱わない」という回答があったことから、消費者からみれば一つのところに相談できることが一番と実感。その点、早い時期から縦割りという行政内の壁を取り払い生活に関する相談を全て受けてくれる消費生活センターが一番頼りになると実感したこと。国に窓口一本化の消費者庁ができたことは遅ればせながら歓迎するとし、今後は消費者から消費生活センターに情報を提供し、積極的に参加する事が必要ではないかと。
志水さんから。
学生は「何をどうしていいか?」がわからない。学生が相談するのはまず友人そして親だが、その他にも相談する場があることを広く知らせることが必要に思う。同時に、地域とのかかわりを広げたい。大人とのかかわりも含めて。
伊藤さんから。
「消費者問題にとりくむ=地域づくり」を念頭において、行政だけでは眼が行き届かないところを、(住民対住民・住民対事業者・事業者対行政)お互いにちょっと気をつけあうことで相談機関に繋げる。顔の見える関係が重要に思うと。
○ |
その際、団体を作る必要なく、一人でできることから消費者問題を伝え話して欲しい。 |
○ |
消費者団体には、50年ぶりに風が吹いている今、今後の活動に期待したい。一人なら愚痴に終ってしまうが、声を纏めて国への要望に繋げて欲しい。 |
○ |
行政は手口・勉強の場を提供する場であり、事業者をしっかり取り締まるところ。国へは「地に足が着いていない、消費者を守るのはどこか!消費者をしっかり守って!そして現場である地方の声を聞いて取り組んで!」と言いたい。 |
青山さんから。
高齢者の孤立の問題を考えたい。熱帯夜の連続で孤独死が増加したというニュース、高齢者不在のニュースを通し、孤独・孤立は貧困問題に繋がっていると考える。先に話した『壷商法』では被害者は「相手がだましているのは分かっていた。でも親切にしてくれたから壷を買った。だから返金は望まない」と呟いた被害者。しかし今の詐欺的商法は被害者の生活に壊滅的な被害を及ぼす。社会のありようが問われている。
鶴谷さんから。
若者も孤独化している。また個人情報の管理に神経質になりすぎ、孤独な生活をしている人が見えなくなっている。地域に溶け込むことは難しいが、人間はその気になれば地域に根をはれるものだ。一方、会社では地位で仕事内容はほぼわかるものだが、消費者は置かれている立場がそれぞれに異なる。そこをふまえ決まったパターンではなく、あらゆる機会にいろんな手立てを使って、いろんな内容を伝える必要がある。早手回しの方法というものはないと。
伊藤さんから。
高齢者には「孤独・健康・お金」の三つの不安があると言われる。そこをやさしくつかれると500万円払ってしまうという現実がある。個人情報保護も今一歩踏み出す必要があると思う。また、悪質業者がいろいろ言ってきたときに、高齢者が「役場に聞くから」と言ったひとことで業者が逃げた事例があり、そういう日々の関係作りが大切に思う。県もがんばるが市町もがんばって欲しい。
青山さんから。
「若者が誰に相談していいかわからない」という課題は、啓発すれば済む面がある。20代の2〜3年間の成長には眼を見張るものがある。情報提供すれば成長するものだ。ただ小中高で消費者教育を受けたはずなのに、それが身についていないところが問題。
志水さんから。
自分もいろんな人と関わる中で成長した。「情報提供があれば」というが、自分達には実感がない。成人し就活が始まったところで、生活の幅が広がり、「今の自分は裸で外に出て行くようなものだ。ヤバイ!」とやっと気づく。知識として知っていてもいざという時に役立てられるか否か。イメージする場を設ける必要がある。
青山さんから。
実感をもって情報を伝えることは確かに重要。一方で、無計画な市町村合併で明治時代に8万あった基礎自治体が今や1700となり、地域が巨大化し特異な組織となった。360万人の市が基礎自治体とはとてもいえない。「高齢者の不在ニュース」も同じ根っこ。ヨーロッパでは国→都道府県→市町村→地域へと第三の分権で4層となっている。日本も第三の分権を行いヨーロッパのように4層にする必要がある。市民活動もそこに眼を向けていく必要があるだろう。
------------------- 休憩 質問提出 -------------------
質問への回答
鶴谷さん
○ |
市民活動を育てるためのキーワードは? 市民の目線が重要に思う。活動ができるときだけとか教える立場では身に付かない。自分の失敗も話しながら伝えることも大事。 |
○ |
地方自治体は市民講師を育てるために何をするべきか? 事業仕分けがあり、予算は減少している。消費者カレッジ・ステップアップ・市民講師養成(2ヶ月みっちり)という長期の養成過程で仲間ができたことが非常に貴重だった。 行政に望むことは、仲間作りに手を差し伸べて欲しいこと。自己負担では市民活動は長続きしない。経済的支援(コピー、会議室、交通費)が必要。継続性・後継者の育成にも支援が必要。 |
○ |
ボランティアが少なくなったことは。 確かに65歳まで働くと、その後に新しいことに取組みことはむずかしい。OB会にも参加者が減少する傾向にある。ボランティアを主とするのではなく、自分自身が楽しむ気持ちで取り組むことが大事。自分自身が楽しみ、仲間作りができていると、行政の支援がなくなり自主活動となった時にも、仲間とのつながりが活かされ他の活動へと自然と繋がり、活動の幅が広がっていくことができる。そこが貴重に思う。 |
志水さん
○ |
相談できる環境とは?
どの大学も精神的面・将来面に向けてサポートには熱心に取組んでいる。とはいっても学生が出向かない。学生は、友人に「だまされてんじゃない」と言われたときに気づくもの。一人で悩まないでもいい環境、仲間作り、学生が学生の言葉で学びあえることが大事でその輪を広げること。
地域の消費者団体の方には、学生に「輪の広げ方」を教えてほしい。その点を団体の方から学びたい。 |
伊藤さん
○ |
認知症の高齢者夫婦の7000万円被害、多重債務などの実例から、成人後見制度につなげる・弁護士会・社協との連携をとるなど次の機関へつなげることが消費生活センターには求められる。
そして、包括支援センター・民生委員に「先ず連絡して」という関係作りが必要と考える。 |
○ |
「いが悪徳バスターズ」のような地元の住民・事業者・行政の信頼関係を築く活動のように、電話一本で被害を防ぐ、高齢者に接する人が皆で連携をとること。 |
○ |
しかし人間関系が密なところほど被害が出ることもあることを知って欲しい。SF商法の布団を購入した村民の口こみで次々と購入の輪が広がり村全体が被害者になった例もある。 |
○ |
消費者団体へお願いとして、(手口を知らせることが重要と同時に)市町自治体に住民の声を要望として届けて欲しい。国・県の言うことは無視しても、住民の声を無視できないのが自治体だから。 |
青山さんまとめ
○ |
消費者関連法の歴史を見れば分かるように、改正の積み重ね(「契約自由の原則」の否定という革命的な改正)で現在に至っている。「ぱくっても、ぱくっても出てきちゃう(刑罰が軽い)」と現場が嘆くことがあってはならない。今後も更なる法改正を重ねていくこと。
ちなみに、「消費者契約法」は市民活動の主体者を罰する条項はあるが事業者を罰する条項はないという事実を認識する必要性も付言。 |
○ |
第三の分権を行い、基礎自治体は眼の行き届きやすい小さい規模に。 |
○ |
寄付税制の充実も重要。市民活動には資金力が必要。「ふるさと納税」のような仕組みを市民団体対象にも導入することを考えたい。 |
○ |
消費者行政が地方自治法に明記されて以来、飛躍的に進歩した消費者行政。行政・法律・運動も進化している。進化をにらみつつ、今後何をなすべきか・・・が問われているのではないか。 |
その後参加者がA〜Jの10班に分かれ、(1)地域に必要なこと (2)私が地域でできる(したい)こと について45分間討議を行った。そして「分散会・全体のまとめ」で各班2分づつ報告を行った。
各班からの<キーワード>は・・・
(1) |
地域に必要なこと
連携、連携のきっかけ作り、仲間づくり、見守り、横のつながり、声を出す、挨拶から、正しい情報提供とその工夫、ネットワークづくり(消費者・行政・事業者それぞれ内部と3者間との)、関心を持つ、自分で勉強し・知識を持ち・広げていく、市民の目線に立つ、共に学び仲間作りができる場の設定、熱心な職員と財政(消費者行政にお金がまわる仕組み) |
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(2) |
私が地域でできる(したい)こと
諸団体との連携、敷居の高さをどうはずすか、挨拶、人間関係づくり、きめ細かい養成講座・出前講座づくり、やりっぱなしをしない、知識、関わっている組織で役割発揮、コミュニケーションづくり、団体の場作り、身近な相談窓口(気軽に相談できる場)、地域づくり、情報提供の仕組みづくり 地域の情報の共有、声をあげていく |
<まとめ>として司会・進行役の長見さんから
(1) |
地域に必要なこととして
消費者問題に限らず(いろんな分野で)、生活に必要なことを垣根を低くしてネットワークすること。何でも相談できる気軽な窓口、ということ。 |
(2) |
挨拶、声を出す、横のつながりのきっかけ作り、各立場の人たちのつながりとなるように行動をしていきたい。 |
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