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地方消費者行政の充実・強化を考えるシンポジウム 報告 全国消団連 地方消費者行政プロジェクトでは、47都道府県の消費者行政担当部局にご協力いただいて、2024年度も「地方消費者行政調査」を実施いたしました。 2024年度は、地方消費者行政推進事業の活用状況、消費生活相談のDX化、消費者安全確保地域協議会と重層的支援体制整備事業との連携などの調査を行いました。調査結果をもとに、関係閣僚宛の意見書にまとめ、シンポジウムを開催して、地方消費者行政の現状と課題について社会にアピールしました。 シンポジウムの前半は、都道府県行政調査の分析結果とそれらをもとに取りまとめた「地方消費者行政の充実・強化のための意見書」を報告し、後半は「地方消費者行政推進事業」「消費者安全確保地域協議会」をテーマに、意見交換を行いました。 【日時】2025年3月17日(月)14時00分〜16時30分 【内容】1.全国消団連「都道府県の消費者行政調査」分析結果と意見書の紹介 【参加】128人 概要(事務局による要約) 1.全国消団連2024年度「都道府県の消費者行政調査」の分析結果と意見書紹介 上村慶輔さん 調査項目の「1.地方消費者行政推進交付金の活用期間について」「2.消費生活相談員について」「3.消消費生活相談のDX化について」「4.消費者安全確保地域協議会と見守りネットワークについて」「5.地方消費者行政強化交付金の活用について」「6.要望について」の結果を報告し、そのうえで、2月25日に内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、財務大臣、消費者庁長官、内閣府消費者委員会委員長、国民生活センター理事長宛に提出した意見書を紹介しました。 1.地方消費者行政推進事業交付金(以下、推進事業)の活用期間終了による地方消費者行政の縮小を生じさせないための財源措置を実施してください 2.地方消費者行政強化事業交付金(以下、強化事業)で活用されていないメニューがある実態に鑑み、自治体のニーズを把握して活用しやすいメニューを提供してください 3.消費生活相談員の働きやすさのための環境整備を求めます 4.消費者安全確保地域協議会の設置の推進と被害の未然防止や早期解決のために役割を発揮させる取り組みを進めてください 5.消費生活相談のDX化については、自治体の状況について不安や疑問に丁寧に対応して進めていく必要があります (※全文はホームページをご覧ください https://www.shodanren.gr.jp/database/516.htm) 2.パネルディスカッション パネルディスカッションでは、「@地方消費者行政推進事業」「A消費者安全確保地域協議会」をテーマに、意見交換を行いました。 テーマ@地方消費者行政推進事業について コーディネーター池本誠司さん)地方消費者行政の一定の事業に対する国の財政支援措置として、現在、「地方消費者行政強化交付金」が交付されており、その中に、以前の「地方消費者行政推進交付金」の対象事業の継続分が引き継がれています。一部の特例延長自治体を除いて、2025(令和7)年度末をもって終了時期を迎えます。都道府県アンケート調査において多数の不安や困惑の声と国への要望が寄せられました。調査結果を分析したメンバーからご報告いただきます。 ――消費者行政調査の報告 大森隆さん)10割交付で実施されてきた推進事業が原則として2025年度に活用期間終了を迎えます。2024年度に活用していたのは43県あり、一番多く使われているメニューは「地域社会における消費者問題解決力の強化に関する事業」です。これは先進性・モデル性のある事業などを支援するものですが、交付金がなくなった後に継続されるのかどうかが心配されます。次に「市町村等の基礎的な取組に対する支援事業」は、相談員の人件費にも使われるものです。強化事業を含めた交付金での相談員人件費の活用は10県で8,000万円です。 市区町村で推進事業を活用しているのは789です。強化事業を含めた交付金のほぼ半額の7億円が434市区町村で相談員人件費に充てられています。自治体でも自主財源で頑張って増やしているところもありますが、まだ交付金を活用しているところも多く、心配されます。県からの要望では、「県財政は非常に厳しく、継続事業も見直しを求められている状況であり、地方消費者行政を安定的に推進させるためには、地方消費者行政強化交付金を継続するとともに、恒久的な財源措置の検討が必要と考える」「消費者行政一元化は、“明治以降の日本の政府機能の見直し”であり、そのスパンで考えれば、消費者庁ができた2009年からの当面の期間の地方消費者行政活性化を図るための財政措置は、現時点では、まだ“当面の期間”に達しているとは言えない」など多くの声をいただいています。 地方プロジェクトでは、自治体の現実と提案を真摯に受け止め、消費生活相談体制維持のための 10割交付事業の実施を含む財源措置を行い、推進事業の活用期間終了によって地方消費者行政の後退が生じることがないようにしてくださいと意見を出しました。 各地の消費生活センターにおける人材確保の実情について、全国消費生活相談員協会の尾嶋由紀子さんより、相談員の応募者なく、1年中募集を行っているところや欠員状況である状況について報告があり、交付金終了により、相談窓口が減少してしまうのではないか、消費者教育や啓発の予算が削減されるのではないか不安がありますとの報告がありました。 消費者庁 地方協力課 赤井久宣さんより、交付金の終了に対する地方の現場の受け止めについて報告がありました。 相談員の養成講座について、消費者行政が自治事務であることについて意見交換がされました。 「国への要望の取り組み紹介」として、オンラインの参加者のうち、熊本県での取り組みを弁護士で消費者支援ネットくまもとメンバーの中山健さん、日本弁護士連合会や各地弁護士会の地方議会請願の状況を弁護士の鈴木裕美さんにご報告いただきました。更に消費生活相談員体制の維持強化に向けた要望を、全国消費生活相談員協会 増田悦子さん、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会の丹羽典明さん、日本消費者協会の田中大輔さんからご報告いただき、併せて、全国消費者団体連絡会事務局より相談体制の維持強化に向けた国会議員への要請行動を提起しました。 ――小括 コーディネーター池本さん)この課題に対して消費者庁としては本当に真摯に受け止めていただいていると私は評価しています。本日参加のみなさんも地元の都道府県や市区町村から意見を出していただき、国会に働きかけをするなど、全国から多くの声が集まることが大事であると思います。 テーマA消費者安全確保地域協議会について コーディネーター池本さん)高齢者・障がい者を狙う悪質業者の手口はますます悪質化・巧妙化しています。高齢者等の消費者被害防止と早期発見のため、消費者安全確保地域協議会の設置と活動推進が呼びかけられています。 ――消費者行政調査の報告 釘宮悦子さん)消費者安全確保地域協議会の設置について、「地方消費者行政強化作戦2020」に掲げる目標「設置市区町村の都道府県内人口カバー率50%」に対して達成が20県です。そのうち県に協議会が設置されているのは15県で、県内市区町村の80%以上に設置されている5県の全てで県に協議会を設置済みでした。設置済みの県で市区町村への働きかけは、自治体に訪問して説明や職員向け研修で説明など、対面で説明することを重視しているようです。また、県の協議会の構成メンバーとして、県内市区町村の協議会や市長会、町村会を加えるなど、市区町村を巻き込む工夫がされています。一方、会議の開催頻度は4分の3が年に1回程度で、十分とは言えないと考えます。課題として、協議会設置に関して県と市区町村で認識の差があることや、構成員が交代した際の引継ぎや制度理解が不十分であることが挙げられていました。協議会設置後の役割については半数以上の県で発揮できていると回答があり、屋根の点検商法やロマンス詐欺、架空請求、定期購入などの早期発見に結び付いた事例もあり、重層的支援体制との連携や消費生活協力団体・協力員の活用も含め、好事例をもっと発信できるとよいと考えます。 「自治体の取り組み」として『新潟県』『埼玉県』から高齢者等の見守りの取り組みなどについて報告があり、意見交換がされました。 ――まとめ コーディネーター池本さん)前半は、相談体制の維持整備のために、人件費も使えるものも含めて交付金の措置が必要だということ。後半は高齢者の見守りネットワーク消費者安全確保地域協議会を設置していくということについては、もっともっと情報をしっかり集めて、発信していただくことで、各地の取り組みも広がっていくこと。そして見守り活動には啓発グッズやサポーターの養成などに予算のかかるところがあることについても積極的なコメントもいただきました。消費者被害防止は消費者行政だけではできない、福祉の方も巻き込んで、自治体の中で大きな位置づけをしていくということ、さらに言うと、行政だけに任せるのではなく、地域の消費者団体や、問題意識を持って自ら学びながら発信するという人を増やしていくこと。これは消費者団体の課題でもあると思います。 各地で地元の消費者団体と交流しながら連携を広げるということも団体の課題としても受け止めていただければと思います。 以上 ■2024年度「都道府県の消費者行政調査報告書」はデータで提供しております。 |