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「エネルギー基本計画学習会② 再生可能エネルギー」開催報告

(NACS、全国消団連共催)

 エネルギー基本計画は、エネルギー需給に関する政策の中長期的な基本方針を示した、エネルギー政策基本法に基づき政府が策定するものです。おおむね3〜4年ごとに改定が行われ、今年5月から、第7次計画に向けた見直しの検討が、経済産業省総合資源エネルギー調査会基本政策分科会で続いています。

 今回の学習会では、エネルギー基本計画の重要な論点の一つである再生可能エネルギー(以下、再エネ)の最新の状況について学習しました。

【日 時】2024年11月29日(金)14:00〜15:30

【講 師】潮 高史さん(経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部新エネルギー課 総括補佐)

【参加者】42人

概要(事務局による要約)

再生可能エネルギーの最新動向について

潮 高史さん

我が国の状況 〜 再エネの最大限導入

 我が国の、いわゆるエネルギーミックスと呼ばれる電源構成のうち再エネに注目すると、2010年度の震災前は9.5%で今の半分以下でした。当時は水力が中心で約7%、それ以外はわずかでした。2012年にFIT制度(再エネ固定価格買い取り制度)が始まり、2023年度の速報値で、22.9%になっています。その内訳は太陽光が震災前から20倍を超えるペースで9.8%。風力が1.1%、水力はほぼ横ばいの7.6%、地熱0.3%、バイオマス4.1%といった状況です。スケールメリットで考えると、太陽光と風力が中心になっていくと思っています。

 2030年目標は再エネ比率36〜38%です。その内訳は、太陽光が14から16%。風力は陸上、洋上合わせて5%、水力は11%。地熱は1%、バイオマスは5%です。

 今、資源エネルギー庁全体で申し上げているのが、脱炭素電源の重要性です。徹底した省エネを進めていく、一方で半導体やデータセンター需要など電力需要が増えるとの予測があります。増える電力を火力ではなく、いわゆる脱炭素電力でしっかり増やしていくことが、カーボンニュートラルにとって何より重要と考えています。

各電源の導入状況と論点について

 太陽光はおおむね年5ギガワット、原発5基分ぐらいのペースで導入は進んでいます。目標達成には今のペースを落とさず導入していく必要がある状況です。ただ、メガソーラーと呼ばれる平置き太陽光の導入の適地は減少しています。比較的地域と共生しやすい屋根の設置の拡大や、ペロブスカイトなどの次世代型太陽電池の導入が重要と思っております。

 風力について、洋上風力はプロジェクト計画を見るとほぼ目標に近いペースです。日本は島国ですし、かなりのポテンシャルがあると思っています。洋上風力を進めるにあたっては、漁業関係者や地元の理解を得ながら、案件を進めています。陸上風力は、計画されているプロジェクト、見込み稼働量を合わせると、それなりの規模はあります。しかし、景観の問題や、環境への影響、地域の懸念もあるのが実情です。未稼働の陸上風力をいかに地域にご理解をいただきながら進めていくことが重要です。

 地熱の導入量は微増です。ポテンシャルは高いと言われる一方で、初期の開発リスクが相当高いのが特徴です。官民でしっかりリスク分担しながら、開発リスク開発コストの低減を図りながら進める必要があります。地域の関係者との共生も課題です。

 水力のうち、大規模なダムを新規に建設するのは難しく、既存設備をメンテナンスやリプレースして効率化することで、発電量を増やすことが重要だと思います。また、治水を中心に管理してきた水を運用改善することで、新しいダムを建設せずとも発電容量を少しでも増やすような、積極的な活用も鍵ではないかと思います。中小水力は地域創生とつながるように農業用水などを地元の関係者の方にご理解をいただきながら活用していく必要があります。

 バイオマス発電は目標に近い水準に達成しています。国産の地元の林業と共生した、木材有効利用を活用するようなものもあれば、海外から、燃料を調達するようなものもあるかと思います。今後は持続可能性を考えた燃料を使っていくことが重要だと思います。バイオマス燃料がなくなったり、FIT支援が終了した時に火力に戻ることなく、安定的・持続的に進むよう工夫することが今後課題だと感じています。地方創生の観点から、発電だけではなく、売電収入が地元の活動に使われたり、地域の産業につながっていくことも想定しながら、案件形成、特に初期の開発リスクを国で担保していくプロジェクトをしたいと思っています。

再生可能エネルギーの導入拡大に向けた課題

 今後再エネを進めていくことに間違いはないですが、次のような課題を解決しないと、ポテンシャルを最大に活かせないと考えています。

課題①:地域との共生

 一つ目は地域との共生について、安全面での懸念とか、地域への配慮が欠け地域トラブルが起こっているプロジェクトがあるのも事実です。地域との共生は、再エネを進める大前提で、まずは良い再エネをしっかり増やしていくことが重要です。

課題②:国民負担の抑制(コスト低減に向けた課題)

 二つ目が国民負担の抑制です。FIT制度(再エネ電気の固定価格買い取り制度)の再エネ賦課金は、電気料金から徴収しています。特に最初の20年間は累積的に増えていくものですが、増加ペースを減らしていくためにも、入札制度を活用する、FIP(再エネ電気を市場価格+プレミアムの価格で買い取る制度)制度に移行して、需給のバランスに応じた電源にしていくなど、国民負担をできるだけ抑えるような、仕組みが必要だと考えています。

課題③:出力変動への対応

 三つ目も太陽光ですが、日夜間、風力だと季節間の、出力変動が生じやすいのが現状です。特に気象による出力変動を抑制するためには、蓄電池とそれを生かせるような系統の整備、例えば九州ではいっぱいだけど中国近畿地方では需要がある、という時に対応できるよう系統を増強していくことが必要だと思います。また、再エネを多く導入している地域と、実際に必要とする地域が遠隔であることも課題と認識しています。またピークのところをいかに平準化していくのかが重要であると考えています。

課題④:イノベーションの加速とサプライチェーン構築

 四つ目に、太陽光、風力については原材料や、設備機器の大半は海外に依存しています。次世代型の再エネは技術開発のみならず、コスト低減大量生産を進めていく必要があります。ペロブスカイト太陽電池は日本発の技術です。特に原料となるヨウ素は日本で自給できるので、海外の原料に依存しない太陽光発電ができます。

 浮体式洋上風力については、日本は昔から造船技術の強みある、こうした日本の強かった産業を生かせる分野ではないかと思っています。こうした新しい分野のサプライチェーンの構築と社会実装加速化が必要だと考えています。

課題⑤:使用済太陽光パネルへの対応

 五つ目が中長期的に今後起こりうる課題である使用済み太陽光パネルの問題です。不十分な管理で放置されたパネルが出てきているのが現状です。2030年半ばに太陽光のパネルが、産業廃棄物の5%ぐらいを占めるという試算もあるので、単に廃棄すると最終処分施設が逼迫する問題も抱え得ることになります。そのため適切な廃棄リサイクルが実施されるような制度整備、まずリユース、リサイクル市場を活用し、どうしても廃棄せざるを得ないものを廃棄するといった資源循環を作っていく必要があると思っています。今まさにこうした制度整備を検討しています。

質疑応答より

 2040年のエネルギー基本計画のエネルギーミックスの決まるプロセスについて:再エネ、火力、原子力、再エネ全体のコストや電力システム全体の考え方、それぞれの分科会や小委員会での議論を統合して、エネルギー全体の取りまとめる基本政策分科会で議論をまとめ、具体的な数字が決まっていくとのことでした。

 地方創生にもつながる案件について:地域との共生は再エネの大前提と考える中で、良い事例を表彰し、広報などを行って広めていきたいとのことでした。また地域で発電した電気を道の駅など地元に供給したり、売電で得た収入を当てる取り組みについてもご紹介いただきました。

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