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2024年度PLオンブズ会議報告会 ネット社会進展で製品安全規制はこう変わる インターネット取引の拡大で、国内外の事業者がオンラインモール等を通じて、消費者に製品を販売する機会が増えていますが、製品の安全性に責任を持つべき国内の製造・輸入事業者がいないことが課題になっています。また玩具などの子ども用品の安全性が確認できない製品に規制がないこともあり、製品安全に関する行政規制の在り方の見直しを行い、「消費生活用製品安全法等の一部を改正する法律案」が今国会(6月19日)で成立しました。 今年の報告会では、国内の製品安全の取り組み状況について、法律の視点や現場からの報告をいただきました。 【日 時】2024年7月1日(月)14時00分〜16時30分 【参 加】81人 【内 容】報告1.「消費生活用製品安全法等の一部を改正する法律」概要 概要(事務局による要約) 報告1.「消費生活用製品安全法等の一部を改正する法律」概要 佐藤貴幸さん(経済産業省 製品安全課 課長補佐) ◇改正の概要 (1)インターネット取引の拡大への対応【消安法、電安法、ガス事法、液石法】 インターネット取引が拡大し、オンラインモール等を通じて消費者が海外から製品を購入する機会が増えましたが、何かトラブルがあった時に、海外事業者と連絡が取れないことなどが発生しています。現行法では、海外の製品が国内に入ってきた場合、製品の安全性は国内の輸入事業者が責任を持つことになっていますが、オンラインモール等を通じて海外の製品を取引すると、消費者の注文を受けてオンラインモールの倉庫から直接発送される商流となっており、製品の安全性を確認する責任主体が存在しない課題があります。 こうした状況を踏まえ、今回の改正では、以下の措置が規定されました。 ①製品安全4法において、海外事業者が届出を行う対象として明確化した上で、海外事業者には規制の執行を担保するため国内管理人の選任を求める。 ②取引デジタルプラットフォーム(オンラインモール等)で提供される消費者に危険が及ぶおそれがあると認められる製品について、事業者側でのリコール等の措置が期待できない場合などに、国からオンラインモール事業者に対して当該製品の出品削除の要請等を行う。 ③届出事項(事業者の氏名、特定製品の型式区分、国内管理人の氏名等)の公表制度を創設する。 ④法令等の違反行為者(氏名等)の公表制度を創設する。 (2)玩具等の子供用の製品の安全確保への対応【消安法】 昨年マグネットセットや水で膨らむボールの2品目について、子供向け製品での安全確保のため、消安法での規制対象製品として指定されました。日本では、これまで玩具については、日本玩具協会の自主的な安全基準(STマーク)が役割を果たしていますが、法律に基づく規制がないため、海外で販売禁止されている製品がインターネットを通じて容易に入手できてしまう環境にもなっていることが課題となっています。こうした状況を受けて、今般、そうした製品の国内流入させないよう、以下①及び②の措置が新たに整備されました。 ①子供用特定製品という区分を新設し、当該製造・輸入事業者に対し、国が定める技術基準への適合とともに、対象年齢・使用上の注意等の警告表示等を求めること(当該表示がないものは販売できない)。 ②子供用特定製品の中古品について、消費者に対する注意喚起や安全確保のための体制整備等を条件に、販売を可能とする特例を講ずること。 なお、子供用特定製品として具体的にどのような製品が指定されるかは、今後審議会で議論することになっています。 この改正法は、2025年12月末までに施行される予定です。 報告2.子どもの安全対策の現状と課題 西田佳史さん(NPO法人 Safe Kids Japan理事) ◇今後の課題 ①2012年に日本スポーツ振興センターの災害給付制度で収集されたデータの利活用(オープンではなく専門家が見られる)が進みました。警察データは現在、全く活用されていませんが、専門家が傷害予防のために参照可能にする必要があると強く思っています。また、分析機関もボランティアベースに委ねられていますので、きちんとした分析機関が必要です。 ②長期データの視点にたった予防策開発が必要で、例えばベランダ事故や窒息事故などは、しっかりとした長期にわたる研究企画と調査分析が必要ですが、まだ出来ていません。 ③EBPM型の傷害予防として、効果が薄い政策は変えることが必要です。 ④伝達手段の改善が必要です。A4・1枚でわかりやすくというのではなく、環境に合わせて、最近起きたヒヤリハットからこんな事故が起こり得るなどを教えてくれるなどのきめ細かい伝達が必要であると思います。 ◇今回の消安法改正の意義と課題 従来から大きな問題であったマグネットセット、水で膨らむボールの規制ができたのは大きな前進です。ただ、なぜこの2品か、問題となってから相当時間が経っていることなどがあります。子供用特定製品というカテゴリーができて、事前に水際で止められることは非常に期待をしています。問題として騒がれた製品の事後対応だけではなく、システマティックな対応で選定基準ができると良いです。 「何もしないことは、実は、犠牲の大きい政策である」というのは、非常に良い言葉だと思って紹介します。「予防のために国内の死を待たない」政策が必要だと思っています。 報告3.製品安全誓約について(消費者庁) 報告4.ネット事業から見た製品安全 津田要さん(LINEヤフー株式会社 ガバナンスグループ政策企画 ◇改正消費生活用製品安全法への展望 取引デジタルプラットフォーム提供者に対する出品削除要請等については、製品安全誓約に基づき取り組みは始めているところです。海外事業者が日本国内で商品を販売する際の国内管理人の制度については、弊社のプラットフォームでは、国内に所在地のない事業者は出店できないので、海外事業者が直接の販売主体になるケースは原則発生しないことになっています。しかし、海外からの製品の安全性については、しっかり注視していきたいと考えます。 子ども用製品については、新しいルールに基づいて法令不適合品の削除を行えるよう、ルール整備やパトロール体制の整備を行っていきたいと考えています。法改正後のガイダンスや具体的な対象商品、その中にでも特に注意すべき製品が何か、状況を見ながら体制整備を進めていきたいと考えます。 ◇これからの製品安全のために 製品安全マークのルールを設けて違反品を措置することは、偽装表示との戦いでもあると考えています。新たに整備される表示ルール等については偽装を見抜きやすい制度設計や情報連携のあり方などの検討ができると良いと考えます。 製品安全に関して、関係者全員が自発的にルールに従うという動機を醸成し、周知啓発し、連携していく必要があると考えます。 合理的なルールの策定は、狭すぎず、広すぎず、取り締まりが必要な範囲にリソースを投下できることが、効果的な消費者安全で重要であると考えます。どういう取り組みが有効になるのか、消費者行政に関わる皆様との情報連携、消費者・販売者への周知啓発を図っていくことが重要であると考えます。 ◇PLオンブズ会議からの提言 中村雅人さん(弁護士・PLオンブズ会議メンバー) PLオンブズ会議報告会から2024年度の提言を発表しました。 ■https://www.shodanren.gr.jp/database/509.htm 以上 |