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日本のライドシェアって、どうなっているの? 学習会報告

 「日本型ライドシェア・公共ライドシェア」は、「地域公共交通空白」の解消に向けた二つの取り組みです。

 日本型ライドシェアは、タクシー事業者の管理の下、自家用車・一般ドライバーを活用した運送サービスの提供を可能とする自家用車活用事業で、2024年3月よりスタートしました。タクシー配車アプリデータ等を活用して、タクシーが不足する地域・時期・時間帯を特定し、地域の自家用車・一般ドライバーの力を借りて補う制度で、都市部や観光地などの指定地域を中心に導入されて、始動から1年が経過しました。

 また、公共ライドシェアは、地方自治体が主体となり、地域の公共交通機関の空白地帯を補完するための制度です。二制度合計で1600以上の自治体で取り組まれています。

 その一方で「ライドシェアの車両を見かけたことがない」「利用したことがない」といった声も多く聞かれ、昨年末に公表された交通労働者によるアンケート調査結果などから、消費者の理解や利用は進んでいないのではないかと考えたことから、交通空白地域解消は重要な政策と考え、学習会を開きました。

 今回は、二つの制度の概要や地域の事例について、安全性、利便性など、現状の課題とこれからの制度の方向性について、国土交通省の担当の方にお話をうかがいました。

【日時】8月26日(火)14時00分〜15時15分 〔Zoom活用のオンライン学習会〕

【講師】鈴木充生さん(国土交通省 物流・自動車局旅客課 課長補佐)
東海林厚史さん(国土交通省 総合政策局モビリティサービス推進課 専門官)

【参加】23人

概要(事務局による要約)

日本版ライドシェアについて

国土交通省 物流・自動車局旅客課 課長補佐 鈴木充生さん

〇前提としてのタクシー事業の現状
 タクシー事業は2002年に規制緩和がされ、事業者数、車両数は増えて、営業1台当たりの収入は減りました。2009年には、タクシー特別措置法が成立し、タクシーの供給を絞る方向に舵を切って車両は減り、営業収入は増えました。その後新型コロナウイルス感染症拡大による移動者減でタクシー会社の経営が悪化しましたが、現在は回復しつつあります。法人タクシーの運転者数と個人タクシーの事業者数は、規制緩和された2002年以降、6割前後まで減少しており、新たな人材の採用・育成が喫緊の課題です。

〇日本版ライドシェア
 運転者不足や観光の足の解消として2024年3月から開始した制度です。タクシー事業者が実施主体となって141地域、1,007事業者、9,295台(2025年7月20日時点)で導入されています。安全・安心な旅客運送サービスに必要な要件は、「適切な運行管理を行いドライバーと車の安全性を確保すること」「事故時の責任の所在が明確になっていること」「ドライバーの適切な労働条件の確保」として、安全確保と利用者保護を担保しています。また、制度は利用者ニーズに応じた運用改善を行っています。

〇改善事例
 『長野県軽井沢町』では、休日や夕方飲食後のタクシーが不足を指摘する声があり、観光協会やタクシー協会などが連携して、自治体が手を挙げて運用が始まっています。
 『群馬県桐生市』では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響でタクシー営業の縮小により、週末深夜の移動手段確保について多くの市民から意見が寄せられて、運行が始まりました。配車ツールもアプリは高齢の方などは使いづらいこともあり、LINEアプリ、電話を使っています。
 『鹿児島県伊佐市』では、乗合タクシーの拡充と日本版ライドシェアの導入も組み合わせて地域の移動手段を確保に努めています。支払いも現金可能として、幅広いニーズに対応できるようにしています。
 『石川県金沢市』では、北陸新幹線開通で観光客が大幅に増え、タクシーが不足しました。その対応として導入しました。日本版ライドシェアのドライバーを経験して慣れたら、タクシードライバーに移行するなどのキャリアアップにも活用されているとのことです。
 『鳥取県米子市』は、2024年10月開催の「ねんりんピック」で導入した日本版ライドシェアをそのまま活用しています。

〇今後の取り組み
 バス・鉄道事業者による日本版ライドシェアへの参画の促進を進めています。バス・鉄道事業者のニーズとして、終電・終バス後の輸送ニーズの対応、駅など交通結節点からの二次交通をライドシェアで担うなどの活用が考えられます。バス・鉄道事業者が日本版ライドシェアに参画する方法としては、タクシー事業の許可を受けるパターンと、バス・鉄道事業者がタクシー事業者とパートナーシップを組むことで、施設・車両の共用、ドライバーをシェアするパターンがあると考えています。今後も必要に応じて日本版ライドシェアのバージョンアップを検討していきます。

公共ライドシェアについて

国土交通省 総合政策局モビリティサービス推進課専門官 東海林厚史さん

〇公共ライドシェア(自家用有償旅客運送)
 初めは「自家用有償旅客運送」として2006年10月に制度が創設され、その後に「公共ライドシェア」という愛称をつけたものです。実施主体は市町村やNPO法人などです。ドライバーは第一種運転免許の保有し、かつ国土交通大臣が認定する講習受講済みの方で、自家用車を使用します。2023年12月、2024年4月に運用改善を実施し、制度導入した市町村は645(2025年3月末)で自治体全体の約37%になりました。

〇運用改善の内容
・交通空白の実情、例えば、朝夕は足があるが昼間に少なくなるなど、時間帯による差異に留意した対応ができるようにした。
・対価の目安として、タクシー運賃の5割程度で運用していたが、これでは厳しいとのことでタクシーの営業利益やタクシー固有の費用分を除いた、タクシー料金の8割に引き上げた。
・実施主体の自治体からの受託により株式会社が協力できることも明確化した。
・観光地の宿泊施設が所有する車両や、病院・介護施設の送迎の車を、未使用時間帯に自治体に提供し、公共ライドシェアに活用することも可能であることを明確化した。
・運用区域内での移動に限定していると解されがちであったが、例えば運用区域内の自宅から区域外の病院などへの往復も可能であることを明確化した。
・ダイナミックプライシングを導入し、運送対価について固定的に運用するのではなく、時間帯や需要を見ながら、上限下限を決めて、その中の幅で運用ができるようにした。


 『千葉県南房総市・館山市』では、鉄道事業者(JR東日本)が、電車の駅から家までの二次交通の不足を課題に感じていたことから、制度に参画して自らの社員をドライバーとして、バスの運行も時間外でタクシーの稼働が少ない深夜時間帯に運用をしています。
 『富山県南砺市』では、深夜帯の移動手段不足を補充するもので、タクシーと公共ライドシェアとの共同運営になっています。専用アプリ「なんモビ」を開くとタクシーもライドシェアも呼べるようにしてあり、利用者の利便性を確保した取り組みになります。なおそれぞれが競合しないようタクシー優先配車となるよう順位を決めて、タクシーと公共ライドシェアが共存できるような仕組みにしています。

国土交通省「交通空白」解消本部について

同じく 東海林厚史さん

 2024年の臨時国会で石破総理から「地域交通は地方創生の基盤です。全国で「交通空白」の解消に向け、移動の足の確保を強力に進めます。」との方針が示されました。これを受けて、国土交通省「交通空白」解消本部を設置し、@ 「地域の足対策」と「観光の足対策」、A 「日本版ライドシェア」や「公共ライドシェア」のバージョンアップと全国普及の取り組みを進めていくことになりました。
 「地域の足の確保」に向けて、全国の自治体にアンケートを取り、日本版・公共ライドシェアの準備状況や地元の交通空白地域の存在などをお聞きしました。また、国土交通省でも自治体を訪問し、自治体と事業者との橋渡しの支援を行い、ほとんどの自治体で何らかの対応が進められる状況になっています。地域の実情に応じた最適なツールを選び導入していただくのが大事であると考えています。また交通空白は、該当する地区が2057あり、対応状況も調査し、地域の状況について問題意識を持っていただくことが重要であると考えています。自治体が必要としている支援策については、予算面や制度に係る情報や知見の提供、担当者のマンパワー不足など、課題も併せて提示いただきました。
 「観光の足の確保」は、「交通空白」にあたるのは462自治体で、地域の課題として認識をしていただきました。タクシー等二次交通サービスの提供とわかりやすい情報発信が課題に挙げられています。
 今後の対応として、「交通空白」解消本部と官民連携プラットフォーム(困りごとを抱える自治体、交通事業者と、幅広い分野の企業・団体群の連携・協働体制)を両輪として、「交通空白」の解消に向けた取り組みを強力に推進していきます。今年度から3か年をかけて集中対策期間として取り組みを進め、皆様が活動しやすいように見直していくことを考えています。

以上

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