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地方消費者行政の充実・強化を考えるシンポジウム 開催報告 全国消費者団体連絡会 地方消費者行政プロジェクトでは、47都道府県に向けて、消費者行政におけるコロナ禍で生じた問題と業務遂行のための工夫や、ICT(情報通信技術)の活用・デジタル化の事業の進捗状況を把握する調査を行いました。また、2022年4月からの成年年齢引き下げに対応した消費者教育について、都道府県から区市町村への事業の支援状況や職員研修の状況について、消費生活相談等に係る施策などについても調査いたしました。 本シンポジウムでは、2021年度 都道府県行政調査の分析内容や意見書について報告するとともに、『消費者行政のコロナ対応とデジタル化に向けた動向』についてパネルディスカッションを行いました。 【日時】2022年3月9日(水)14時00分〜16時00分 【内容】1.全国消団連2021年度「都道府県の消費者行政調査」報告 【参加】119人 概要(事務局による要約) 1.全国消団連2021年度「都道府県の消費者行政調査」報告 大森 隆さん 2018年度に「地方消費者行政プロジェクト」を10年ぶりに復活し、都道府県の消費者行政調査を毎年実施しており、その調査結果に基づき、国等に意見を提出しています。2022年2月2日に提出した「地方消費者行政の充実・強化のための意見」の基になった調査結果について報告します。 「消費生活相談(以下、相談)に係る施策」について、実施したいができていないことは「SNSによる消費生活相談の受付」「メール・Webフォーム・FAXによる消費生活相談の受付」「消費生活相談におけるAI」などが選択され、実現のために必要なことは「予算額の増加」が挙げられました。また、消費生活相談員(以下、相談員)の安定的な確保のために必要なことは、「処遇改善」「資格保有者育成・資格取得のための支援」が上位に挙がっています。消費者行政の推進に意欲があるにも関わらず、予算や人員不足のために実施できないことがないように意見を出しました。 職員や相談員の研修は、コロナ禍で「対面での中止や延期」となり、「オンライン活用」が進んでいることがわかりました。Web活用の研修強化を要望しました。 成年年齢引き下げに対する消費者教育では、「出前講座」「教材・啓発資料の制作利用」「社会への扉の活用」が挙げられています。若者への消費者被害防止に向けた取り組みを積極的に進めるよう意見を出しました。 広域連携は、38県の155地域で実施されています。実施事務は消費生活相談が中心ですが、教育・啓発や消費者安全確保地域協議会や見守りも行われています。広域連携に関わる自治体が相互に責任ある業務を進めるために「改正消費者安全法の実施に関わる地方消費者行政ガイドライン」の改訂を要望しました。 法執行の強化に向けて、調査から「消費者庁など国の行政組織との連携」「職員研修の強化」「事務職員の増員」などが挙げられていました。国や地方の共同調査・同時処分の推進を要望しました。 「消費者安全確保地域協議会」は、設置にむけた協議が滞っていたり、コロナ禍により対面による訪問が出来なくなっているとの報告もあり、設置の推進を要望しました。 地方消費者行政強化交付金については、国に対する要望の調査から、十分な予算確保と事業メニューが活用しやすいように意見を出しました。 2.パネルディスカッション『消費者行政のコロナ対応とデジタル化に向けた動向』 (敬称略します) ―コロナ禍が続く中で、消費者行政の対応とデジタル化の動向を取り上げます 熊尾)見守りネットワークについては、平成30年度末に県内全ての市町村に設置。令和3年度には県消費者政策課が全ての見守りネットワークの構成団体として参画。DXを活用したオンライン研修やe-ラーニング研修を行っています。 消費生活相談体制は、平成29年度には県内全ての市町村に消費生活センターを設置。SNSを活用した実証事業を消費者庁新未来創造戦略本部との連携で実施。令和3年度にはLINEを活用した消費者トラブル相談を本格導入し、消費生活相談のデジタル化に取り組んでいます。 消費者教育は、成年年齢引き下げに向けて、「社会への扉(消費者庁の教材)」を使用し県内全ての高校で授業実施。発達段階に応じた中学生向け、小学生向けの教材開発や、消費者庁による特別支援学校向け教材開発を支援しました。SDGs消費者教育デジタル教材を作成し、3年連続で消費者教育教材資料表彰の優秀賞を受賞しました。令和3年度には成年年齢引き下げ消費者被害防止一斉キャンペーンを実施しました。 ◇消費者庁から地方自治体のコロナ対応の実情と国の支援、デジタル化の今後の方向性 小堀)地方消費者行政の持続的な充実・強化に向けた重層的な対策のポイントは、デジタル化、孤独・孤立対応など見守り強化、相談員の担い手確保、地域における協働の促進があります。地方消費者行政強化交付金としては、デジタル化対応(TV会議やSNS等の相談受付)、自治体間連携の推進、消費生活相談員が活躍できる環境整備として主任相談員の配置などがあります。人材育成やデジタル化・国際化対応としては、相談員の担い手確保事業、オンライン研修の拡充などがあります。 コロナに関連した給付金やワクチン詐欺などによる、消費生活センターの一時的な閉鎖などのバックアップとして、国民生活センターでは相談窓口を設けています。 昨年9月に消費生活相談のデジタル化に係る中間的とりまとめが公表されました。なぜ、DX(デジタル・トランフォーメーション)なのかについては、社会全体がデジタルシフトに急速に進展したことや、消費生活相談の現場ではデータ入力の負担やテレワークに対応できない業務であることなど課題があります。将来の社会の変化を見据えて考えていくことが急務になっています。検討の視点として、消費者のことを第一に考える(利便性の向上、デジタルに不慣れな方への配慮を忘れない)、現場の相談員が十分に力を発揮できる環境づくり、相談データの有効活用として、たとえばFAQ作成に活用するなど、社会環境の変化への対応が考えられます。 その後、「消費生活相談とデジタル化」「研修とデジタル化」「コロナ禍における消費者啓発・見守りネットワークの推進」を論点に意見交換がされました。 池本)デジタル技術を活用することは、消費者にとってアクセス手段や情報提供ツールの広がりなどのメリットがありますが、有効活用するためには、職員や相談員の対応能力や人的な体制を充実することが必要で、人材拡充や予算確保、体制強化が課題になります。 消費者庁から地方への働きかけと共に、参考例として出てきたものを参加しているみなさんから地元の自治体の首長や議会に対して、意見を出していくことが必要ではないかと思います。 ■「地方消費者行政の充実・強化のための意見」 ■2021年度「都道府県の消費者行政調査報告書」データ提供案内 以上 |