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学習・意見交換会
「輸入食品って安全なの?〜令和7年度版〜」を開催しました

 「輸入食品監視指導計画」は、日本に輸入される食品・添加物・器具・容器包装・乳幼児を対象とするおもちゃなどの安全性を確保するために、輸出国での生産から輸入後の国内流通までのそれぞれの段階で、厚生労働省及び検疫所などが取るべき対応について毎年度定めるものです。毎日の生活に欠かせない輸入食品の安全性について、「令和7年度輸入食品監視指導計画(案)」の内容に沿って説明を聞き、その後に質疑応答と意見交換を行いました。

【日 時】2月7日(金)15:00〜17:00
〔Zoomを活用したオンライン学習会〕

【参加者】61名

【内 容】@報告「輸入食品の安全性確保について」〜令和7年度輸入食品監視指導計画(案)〜
 厚生労働省 健康・生活衛生局 食品監視安全課
 輸入食品安全対策室 室長 福島 和子さん
 輸入食品安全対策室 監視調整係長 山崎 勇貴 さん
A質疑応答・意見交換
B「日中冷凍野菜品質安全会議」参加報告
 全国消団連 事務局長 郷野 智砂子

概要(事務局による要約)

輸入食品の現状

 日本の食料自給率は下がり続けている状況で、令和5年度の集計ではカロリーベースで38%でした。輸入の届出件数はこれまで右肩上がりでしたが、令和元年以降は新型コロナウイルスによる物流の変化などの影響もあって落ち込み、以降横ばいの状態です。輸入重量では近年大きな変化はなく3,000万トン弱のところで推移しています。

輸入食品の監視結果

 令和5年度のモニタリング検査実施状況は、計画数延べ100,109件に対し101,096件の実施、実施率は101%でした。令和5年度の監視指導の結果は、違反件数763件、違反割合0.03%でした。

監視体制の概要

 ◇輸出国対策・◇輸入時対策・◇国内対策の3段階で行われています。

輸出国対策

 日本の食品衛生法に合致したものを輸出してもらうには、輸出国側に日本の食品衛生法を理解してもらい、日本の規制を周知することが重要です。二国間協議や現地調査、輸出国への技術協力など、輸出国対策は輸入時の検査を効果的に実施するためにも力を入れて行っています。令和5年度に輸出国との安全対策に関する協議を行った例として、オーストリア、ドイツ、米国の牛肉について対日輸出プログラムの協議や、実施状況の確認等を行いました。またフィリピンのバナナについては残留農薬の違反があったので、現地でどのような対策が図られているかを確認しました。コロナ禍においては現地に赴くことが難しい状況でしたが、オンラインによる現地調査の仕組みも構築されたことで、それぞれのメリットを生かす形で併用していきます。

輸入時対策

 輸入者は、輸入する食品等について届出事項に沿った内容を厚生労働大臣に提出する義務があります。厚生労働省の検疫所では、届出書の審査や相談室での届出前の相談対応を行い、輸入時の監視指導体制を強化しています。全国の検疫所での食品担当部署は32箇所、食品衛生監視員は現在422名の体制になっています。
 輸入前相談は全国13の検疫所に相談室を設置して行っています。令和5年度では輸入相談前で1.74%の物が日本の基準に合わない(違反に該当する)ものでしたが、輸入前相談による違反の未然防止が効果的と考えられます。結果として、輸入時点での違反率は0.03%に抑えられています。
 輸入時には◇指導検査・◇モニタリング検査・◇検査命令というリスクに応じた検査制度があります。指導検査は、輸入者の自主的な衛生管理の一環として定期的な検査の実施を指導するものです。モニタリング検査は、日本に輸入される多種多様な食品が本当に安全なのか食品衛生上の状況をチェックするためのもので、年間計画に基づいて無作為にサンプリングし検査を実施しています。検査命令は一番厳しいもので、健康被害の発生する恐れのあるもの、法違反の可能性が高いと見込まれる食品について検査を命ずるものです。輸入する全ての食品に対して届出ごとに毎回検査をします。費用負担は輸入者が行い、検査結果判明までは輸入不可となります。これらの検査は統計学的な考え方を取り入れたサンプリング法に応じ実施しています。また、検査で違反が繰り返し発見されるものについては「包括輸入禁止」として法的に輸入を禁止できる規定がありますが、これまでに該当する事案はありません。令和5年度は全体で約235万件の届出の中で検査命令になったものが約62,000件、モニタリング検査が約50,000件(延べ約101,000件)、指導検査が約85,600件、計約20万件の検査を実施し、検査の割合8.5%、違反件数763件、違反割合は0.03%でした。
 令和5年度に食品衛生法の違反として一番多かったのは、第13条の食品の規格基準に違反したもので6割強を占め、残留農薬の基準値違反、微生物関連、添加物の使用基準違反などがあります。次に第6条違反で、ナッツのアフラトキシン、腸管出血性大腸菌の検出などがありました。違反の件数が多い輸入者に対しては食品衛生法で「輸入者の営業の禁停止処分」を行うことができますが、そこに至る前に個別の再発防止策を講じるよう指導を行い、改善を求めています。

国内対策

 各都道府県等において、食品衛生の監視指導計画を作成し、パブリックコメント募集やリスクコミュニケーションを行うとともに、その結果もあわせ公表しています。国内での食中毒発生事案に基づいて監視強化を行った事例もあります。

リコール情報の報告制度

 食品衛生法の改正の中で2021年度に「食品等のリコール情報届出制度」が創設されました。輸入食品においても、国内での流通があり自主回収の届出がされたものについては制度に則って適切に対処されます。

海外情報への対応

 海外での食中毒の発生や食品リコールの情報などは速やかにキャッチして的確な対応を行っています。定期的に(実質的には毎日)海外の主要政府のホームページ上でリコール情報やアウトブレイク情報を確認し、国内の専門機関の情報も同時にチェックを行いながら情報の収集や分析を強化しています。必要な場合は回収の指示や監視の強化など適切な対応を速やかに行います。令和5年度に海外情報に基づき監視強化を行った事例では、ベルギー産のチョコレート、オーストラリア産のナチュラルチーズがありました。

令和7年度輸入食品監視指導計画(案)について

 これまで通りの対策を継続しながら、より効果的なモニタリング検査の実施に努め、これまでの違反状況等を踏まえて微修正を行いながら、検査項目等の見直しや検査の強化を検討します。輸入時検査を中心とした監視体制に加え、輸出国での生産段階の安全性を確保する取組を継続します。検査命令の実施について、項目によっては対象の国と対象の食品を明確化した上で運用をします。モニタリング検査数は前年とほぼ同数の約10万件を計画しています。

具体事例の紹介 〜輸出国での衛生確保対策について〜

 昨年11月に韓国とベトナムの現地視察を行いました。韓国では対日輸出農産物の安全管理制度としてID番号での認証制度があり、IDを付与された事業者は検査命令が免除されています。生産農家では対日輸出用の農産物の管理として、農薬の施錠保管庫、管理記録用の台帳の作成や運送用の箱へのIDステッカーの貼付など、適切に管理が行われていることを確認しました。ベトナムの水産食品についても、国による食品安全管理体制が整っており、日本向けの輸出水産食品は継続して5回のサンプリング検査を通過した上で輸出が可能になります。えびの養殖場はブルーシートを敷いた上に海水を引き入れて衛生面の管理を徹底しているほか、薬品の管理やえびの病気の予防対策についても徹底して行われていること、加工段階においても温度管理や意図せぬ混入の防止など、安全衛生管理が徹底されていることを確認しました。

「日中冷凍野菜品質安全会議」 参加報告

(全国消団連 事務局長 郷野 智砂子)

 輸入冷凍野菜品質安全協議会(以下:凍菜協)は、輸入冷凍野菜の品質及び安全性の確保と、パートナー企業との交流活動を行うことを目的に2004年に設立され、この度20周年を迎えました。昨年11月に凍菜協主催(中国側:中国食品土畜輸出入商会主催)の「第12回日中冷凍野菜品質安全会議」が中国の響水県において行われ、全国消団連は消費者の代表団体として参加しました。
 初日の全体会合では、中国の冷凍野菜の輸出相手国として日本は上位であること、日本側から見ても凍菜輸入の実績において中国が半数以上であることを確認し合い、日中冷凍野菜貿易の重要性について改めて実感する場になりました。翌日にはブロッコリーの圃場と加工工場の見学等があり、ブロッコリーの栽培は輸出先の国の基準に合わせ圃場を分けていることや、工場での徹底した衛生管理体制により安全性の確保が実践されていること等を確認しました。
 今回の会議参加を通して、輸出側、輸入側双方の理解と連携により、輸入冷凍野菜の品質と安全性が確保されていることが実感できました。消費者からは依然として中国産冷凍野菜の安全性に懸念を抱く声もありますが、データやエビデンスに基づいた正しい情報を伝えていくべきであり、凍菜協をはじめ国や事業者の取組みがあることで、日本の食卓の安全安心が守られていることを、消費者団体として発信していきたいと思います。

以上

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