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消費者保護基本法改正試案

2003年10月 全国消費者団体連絡会
消費者保護基本法改正検討会

2.各規定の改正について

(12)安全の確保

現行 改正試案
(危害の防止)
第7条 国は、国民の消費生活において商品及び役務が国民の生命、身体及び財産に対して及ぼす危害を防止するため、商品及び役務について、必要な危害防止の基準を整備し、その確保を図る等必要な施策を講ずるものとする。
安全の確保(第12条関連)
 国は、商品・役務の安全性を確保し、商品・役務が国民の生命・身体・財産に危害を及ぼすことを防止するため、国際的な動向に留意しつつ商品・役務について必要な基準を整備し、その確保を図るとともに、必要に応じて商品の回収や危害・欠陥情報の収集と公表を図る等必要な施策を講ずるものとする。

【解説】

 危害の防止に関する規定については、タイトルを「安全の確保」に改めるとともに、報告書に掲げられた事項をできる限り盛り込むという見地から、下記の点を補強しました。

  • 安全基準の整備において国際的動向を留意する旨を明記した。
  • 必要な施策の例示として製品の回収や危害・欠陥情報の収集・公表を加えた。

(13)計量の適正化

現行 改正試案
(計量の適正化)
第8条 国は、消費者が事業者との間の取引に際し計量につき不利益をこうむることがないようにするため、商品及び役務について適正な計量の実施の確保を図るために必要な施策を講ずるものとする。
計量の適正化(第13条関連)
 国は、消費者が事業者との間の取引に際し計量につき不利益をこうむることがないようにするため、商品及び役務について適正な計量の実施の確保を図るために必要な施策を講ずるものとする。

【解説】

 現行通りです。

(14)規格の適正化

現行 改正試案
(規格の適正化)
第9条 国は、商品の品質の改善及び国民の消費生活の合理化に寄与するため、商品及び役務について、適正な規格を整備し、その普及を図る等必要な施策を講ずるものとする。
2 前項の規定による規格の整備は、技術の進歩、消費生活の向上等に応じて行うものとする。
規格の適正化(第14条関連)
○ 国は、商品・役務の品質の改善及び国民の消費生活の合理化に寄与するため、商品・役務や事業者の経営管理体制について、適正な規格を整備し、その普及を図る等必要な施策を講ずるものとする。(第1項)
○ 前項の規定による規格の整備は、国際的な動向に留意しつつ、技術の進歩、消費生活の向上等に応じて行うものとする。(第2項)

【解説】

 基本的に現行法の規定を踏襲していますが、次の2点について補強しています。

  • マネジメント・システム規格が環境、品質から苦情処理、コンプライアンス経営へと発展し、事業者の行動に及ぼす影響が大きくなっていることを考慮して、「事業者の経営管理体制」に関する規格の整備について追加した。
  • 国際機関による規格の策定が進んでいることを考慮し、規格の整備にあたって国際的な動向に留意すべき旨を明記した。

(15)表示の適正化等

現行 改正試案
(表示の適正化等)
第10条 国は、消費者が商品の購入若しくは使用又は役務の利用に際しその選択等を誤ることがないようにするため、商品及び役務について、品質その他の内容に関する表示制度を整備し、虚偽又は誇大な表示を規制する等必要な施策を講ずるものとする。
表示の適正化等(第15条関連)
 国は、消費者が商品の購入若しくは使用又は役務の利用に際しその選択等を誤ることがないようにするため、商品及び役務について、品質その他の内容に関する表示制度を整備し、虚偽又は誇大な表示を規制する等必要な施策を講ずるものとする。

【解説】

 現行通りです。

(16)取引の適正化

現行 改正試案
[新設] 取引の適正化(第16条関連)
 国は、消費者が公正な契約条件の下で自由かつ適正な選択を行えるようにするため、事業者の消費者に対する適切な情報提供を確保し、不当な勧誘行為を防止し、及び取引条件の適正化を図る等必要な施策を講ずるものとする。

【解説】

 現在、消費生活をめぐるトラブルの大半を占めている契約(取引)の適正化問題に関する規定が、現行法に存在しないことは、消費者政策部会でも問題とされていました。そうした意味から、取引の適正化に関する規定を新設することにしています。内容については、(a)消費者が公正な契約条件の下で自由に適正な選択を行えるようにするという観点から、(b)適切な情報提供の確保、不当勧誘の防止、契約条項の適正化等の措置を講ずるという形で組み立てています。

(17)公正自由な競争の確保等

現行 改正試案
(公正自由な競争の確保等)
第11条 国は、商品及び役務の価格等について公正かつ自由な競争を不当に制限する行為を規制するために必要な施策を講ずるとともに、国民の消費生活において重要度の高い商品及び役務の価格等であってその形成につき決定、認可その他の国の措置が必要とされるものについては、これらの措置を講ずるにあたり、消費者に与える影響を十分に考慮するよう努めるものとする。
公正自由な競争の確保等(第17条関連)
○ 国は、消費者の権利の実現を確保する上で事業者間の公正・自由な競争が重要な意義を有することに鑑み、商品・役務の価格、取引条件その他の事項について公正・自由な競争を不当に制限する行為を規制するために必要な施策を講ずるものとする。(第1項)
○ 国は、国民の消費生活において重要度の高い商品及び役務の価格等であってその形成につき決定、認可その他の国の措置が必要とされるものについては、これらの措置を講ずるにあたり、消費者に与える影響を十分に考慮するとともに、措置に関わる情報を公開し、措置の根拠に関して消費者に明らかにするよう努めるものとする。(第2項)

【解説】

 現行法は、前段で競争政策、後段で公共料金政策に関して規定していますが、両者はかなり性格が異なるものであるため、改正試案では第1項で競争政策について、第2項で公共料金政策について定める形に改めています。

 その上で、第1項では消費者の権利の実現の確保における競争政策の重要性について補強するとともに、価格以外に関する競争制限行為も規制されるべき旨が明確になるよう、「取引条件」という文言を加えました。また、第2項については最近の流れを考慮し、情報公開と説明責任という観点について補強しています。

(18)試験・検査等の施設の整備等

現行 改正試案
(試験・検査等の施設の整備等)
第14条 国は、消費者の保護に関する施策の実効を確保するため、商品の試験、検査等を行う施設を整備するとともに、必要に応じて試験、検査等の結果を公表する等必要な施策を講ずるものとする。
試験・調査・検査等の施設の整備等(第18条関連)
 国は、消費者の権利の実現の確保に関する施策の実効を確保するため、商品の試験、検査等および役務に関する調査、検査等を行う施設を整備するととともに、必要に応じて試験、調査、検査等の結果を公表する等必要な施策を講ずるものとする。

【解説】

 現行法は「商品」の試験、検査等に関する規定として定められていますが、サービス化の進展の中でサービスに関する調査や検査に関する必要性も高まっています。そのため、改正試案では「役務」の調査・検査やその結果の公表に関する部分について補強しました。

(19)苦情処理体制の整備等

現行 改正試案
(苦情処理体制の整備等)
 
第15条 事業者は、消費者との間の取引に関して生じた苦情を適切かつ迅速に処理するために必要な体制の整備等に努めなければならない。
2 市町村(特別区を含む。)は、事業者と消費者との間の取引に関して生じた苦情の処理のあっせん等に努めなければならない。
3 国及び都道府県は、事業者と消費者との間の取引に関して生じた苦情が適切かつ迅速に処理されるようにするために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。
苦情・紛争の解決に関わる体制の整備等(第19条関連)
○ 商品・役務の内容、勧誘方法、取引条件、商品・役務の利用により生じた損害その他に関する消費者と事業者との間の苦情・紛争(以下、「消費生活に関する苦情・紛争」という。)については、被害の救済を受けられることが消費者の権利の一部であることに鑑み、消費生活・紛争解決に関わる専門的知見に基づいて、消費者の権利を尊重した公正・迅速な解決に努めなければならない。(第1項)
○ 事業者は、自らが行う商品・役務の生産・製造・提供に関連して生じた消費生活に関する苦情・紛争を公正・迅速に解決するために必要な体制の整備等に努めなければならない。(第2項)
○ 事業者団体は、消費生活に関する苦情・紛争を解決するために必要な体制の整備その他の措置を講ずることによって、消費生活に関する苦情・紛争の公正・迅速な解決を促進するよう努めなければならない。(第3項)
○ 国・都道府県は、消費生活に関する苦情・紛争を公正・迅速に解決できるようにするため、その解決に努めるとともに、市町村の行う消費生活に関する苦情・紛争の解決が公正・迅速に行われるために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。(第4項)
○ 市町村は、消費生活に関する苦情・紛争について、消費者に身近な相談窓口として公正・迅速な解決に努めなければならない。(第5項)

【解説】

 苦情・紛争の解決に関する規定については、国・都道府県に関する部分に自ら苦情・紛争の解決にあたる旨が明記されておらず、この間の都道府県行政による消費生活相談に関わる取組みの後退を招いているとの批判があります。また、司法制度改革の中でADR(裁判外紛争解決機関)への注目が高まっており、自主規制機関を含む事業者の団体が苦情・紛争の解決において果たすべき役割についても検討が進められています。その一方で、事業者や事業者団体による苦情・紛争の解決については、事業者側に偏っているなどの批判もあり、公正性の確保は課題となっています。また、消費生活相談員、消費生活アドバイザー、消費生活コンサルタントなど、消費生活に関して専門性を有する人材を苦情・紛争の解決においてきちんと位置付けるべきであるとの意見もあります。

 そうした点を踏まえ、改正試案では以下の点について現行規定を改めています。

  • 苦情・紛争の解決に関する基本的立場について新たに規定を設けた。その中では、被害救済の権利との関連を明確にした上で、消費生活に関わる専門的知見に基づいて、公正・迅速な解決に努めるべき旨を明記した。併せて、単に「消費者取引に関する苦情・紛争」とすることにより、「苦情・紛争」の範囲が狭められることのないよう、商品・役務の内容、勧誘方法、取引条件、損害などに関する苦情・紛争を「消費生活に関する苦情・紛争」と呼ぶ旨を明記した。(第1項)
  • 事業者が解決を図るのは自らが何らかの形で関連する苦情・紛争であり、その点を明確にするため、「自らが行う商品・役務の生産・製造・提供に関連して生じた」という文言を加えた。(第2項)
  • 事業者団体の役割に関して規定を設け、自ら苦情・紛争の解決にあたるなどの措置によって、苦情・紛争の公正・迅速な解決を促進するよう努めるべき旨を定めた。(第3項)
  • 都道府県が自ら苦情・紛争の解決にあたるべき旨を明記するとともに、被害の広域化への対応などの観点から都道府県の役割が重大になっていることを反映するために、国・都道府県に関する規定と市町村に関する規定の順序を入れ替えた。(第4項)
  • 市町村については、「身近な窓口」という表現を加えた。(第5項)

 なお、「苦情の適切・迅速な処理」という文言については、事業者の責務に関わる規定と同様の趣旨から、「苦情・紛争の公正・迅速な解決」に改めています。

(20)情報公開

現行 改正試案
[新設] 情報公開(第20条関連)
国・地方公共団体は、消費者政策が国民生活に及ぼす影響の重大性にかんがみ、消費者政策に関する情報を積極的に公開することを通じて、消費者の理解を深めるとともに、消費者・消費者団体が消費者政策に関する意見を述べる機会を実質的に保障するよう努めなければならない。

【解説】

 消費者政策に関する情報を積極的に公開することは、消費者の理解を深め、自らの権利を守る主体的な行動を促進するとともに、消費者政策に意見を反映させる権利を実質的に保障する前提になります。その意味で、消費者を「自立した主体」と位置付ける21世紀型消費者政策においては、従来にも増して重要な意義を持っており、新しい基本法の中に明文の規定を設けておくことが必要です。
 改正試案では、そうした観点から情報公開に関する規定を新設することとし、積極的な情報公開を通じて消費者の理解を深めるとともに、意見を述べる機会を実質的に保障することを国・地方公共団体の努力義務として明確にしています。

(21)消費者の参加

現行 改正試案
(意見の反映)
第13条 国は、消費者の保護に関する適正な施策の策定及び実施に資するため、消費者の意見を国の施策に反映させるための制度を整備する等必要な施策を講ずるものとする。
消費者の参加(第21条関連)
○ 国・地方公共団体は、消費者政策に意見を反映させることが消費者の権利の一部であることに鑑み、消費者の権利の実現の確保に関わる施策を策定・実施するにあたり、消費者・消費者団体に対して意見を述べる機会を保障する等必要な施策を講ずることにより、消費者の意見を施策の策定・実施に反映させるよう努めなければならない。(第1項)
○ 国・地方公共団体は、消費者の権利の実現の確保に関わる施策について審議会その他の場で検討するにあたり、消費者団体の代表者を委員として加える等、施策の検討過程に消費者の意見を反映させるために必要な施策を講ずるものとする。(第2項)
○ 国・地方公共団体は、消費者の権利の実現の確保に関わる施策の策定・実施にあたり、広く消費者に意見を述べる機会を確保する等、消費者との意見の交換を積極的に図るよう努めなければならない。(第3項)

【解説】

 消費者政策への消費者の参加について、現行法は消費者の意見を国の施策に反映させるための制度の整備など必要な施策を講ずる旨を抽象的に定めています。しかし、「消費者政策に意見が反映されること」が消費者の権利の1つとして位置付けられることとの関係では、規定の充実が必要であると考えます。特に、この間の政策形成においては、審議会やそのもとに設置される委員会が大きな役割を果たしており、その場に消費者団体が参画することが決定的に重要であること、パブリックコメントによる意見募集という手法が定着していることが、特徴として挙げられます。これらの点に関する基本的なスタンスについて、新しい基本法の中で明確にしておくことが適切です。

 改正試案では、そうした趣旨から、現行法の「意見の反映」に関する規定を、国・地方公共団体の施策への消費者の参加に関する規定として組み立て直し、充実を図ることにしました。具体的には下記の通り、基本スタンス(第1項)、審議会等への参加(第2項)、パブリックコメントなど幅広い意見聴取(第3項)という形で構成しています。

  • 意見反映の権利に鑑み、消費者・消費者団体に意見を述べる機会を保障することなどによって、消費者の意見を施策に反映させるよう努めることを基本スタンスとして明記した。(第1項)
  • 審議会等への消費者団体の代表者の参加などにより、施策の検討過程に消費者の意見を反映させるべき旨を定めた。(第2項)
  • さらに、施策の策定・実施にあたっては広く消費者に意見を述べる機会を付与するなど、積極的に消費者との意見交換を図ることを努力義務として明記した。「意見の交換」という文言は、一方的に聞き置くだけという扱いでは不十分である旨を明確にする趣旨から使用している[cf.食品安全基本法第13条:リスクコミュニケーション]。(第3項)

(22)行政組織の整備及び行政運営の改善

現行 改正試案
(行政組織の整備及び行政運営の改善)
第16条 国及び地方公共団体は、消費者の保護に関する施策を講ずるにつき、総合的見地に立った行政組織の整備及び行政運営の改善に努めなければならない。
行政組織の整備及び行政運営の改善(第22条関連)
 国・地方公共団体は、消費者の権利の実現の確保に関する施策を講ずるにつき、総合的見地に立った行政組織の整備及び行政運営の改善に努めなければならない。

【解説】

 基本的に現行法の規定を踏襲していますが、「消費者の保護」という文言については「消費者の権利の実現の確保」に改めています。

(23)国民生活政策会議

現行 改正試案
(消費者保護会議)
第18条 内閣府に、消費者保護会議(以下「会議」という。)を置く。
2 会議は、消費者の保護に関する基本的な施策の企画に関して審議し、及びその施策の実施を推進する事務をつかさどる。
第19条 会議は、会長及び委員をもって組織する。
2 会長は、内閣総理大臣をもって充てる。
3 委員は、内閣官房長官、関係行政機関の長及び内閣府設置法第9条第1項に規定する特命担当大臣のうちから、内閣総理大臣が任命する。
4 会議に、幹事を置く。
5 幹事は、関係行政機関の職員のうちから、内閣総理大臣が任命する。
6 幹事は、会議の所掌事務について、会長及び委員を助ける。
7 前各号に定めるもののほか、会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
(国民生活審議会)
第20条 消費者の保護に関する基本的事項の調査審議については、この法律によるほか、内閣府設置法第38条の定めるところにより、国民生活審議会において行うものとする。
国民生活政策会議(第23・24条関連)
○ 内閣府に、国民生活政策会議(以下「会議」という。)を置く。(第23条第1項)
○ 会議は、消費者政策基本計画に関して審議し、内閣総理大臣に建議するとともに、消費者の権利の実現の確保に関する基本的な施策の企画に関して審議し、その施策の実施状況を調査・監視する事務をつかさどる。(第23条第2項)
○ 会議は、議長及び議員をもって組織する。(第24条第1項)
○ 議長は、内閣総理大臣をもって充てる。(第24条第2項)
○ 議員は、次の各号に掲げる者とする。(第24条第3項)
  (1) 内閣官房長官
  (2) 関係行政機関の長
  (3) 関係する国務大臣
  (4) 学識経験を有する者
  (5) 消費者の利益を代表する者
  (6) 事業者の利益を代表する者
○ 会議は、議員のほかに専門委員を選任することができる。(第24条第4項)
○ 会議は、会議の議決をもって、議長の指名する議員・専門委員で構成される専門調査会をおくことができる。但し、次に掲げる専門調査会については常時設けなければならない。(第24条第5項)

  (1) 基本問題専門調査会
  (2) 消費者政策専門調査会
  (3) 価格政策専門調査会
  (4) 個人情報保護専門調査会
○ 前各号に定めるもののほか、会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。(第24条第6項)

【解説】

 現行法では、閣僚により構成される消費者保護会議が基本的施策の審議・推進を担い、国民生活審議会が基本的事項の調査・審議を行うことになっています。これらの事務局を担っているのが内閣府国民生活局ですが、同局は消費者に関わる「基本的な政策の企画及び立案並びに推進」を担っており、「国の行政機関と相互の調整」を図る権限を持っています。

 このように、現行法においても消費者政策の推進体制については、一定の手当てがされているのですが、現実にはこれらの組織が十分に機能しているとは言えない状況にあります。

  • 消費者保護会議が、単に各省庁の施策の羅列を形式的に確認する場と化している。
  • 国民生活審議会が他の省庁の権限に属する問題について意見具申をしにくい。
  • 内閣府国民生活局の調整機能が、他省庁の権限の壁により機能していない。

 こうした状況を改めることなしには、21世紀型消費者政策の実効性をもった展開は期待できません。そのための国の推進体制の再編の方向性としては、以前から必要性が指摘されている「消費者庁」や、前期の消費者政策部会で意見として出された「消費者政策委員会」などの選択肢があります。しかし、いずれも既存の機関の権限との調整が必要となる上、新たな機関を設けることとなるため、短期間で結論を得ることは不可能です。予定されている消費者保護基本法改正のスケジュールに合わせるためには、既存の機関の機能を有効に働き得るように再編し、関係付けるという基本スタンスで検討することが適切と考えます。

 そこで、今回は下記の方向性で国の推進体制の再編に関する要求を組み立てています。

  • 消費者保護会議を民間委員も含めた会議体として国民生活審議会や物価安定政策会議の機能を統合し、国民生活に関する総合的な政策の審議や調査・監視を担う機関とする。現行の国民生活審議会の各部会(基本政策、消費者政策、個人情報)や物価安定政策会議はそのもとの専門調査会として位置付ける。民間委員の登用、説明責任の明確化、会議の公開などを通じて政策形成過程の透明化を図るとともに、審議事項に対する監視機能の発揮を通じて、具体的な施策を推進する。
  • 業種横断的に摘発を行うことのできる公正取引委員会について消費者政策機能を強化するとともに、国民生活センターの機能を強化し、後者の情報力と前者の執行権限との連携により消費者政策に関わる執行機能を強化する。
    (イメージ図は別紙参照)

 こうした方向性をもとに、新しい基本法における国民生活政策会議に関する規定のあり方についてまとめているのが本項です。機能については、(a)基本計画の建議、(b)基本的施策の企画に関する審議、(c)実施状況の調査・監視の3点でまとめています。構成員については、内閣総理大臣(議長)、関係する行政機関の長、関係する大臣と併せて、学識経験者、消費者代表、事業者代表を加えています。その他、専門調査会に関する規定を設け、現国民生活審議会の各部会や物価安定政策会議にあたる4つの専門調査会を必須としつつ、それ以外の専門調査会を必要に応じて設けることができることにしています。

(24)公正取引委員会

現行 改正試案
[新設] 公正取引委員会(第25条関連)
 公正取引委員会は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第1条の目的を達成する上での消費者政策の重要性に鑑み、事業者と消費者との間の取引に係る不公正な取引方法の規制等必要な施策を講ずることにより、消費者の権利の実現に寄与するものとする。

【解説】

 (23)で述べた国の推進体制の再編に関する方向性においては、業種横断的な執行機能を持つ公正取引委員会の機能強化が、施策の実効性を確保する上での鍵となります。その意味で、消費者政策における公正取引委員会の役割について規定を新設することが適切と考えます。

 改正試案では、公正取引委員会の設置目的が独占禁止法第1条の目的達成にあること(同法第27条第1項)から、その上での消費者政策の重要性を強調し、必要な施策を講ずることによって消費者の権利の実現に寄与すべき旨を定めることにしています。

(25)国民生活センター

現行 改正試案
[新設] 国民生活センター(第26条関連)
○ 国民生活センターは、消費者の権利の実現の確保に関する施策の策定・実施に関する提言、施策の実施状況に関する調査・監視、消費生活に関する苦情・紛争の公正・迅速な解決の促進、商品・役務の内容や消費生活に関する苦情・紛争の発生状況等に関する情報の提供等必要な施策を講ずるものとする。(第1項)
○ 国民生活センターは、必要があると認めたときは、関係する行政機関の長に対して一定の措置を講ずるよう要請するとともに、要請の内容について公表することができる。(第2項)
○ 国民生活センターは、その運営に消費者の意見を反映させる見地から、消費者団体の代表者等の参加を保障する運営体制の整備を図るとともに、運営に関する情報の提供、運営について意見を述べる機会の付与その他の情報・意見の交換の促進を図るために必要な措置を講ずるものとする。(第3項)

【解説】

 国民生活センターは、「国民生活の安定及び向上に寄与するため、総合的見地から、国民生活に関する情報の提供及び調査研究を行うこと」(独立行政法人国民生活センター法第3条)を目的として設置された専門的機関です。21世紀型消費者政策においては、各種施策の策定・実施に関し、その専門性を生かした提言を行ったり、その情報力を活用して公正取引委員会や各省庁の執行機能の発揮を促すなど、一層重要な役割を果たすことが期待されます。また、そうした役割を果たしていくためには、センターの運営に対する消費者の参加を保障することも必要です。そうした意味から、国民生活センターについても規定を新設し、21世紀型消費者政策における役割を明確にしておくことが適切と考えます。

 改正試案では、第1項で政策提言、調査・監視、苦情・紛争の解決促進、情報提供などに関する国民生活センターの役割を明記しています。第2項では関係行政機関に対する措置要請と要請内容の公表に関する規定を設けています。第3項では、消費者団体の代表者等の参加を組み込んだ運営体制の整備や、情報公開や意見交換の促進などについて規定を設けることにより、センター運営に対する消費者の参加を促進するとともに、センター運営の透明化と説明責任の実効化を図っています。

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