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『消費者の権利を確立し、平和で安心できるくらしの実現を!』を大会のテーマとして開催された第42回全国消費者大会は、全国消費者団体連絡会(本部:千代田区、神田敏子事務局長)のもとに、大会実行委員59団体が参加して、11月17日(分科会)・18日(全体会)の2日間、東京で開催されました。 |
第42回全国消費者大会開催報告(速報) 1.大会テーマ 『消費者の権利を確立し、平和で安心できるくらしの実現を!』 2.日時・会場
3.参加人数・団体数
昨年の参加人数は、1170名でした。 4.分科会・全体会概要
午後は、JA女性協理事の角田佐知子氏より、地域での養豚経営とトレーサビリティの事例報告の後、日本生協連の中野勲氏より、地方自治体での食品の安全に関する状況と特徴的な動きについて、報告と提起が行われた。 報告後、約15人を目安として11グループに分かれてグループ交流を行った。
最後に、食品の安全の確保は国だけではなく自分たちでも行うことが必要な点があること、生産者と消費者の権利と義務をお互いに行使することが安全につながるとの閉会の挨拶があり、終了した。
国学院大学経済学部教授小越氏による学習講演をいただいた。内容は、今年のテーマであるナショナル・ミニマムとは、この不況の時代に私たち国民の生活の最低レベルをどうやって保障するか、ということである。 午前の講演に続き、午後は5つの報告が行われた。全国商工団体連合会婦人部協議会事務局長の牧野氏からは、「全国業者婦人の実態調査」から読み取れる赤字続きで国保料が払えない実態が話された。はるな生協高崎中央病院のソーシャルワーカーである富岡氏は、医療費を払えないことへの不安から初期治療が遅れる事例や入院を拒否する患者が増えていることが報告された。続いて日本女子大学社会福祉学科黒岩氏は東京都で行われた路上生活者の実態調査を紹介しながら、地域から排除されがちな立場の人も含めて地域福祉を考えるという視点の必要性が報告された。全厚生労働組合委員長の杉下氏からは今行われようとしている年金制度の「改悪」を止めるためには国民の声の高まりが必要であるということが強調され、主婦連参与の和田氏からはそれを裏付ける形で、政府税制調査会で社会保障財源としての消費税引き上げが多数意見として答申に取り上げられた経緯などが話された。 参加者からは消費税導入時の反対運動に比べ、世論が盛り上がらないままに制度変更が行われそうな今の状況に対する悩みや戸惑いがあったが、この分科会に参加して仲間と一緒に運動することの大切さを感じたといった意見があり、拍手で迎えられた。 全体のまとめとして不公平な税制をただす会の富山氏からもう一度ナショナル・ミニマムの視点で分科会全体のおさらいがあり、参加者のアンケートからも全体としてまとまりがよく理解が促されたと好評だった。
続いて、従来からこの問題に取り組んでいる澤藤統一郎弁護士からの総合的なお話をいただき、会場との意見交換を行った。司法アクセス検討会の検討状況に対する批判が相次ぎ、地方公共団体の決議を上げるなど立法化に向けた活動を早急に行わなければならないこと、この問題に限らず司法全体を専門家に任せるのではない制度としていく必要があることなどの確認がなされた。 <午後 裁判員体験ワークショップ> 日弁連で司法改革の役職をされ刑事司法検討会でも委員となっている四宮啓弁護士から、制度設計の検討状況等をお話しいただき、司法の場でも市民を主人公とする制度とすることが重要だとの認識を共有できた。 続いてワークショップに入り、題材となる事件を劇によって見た後、会場参加者全員が約6名ずつのグループに無作為に分かれて裁判員を体験した。 評議後は参加者から、色々な立場・経験の人の意見を聞くことで自分の考えの参考になったし良い裁判にできると思った、誰でもできることが分かった、裁判員に量刑判断は難しい、責任の重さを痛感した、裁判官が話をまとめすぎる弊害が生じないか心配になった、裁くだけでなく犯罪を起こす背景を考える裁判であってほしい、裁判に関心を持ち子供たちに伝えるきっかけにもなる、などの感想が活発に交わされた。 <夜 映画上映> 日弁連作成「裁判員〜決めるのはあなた〜」を上映した。他の分科会を終了した方にもご参加いただき盛況であった。
また、地方自治体の消費者行政の現状について、全国消団連の消費者行政研究グループより報告が行われた。会場を含めての意見交換では、相談体制のあり方や県・市町村の役割について議論がなされ、消費者・消費者団体自身が自分のまちの現状を知ることが大切であり、それをもとに自治体における消費者行政の位置付けを高めていけるよう、働きかけを行っていくことの重要性が指摘された。 午後の部は、消費者保護基本法改正や消費者運動のネットワークのあり方をテーマに、長見萬里野さん(全国消費者協会連合会)をコーディネーター、清水鳩子さん(主婦連合会)、池本誠司さん(弁護士)、岡村信秀さん(広島県生協連)、山下三重子さん(NACS)をパネリストとして、パネルディスカッションが行われた。清水さんからは、消費者保護基本法ができるまでの不良マッチ追放運動・ジュース訴訟などの消費者運動についてお話いただき、消費者が自分のくらしの中から疑問を社会に投げかけ、それを横に連帯していくことの大切さを述べられた。池本さんからは、現行の消費者政策において消費者は「反射的利益」を享受しているにすぎないが、消費者の権利を具体的な形で基本法に書き込めるかが改正に向けてのポイントであること、権利の明記や行政推進体制の見直しについて地元の議員に働きかけを行う必要性を指摘いただいた。また、神田敏子さん(全国消団連事務局長)から、全国消団連・消費者保護基本法改正検討会がまとめた「消費者保護基本法改正試案」について紹介いただいた。会場を含めての意見交換では、消費者保護基本法改正に向けての各地での取り組み(学習活動・団体署名・政党や行政窓口との意見交換・地方議会での意見書採択など)を紹介いただいたほか、基本法に「消費者の権利」が明記されることの効果についても論議を深めた。 岡村さんからは、地域の消費者団体・専門家が連携して立ち上げたNPO「消費者ネット広島」の取り組みを報告いただき、消費者団体が地域のくらしの問題やその背景に一層目を向けていくことが必要である旨指摘いただいた。山下さんからは、近年の相談内容や相談現場の実情について紹介いただき、消費者は自らの権利を主張し行動していく必要性について指摘いただいた。 意見交換では会場からも各地のネットワーク型消費者組織の取り組みが紹介され、地域の消費者団体・弁護士会・消費生活センターなどが各々の得意分野を持ち寄り連携して取り組みを進める必要があること、消費者団体への個人の参加が重要であり消費者団体は裾野を広げる努力が大切であること、消費者は権利とともに役割を果たしていく必要があること等の問題提起があり、終了した。
開会に先立ちビデオ作品「イラク戦争の真実」の上映をおこなった。映像では、イラク戦争における市民の被害、アメリカの戦略、国際社会の状況と世界的な反対運動などを紹介し、これからの日本の進むべき方向を考えあう内容であった。 ・ イラク戦争の実状に関する報告 <相沢恭行さん> 人間の盾としてイラク戦争開戦前後にバクダッドで活動をしてきた経験やその後もイラクを訪問し現地の人々と交流を深めることを通して、イラク戦争とは何であったのか、普通の市民を巻き込む戦争の悲惨さを報告いただいた。 <豊田直巳さん> この間イラクの人々を継続的に取材してきたことやイラク戦争後も劣化ウラン弾被害などを取材してきた経験から、アメリカ等による今回の戦争が市民に何をもたらしたのかを報告した。イラクでは実際には多くの市民に被害が発生しており、また今後も長い期間にわたって被害が生じるおそれがある。こうしたことが国内の報道ではほとんど明らかにされていない問題も指摘した。 <明珍美紀さん> 日本新聞労連委員長として、この間のイラク問題での日本の戦争報道のあり方について、自らの反省を含めて報告した。イラク戦争では攻撃される側に特派員がおらず、反対に従軍取材がおこなわれたことからくる問題点を明らかにした。また、記者自身の問題としても、何が大切なのかをつかむことの重要さがあると指摘した。 ・講演「アメリカの戦略とイラク・北朝鮮問題:日本の対応」 アメリカの戦略を解き明かしながら、イラク・北朝鮮の問題を解き明かした。アメリカはこれまでも先制攻撃をしてきたが、今回のイラクでは改めてこれを正当化して戦争をおこなった。今回のイラク戦争自体は、あくまで国際法違反であり、これを既成事実とすることはできない。また国際世論と国連がこれを容認せず、アメリカのいいなりにならなかったことは重要である。 日本の有事法制のことを考える場合、北朝鮮の核問題が発端になっていることを押さえる必要がある。そして北朝鮮問題については、現在の意図的に不信を煽る報道などに危惧を示しながら、冷静に事実を見つめていく必要があると強調した。北朝鮮の核問題にはあくまで反対していく姿勢をとりつつも、アメリカによる北朝鮮への先制攻撃をさせない態勢を作り上げていくことが重要であるとした。そして国内ではアメリカに迎合しないで平和を実現していく理論と運動を作り上げていくことが重要であると強調された。
午後からはA「経済の視点から考える」、B「くらしの視点から考える」というテーマに分かれて、グループ毎に討論した。 Aグループでは、最近のトピックスとして(1)圏央道周辺の土地強制収容を止めるよう求めた申し立てに対する東京地裁の画期的な決定について(2)首都圏では今夏、原発の運転が止まったが何とかなったことを受けて、原発よりも自然エネルギーを推進していこう、という話題提供があった。また、東京大気汚染裁判の報告や諫早干拓の問題、川の自然再生の報告や、地球温暖化問題とその対策としての炭素税について、どう考えたらよいのか、など多様な問題提起と報告があった。あわせて、容リ法の改正についてなど、地域での取組みを踏まえた具体的な提起があった。 Bグループでは、冒頭、(1)環境情報を伝える「環境ラベル」についてと(2)家庭から出るごみに含まれる有害化学物質についての話題提供と、東京大気汚染裁判の報告があった。また、地域の実践例として、レジ袋辞退率の調査結果や「マイカゴ」の持参例、太陽光発電を老人福祉センターに設置する事業を市民発で実施する例などが挙げられた。このグループの討論のまとめとして、(1)環境に対する「教育」が足りない、(2)消費者の言葉で環境情報を伝えていくことが重要、(3)企業との関わりにおいて未来志向型で迫っていかなければならないなどを参加者で確認した。
第42回全国消費者大会実行委員を代表して、池山東京都消費者センター連絡会代表から「BSEに端を発した食の安全を脅かす重大な事件が続発する中、大きく変わりつつある食の安全行政においても、既にスタートした『消費者ビジョン』においても、消費者・消費者団体の役割はますます重視されます。今大会のテーマ『消費者の権利を確立し、平和で安心できるくらしの実現を』を名実ともに発揮できるよう、私たちも努力していきましょう」と挨拶がありました。続いて、来賓のお二人から挨拶をいただきました。最初に、田口義明・内閣府国民生活局審議官から「5月に国生審・消費者政策部会から出された『21世紀型消費者政策』を受けて、消費者保護基本法の抜本見直しと公益通報者保護制度の充実に向け重点的な見直しをはかっています。保護される消費者から自立した主体としての消費者への位置付けの見直しと関連する行政の環境整備の具体化に向けて、先般出された『全国消団連の消費者保護基本法改正試案』の提言も受け、次の国会にどういう法案を提出するのか検討中です。第42回全国消費者大会が実りあるものになりますことを祈念いたします。」石戸谷 豊・日本弁護士連合消費者問題委員長から「今年は消費者運動にとっても歴史的なターニングポイントです。現在、国では、裁判費用敗訴者負担、団体訴権、公益通報者保護、消費者保護基本法改正など消費者にとって大変重要な法案づくりや法案改正などを進めています。全国消団連が先日大変すばらしい『消費者保護基本法改正試案』をだしましたが、今こそ、消費者と消費者団体が力を発揮し、国や政党や代議士に消費者の立場を主張したり働きかけるべきです。この時期を外しては手遅れになります。」と力強く呼びかけられました。この後、神田敏子・全国消団連事務局長が『消費者運動ビジョン』の経過と内容を詳しく説明しました。(『消費者運動ビジョン』はこちら)
全体会はこの後、寸劇と7つの団体によるリレートークが紹介されました。
参加者一同拍手で確認しました。 閉会あいさつ 全国消費者協会連合会の長見萬里野さんが消費者の8つの権利と5つの責任に触れた後、消費者の権利については今が一番大切なとき、持てる力を今こそ発揮しましょうと結びました。 |