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学習会「科学的に考える!機能性表示食品」を開催しました

 通販サイトやお店などでたくさん見かける機能性表示食品について、定義と基礎知識、トクホとの違い、機能性や安全性の根拠など、科学的な見地から全体像と課題を学ぶための学習会を行いました。

【日 時】9月13日(水)15:00〜17:00

【参加者】102名

【内 容】「科学的に考える!機能性表示食品」講師:畝山 智香子さん
「消費者から見た機能性表示食品制度の問題点」講師:森田 満樹さん

概要(事務局による要約)

「科学的に考える!機能性表示食品」

【講師】国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部長
薬学博士 畝山 智香子さん

●食品の安全性をどのように考えるか

 医薬品以外で経口的に摂取されるものは食品と分類されます。食品の多くは安全性を確認してから食べているわけではなく、経験上ある程度安全だとみなして食べています。しかし食経験による根拠は、ある程度の担保はあっても万能ではありません。コーデックスによる「食品安全」の定義は「意図された用途で作ったり食べたりした場合にその食品が消費者へ害を与えないという保証」とありますが、リスクが許容できる程度に低いという意味で、リスクがゼロということではありません。また食品の安全性は、時代や文化的背景によって認識が変わってきましたが、昔より今の方が客観的には圧倒的に安全性が高い状態ですが、食品に求められる安全性のレベルも上がっています。どのレベルの安全性を求めるのかのコンセンサスを作ることが、食の安全で一番難しい議論になります。

 あらゆるものにリスクがありますが、リスクを一定のレベル以下に維持すること(主に曝露量を減らすこと)をリスク管理と言います。リスクは「ハザード×曝露量」で考えますが、健康食品は曝露量が非常に大きくなることで特にリスクが大きくなる傾向があると言えます。

●健康食品の定義

 健康食品に法制上の定義はありません。食品安全委員会では「医薬品以外で経口的に摂取される健康の維持・増進に特別に役立つことを謳って販売されたり、そのような効果を期待して摂られている食品」と説明しています。その中で機能が表示できるものを「保健機能食品」といい、①「特定保健用食品(トクホ)」・②「栄養機能食品」・③「機能性表示食品」の3種類があります。これらの区分を必ずしも消費者が理解して購入しているとは言い切れません。

 ①トクホは、健康の維持や増進に役立つことが科学的根拠に基づいて認められ、国が保健効果と安全性を審査したうえで表示を許可されている食品で、マークがついています。ただし安全性が担保されるのは、正しい使用方法で摂取されることが前提になります。②栄養機能食品は、不足がちなものを補給するものとして届出や審査はなくても機能性を表示できる食品です。③機能性表示食品は、安全性と機能性の根拠に関する情報を消費者庁に届出をし、事業者の責任において機能性を表示した食品です。①②③以外の「一般食品」で、本来は謳ってはいけない栄養や健康に関する効果効能を謳っているものがあり、色々な表示がされて売られている状況があります。

 健康食品を、特にカプセル・錠剤・粉末・濃縮エキスなどで食べる際には、曝露量が圧倒的に多くなることから安全上のリスクは高くなります。一回の量が多い上それを長期間食べ続けることや、普通の食べ方ではない方法で食べることは、食経験がなく、リスクが高いと言えます。そして消費者がリスクの高さを認識せず使ってしまうことは憂慮すべきことです。

●食品と医薬品の違い

 食品は許認可制ではないため比較的自由に売られているのに対して、医薬品は認可されて初めて売ることができるもので、制度の違いや対応の違いが明確にあります。例えば「プエラリア・ミリフィカ」という食品は消費者からの危害情報があり、国民生活センターが厚生労働省に通知していました。厚生労働省が注意喚起と行政指導をしましたが販売禁止にはならず販売され続け、健康被害事例も出続けている状況です。一方で医薬品として認可されている「ラエンネック」は病院から疑いの報告が1例だけであっても疑いがある間は安全確認のために販売が停止され、確認の結果問題ないと判断されて販売が再開されました。

 機能性表示食品として届出されている製品規格の中の成分表示において具体的に何が含まれているのかを知ることができない例があり、何らかの健康被害が出たとしても原因物質がわからず、データとして蓄積できないので被害の原因が証明できない例があります。

●健康食品の問題「科学の理解と信頼性」

 1991年にトクホの制度ができ、初期は健康に向けた思いが明確にありましたが、2004年に条件付きトクホ(根拠はないが可能性があると表示できるもの)ができてからは要求される科学的根拠がより薄弱になり、目的は健康増進から産業振興と営利目的へと変化していると感じます。科学を無視しているものや、消費者が正しく理解できないものも多くなっています。健康食品は食品であって、医薬品のような効果を求めるものではなく、なによりも安全が一番大事であることを考え直すべきです。

「消費者から見た機能性表示食品制度の問題点」
―科学的根拠の不備、誇大広告を中心に―

【講師】ASCON理事 FOOCOM代表
消費生活コンサルタント 森田 満樹さん

●機能性表示食品の問題点

 消費者庁の調査によれば、多くの消費者は保健機能食品(トクホ・栄養機能食品・機能性表示食品)の3つの違いが解っていません。制度も異なり、機能性表示食品は事後チェック制度になります。消費者庁は一部を後からチェックして、問題が見つかれば届出が撤回される場合もありますが、届出件数の多さからみても事後チェックは間に合わない状況です。広告にも問題があり景品表示法上の措置命令や指導が行われています。届出情報はWebで公開していますが消費者にはわかりづらく、それをもとに消費者が判断をすることは難しいと言えます。

●機能性表示食品の届出等に関するガイドライン

 機能性表示食品は「安全性」「品質」「機能性」の根拠を示すガイドラインに沿って事業者は届出を行い、消費者庁は届出内容を確認して、書類が揃っていれば受理し内容をウェブサイトに公開します。トクホのような審査はしないため、届出されたものの中には、安全性や機能性の根拠が薄弱なものやガイドラインの趣旨を理解していないものもあります。

●機能性表示食品制度の見直しの経緯

 2015年4月の制度スタート以来、2017年にかけて様々な課題が浮き彫りになり、その都度ガイドラインが見直されてきました。さらに消費者庁は2020年4月に「事後チェック指針」の運用を開始、その後も規制を強化しましたが、2023年6月末には「さくらフォレスト(株)」に対する景品表示法違反の措置命令がニュースになりました。

●「さくらフォレスト」への措置命令の内容・その後の動き

 措置命令は、同社の「きなり匠」と「きなり極」2品について、広告が大げさなことだけでなく、届出内容の3つの機能性成分の科学的根拠が薄弱だという理由で、、当該2品は即日届出が撤回されました。そしてこの案件はさくらフォレストだけに留まらず、消費者庁は措置命令対象の2商品と機能性関与成分が同一で、科学的根拠が同一であるという他の商品88件に対して、科学的根拠が薄弱であると指摘し、2週間以内に届出者から回答をするよう求めました。7月下旬に撤回しないところが73件と多かったので、この73件について消費者庁は、事業者名と商品名、電話番号まで公表するという姿勢を示したところ撤回の申し出が相次ぎ、今は2品を除くすべてが撤回された状況です。(9/13時点)

●課題とまとめ

 さくらフォレストの措置命令の流れから、機能性表示食品は、広告だけではなく科学的根拠への信頼感が損なわれていることが浮き彫りになりました。本制度はこれまで何度も規制が強化されても改善が見られず、事業者の倫理観に頼らざるを得ない状況になっています。機能性表示食品の届出はトクホよりもハードルがはるかに低いため市場は拡大し続ける一方で、トクホの許可数は減っている現状です。

 消費者は機能性を期待して購入しますが、その科学的根拠は、開示はされているものの、消費者が簡単に理解できるものではありません。機能性表示食品の中には、安全性、機能性の根拠が薄弱なものもあり、販売方法によっては健康被害を招くものもあります。このような機能性表示食品を取巻く状況を踏まえ、消費者団体に求められることは何か、もう一度考える時期に来ていると思います。

以上

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