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10月10日はまぐろの日!!「天然・刺身マグロ 学習会」を開催しました

(一社)責任あるまぐろ漁業推進機構(OPRT)のご後援をいただき「10月10日まぐろの日」にちなんで学習会を開催しました。マグロの種類や漁法について、マグロ資源をとりまく問題、マグロが消費者の食卓に上るまでの流通の実態など、マグロのことをたくさん学びました。

【日 時】10月10日(木)14時00分〜15時30分〔Zoom によるオンライン学習会〕

【参加者】51名

【内 容】 ●マグロの種類と漁業・資源の管理の現状
 講師:(一社)責任あるまぐろ漁業推進機構 魚住 雄二 会長
●天然・刺身マグロの流通の実態について
 〜冷凍マグロが新鮮で美味しい秘密〜
 講師:(一社)大日本水産会 魚食普及推進センター 早武 忠利 課長

概要(事務局による要約)

T、マグロの種類と漁業・資源の管理の現状

(講師:魚住 雄二さん)

<種類>

 マグロの代表と言えば「クロマグロ」(ホンマグロとも言われる)で、「大西洋クロマグロ」と「太平洋クロマグロ」、「ミナミマグロ」の3種類があります。マグロ類の中でも大型で、大トロや中トロは主にこのマグロの部位になっています。そのほか深い海に生息し大きい目が特徴の「メバチ」は赤身の代表格です。また浅い海に生息し黄色いひれを持った「キハダ」は比較的淡白な赤身で、刺身にも缶詰の原料にもなります。「ビンナガ(ビンチョウ)」は胸びれが長く白っぽい身で、刺身にもなりますが缶詰めの最高級品となる種類です。

<漁法>

「はえ縄漁法」は日本発祥の漁法で、幹縄と呼ばれるおよそ150kmの1本の長い縄に、50m前後の間隔をあけて20〜30mの枝縄を垂らし、その先の釣り針に餌を付けて漁獲をする方法です。比較的大型のマグロだけを釣りやすく、そのため資源にもやさしいのが特徴です。一尾ずつ丁寧に血抜きなどの処理をして急速冷凍で保存維持するため、お刺身材として最適です。
「まき網漁法」は、強力なエンジンを積んだ船に、非常に大きな網を使ってマグロの群れを一網打尽に巻き取る漁法です。長さ約2km、深さ約200mの大きな網で一網打尽に漁獲します。多くは缶詰の材料として供給されます。そのほか「竿釣り」という日本発祥の漁法もあり、いわゆる「一本釣り」というもので、船の周りに群れを集めて竿で釣る漁法です。以上の3つが主な漁法ですが、ほかにも「定置網」や「引き縄」などもあります。

<蓄養・養殖>

 クロマグロでは、小さめのものを沿岸の生け簀に移し替え餌を与えて大きくしたり(蓄養)、卵を孵化させて生育(完全養殖)することもあります。養殖は大学や研究機関が手掛けていますが、技術的に確立されていないことやコスト面等の課題があり、商業ベースでの供給は多くありません。

<漁獲量・消費量・他国との比較>

 カツオを含めた全世界のマグロの漁獲量は1950年から2020年までの70年で約10倍に拡大しました。マグロだけで見ると漁獲量は2000年代の初めからほぼ横ばいの約200万トンです。種類別の漁獲量ではキハダが約150万トンで圧倒的に多く、メバチ、ビンナガと続きます。クロマグロは量としては数万トンの漁獲です。
 日本では年間のマグロの消費量が30万トンほどで、全世界のマグロの消費量の15%程度です。またマグロの自給率は45%程度で、台湾・中国・韓国など他国からの輸入に頼っています。日本の消費はお刺身が中心なのでクロマグロ・メバチの消費が多くなっています。
 1970年代以前はマグロの漁獲は圧倒的に日本が多く、過半数を日本船が漁獲していましたが、それ以降は日本の漁獲は伸びず、近年はインドネシア・台湾・フィリピンが漁獲を伸ばし、今のところ日本は第2位です。また最近ではその他の色々な国(途上国)が沿岸のマグロを漁獲しています。

<国際管理>

 世界の全てのマグロ類は国際管理機関(条約)による管理がされており、日本は「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)」など、5つの条約すべてに加盟して委員会に参加しています。これらの管理機関において決定された管理措置を基に、監視・管理・取締りが行われています。漁業者サイドとしてはこれらの規制に対する負担が大きいことも事実ですが、規制を守らないと持続的な利用ができません。

<資源状況・消費状況>

 マグロの資源については、20年前は乱獲による資源枯渇の状況にありましたが、その後規制の強化が進み資源が回復して、ほぼ良好な状況にまで改善しました。今後も美味しいマグロを食べ続けるには、マグロ資源が健全な状態にあることに加え、マグロ漁業が健全で持続的に利用できることが重要で、マグロ漁業の維持にはマーケットや消費者の理解が必要となります。
 消費に関しては、特に日本のお刺身の消費が低迷していることから、過剰在庫の問題があります。また生産者側では、燃油や人件費などの生産コストが上昇する一方で生産地価格は下がり、苦境にあります。天然マグロの美味しさを理解していただき、消費者にたくさんマグロを食べていただくことが健全な漁業の維持につながります。

U、天然・刺身マグロの流通の実態について〜冷凍マグロが新鮮で美味しい秘密〜

(講師:早武 忠利さん)

<鮮魚類の流通ルート>

 生産者(漁師)が獲ってきた魚類は生産者の近くの港(産地市場)に上げられ、その後消費市場に運ばれます。消費市場では「大卸」(大量に持ってくる・生産者側の立場)と「仲卸」(料理人の買付やスーパーなど・消費者側の立場)がいて、それぞれの立場で交渉を行うことにより適正な価格形成が為されます。
 市場をカットしてコストを下げることは可能ですが、安さだけを求めると、安定供給や一定の品質を保つことができない場合もあります。そのため、価格の変動も受け入れながら買い支えるという姿勢は、持続可能な消費として重要なことです。
 最近の流通ルートは複雑化し、生産者がネット販売等で消費者に直接売ったり、産地市場の仲卸が消費者に売ったりなど色々な動きがあります。実際に市場を通して流通するのは半分くらいになります。市場を通すと人件費がかかるので、市場は要らないのでは?との考えもありますが、市場を通すことで、全国から供給可能なため気象条件等に左右されない安定供給が可能になります。また市場では、持ち込まれた魚を何でも受け入れることや、現金で即時に決済されること等が生産者にとっての利点です。

<マグロの冷凍管理>

 市場に並ぶマグロの8〜9割は冷凍ですが、船の上でマイナス60℃の冷凍処理をされるので、安全・安心で流通に便利、そして保存も可能です。また安定供給が可能であることに加え、保管できることで条件の影響を受けずに供給できるメリットがあります。
 冷凍マグロは日本刀では切れないのでバンドソーと呼ばれる糸鋸の巨大な機械で骨ごとカットします。

<競り・目利き・取引>

 冷凍マグロの競りは、マグロの表面が溶けずに白い状態で行うのが常です。室温が非常に低いため魚の品質には優しく、人には厳しい環境の中で行われます。目利きは懐中電灯でライトを当て、脂の乗りや光のテカリ・体形・色合い・手の中での脂の溶け具合などを長年経験してきた目で見ます。
 養殖のブリやタイ等の常に数量がまとまって入荷される魚種は、大卸と仲卸の間で「相対取引」という形で1対1の取引をします。
 一方でマグロは一尾ごと品質が異なるため、「上げセリ」(値段をどんどん上げていくもの)で行われます。各地の市場には、価格の札を投入する文字通り「入札」の方法がとられるなど適正価格を維持する様々な方法があります。
 マグロのことを知り美味しく食べるためには、魚種や漁法を理解したうえで、天然・養殖、冷凍・生鮮など色々な種類のマグロを選んで食べ比べをしてみることをお勧めします。それによって値段の違いや、自分好みのマグロが見つけられるなど、様々に「マグロのある生活」を楽しんでいただけたらと思います。

V、質疑応答より

Q:赤身・中トロ・大トロの区分けには、客観的な数値などの判断基準があるのでしょうか。

A:客観的な基準はありません。大まかな部位によって分けられているのと、魚種によって大トロ中トロが多いなどの特徴があります。また季節によっても脂の比率が変わり、養殖では餌によっても脂の調節ができます。

Q:漁獲資源の安定供給について、これからの時代にあった漁業のあり方はなんですか。

A:資源管理はそれなりに成功して多くのマグロ資源が適正な水準で持続的に利用されている状態にあると言えます。一方で、資源は健全でも漁業の面で言うと、生産地価格が安くなってコストと合わない等の課題があります。持続的な漁獲と安定供給のために、生産者とマーケットの関係がうまくいくことで適正な価格を維持できることが重要と考えます。そのためにも消費の拡大が必要です。

以上

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