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「地方消費者行政の充実・強化のための意見」を提出しました 全国消団連 地方消費者行政プロジェクトでは、毎年、都道府県の消費者行政調査を実施しています。2024年度の調査は、活用期限が迫った「地方消費者行政推進事業」、消費生活相談員の確保や働きやすさなどの環境、消費者庁・国民生活センターが検討を進めている消費生活相談のDX化、消費者安全確保地域協議会と見守りネットワークや重層的支援体制整備事業との連携、などについてのアンケートの回答をお願いしました。 これらの結果を踏まえ、「地方消費者行政の充実・強化のための意見」を作成し、2月25日に「内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、財務大臣、消費者庁長官、内閣府消費者委員会委員長、国民生活センター理事長」に提出いたしました。 2025年2月25日 地方消費者行政の充実・強化のための意見 一般社団法人 全国消費者団体連絡会 国は、地方消費者行政の充実と強化のために2009年の消費者庁設立と併せて、「地方消費者行政活性化基金」を造成しました。この基金は、2009〜2011(平成21〜23)年度に消費生活センターの整備や消費生活相談員の育成などの支援のために交付率10割で活用されました。 その後、消費生活センターの機能を維持・充実するため、2012〜2017(平成24〜29)年度には「地方消費者行政推進交付金」として、地方公共団体の支援として交付率10割で活用されました。この活用期間は、事業毎に原則3年または7年、首長表明で2年延長、小規模自治体で2年延長とされました。 最終の2017(平成29)年度に開始した事業については、「地方消費者行政強化交付金」の中に地方消費者行政推進事業分として引き継がれましたが、2023(令和5)年度で原則3年の事業メニューの活用期間は延長分も含めてすべて終了し、原則7年の事業メニューについては延長分の活用期間も2025(令和7)年度には多くの地方公共団体で終了する状況になります。 今年度の全国消費者団体連絡会 地方消費者行政プロジェクトで行った消費者行政調査は、活用期限が迫った「地方消費者行政推進事業」、消費生活相談員の確保や働きやすい環境、消費者庁・国民生活センターが検討を進めている消費生活相談のDX化、消費者安全確保地域協議会と見守りネットワークや重層的支援体制整備事業との連携、などについてアンケート回答をお願いしました。 私たちは、全国の消費者・消費者団体と連携して地方消費者行政のさらなる拡充を求め、国及び自治体に対し、働きかけを継続・強化していきます。 以下は、今回の調査を踏まえた、当プロジェクトの意見です。 1.地方消費者行政推進事業交付金(以下、推進事業)の活用期間終了による地方消費者行政の縮小を生じさせないための財源措置を実施してください 地方財政が厳しい状況にある中、推進事業の活用期間が終了を迎えつつあります。自治体の自主財源の拡大は容易なことではなく、このままでは地方消費者行政が縮小してしまうことが強く懸念されます。 特に、消費生活相談員(以下、相談員)の人件費に活用されている推進事業として、2024年度当初予算では、都道府県合計で約8000万円、市区町村合計で約7億円(市区町村推進事業全体の47%)が415市区町村で活用されています。これらが終了した場合、消費者行政の基盤である相談事業や消費者教育・啓発を担う相談員を配置できなくなることも考えられます。強化事業のメニューへの要望で最も多い回答が「相談員の人件費」であったことも、自治体の相談員配置のための財源問題の深刻さを反映しています。 国は、自治体の現実と提案を真摯に受け止め、消費生活相談体制維持のための10割交付事業の実施を含む財源措置を行い、推進事業の活用期間終了によって地方消費者行政の後退が生じることがないようにしてください。 また、地方消費者行政は、住民の安全・安心を守るために実施される地方自治体の自治事務として位置づけられますが、その基盤である消費生活相談業務は、国の政策立案や法執行を支える重要な情報収集の役割を担っていることなど、国と地方自治体相互の利害に関係する事務であって国全体の水準を確保する必要があることも事実です。こうした点にも着目し、従来の枠組みを超える恒久的な財源措置についても、今後の消費者行政推進のために具体的な検討に踏み出すことを求めます。 2.地方消費者行政強化事業交付金(以下、強化事業)で活用されていないメニューがある実態に鑑み、自治体のニーズを把握して活用しやすいメニューを提供してください 強化事業は、活用されているメニューとあまり活用されないメニューとに二分される傾向が続いています。 10割交付の「消費生活相談のデジタル対応を行うための体制整備」は前年度と比較して活用自治体数に大きな変化が見られません。同じ10割交付の「霊感商法を含めた悪質商法対策事業」も活用自治体数が増えていない一方、他のメニューと組み合わせて活用している自治体もあり、国は両方を活用している取り組みを精査して、さらに効果的に活用されるような提案が必要であると考えます。 その他、各県の回答では、使途の拡充、同じ事業の経年実施、交付金手続きの様式の簡略化、手続きマニュアルやQ&Aの作成、毎年開催される説明会での活用ルール等の早期かつ丁寧な説明が望まれています。 自治体の消費者行政を充実させるため、国は自治体のニーズを把握して活用しやすいメニューを提供してください。 3.消費生活相談員の働きやすさのための環境整備を求めます 都道府県での消費生活相談員(以下、相談員)の養成講座の実施が少ないのは、予算確保の難しさに加え参加申し込みが見込めないから、との回答が寄せられました。対策として、相談員の雇止めの抑止や報酬水準の向上、さらには採用形態の改善などの処遇改善が必要です。 加えて、相談員の役割や業務内容についての認知度を向上させる発信と都道府県単位での講座開催を促進する予算措置が必要であると考えます。消費者庁が行う相談員養成講座ウェブ開催と併せて各都道府県においては対面講座を開催することで、資格取得者等が自身の勤務希望地の状況を直接把握でき、職に対する不安軽減と理解の促進が図られ、相談員としての就業に繋がるものと考えます。国と都道府県が一体となって相談員の養成と確保を推進する体制づくりが必要です。 また、相談業務では、いわゆる「対応困難者」の対応を迫られ、そのためのフォローも必要です。調査では、相談員と職員との連携や、相談員同士の意見交換の場を設けていることがわかりました。相談内容の複雑化や相談者の権利意識の高まり、対応困難者の増加等で訴訟リスクの可能性もあると考えられます。希望する相談員が公務員賠償責任保険等に加入でき、安心して相談業務に従事できる環境整備が求められます。 4.消費者安全確保地域協議会の設置の推進と被害の未然防止や早期解決のために役割を発揮させる取り組みを進めてください 消費者安全確保地域協議会(以下、協議会)の設置数は着実に伸びてきていますが、「設置市区町村の都道府県内人口カバー率50%以上」を達成しているのは、20県に過ぎません。2025年度以降も、国が設置目標を設定し、地方における計画的・安定的な取り組みを支援してください。 また、協議会を設置しても、会議の開催頻度が多くの県で1年に1回程度であり、十分に役割を発揮できていない場合もあるようです。協議会は設置して終了ではなく、設置後の取り組みを活性化するための努力や働きかけが必要だと言えます。 また、日常的に見守り活動を行う消費生活協力員・協力団体の活動を活性化する必要があります。協議会の目的でもある被害の未然防止や早期発見など、福祉関係者との連携事例だけでなく、地域の消費者・消費者団体が学びながら声掛け活動に参加する事例など、期待する役割を発揮している事例を紹介し促進することが、協議会設置の後押しになるものです。一人暮らしの高齢者からの相談が増え、解決がさらに困難になっている現状に鑑みると、協議会や見守りネットワークによる見守り活動の必要性が一段と高まっているといえます。実質的な見守り活動の意義・位置づけを検証し、好事例の発信や実践例の共有によって協議会や見守りネットワークの実効性を高めていく努力が一層求められます。 5.消費生活相談のDX化については、自治体の状況について不安や疑問に丁寧に対応して進めていく必要があります 2023年より、地方公共団体配信型「消費生活相談デジタル化アドバイザリーボード」が3回開催され、自治体に情報が伝わりやすくなった一方で、自治体の不安や疑問に応えられていないことや説明不足であるとの意見が多く出されました。課題となっていた回線については、LGWANから接続できる仕組みも導入されることとなり、多くの不安は解消される結果となりましたが、2026年10月からの新システム移行に向けて、端末等の環境整備など十分な財源措置を求める意見も出されています。現在PIO-NETに接続しているすべての自治体が新システムに移行できることを最優先して、さらに丁寧に対応してください。 今後も消費生活相談のDX化の推進に向けた支援として、相談現場の状況把握や自治体との連携を強化して進めていただきたいと考えます。 わたくしたちは、今後も注視をしていきます。 以上 |