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「地方消費者行政の充実・強化のための意見」を提出しました

 全国消費者団体連絡会「地方消費者行政プロジェクト」では、2021年度の都道府県調査で、コロナ禍で生じた問題と業務遂行のための工夫や、ICT(情報通信技術)の活用・デジタル化の事業の進捗状況を把握する調査を行いました。また、2022年4月からの成年年齢引き下げに対応した消費者教育について、都道府県から区市町村への事業の支援状況や職員研修の状況について、消費生活相談等に係る施策などについても調査しました。

 今回の調査を踏まえて以下の意見を作成し、2月2日に「内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、財務大臣、消費者庁長官、内閣府消費者委員会委員長、国民生活センター理事長」に提出いたしました。

2022年2月2日

地方消費者行政の充実・強化のための意見

一般社団法人 全国消費者団体連絡会
地方消費者行政プロジェクト

 自治体の消費者行政は、消費者相談、消費者教育や情報提供(広報啓発)、法執行、消費者団体支援など、重要な役割を担っています。くらしの安全・安心を確保するために、消費者にとって最も身近な地方消費者行政の充実と強化は必須です。特に一昨年からの新型コロナウイルス感染症拡大で、新たな悪質商法による消費者被害も増加し、消費者行政の重要性はより増していると考えられます。新型コロナウイルス感染症の拡大防止のために、自治体ではさまざまな事業が中止や縮小を余儀される中でも新たな施策を設けたりしながら、業務を継続的に進めるために尽力されています。

 今年度、全国消費者団体連絡会「地方消費者行政プロジェクト」で行った都道府県調査では、コロナ禍で生じた問題と業務遂行のための工夫や、ICT(情報通信技術)の活用・デジタル化の事業の進捗状況を把握する調査を行いました。また、2022年4月からの成年年齢引き下げに対応した消費者教育について、都道府県から区市町村への事業の支援状況や職員研修の状況について、消費生活相談等に係る施策などについても調査しました。

 私たちは、全国の消費者・消費者団体と連携して地方消費者行政のさらなる拡充を求め、国及び自治体に対し、働きかけを継続・強化していきます。

 以下は、今回の調査を踏まえた、当プロジェクトの提言です。

1.消費生活相談等に係る施策として、消費生活相談員、事務職員、専門人材を拡充し、自治体が必要と判断する施策を適時適切に実施できるように予算措置や支援を強化してください

 消費生活相談等に係る施策について「実施したいが出来ていない」こととして、SNS等による消費生活相談の受付やAIの活用、相談員へのメンタルケア等があげられています。そのために必要とされているのは、消費者行政における予算額の増加や、消費生活相談員及び事務職員の増員、専門人材の採用や活用、職員研修の充実・強化です。自治体が地域の住民のための消費者行政の推進の意欲があるにも関わらず、予算や人員不足のために実施できないことのないよう、予算の措置を講じてください。あわせて、相談業務におけるAIの活用や消費生活相談員の在宅勤務、PIO-NETの入力業務の軽減といったデジタルの活用に関する要望も出されています。これらデジタル化の活用についても、国が自治体の状況を把握し、消費生活相談をサポートできるように的確な支援を行う必要があります。自治体で必要だと判断する施策を必要なタイミングで適切に行うことが消費者行政の底上につながり、消費者行政の充実・強化が図られると考えます。

2.職員研修、消費生活相談員の研修強化をWebの活用など工夫しながら進めてください

 コロナ禍において消費者を取り巻く社会情勢が大きく変化し、急遽対応を余儀なくされた自治体では、ICTの活用がすすんでいます。調査結果からは、これまで研修が十分に行えなかった自治体においても、Webによる研修については充実してきている様子が伺えました。ICTの活用において地方消費者行政の強化を行うためには、まずはWebを活用した研修の強化を国がしっかり主導して充実を図るべきです。あわせて、自治体の職員および消費生活相談員が勤務時間内にWeb研修を受けられるよう、十分な時間や体制を確保する必要があり、国が自治体の状況をよく把握したうえで進めてください。

3.若者への消費者教育の充実を図り、消費者被害の防止に向けた取り組みを積極的に進めてください

 成年年齢引き下げが4月に迫り、若者に対する消費者教育の重要性が求められています。教育現場ではもちろん、家庭や地域の中でも自然に身につくように、早い時期から時間をかけて繰り返さなければなりません。地方の自治体においても、出前講座や講師派遣の体制強化は必須です。また、教育現場と外部の消費者教育講師などとの間で企画・調整にあたる仲介役となる「消費者教育コーディネーター」の役割も重要となります。以上のことから、教育啓発分野における人材確保などの体制強化を進めてください。

4.消費者庁は、広域連携を実施する自治体に対して、「改正消費者安全法の実施に関わる地方消費者行政ガイドライン」を示していますが、連携に参加する自治体が相互に責任ある消費者行政を進めるために、ガイドラインの改訂を行ってください

 広域連携は、単独設置が難しい地域でも消費生活相談員の配置や消費生活センターの設置が可能になり、住民が安心して相談できる環境の改善につながります。ただし、広域連携の運用によっては、業務を請け負う自治体と委託した自治体との間で消費者行政への関心や意欲に格差が生じ、委託した自治体側の体制や取り組みが後退するおそれも指摘されており、留意が必要です。

 調査結果では中心市町村集約方式による広域連携が最も多く、主に消費生活相談業務が実施されています。消費者啓発や消費者教育、見守り活動を連携実施している地域は限られています。消費者啓発・消費者教育は、消費者トラブルを未然に防止することが出来るため、広域連携では消費生活相談を端緒として、事業者指導・法執行、法令・制度改善への提言などを含めた消費者行政全般の連携を創っていく必要があると考えます。

 また、消費者安全確保地域協議会の設置やそのほかの見守り活動についても広域連携により実施することで、地域の高齢者の消費者被害防止となると考えます。

 広域連携を行う自治体のガイドラインとして、消費生活相談以外の施策についても、さまざまな自治体の取り組みの好事例の紹介などで示していくと、連携した自治体と共有ができ、望ましい自治体の形が形成されるのではないかと考えます。

5.法執行の強化に向けて、自治体の執行体制強化につながる支援措置と、国・地方の共同調査・同時処分を推進してください

 2020年度の特定商取引法の行政指導件数は、2019年度と同程度の取り組みが行われており、コロナ禍においても、取り組みを継続されてきたことが伺えました。しかし、指導件数ゼロの自治体もあり、これらほとんどにおいて、「職員研修の強化」「事務職員の増員」が望まれていました。この結果は、法執行体制の持続的な強化を確保するうえで、人的体制の強化が重要であることを示すものです。国は都道府県に対し、法執行を担当する職員の強化の重要性をアピールし、職員の増員に向けた働きかけを実施することが求められます。

 一方で、2020年度の行政処分件数は52件と、2019年度の87件よりも大幅に減少しました。実際の処分に向けては、コロナ禍により立入検査等が困難である状況や、保健部門などへの臨時応援等による影響が考えられます。特定商取引法の行政処分(業務停止命令・指示・業務禁止命令)は、法令違反行為を繰り返す悪質業者に対し、立入検査・報告徴収・合理的根拠資料の提出要求・これらの資料の分析、事業者関係者や消費者の事情聴取による供述録取書の作成など、捜査手法にも似た特殊な行政手続であり、他の部署から転任した行政職員の専門性を高める必要性があります。また、多くの県から国の行政組織(消費者庁・地方経産局)との連携強化を望む回答があり、実務経験の蓄積のためにも、共同調査・同時処分を推進していく必要があります。

6.消費者被害を防ぐために「消費者安全確保地域協議会」の設置を促進してください

 2014年改正の消費者安全法で「消費者安全確保地域協議会」が位置づけられましたが、2021年12月末日現在、設置自治体数は1788のうち363、そのうち5万人以上の自治体537のうち157になっています。

 調査の中では、都道府県から区市町村への支援(援助)として「見守り活動の推進」に向けて協議会の意義を伝えて設置の働きかけを行ったり、ネットワーク参加の構成員向けの研修会の開催を行ったりしている等、支援の様子がわかりました。しかし、コロナ禍により「消費者安全確保地域協議会」の設置にむけた協議が滞っていたり、対面による訪問が出来なくなっているとの報告もありました。そうした中、オンラインを使った勉強会や啓発活動の実施などの工夫も見られました。

 コロナ禍においても自治体がスムーズに「消費者安全確保地域協議会」の取り組みを進められることが重要になっているため、既存の「見守りネットワーク」も活用しながら、好事例の提供などを通じて支援を進めてください。

7.地方消費者行政強化交付金について、十分な予算確保をするとともに、事業メニューは自治体のニーズを把握し、活用しやすいものにしてください

 地方消費者行政の交付金等財政に関する要望では、昨年度と同様に、「継続的・安定的、長期的な財政支援」が最も多くなりました。特に地方消費者行政推進事業については、活用期限の延長や継続的財政支援が挙げられています。地方消費者行政強化交付金では、メニューが自治体の現状に合わないことや補助率2分の1に対する補助率引き上げを求める声が根強くありました。また、活用しにくい交付要件の変更や補助率の引き下げ(3分の1)に反対する声が多くありました。これは、令和3年度に「令和2年度当初予算における自主財源額を平成29年度比3%以上増加」もしくは「交付金依存度が15%以下」を満たしていない場合に、補助率を3分の1に引き下げる、とした要件が影響していると考えられます。「新型コロナ感染症対策に多大な財政支出を必要としていることから、推進事業の活用期間が終了した後の一般財源の確保は非常に困難である」との声もあり、自治体は大変厳しい状況に陥っていると考えられます。

 自主財源確保に向けて、自治体に働きかけることがまずは重要ですが、コロナ対応なども含め、自治体の実態は消費者行政強化に向けた政策対応が困難になっているのが現状です。そのため、自治体が取り組む各事業を意欲的・継続的に行えるよう、消費者行政に向けた財源確保を時限措置ではなく恒久化することに加え、補助率の引き上げを求めます。

以上