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消費者契約法検討会ワーキンググループ「論点整理」学習会 報告
消費者法制度のパラダイムシフトに向けた検討については、消費者庁「消費者法の現状を検証し将来の在り方を考える有識者検討会」、内閣府消費者委員会「消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会」と議論が重ねられてきました。そして現在、消費者庁は「現代社会における消費者取引の在り方を踏まえた消費者契約法検討会」を設けて、消費者契約法における具体的な規律や対応の検討を進めています。
検討会には「ワーキンググループ」が設置され、法学者による議論が行われ、その結果、5月11日に今後の議論の土台となる「論点整理」が公表されました。今後は、この整理をもとに、親会議である検討会で議論が深められ、今年の夏頃には「中間取りまとめ」に至る予定とされています。
皆様と今後の消費者法の在り方について理解を深めるため、消費者庁の担当者から「論点整理」の説明をお聞きしました。

【日時】6月2日(火)14時00分〜15時40分 〔Zoom活用のオンライン学習会〕
【講師】消費者庁 消費者制度課長 古川 剛さん
【参加】88人
概要(事務局による要約)
現代社会における消費者取引の在り方を踏まえた消費者契約法検討会ワーキンググループ「論点整理」について
消費者契約法は2000年に成立し、「消費者利益が擁護されるとともに、消費者と事業者双方が契約当事者として、自己責任に基づいた行動が促されることによって、消費者と事業者との間の信頼関係が高まり、新たな経済活動や業態の創造が容易になり、活発化されるもの」という基本的な考え方のもとに位置づけられました。
その後、適格消費者団体の差止請求制度の導入や不当勧誘類型の追加、無効となる契約条項の拡充などが進められてきましたが、これらはいずれも具体的な被害事例を踏まえた、いわゆる後追いの対応でした。また「つけ込み型不当勧誘」に対応する包括的取消権の導入も検討されたものの、要件の明確化が困難であることから、制度化には至りませんでした。
直近の2022年(令和4年)改正以降、議論は「消費者の脆弱性」がキーワードとなり、規律対象も契約締結時の勧誘場面以外にも広げて議論が進められています。この論点整理は、従来の枠組みとは少し異なり、新たな規律の在り方を模索するものです。
第1.消費者の多様な脆弱性への対応として必要な規律
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事業者等による消費者の多様な脆弱性への配慮を促進する仕組み
消費者を取り巻く環境が変化している現代社会においては、消費者の意思決定能力が相対的に弱まり、危害にさらされやすい状況が生じています。その結果、誰しもが単独で十分な意思決定することが、困難となる場面が増加します。消費者が多様な脆弱性を有しながらも、安心・安全に取引できる環境(健全な市場)の実現に向け、事業者及び関係主体が果たすべき役割や期待される役割を明らかにするプリンシプル(行動規範・行動原則)を規定することが提案されています。プリンシプルは、事業者の行為の内容を問うことではなく、消費者の状態に着目した規律になります。例えば、消費者が消費者契約を締結するか否かについて適切な判断を行うことが困難な状態に陥らないように配慮することが想定されています。
事業者の勧誘に際して「消費者の脆弱性」を踏まえて配慮を求めるとともに、消費者契約に関係する主体(取引基盤提供者等)や関係し得る主体(地域のネットワーク等)が、共創協働の観点から役割を果たすことを促す規定の導入が提案されています。さらに、行政が指針(具体的なベストプラクティスの実例やミニマムスタンダードの具体化などを記載)を策定し、その策定・見直し・運用に関する協議の場として官民協議会の設置することも提案されています。指針は相談現場で相談員があっせんなどの場面で活用できるツールとして期待されます。
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多様な脆弱性による影響を踏まえた契約の拘束力から消費者を解放する仕組み等
この項目はワーキンググループで意見をひとつにまとめたものではなく両論併記をしています。
提案は、「消費者の解除権の導入」「消費者契約法以外の手法の活用」という考え方が提示されています。前提は、「事業者の不当行為や主観を要件としない」として、消費者側で立証が難しい要素を極力排除するという考え方です。具体的には、消費者に生じた結果が深刻である場合に、当該取引関係を解消し、契約の拘束力から消費者を解放する仕組みを設けることができないかが議論されました。その代表的な制度として「消費者の解除権」の提案がされました。制度設計の方向性として、事業者・消費者・第三者が支え合う仕組みを組み込みつつ、契約の効力を事後的に否定することによる事業者側の不利益も踏まえ、適切な制度設計を検討する必要があるとされています。
規律の具体案としては、@適切な判断をすることが困難な状態(年齢や心身の状態をどの程度客観的に定義できるか、年齢要件や要介護認定等で一律に区分することの適否など)、A深刻な結果(生活の基盤となる財産を失う契約の「生活基盤」と評価される水準をどの程度に設定するか)となる内容の契約を締結した場合に解除できることとし、B事業者の予見可能性を確保しつつ共創協働の観点から 「第三者」(誰を指すか、その範囲や役割をどのように定めるかは明確化が求められる)による見守りを促す仕組みを設けることが提案されています。
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取引当事者である消費者に依拠する者の生活の維持を困難にすることを回避する仕組み
ここでは、新たに制度化を図るのではなく、最初の提案「事業者の配慮を促進する仕組み」で対応するのが適当ではないかとされました。
第2.消費者契約の各過程に関する必要な規律
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継続的な契約の普及・拡大に対応するための規律の導入
サブスクリプションに代表される継続的契約の普及に伴い、契約締結時や契約条項に限られない場面でトラブルが生じている現状を踏まえ、規律を整備してはどうかと整理がされました。
現行の消費者契約法は、第4条で契約締結過程を、第8条から第10条で契約条項を中心に規律していますが、このような枠組みで対応しきれない問題について、規律を拡張し、新たな制度的対応を検討しています。具体的には、@解約を不当に妨げる行為の禁止、契約から合理的に離脱できる方法を提供するよう事業者に求めること、また利用者が解約できる状態を確保するための配慮、さらに解約方法や条件の情報提供について事業者に努力義務を課すこと、A契約期間の更新時に事前に通知する努力義務、B契約の重要事項の変更時の事前通知義務、C消費者の死亡時の対応手順に関する説明努力義務の整備をしてはどうかと提案されました。@のうち解約妨害禁止とBに関しては適格消費者団体の差止請求等を可能にする仕組みを入れることを検討するとされています。
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消費者が事業者に対して自己の情報、時間、アテンションを提供する取引に関する規律
近年のデジタル経済の進展を踏まえ、消費者が金銭ではなく情報や時間、アテンションを提供する取引の取扱いについて、契約に該当する場合には消費者契約として位置付けるとしつつも、アテンションエコノミーの実態や課題については、なお社会的な議論が成熟しておらず、必要に応じて検討するとされました。消費者契約法は金銭の支払いを伴う契約に限定されるものではなく、消費者契約法は一般法なので広く対象とすることが必要であると整理されました。
第3.「解約料」の実態を踏まえた実効的な仕組み
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「解約料」条項に係る規定(消費者契約法第9条第1項第1号)の見直し
解約料規制の見直しについては、長年議論がありますが、十分な進展が見られていない分野です。従来とは異なる視点で、実際のビジネスにおける価格設定や解約の実態に即して検討を進めてきました。
具体的には、A案およびB案の二つの方向性が検討されました。A案は、複数の合理的な価格プランが提示されている場合に、解約料が最も低いプランの解約料が平均的損害の範囲内に収まる場合には、他のプランの解約料は従来の平均的損害基準による規制によらないとする考え方です。これは、低価格だが解約料が高いプランと、高価格だが解約が低いプランという多様な選択肢の併存を前提とします。ただし、形式的に複数プランを用意することで規制を回避するような事態を防ぐ必要があり、プランの合理性や消費者の実質的な選択可能性をどのように担保するかが課題とされています。
B案は、解約料に関する立証責任の分担を見直すもので、消費者ですら解約料として支払ってもやむなしと思われる部分と、事業者がそこから追加して欲しいと思う部分に分け、それぞれに立証責任を負わせるという考え方です。原状回復に必要な範囲は消費者が、それを超える部分は事業者が立証責任を負うとするものです。これは、紛争解決が実態として損害論に基づいて行われていることを踏まえたものですが、原状回復相当部分の範囲をどのように画定するかという点が新たな課題として指摘されています。
なお、A案とB案は、必ずしも排他的な関係ではなく両者を組み合わせる可能性も含めて、今後の検討の叩き台と位置付けられています。
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「解約料」条項の説明に関する既存の制度の拡充
解約料規制については、現行法において既に一定の説明義務に関する規定が存在しています。特に近年の法改正で新設された規定もあって、短期間での再改正には慎重な検討が必要とされますが、制度の実効性を高めるためには、単に立証責任の問題にとどまらず、事業者による説明の充実が極めて重要であるということです。
第4.横断的な検討事項
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法目的の在り方
これまで議論されてきた「消費者の脆弱性への対応」、関係主体間の連携の重要性といった要素を目的規定に組み込む必要性があるとされました。ただし、これらの要素をどのような文言として条文に規定できるかについては技術的な検討を要するため、「脆弱性」という文言がそのまま明記されるかは現時点では不確定です。消費者委員会での議論や基本計画に含まれる考え方を踏まえ、これらの要素を目的規定に反映させていく方向性が示されました。関係主体の連携については、協働や健全な市場形成といった観点から整理されています。
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「消費者」概念・定義規定の在り方
現時点では「定義規定」の見直しには至らないとの考えが示されました。理由として、目的規定が変更されれば、その趣旨を踏まえて法全体が解釈されることとなり、消費者概念についてもその趣旨を踏まえて理解されることが想定されるとされています。
以上の論点整理を踏まえ、現在は検討会において議論が進められていますが、なお検討を深めるべき点と、論点を一定程度絞り込む必要性の双方が指摘されています。今後は、実効的な法改正につながるような具体的な制度設計に向けて、引き続き精力的に議論していただきたいと思います。また、関係者に対しても検討状況への関心と応援をしていただきたいです。
以上
※全国消団連では、「現代社会における消費者取引の在り方を踏まえた消費者契約法検討会ワーキンググループ「論点整理」に対する意見」を6月19日提出しました。
https://www.shodanren.gr.jp/database/531.htm
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