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第61回全国消費者大会を開催しました

(主催:第61回全国消費者大会実行委員会、事務局:全国消団連)

 2023年3月4日、第61回全国消費者大会「平和で持続可能な未来のために 今、ともに学び行動しよう!」を前回大会に続きオンラインにて開催しました。また期間限定でアーカイブ配信も行いました。各セッション概要をご報告します。

開会挨拶
小浦道子さん(第61回全国消費者大会実行委員長、東京消費者団体連絡センター)

 2022年度の状況について、ウクライナや円安の影響を受け、食料品の相次ぐ値上げとエネルギー、電気料金の高騰が家計を圧迫したこと、税と社会保障の「国民負担率」が47.5%になる見通しになること、政治判断による原発回帰の動きや東京電力福島第一原子力発電所のALPS処理水の海洋放出決定、コロナ禍による経済格差の拡大など私たちを取り巻く問題が多様でますます複雑になっていることを挙げました。

 今大会では、ウクライナの人々が平和な暮らしを取り戻せるよう統一テーマの「平和」にそのような願いを込め、また持続可能な未来のために今学ぶべきことは何かを議論し企画したことを紹介し、各セッションでの講演や問題提起を一緒に学び、各地での行動につなげていただきたいと呼びかけました。

来賓挨拶
新井ゆたかさん(消費者庁長官)

 新井長官からは、持続可能な社会の実現のためには消費者一人一人が社会的課題に関心を持ち、地球市民として責任ある行動をしていくことが重要であること、消費者庁では消費者の未来に向けた行動を促すため、エシカル消費者普及啓発に取り組んでいるとのお話がありました。SDGsやエシカル消費について10代を中心とした若者の意欲、理解が非常に高いという調査結果から、若い世代の積極的な活動、発信が全体のパラダイムシフトにつながると期待していることなどをご紹介いただき、今後も皆様と力を合わせてよりよい未来に向けた消費者の取り組みを一層促進していきたい、と結ばれました。

第1セッション 環境・エネルギー(109名参加)
「再生可能エネルギーへの転換〜原発と石炭火力は必要なのか〜」
講師:桃井貴子さん 認定NPO法人気候ネットワーク理事・東京事務所長

 初めに2022年3月と6月の電力需給ひっ迫問題について、消費量が増える時間に備えて蓄電や揚水発電くみ上げを行う、また利用ピーク時に消費量を減らす仕組み(ピークカット)を整えることで発電所を増やさなくても対応は可能とのお話がありました。

 石炭を含めた化石燃料を利用した発電について、電力事業者の供給計画では石油火力は減る一方、石炭火力とLNG火力はむしろ増えていく方向になっており、2030年に石炭火力が31%を占めると予測されていること、世界では2030年までに廃止する方向で動いており、世界の流れに逆行していること、気候危機、エネルギー安全保障、電気料金の抑制、自給率を上げるといったどの面からみても再エネを増やすべきとのお話がありました。

 原発については、停止期間が長ければ過酷事故のリスクは上がり、対策のためのコストも増える。またトラブルなどで原発が止まるとその分石炭火力で賄う形になるので結果的に石炭火力を使い続け、かつCO2の排出が増える。また発電コストも高くなってきているのでコスト面からみても再エネに移行するほうが良いとのお話がありました。

 そのほか、新設石炭火力発電所がほとんどCO2削減に貢献できないという問題、政府のGX基本方針では省エネ、再エネだけでなく原発、火力回帰の政策が並んでいるという問題、火力発電で混焼される水素・アンモニアについて海外での製造段階CO2排出を問わない日本政府の方針の問題、などをお話しされました。

 最後に、消費者に向けては@政策の作られ方(既得権益を持つ人たちが中心になった政策決定プロセス)を知る、A徹底した省エネと再エネの導入、B投票する、電力会社を選ぶ、正しい情報を入手するなどの行動の提起が、消費者団体に向けては既得権益を守る巨大な力を感じる中、メディアへの働きかけを含めて消費者団体としての動き方を考えていく必要があるとの提起がありました。

 参加者からは、再エネを推して良いのだと自信を持てた、資源の乏しい国でも自力で電力を作れる発電方法をもっと進めていくべきとの声が寄せられました。

第2セッション:消費者政策(119名参加)
「SDGs 世代の今、消費者としての生き方を考える
 −消費者の権利から責任へ、そして動物との共生へ−」
講師:細川 幸一さん
 (日本女子大学家政学部教授 立教大学法学部講師、お茶の水女子大学講師)
パネルディスカッション:ファシリテーター 佐藤さん(横浜国立大学)
 パネリスト 斎藤さん(千葉大学) 鳥田さん・武原さん(日本女子大学)

 冒頭、細川さんから1960年代からの消費者問題の流れ、最近のエシカル消費の浸透や、消費者の責任について、豊かで便利な社会の裏側への関心を持つ必要があることなどのお話がありました。そして若者世代(SDGs世代)が学び育つ時代の一つのテーマとして動物のいのちの尊厳への配慮(アニマルウェルフェア)の紹介がありました。

 続いて「SDGs時代の私たちの消費者としての生き方を考える〜動物と人間の関係から〜」と題して大学生4人の討論が行われました。動画「我々の食べ物はどこから来るのか?」(約6分)を視聴した感想から始まり、畜産動物、ヴィーガニズム、アニマルウェルフェアについての討論では命の重さを再認識することの大事さが一致したり、SDGs世代とされる自分たちの行動分析(SNSの活用等)については活発な討論となりました。

 討論後、細川さんから以下の視点でまとめがおこなわれました。

(1)人間の感情のダブルスタンダード→ペットを溺愛していてもペットフードになる牛、豚や鳥には何とも思わない。(2)アニマルウェルフェアの5つの自由→@飢え・渇きからの自由、A不快からの自由、B痛み・負傷・病気からの自由、C本来の行動がとれる自由、D恐怖・抑圧からの自由。これは家畜に加え、愛玩動物、実験動物、展示動物、野生動物も対象になる。(3)いのちを消費する者の責任→消費者は食肉が生きものだったときの人間の扱いを知る必要がある。劣悪な家畜の飼育環境はそこで働く労働者の労働環境問題でもある。(4)賀川豊彦(社会運動家)の友愛の経済はエシカルの本質。エシカルの推進も消費者政策の重要課題である。

 最後に「市民的な活動になぜあまり参加しないのか」との細川さんの問いかけに学生からは「メリットを感じられないのではないか」「今回のような企画を知らせてくれる若者向けのメディアが少ないと思う」「意見を言える場に自ら行く人は少ないのではないか」とのコメントがありました。

 参加者からは「市民運動が若い人の目に触れ、関心を持って貰うことが大切」「年上の私は一つでも見本になるような行動を取って行きたい」「若者たちに学習の場をどう提供できるかが、消費者団体としての課題」との声が寄せられました。

第3セッション:憲法・人権(132名参加)
「当事者主権の福祉社会へ」
講師:上野千鶴子さん
 (社会学者・東京大学名誉教授・認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク理事長)

 講演では、まず「当事者とは誰か、当事者主権とはなにか」「自立とは」「当事者であるということ」「ケアとは」「相互行為としてのケア」「ケアと人権」などの基本的な考え方を整理してお話していただきました。

 また、平均寿命や死因、死に場所、高齢者の虐待件数など、データを示しながら日本の実態を解説していただきました。

 そして、地域包括システム、在宅ひとり死等についての解説を経て、家庭でケアを担う家族・医療職・介護職への不理解や実態に合っていない制度など、ケアと人権について丁寧に解説をしていただきました。良いケアの最終判定者は当事者であり、ニーズに合わないケアは無駄なだけではなく危険。「私がどうしてほしいかは私に聞いて」と伝えることが必要とのことでした。

 最後に、これから迎える超高齢社会に向けて政府が考えるシナリオの問題点と私たち消費者がめざすことについてお話をしていただき、「人間の安全保障」という大きな目標に向かうきっかけとなり得る講演内容でした。

 参加者からは、「高齢者問題、福祉・介護の問題は、消費者問題である」「良いケアを求めるのは消費者運動である」という、上野さんの主張される「当事者主権の福祉社会」の基本となる考え方にあらためて気づかされたという声が寄せられました。

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