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地方消費者行政の充実・強化を考える シンポジウム 開催報告

 全国消団連「地方消費者行政プロジェクト」では、消費者庁「地方消費者行政強化作戦 2020」で政策目 標に掲げられている取り組みについて47 都道府県に調査を行いました。

 自治体の消費者行政は、消費者相談、消費者教育や情報提供(広報・啓発)、法執行、消費者団体支援など、 消費者のくらしの安全・安心のために重要な役割を担っていますが、調査結果からは、消費生活相談員の確 保の問題や、広域連携における事務分担の問題などが明らかになってきました。

 シンポジウムでは、都道府県行政調査の分析内容や意見書について報告するとともに、『消費生活相談員 の役割について』『消費生活センターの共同設置と自治体間連携のあり方について』の論点について、参加の 皆様とのディスカッションを行いました。

【日時】2021年2月5日(金)10時00分〜12時00分
〔Zoomを活用したオンラインシンポジウム〕

【内容】1.全国消団連 2020 年度「都道府県の消費者行政調査」報告
飯田 秀男さん(全大阪消費者団体連絡会)
2.報告① 消費生活相談員の役割について
尾嶋 由紀子さん(全国消費生活相談員協会)
報告② 長野県の消費生活センターの共同設置と自治体間連携の在り方について
瀧澤 修一さん
(長野県くらし安全・消費生活課企画官兼課長補佐兼企画指導係長)
松下 和弘さん
(長野県大町市消費生活センター所長 大町市市民課消費生活・
交通安全係係長)
3.参加の皆様とのディスカッション
メンバー 尾嶋 由紀子さん(全国消費生活相談員協会)
小浦 道子さん(東京消費者団体連絡センター)
ほか、参加の皆様
コーディネーター 池本 誠司さん(弁護士)

【参加】103人

概要(事務局による要約)

■2020年度「都道府県の消費者行政調査」報告

飯田 秀男さん(全大阪消費者団体連絡会)

 調査結果からポイントを報告します。

 消費生活相談員(以下、相談員)体制については、募集しても応募がないとして28県(市町村レベルでも30県)から回答がありました。消費者庁の現況調査でもこの2年間で100人減少しています。多くの自治体で相談員の現場配置が十分できておらず、深刻な問題になっています。専門性の高い仕事に見合った処遇になっていないことが原因ではないのかと分析しました。

 広域連携として、相談業務を中心に近隣の市町村で共同して消費生活センターを設置する動きがあります。2019年4月1日現在、34県、502自治体が広域連携を行っています。消費生活相談は消費者行政の一部の事務でしかなく、住民への啓発・注意喚起、消費者教育、見守り活動、法執行などにつなげていく必要があります。また、共同設置の自治体では、受託した自治体と委託した自治体の間に温度差が生じているのではないか、双方の消費者行政が前進するための施策等に課題があることが指摘されました。消費者庁の「改正消費者安全法の実施に関わる地方消費者行政ガイドライン(以下、ガイドライン)」は改訂が必要であると考えます。

 このほか「消費者教育の推進等」「高齢者の消費者被害防止のための見守り活動の充実」「特定適格消費者団体、適格消費者団体、消費者団体の活動の充実」「法執行体制の充実」「予算について」「国(消費者庁)に対する要望」について報告がありました。

■報告①消費生活相談員の役割について

尾嶋 由紀子さん(全国消費生活相談員協会)

 消費生活相談員の数は、2009年以降、地方消費者行政活性化基金や推進交付金が設けられて急速に増加しましたが、2019年45人、2020年55人と大きく減少しています。県別の状況では、1年で15人減少した県もあります。

 相談員の役割である「消費者生活相談の業務」では、消費者と事業者の格差を是正して、住民の安全・安心なくらしを守ることです。相談は個別解決以外にも、その相談者の背後にある同様に抱えている課題の支援にもなっています。また、相談員は、消費者教育や啓発業務、高齢者の見守りネットワークにも関わっています。2014年に国家資格になりました。相談業務は、相談者から相談内容を聞き取り、問題点を把握し、関連する法律に照らして、解決の方法を検討します。相談者への助言・情報提供や相談内容によっては事業者と交渉する「あっせん」を行います。

 寄せられた相談内容と結果はPIO-NETに入力しますが、その内容は、国や自治体が消費者行政を進めていく要となり、消費生活センター1,250か所と中央省庁等15か所に接続しています。収集した情報は消費者に対する注意喚起や行政の消費者政策の企画・立案、また法執行に活用されます。

 消費生活センターは消費者教育の拠点として地域住民に情報を提供する場としても期待されています。相談員は専門職ですので、相談員の不足の解消には待遇改善が必要であると思います。

■報告②消費生活センターの共同設置と自治体間連携の在り方について

瀧澤 修一さん(長野県くらし安全・消費生活課)
松下 和弘さん(長野県大町市消費生活センター所長)

 長野県は中心市集約方式で3つの市で広域化をしています。身近な相談窓口が求められていることから広域連携が行われ、高齢者の相談も多く、電話だけではなく来訪者も15%程度います。連携することでしっかりした相談体制が構築できています。県は、広域化のためのコーディネートをしています。相談員の資格取得講座も開催しています。

 大町市では、広域連携を進めるにあたり協議による合意事項の協定書で役割を定めています。消費生活センターを大町市に設置し、相談業務や情報については連携の市町村と共有をしています。住民に対する消費者教育、啓発はそれぞれの市町村で行い、簡易な相談もそれぞれの市町村窓口で行っています。連携をすることで相談員の増員もしています。経費は人件費をそれぞれの町村(人口割や均等割り)で負担をしてもらっています。メリットはより身近なところで相談窓口が受けられることがあります。財政支援も受けていますが、期限が限られていることが課題です。年1回程度ですが連絡会を開催して情報交換をしていますが、定期的に開催することで職員の意識の向上やスキルアップが必要であると考えています。また、財政支援は不可欠ですので、引き続きの支援をお願いしたいです。見守りネットワークの機能の充実もしていきたいと考えています。

■参加の皆様とのディスカッション

コーディネーター 池本 誠司さん

〔論点1〕消費生活相談員の人員確保と処遇改善

池本)相談員を募集しても応募がないことや、人数が減少していることがわかりました。まず、相談員の減少が深刻な栃木県の報告をお願いします。

山田 英郎さん(とちぎ消費生活サポートネット)

 栃木県は21の消費生活センターがあり、現在相談員は64人いますが、昨年と比べ10人が減少しました。それにより、相談日が週5日から4日になったり、時間短縮をしたところもあります。国民生活センターでは毎週、募集状況を紹介していますが、通常は1カ月程度で締め切りがあるところ、現在は「随時」となり、相談員が集まらないことを意味しているのではないかと思います。

その後の意見交換では、「相談員の不足、有資格者の不足についての意見」「相談員不足を解消するための施策」などについて意見が出されました。

池本)消費者行政の出発点として相談体制をきちんと作り、問題点をしっかり引き出し、それが全ての消費者行政の施策につながっていくことだと思います。そのために何をすべきか、今の論議を参考にして、今後も取り組みを提案していきたいと思います。

〔論点2〕消費生活センターの共同設置、自治体間の連携

池本)小規模自治体などでセンター共同設置が徐々に広がっています。広域連携の実情をお聞きし、その課題を探っていきます。まず、北海道の広域連携についてお願いします。

鶴ヶ崎 徹さん(北海道環境生活部くらし安全局 消費者安全課長)

 北海道では、平成18年以降、広域連携の仕組みが構築され始め、現在は104の市町村(道内市町村の約6割)が広域連携体制で行っており、そのほとんどが「中心市集約方式」です。最初は市町村の相談体制の整備が目的でしたが、次第に相談・被害発生情報の共有化、広域的な啓発活動、被害防止ネットワークの広域化が行われるようになり、消費者被害防止体制に発展していくようになりました。

 広域連携の効果は、周辺町村側は中心市の相談処理に満足、感謝しているので「課題は特にない」などと回答する傾向がありますが、中心市側は課題をいくつか挙げています。「相談員の持続的な確保」「周辺町村には相談がほとんどないので職員の方の認識が低い」「周辺町村との連携・調整」があります。また、広域連携のエリアが1つの県と同じくらいの広さなので、消費者から「広域センターまでが非常に遠い」という回答するところも複数あります。

 市町村のアンケート調査では、近年消費者行政のウェイトが「低下している」との回答が多く、兼務の業務量の増加や人員不足などを挙げる市町村もありました。行政職員は、消費生活相談に接することで、消費者被害を知ることができるので、広域ブロックの中で事務局を持ち回り制とすることや定期的な連絡会議の開催などを行っているところもあります

 また、「消費者被害防止ネットワーク」という仕組みが70か所あり、広域連携を行っているところは、相談情報を啓発も見守りにも活用する工夫をしているところもあります。

 多くの課題はありますが、広域連携体制が今後とも維持されていくよう、市町村の消費者行政に、道としてもさまざまな支援や働きかけを続けていく考えです。

その後の意見交換では、「広域連携の実例と課題について」「課題の対応策について」意見が出されました。

池本)消費者庁の設置から12年目ですが、ある程度達成したつもりだった相談体制の確立が、相談員の不足で大変な事態になっていることがわかりました。養成講座の問題や予算、処遇そのものの問題もありますが、対処しないと消費者行政の足元が崩れてしまうことになります。 広域連携を広げていくことや見守りネットワークを作ることも、職員の力がないと進められません。抜本的に職員を増やし、質を向上することが必要です。地域の消費者、消費者団体が一緒に動いていける体制を作り、力をつけた先に自主財源が確保できる将来像が出てくるのではないでしょうか。ぜひ全体像を見ながら議論を進めていきたいと思います。

■地方消費者行政プロジェクトからの意見書の報告

※全国消団連のホームページ参照
http://www.shodanren.gr.jp/database/445.htm

※当日は、参加の吉田統彦議員、畑野君枝議員、尾辻かな子議員、福島みずほ議員からご挨拶をいただきました。
また、消費者庁地方協力課小堀厚司課長からも報告をいただきました。

◆2020年度「都道府県の消費者行政調査」報告書はデータで提供をしています。
お申込みは全国消団連ホームページをご覧ください。

http://www.shodanren.gr.jp/Annai/717.htm

以上

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