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「地方消費者行政の充実・強化のための意見」を提出いたしました

 今年度、全国消費者団体連絡会「地方消費者行政プロジェクト」では、「地方消費者行政強化作戦2020」の項目に沿った内容で、47都道府県の消費者行政について調査を行いました。今回の調査結果から、地方消費者行政の充実・強化のための意見をまとめ、「内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、財務大臣、消費者庁長官、内閣府消費者委員会委員長、国民生活センター理事長」に、1月19日に提出いたしました。

2021年1月19日

地方消費者行政の充実・強化のための意見

一般社団法人 全国消費者団体連絡会
地方消費者行政プロジェクト

 消費者庁は、「地方消費者行政強化作戦2020」を掲げ、新たな政策目標に向けて取り組みを進めています。政策の中では、どこに住んでいても質の高い相談・救済を受けられ、消費者の安全・安心が確保される地域体制を全国的に維持・拡充すること目指し、消費生活相談員の配置や消費者安全確保地域協議会の設置など、都道府県ごとに政策目標を達成するために、地方消費者行政の充実・強化のための交付金等を通じて取り組みを支援するとしています。

 今年度、全国消費者団体連絡会「地方消費者行政プロジェクト」では、「地方消費者行政強化作戦2020」の項目に沿った内容で、47都道府県の消費者行政について調査(以下、都道府県調査)を行いました。

 今回の調査結果から、いくつかの強い懸念を持つに至りました。国及び自治体においては、その懸念の払しょくのためにご尽力いただくことをお願いします。私たちは、全国の消費者・消費者団体と連携して地方消費者行政のさらなる拡充を求め、国及び自治体に対し、地方消費者行政の充実・強化の働きかけを継続・強化していきます。

 以下は、今回の調査を踏まえた、当プロジェクトの提言です。

1.消費生活相談員の人員確保と処遇改善は喫緊の課題として、早急な対応が必要です

 都道府県調査によると、都道府県でも市町村でも消費生活相談員を募集しても応募がないまたは少ない、と半数以上の県より回答がありました。また、人員確保のための施策として、「国による計画的な資格者養成事業の実施」「消費生活相談員の処遇の改善」に多くの要望がありました。消費者庁では、資格者養成事業を行っていますが、内容の充実やフォローアップ講座などの工夫が必要です。

 10月に公表された消費者庁の「令和2年度地方消費者行政の現況調査(以下、現況調査)」でも、消費生活相談員数は昨年よりも減少しており、特に資格保有者の大幅な減少が目につきます。また、消費生活相談員の処遇は賞与を含まない報酬額が減少しています。消費生活相談件数を見ると、総数は減少しているものの、斡旋件数は大きく増加をしており、相談内容がより複雑になっているのではないかと考えられます。

 消費生活相談員は、消費生活相談の現場で活躍しているだけでなく、消費者教育や啓発事業の実施者、適格消費者団体の活動も担っており、多様な活動を展開しています。消費者問題が専門化・複雑化し、経験と知識のある消費生活相談員の対応がより求められる中で、消費生活相談員をめぐる環境には重大な懸念があります。

 2020年度から始まった「会計年度任用職員制度」により、ほとんどの消費生活相談員が会計年度任用職員として1年単位の雇用契約になっています。この間、消費者庁や各消費者団体から雇い止めの中止を働きかけてきたこともあり、現況調査によると雇用期間について消費生活相談員(定数内(常勤職員)以外)の更新回数の制限では、「制限あり」の自治体が、19.6%(2010年度)から14.1%(2019年度)まで改善していたところ、2020年度には22.9%の自治体で制限を設けていると回答しています。専門性の高い消費生活相談員の処遇を改善することが必要不可欠になっている中で、雇用の更新回数に制限を設けることは消費生活相談員の処遇の不安定化をもたらします。消費生活相談員の処遇の安定性に対し、「会計年度任用職員制度」はふさわしい勤務条件とは言えません。

 国(消費者庁)は消費生活相談員の人員確保ができない現状を真摯に受け止め、原因を把握し改善を行ってください。特に定員割れをしている県に対しては、早急に措置を行ってください。

 消費生活相談員の受ける相談は消費者行政の要となります。地域における消費者被害の発生状況、PIO-NETを通じた情報蓄積により事業者の手口が把握され、法執行や法改正に繋がっています。消費生活相談体制の後退は、消費者行政の後退と直結する深刻な課題です。消費生活相談員の処遇を抜本的に改め、その専門性に相応しい処遇制度を創設すべきです。

2.地方消費者行政強化交付金について、十分な予算確保をするとともに、事業メニューは自治体のニーズを把握し、活用しやすいものにしてください

 地方消費者行政強化交付金の事業は3年目になりましたが、相変わらず活用が極端に少ない事業メニューがあることなどから、自治体のニーズとのミスマッチや事業を執行する人材不足等に原因があると推察されることは変わっていません。

 国(消費者庁)に対しての要望でも、「継続的・安定的・長期的な財政支援」「強化交付金の補助率のかさ上げとメニューの拡充」についての意見が多く出されています。

 地方消費者行政強化交付金の事業化にあたっては、自治体が取り組む各事業を継続的に行えるよう、時限措置ではなく恒久化することを求めます。また、交付金のメニューについては、自治体のニーズを把握するとともに、自治体ごとの裁量で活用できる自由度の高い事業メニューへと改善することを求めます。また、地方消費者行政推進交付金のように10割補助を含めた交付率の引き上げを求めます。

3.消費者庁は、広域連携を実施する自治体に対して、「改正消費者安全法の実施に関わる地方消費者行政ガイドライン」を示していますが、連携に参加する自治体が相互に責任ある消費者行政を進めるために、ガイドラインの改訂を行ってください

 単独での消費生活相談員の配置や消費生活センターの設置が今後も難しい自治体においては、広域連携により相談体制が整備されることにより、地域の消費者の安心につながっていると考えられます。また、広域連携した自治体同士の協力体制により情報共有や消費者教育・啓発など、消費者行政の充実にもつながっていくことが考えられます。

 ただ、消費者庁の地方消費者行政の現況調査によると、広域連携による消費生活センターの設置が進む一方、自治体単独による相談窓口の減少やサブセンターは減少しています。本来であれば、各地域で身近な相談ができる体制が拡充されていく状況が望ましく、安易に広域連携によって現在の消費者行政の体制を後退させてしまわないよう、自治体の政策判断が必要となっています。

 広域連携による消費者行政では、業務を請け負う自治体と委託した自治体との格差により、委託した自治体側では消費者行政への関心や意欲が低下するおそれがあるとの声もあります。連携に参加する全ての自治体が、主体性を持って対等、平等に力を合わせて消費者行政の充実・向上が図れるよう、その在り方を示すガイドラインなどの整備が必要です。

 現在の「改正消費者安全法の実施に関わる地方消費者行政ガイドライン」では、消費生活相談の広域連携の形式の説明のみで、連携した自治体同士が主体性を育みながらどのように消費者行政を推進するのかなどの具体的な記載がありません。様々な事業で広域連携が進む中、ガイドラインの改訂を求めます。

4.消費者安全確保地域協議会の設置の推進のための支援を求めます

 消費者安全確保地域協議会が設置されている自治体は、全体の2割にも満たない状況にあります。都道府県調査では、「消費者安全確保地域協議会以外の(消費者被害防止を目的にした)見守りネットワークの設置自治体数」を聞きましたが、多くの自治体で、福祉部門なども含めた既存のネットワークがあり、その中で消費者被害の防止のために取り組まれている様子が明らかになりました。消費者庁においても既存のネットワークから消費者安全確保地域協議会への移行を目指し、「消費者安全確保地域協議会設置の手引き」や「消費者安全確保地域協議会の設置に対する阻害要因に関するQ&A」や成功事例などの公表をしているところです。

 都道府県調査では、県では消費者安全確保地域協議会の立ち上げ支援のために、「消費者安全確保地域協議会設置の手引き」なども活用しながら働きかけをしている様子もわかりましたが、消費者行政部局は財政面・人員面が不足しており、消費者行政部局だけで協議会設置を進めることが難しい状況にあります。現況においても高齢者の被害は高止まりをしており、自治体内で関連部署と連携してより強力な被害防止に取り組むことが必要です。

 自治体内の消費者行政部局と福祉部局との連携を進め、既存の見守りネットワークから消費者安全確保地域協議会の立ち上げに進むことができるよう、国(消費者庁)には、厚生労働省とも連携して自治体に働きかけを行うことを求めます。

5.地方消費者行政の法執行の体制強化等のための支援を求めます

 都道府県調査では、特定商取引法や景品表示法による法執行(行政処分)を活性化・強化するためには、消費者行政の職員の複数配置や、警察官OBなどの専門人材の配置が必要であるとの声がありました。また、法執行には法律の解釈、執行手続の運用、証拠に基づく事実認定などの専門知識も必要で、国や関係機関との積極的な連携や、職員の実務経験と共に専門的な知識を身につけるための研修の充実が必要です。寄せられた意見では、消費者行政職員と警察官OBの複数配置により、一定規模のチーム編成を行い、法執行に機動性が確保できるとの工夫の声も出されています。

 人員確保や専門知識向上に係る経費に対する財政支援と、国や経産局や他県と連携して共同執行を行う体制の構築や、体制強化を支援する施策を求めます。

以上