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「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に
関する検討会とりまとめについて」学習会報告

 著名人になりすました偽・誤情報で投資詐欺等の被害が発生しています。消費者にとって、インターネット上の情報が正しいものなのか、悪意を持って掲載されたものなのか、判断ができないことが多くあります。特に災害時には混乱の中、偽・誤情報も増加し、消費者がさらに迷うことにもつながります。また、善かれと思い、誤った情報を拡散してしまい、加害者になってしまうことも考えられます。

 総務省は、デジタル空間における情報流通の健全性確保に向けた総合的な検討を多角的かつ専門的に行うため、「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会」を開催し、現状分析の上、パブリックコメントを踏まえ、とりまとめを公表しました。

 このとりまとめは消費者にとって重要な内容と受け止め、学習会を開催することとしました。

【日時】11月6日(水)15時00分〜16時10分〔Zoom活用のオンライン開催〕

【講師】武田朋大さん
(総務省 情報流通行政局 情報流通振興課 情報流通適正化推進室 課長補佐)

【参加】58人

概要(事務局による要約)

「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会」とりまとめについて

 「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会」は昨年11月から開催し、本年9月にとりまとめを公表しました。

◇デジタル空間における情報流通を巡るリスク・問題

 スマートフォンの普及率は広がっていますが、偽・誤情報との視点で見ると、最近はスマートフォンに生成AIを搭載しているものが増えていて、音声や画像を手元で生成できてしまうことも踏まえれば、それだけ偽・誤情報のリスクが拡大しているとも言えます。また偽・誤情報の流通・拡散が顕著に見られるソーシャルメディアの利用者が増えるほど、利用者が偽・誤情報に触れ、流通・拡散に知らず知らずのうちに関与してしまうケースも増えてしまい、リスクが拡大することが分かります。

 インターネット上では、有名人の偽動画や災害時の偽映像など、流通・拡散に関する問題が顕在化しています。正しい情報と偽・誤情報の拡散スピードを見ると、偽・誤情報の方が人々の注意や関心を引きやすく、正しい情報より圧倒的に早く広く拡散する特性があることが調査で分かっています。

 世界的には選挙等の政治的イベントの際に流通・拡散が生じるケースが多く、日本では台風や地震などの災害時に偽・誤情報の流通・拡散が多く見られています。

 注目や関心を引き付けやすい投稿に対して、人の思考モード(2つの理論)のうち、直感的な「システム1」を刺激し、より多くのアテンション(注目・関心)を集めて金銭的対価を得ようとする「アテンション・エコノミー」の構造も偽・誤情報の流通・拡散を生む一要因と考えられます。また、SNSのアルゴリズムなどにより、「フィルターバブル(自身の考え方や価値観に近い情報ばかりのバブル(泡)の中に包まれる状態)」や「エコーチェンバー(木霊のように、自分が発信した意見に似た意見が返ってくる状態)」と呼ばれる現象についても、SNSの特性として知られているところです。

 総務省では、令和6年の能登半島地震において、ネット上での偽・誤情報の流通に関する注意喚起として偽・誤情報に惑わされないためのチェックポイントの紹介やネット上の真偽の不確かな投稿を例示するなどをSNSで発信しました。また主要なプラットフォーム事業者にも利用規約等に基づく適正な対応を要請するなど、災害時の偽・誤情報の流通・拡散への対応に努めています。

◇総務省における政策の検討

 偽・誤情報の流通・拡散などのリスクは深刻化しています。デジタル空間の情報流通には、様々なステークホルダー(消費者団体、プラットフォーム事業者、広告関連事業者、ファクトチェック関連団体など)が連携協力を通じて取組を推進していかないと実効的な対応が打てないのが現状です。各ステークホルダーがどのような責務・役割を遂行して情報流通を巡るリスク・課題への対応を実施するべきかを「基本理念」として整理しました。

 情報流通過程(「発信」「伝送」及び「受信」)全体に共通する高次の基本理念として、「表現の自由と知る権利の実質的保障及びこれらを通じた法の支配と民主主義の実現」「安心かつ安全で信頼できる情報流通空間としてのデジタル空間の実現」及び「国内外のマルチステークホルダーによる国際的かつ安定的で継続的な連携・協力」を掲げています。そして情報発信に関しては「自由かつ責任ある発信の確保」及び「信頼できるコンテンツの持続可能な制作・発信の実現」、情報伝送に関しては「公平・オープンかつ多元的な情報伝送」「情報伝送に関わる各ステークホルダーによる取組の透明性とアカウンタビリティの確保」及び「情報伝送に関わる各ステークホルダーによる利用者データの適正な取扱いと個人のプライバシー保護」、情報受信に関しては「リテラシーの確保」及び「多様な個人に対する情報へのアクセス保障とエンパワーメント」を掲げています。

 基本理念を踏まえた総合的対策については、6つの柱でまとめています。偽・誤情報は表現の自由という憲法上の価値に留意をしながら取組を進めることや、そもそも偽・誤情報の真偽を判断すること自体の難しさもあり、各ステークホルダーによる自主的な対応だけに委ねていてはなかなか対策は進みません。必要な取組として「E制度的な対応」もまとめていますが、表現の自由等の観点から丁寧な議論が必要であることから、@〜Dの取組も併せて実施していくことが必要であると考えています。「@普及啓発・リテラシー向上」は、非常に重要な部分で消費者団体の皆様とも連携して進めていかなければならないと考えています。「A人材の確保・育成」は、「B社会全体へのファクトチェックの普及」とも関連していますが、ファクトチェックの取組がそもそも社会的に知られていない現状もある上、対策に関わる人材育成が進められていないところもあり、人材育成とともにファクトチェックの取組をしっかり普及させていくことも重要です。「C技術の研究開発・実証」は、生成AIなども含め偽・誤情報を生成する技術を検知する技術等が必要で、国の予算をしっかり確保して技術の社会実装につなげていくことを考えています。「D国際連携・協力」については、ベストプラクティスの共有も含め、各国と連携協力を進めていくことが必要です。

 検討会とりまとめについては、意見公募手続を通じ、およそ1,700件の意見をいただきました。頂いた意見として、例えば、制度面の検討に際しては、表現の自由を過度に制限しないこと、検閲類似の行為(事前抑制)にならないようにすることに関して慎重な配慮が必要である、マルチステークホルダーの協議会を設計する場合には透明性の確保が必要である、広告に関する検討では広告事業の実態に関し丁寧に情報収集して対応を検討するべきといった意見がありました。

 総務省では、令和6年10月10日から新たな検討会「デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会」を立ち上げていますが、頂いた意見も踏まえつつ検討を進めていきます。

◇技術的対応(インターネット上の偽・誤情報対策技術の研究開発)

 生成AIに起因する偽・誤情報をはじめとした、インターネット上の偽・誤情報の流通リスクに対応するため、対策技術の開発・実証を実施しています。

 具体的には、ディープフェイク対策技術として、生成AIにより作られた画像を判別する技術の開発・実証を実施しています(例えば、人間の目では判別しにくい不自然な点を判別し生成AIで作成された可能性の高いものを色分けして明らかにする)。また、発信者の実在性と信頼性を確保する技術を実施しています(例えば、信頼ある情報発信のために発信者情報を付与するなど)。

◇リテラシーの向上

 我が国における偽・誤情報に関する実態調査・分析結果によれば、リテラシーが高いほど偽・誤情報と気づく傾向にあり、リテラシーが高いほど偽・誤情報を拡散しにくい傾向にあるので、偽・誤情報に対抗するためにリテラシーの向上は重要です。

 総務省のホームページには、偽・誤情報に関する啓発教育教材として以下のサイトがありますので是非ご覧ください。

https://www.soumu.go.jp/use_the_internet_wisely/special/nisegojouhou/

以上

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