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《食品ロス学習会》
「食べ残し持ち帰り促進ガイドラインについて学びましょう!!」
を開催しました

 食品ロスを削減する取組みとして、外食時に食べ残した料理の持ち帰りが注目される中、2024年12月に消費者庁・厚生労働省の連名で「食べ残し持ち帰り促進ガイドライン〜SDGs 目標達成に向けて〜」が策定・公表されました。このガイドラインは、食べ残しの持ち帰りが消費者の自己責任であることを前提として、事業者が民事上・衛生上で留意すべき事項と、持ち帰る消費者に求められる行動についての双方のポイントが整理されています。学習会では、消費者庁と厚生労働省それぞれの観点におけるガイドラインのポイントを聞き、後半は「びっくりドンキー」などのレストラン事業を行う企業の取組み報告を聞きました。

【日 時】3月14日(金)14:00〜16:00
〔Zoomを活用したオンライン学習会〕

【参加者】41名

【内 容】

  • 食べ残し持ち帰り促進ガイドライン 概要報告
    消費者庁 消費者教育推進課   課長補佐  杉田 育子さん
    厚生労働省 食品監視安全課 HACCP推進室 室長補佐 高橋 亨さん
  • 外食事業者の取組み報告 (株)アレフ SDGs推進部 部長 高田 あかねさん

概要(事務局による要約)

食べ残し持ち帰り促進ガイドライン〜SDGs目標達成に向けて〜(概要)

消費者庁 消費者教育推進課 杉田 育子さん

食品ロスの実情、食べ残し持ち帰り促進ガイドラインの目的・背景

 日本の食品ロス量は令和4年度推計で年間472万トン、経済損失として捉えると、国民1人が1日おにぎりを1個ずつ捨てている計算になります。環境負荷との関係では、食品ロス量を8%減らすとエアコンの設定温度を1℃変更したことと同じになります。このような実情を踏まえ、外食産業における食品ロスを削減する観点から、食べ残し持ち帰りを推進し、消費者への理解を促す目的も併せてこのガイドラインを策定しました。
 SDGsにおいて食品ロス削減に関する目標が設定され、我が国においても2030年度までに2000年度比で食品ロス量を半減させるという政府目標が設定されました。この目標の達成に向けて策定された「施策パッケージ」の中でも、外食時の食べ残し持ち帰りの促進を図ることは有効な方策とされています。ただ、食べ残しの持ち帰りについて合意することについて法的な責任が不明瞭である上、持ち帰りに伴う法的・衛生的な責任を高いハードルであると感じる事業者が多いことが課題でした。本ガイドラインは、事業者・消費者双方の理解促進を図ることを目的として、法律面・衛生面それぞれでの注意すべきポイントを整理し、リスクの低減を図りながら、安心して食べ残しの持ち帰りができるよう促す内容になっています。

ガイドラインの対象と基本的な考え方

 本ガイドラインの対象はレストラン、居酒屋、ホテルといった一般食堂を想定しており、一度に同じものを大量に提供する学校や病院、当初から持ち帰りを前提とするテイクアウトやデリバリーは対象としません。また、基本的な考え方として、食品ロス削減のためにはその場で食べきることが最も重要であるとします。消費者は自分が食べきれる量を注文し責任を持って食べきること、どうしても残ってしまった場合は持ち帰りを申し出てみること、その上で事業者は顧客に必要な注意事項を説明し、消費者は自己責任のもとに持ち帰りを行うこと、これが基本の考え方です。また飲食店においては、小盛メニューの充実など、食べきれるための工夫が求められます。

法律的な整理(事業者が留意すべき事項)

 一般に店で飲食する場合には、食品を作り、供給し、給仕し、店という空間も含めて提供するという複数の債務を飲食店が負い、他方で顧客はそれらに対し対価を支払うことを内容とする複合的な契約が締結されているといえます。提供する飲食物について、店側は特定の場所で時間をおかずに食べてもらうことを前提とした安全の確保の義務を負っていると考えられるため、客は提供されたものを勝手に外に持ち出すことはできませんし、もしそのことで何かあっても店に責任を問うことはできません。食べ残したものを持ち帰ることは、当初の契約には含まれない行為なので、新しく店と合意をすることになります。この新たな合意の際に、店は持ち帰ったものを安全に消費するための注意事項の説明を行う義務を負います。消費者は店の注意事項の指示に従うことが必要となります。

持ち帰った飲食物が原因で消費者に損害が発生した場合の飲食店の民事上の責任

 飲食店がこれらのことを行わず食中毒などが発生した場合には、持ち帰りについて合意した飲食店には説明を怠ったこと等の義務違反による損害賠償責任が発生する可能性があります。

消費者に求められる行動

 消費者は、持ち帰る際と持ち帰った後の食品の管理について、店からの説明をきちんと守ることが必要であると共に、自己責任で管理することが基本となります。

食べ残し持ち帰りに係る消費者の社会的な役割

 消費者が理解して行動することは重要な社会的役割とも言えます。我が国における食品ロス削減、さらには国際目標の達成に大きく寄与することとなり、食べ残しの持ち帰りは単に事業者だけの取組みではなく、消費者の理解があってこそのものとなります。

消費者及び事業者に向けた食べ残しの持ち帰りに関する食品衛生ガイドライン(第5部分の 概要)

厚生労働省 食品監視安全課 HACCP推進室 室長補佐 高橋 亨さん

基本的な考え方

 衛生ガイドラインの主体は消費者であり、事業者だけでなく消費者に対しても衛生上の配慮を求めるものです。食べ残し持ち帰りは自己責任が前提。事業者は食べきりを推奨し、調理段階で持ち帰りを想定した特別な調理はしていません。持ち帰りを行うことは消費者側に委ねられた行為で、持ち帰り後に食べることも消費者の行動、事業者は衛生面で気を付けるべきことを消費者に伝えてサポートするものです。

消費者が留意すること

 消費者は、食べ残しの持ち帰りをする際に、以下の点に留意することが必要です。
○食べきれる量を注文、ビュッフェでは少量を取るなど、食べ切りが基本。○持ち帰りは事業者が認めた食品に限る。留意事項や取扱いを遵守し、容器は基本的に事業者が用意したものを使う。○気温が高い季節は持ち帰りを断念するなど事業者の指示に従う。〇容器への移し替えは清潔な容器と器具を使い、原則持ち帰る者(体調の良い大人)が手指からの汚染や異物混入に注意しながら行う。○フードコート等では、異なる施設の食品を同一の容器に詰めない。〇帰宅後は事業者から伝達された留意事項(チラシ等に記載)を守り、速やかに喫食する。○すぐに食べないときは冷蔵庫等で保管し、再加熱した上で喫食する。○喫食に当たっては、店で手を付けた食品は本人が喫食する。○食物アレルギーがある者への譲渡は行わない。○異味・異臭等を感じた場合は喫食しない。○万が一体調不調があった際は医療機関を受診し、必要に応じて保健所と当該飲食店に連絡する。

事業者・消費者双方の理解と食べ残し持ち帰りの社会的な役割

 ガイドラインによって消費者と事業者がそれぞれの食品衛生に関する留意事項を理解し、双方の行動変容に繋がり、飲食店で発生する食べ残しの廃棄物を減らすことで食品ロスの削減をもたらすことが期待されています。資料等を参考に、衛生面に留意しながら食品ロスの発生の削減に寄与していただきたいと思いますが、それぞれの立場を理解し合って進める政策なので、決して無理をせず協力し合って行うことが大切と考えています。

外食事業者の取組み報告 『食』からつながるSDGs

(株)アレフ SDGs推進部 部長 高田 あかねさん

 ハンバーグレストラン「びっくりドンキー」は現在全国に直営132店舗、フランチャイズ213店舗あり、その他の直営店舗を合わせると358店舗あります。食品廃棄物に関する数字としては、店舗で発生する調理くずや食べ残し、フライヤーの油などが計1180トンで、食品廃棄物の総量1,914トン中の61.6%になります。
 食品廃棄物のなかで食品ロスにあたる割合は約7割、中でも店舗で最も発生する食品ロスは「ライス」なので、そこをターゲットに削減を検討して来ました。びっくりドンキーでは炊き立てのライスを提供していますが、保温時間で風味が変わるので、食味を大切にする観点からライスの廃棄は多くなりがちです。足りなくなった時にすぐに間に合わないのが炊飯の難しいところ、また来店客数の増減は天候やイベント開催にも左右され、コントロールできないことが多くあります。このような事情でライスの食品ロスが多くなる問題を改善するため、店舗では一度に炊く量を減らす少量炊飯器を導入しました。また食べきることが大前提なので、お客様が選べる「小盛りメニュー」を提供しています。ライスの他ハンバーグのサイズもSからLまで選べるようになっています。
 店舗では「もぐチャレ!!!」という取組みを「お子さま向け完食応援イベント」として行っています。スタンプ形式で受け取れる表彰状や、おまけのデザートのプレゼントもあります。食品ロス削減だけでなく、子どもたちの食べることへのモチベーションを上げる意味でも、食育につながる取組みと考えています。
 2019年度からはフードバンクとの連携をスタートしました。当初は食中毒の発生や転売の懸念などもありましたが、フードバンクと合意書を取り交わしパートナーシップを築くことで、良い関係性での食材提供ができています。
 食べ残しの持ち帰りについては2021年4月よりルールを全店舗で明確に設定しマニュアル化しました。ご希望のお客様に「持ち帰りルール」を案内し、理解・同意のうえで有料の指定容器を渡しご自身で詰めてもらいます。生ものや液体ものは持ち帰れません。持ち帰り容器の形状や原料資源にも配慮し、容器ごと電子レンジで温めることも可能です。
 削減に取り組んだ上でも出てしまう食品廃棄物についてはリサイクルとエネルギー利用しているほか、店舗の生ごみを堆肥として大根やお米作りに活用し循環する「リサイクルループ」も実現しています。これらの取組みの積み重ねによってアレフ直営店における食品循環資源の再生利用等実施率は2023年度 95.0 %を達成しました。  お客様が適量を選択でき、食べきることで食品ロスを出さないことが何よりの基本と考えます。また、食品ロスや食品廃棄物についての対策を講じることは生産者と顧客を繋ぐ外食産業の重要な使命と考えています。

以上

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