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気候変動学習会 2025年2月に策定された「第7次エネルギー基本計画」及び「改定地球温暖化対策計画」により、日本における温室効果ガス削減の2035年目標(60%減)および2040年目標(73%減)が示されました。そのためにまず、2030年目標(46%削減、更に50%減の高みを目指す)を確実に達成することが求められます。 近年では、短時間の集中豪雨による被害の増加や、被害の深刻さが増しています。これらの現象と気候変動との関係を理解し、私たち一人ひとりが少しでも早く対策に取り組むことの意義について考える学習会を開催しました。また、家庭や地域でできる取り組み、そして太陽光発電に関する不安や疑問にもお答えいただきました。 開催概要
日時:10月30日(木)14:00〜16:00 (オンライン学習会) 講師:田中 稔さん(認定NPO太陽光発電所ネットワーク理事 環境省地球温暖化防止コミュニケーター) プログラム:動画上映『気候変動と日本』 (350ジャパン制作) 参加者:46人 概要(事務局による要約)
太陽光発電所ネットワークは、2003年に設立され、京都議定書の頃から温暖化対策として、個人でできる「ソーラー設置」を呼びかける活動を続けてきました。説明会や学習会を通じて、太陽光発電のメリット・デメリットも伝えています。この20年間、太陽光をはじめ、再生可能エネルギー※1(以下、再エネ)に関する制度の変化に対応しながら、最近では温暖化による自然災害の増加を受けて、気候危機のコトの重大性を伝えるセミナー開催や、政策提言や市議会への請願など、もの言う市民として、より積極的な行動も行っています。私個人は、2006年に温暖化を知り、太陽光発電、太陽熱温水器を導入しました。そして電気、ガス、水道、車由来のCO2排出量を計算したところ、カーボンマイナス(排出より吸収が多い)を達成しました。つまり、17年前の技術でも家庭のCO2ゼロは可能だったということです。 ※1:自然の力を利用して繰り返し使えるエネルギー。大規模水力発電を含む場合と含まない場合がある。 温暖化の影響:すでに起きている影響 温暖化の影響で、大きな災害だけでも、ほぼ毎年起きるようになってきました。西日本豪雨を含め、2018年前後の被災者のインタビューをまとめた「気候変動と日本」という短編ドキュメンタリーでは、
2018年当時、テレビの災害報道では、「自然は脅威」と避けられない天災であるかのような言い方で終わることがありました。しかし温暖化の影響もある人災の側面も見逃すことはできません。 次に、気温上昇の現状と未来についてです。地球全体の平均気温は、2011年から2020年までの平均値が産業革命前と比べて1.1℃上がりました。単年度で見ると昨年、一昨年は1.4℃とか1.5℃で、90年代以降はどんどん加速しています。このペースで2100年にはどうなるのか、これについてはいくつかの予測があります。最も温暖化対策を一生懸命やった場合、産業革命後1.5°C以下で収まる可能性もまだあります。日本を含め各国が5年前に出した2030年削減目標のペースでは2℃から3℃上がる見込みです。 その目標すら達成できないと、これより高い3.5℃とか4℃ということもあります。全く対策をしないと4.4℃プラスマイナス1.3℃という可能性もあります。つまり2100年に何度上がるかはまだ決まってないのです。ここは大事なところで、誰かがやってくれるのを待つのではなく、自分もその温暖化を止める主体になるんだという覚悟も含めて、自らの生活も1.5℃を目指さなきゃダメだと受け止めていただければ幸いです。 温暖化の影響:今後の予測 近年、科学者たちは気候危機の深刻化に警鐘を鳴らしています。特に問題なのは海面上昇で、南太平洋の島国だけでなく、世界中の沿岸都市に影響を及ぼす可能性があります。北極の氷は海に浮かんでいるため溶けても海面は上がりませんが、グリーンランドや南極の氷は陸地にあるため、溶けるとその分だけ海面が上昇します。グリーンランドの氷がすべて溶けると海面が約7メートル上昇、南極の氷はグリーンランドの約9倍あり、こちらもすべて溶けると、関東平野を含む多くの地域が水没する恐れがあります。今のペースで溶解が進んだ場合でも、数百年か千年以上かかるかもしれません。それでも今心配しなくてはならないのは、こうした変化には「ティッピングポイント(臨界点)」という概念があり、ある温度を超えると、変化が止まらなくなる可能性があるからです。 また、温暖化には「フィードバック効果」という要因もあります。たとえば、ヒマラヤの氷河や雪に覆われてる白いところは太陽光が9割反射していた。ところがこれが溶けて、黒っぽい岩肌が出てくると、今度は逆に9割ぐらい吸収する。つまり、地球が太陽から受け取っている熱量は一定ではなくて、黒い部分が多くなるほど増えて、それが温暖化を加速するわけです。フィードバック効果が加速していくと、気候変動の影響が氷の溶解だけではなく、乾燥による森林の枯死などがドミノ倒し的に連鎖して増えていくかもしれません。このような連鎖の引き金が1.5℃の上昇だと言われています。今ならまだ止められるかもしれませんが、この先3度4度と温暖化が進むと止められなくなるかもしれません。 温暖化対策 まずは世界の動向です。IPCC※2のレポートの提案を受けてCOP※3が毎年11月頃に行われています。、 ※2:「気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)」の略。温暖化対策に必要な科学的データをまとめている。 ※3:「気候変動枠組条約締約国会議(Conference of the Parties)」の略。各国の環境大臣、政治家が集まり、IPCCの報告をもとに世界の対策を話し合う会議 2015年のパリ協定では「気温上昇を1.5℃以下に抑える」目標に合意し、アメリカや中国も含めて世界的に脱炭素への意識が高まりました。2023年のCOP28で、2035年の温室効果ガスを60%削減する、再生可能エネルギー(再エネ)を3倍にするなどの目標は合意されていますが、具体的な取り組みは1.5℃目標の達成にはまだ不十分です。 日本は、2040年の電源構成の計画が水力を含めた再エネ4割から5割です(水力を除くと30%から40%ぐらい)。ドイツやイギリスはすでに2022年時点で40%を超えています。国の事情の違いもありますが、日本はおよそ15年遅れています。 今注目されているのは「ソーラーシェアリング(営農型ソーラー)」で、農地に3メートルぐらいの支柱を立てて、パネルを間隔をあけて置いていく。そうすると、発電もでき、隙間からの太陽光で下の農作物も育ちます。農地の20%で導入すれば、年間1兆kWhという日本の電力需要をまかなえる可能性があります。農地の10%ぐらいの導入でも3割程度が賄えますので、その分石炭火力発電を減らせば、電気由来のCO2の6割ぐらいの削減が技術的には可能です。 もう一つは、地熱発電です。地熱発電は世界の第3位の資源量がある反面、工期の長さや開発コストの大きさから本格的な開発が進んでいませんでしたが、出力調整ができる安定的な再エネを増やせれば、その分どれかを減らせます。温暖化対策最優先と考えると、火力発電、特に石炭発電を減らすことが考えられますが、日本は石炭火力にアンモニアを混ぜてCO2を減らす対策を取りつつ、当面は継続する方針です。そのため、石炭全廃を目指す国際組織には参加できていません。世界の脱炭素レースにまだ参加してないレベルの到達点です。 私たちにできること まずは現状を正しく知ることが大切です。ティッピングポイントなどを学ぶことで、危機感を持つことができます。 次に、省エネの工夫や住宅の断熱性能の見直しが効果的です。そして、再エネの利用も重要です。戸建てなら太陽光発電の設置、集合住宅なら再エネ100%の電気を供給している電力会社への切り替えを検討しましょう。ほかに車を電気自動車や燃料電池車に変える、暖房や給湯をガスから電気に変えてかつその電気を再エネ電気にする。家庭からのCO2削減が、未来を守る一歩になります。 私たち一人ひとりが家庭でできる温暖化対策に取り組むことは大切ですが、家庭部門のCO2排出量は自家用車含めて全体の20%程度ですので、製造業(35%)、業務部門(17%)、運輸部門(13%)など、国全体での政策転換が必要です。しかし、国の政策を変えるのは簡単ではなく、市民の意見(パブリックコメントなど)だけで大きな変化を起こすのは難しいです。だからこそ、最終的には政治の力が必要になります。特定の政党にこだわらず、すべての議員に脱炭素を求めていくことが大切です。海面が何mも上昇するなど、温暖化によってとても大変なことが待ち受けていることが伝われば、政党問わず脱炭素を進めなくては、となると思います。まずは地域でグリーンな人を増やし、グリーンな議員を送り出すことが国の政策転換につながります。例えば、ゴーヤ苗の配布会や親子向けのソーラーカー工作教室など、身近なイベントの中で温暖化について話す機会を作るのも効果的です。2/3か3/4ぐらいの自治体で脱炭素を求める声をあげていけると、国の政策転換の展望も見えてくると思います。 現在、2つの不公正が指摘されています。1つは、将来世代が過去のCO2排出の影響を受ける「世代間の不公正」。もう1つは、CO2排出が少ない途上国が大きな被害を受ける「国際的な不公正」です。途上国は1人当たりで見ると、先進国の1/10とか1/20ぐらいしか出していないにも関わらず、治水インフラが弱く、先進国よりもより大きな被害が出てしまう。本当に先進国の責任を強く自覚し、目先の利益ではなく、未来のために賢い選択をしていきたいと思います。皆さんの周りの大事な人、地域から活動していただければと思います。 質疑応答 Q:太陽光パネルが耐用年数経過後にどういう処理がされているのか A:リサイクルが義務化されていないので、今はほとんど埋め立てられていて、近い将来大問題になると心配しています。リサイクルの義務化を働きかけてきましたが、費用負担で折り合いがつかず、今年度は法制化が見送られました。これは市民団体、消費者団体含めて他人事ではありませんので国への要求の1つとして掲げてほしいです。 Q:石炭火力でなければならないのはなぜでしょうか A:私も疑問です。石炭は、保管がしやすい一方で出力調整は難しい。メリットデメリットある中で、現状は311後に新増設された石炭火力設備を会計上、“座礁資産”にしたくないという事情もありそうです。 Q:地域からグリーン化をとお話いただきましたが、気候変動についての地方議員の姿勢はどのようにして調べられますか。 A:低めの要望でいいので市議会へ陳情を出すと、ほとんどの人は退席せずに意思表示をしますので、個々の議員の賛否を広報で見える化できます。 |