「市町村の消費者行政充実を考える交流会」を開催しました。
2009年度から3ヵ年の計画でスタートした国の地方消費者行政活性化事業も来年までとなり、地方消費者行政活性化の最前線にある市町村・地域の消費者団体の役割が大きくなっています。
そこで、2010年6月19日(土)に、麹町 弘済会館において、今消費者団体に求められる役割や行動について各地の実践を持ち寄り交流することを目的とした「市町村の消費者行政充実を考える交流会」を開催いたしました。81名の参加があり、北は北海道から南は福岡の方まで、消費者団体、地方自治体消費者行政担当者などにご参加いただき、熱い議論が交わされました。
I.報告
1. |
『2009年度消費者行政調査』から見た地方消費者行政
消費者庁 消費者情報課地方協力室 課長補佐 赤井久宣さん |
- 平成20年までの10年間で苦情相談件数が2倍以上に増加したが、消費 生活センターや相談員数は案件の増加に追いついていない。
- 一方直近の動きでは相談窓口や相談員の増加、減少していた消費者 行政予算の反転増加など全体的には充実の兆しがある。
- 地域によって県と市町村の「消費生活センタ−」の割合には大きな差がある。東北は県レベルが大きく(58.7%)、近畿は市区町レベルが大きい。(76.6%)
- 専管機構・部署の配置状況では小規模自治体ほど事務職員の消費者行政のウエイトは低い。
- 地方消費者行政活性化基金は平成21年度に47都道府県で約42億円を取崩し。
2. |
三重県における消費者生活行政〜安全な消費生活を安心して送るために 課題と展望〜
三重県生活・文化部交通安全・消費生活室 消費生活特命監 伊藤久美子さん |
- 高齢者の悪質商法等の被害が増加。相談件数も増加。そこで、地域 における啓発や見守りを活発化していく必要がある。地域の住民、市町の取組み促進が必要。
- 5年ぶりに消費生活相談件数が増加したが、要因はガソリンのプリペイドカード。また、平成20年度60歳以上の相談割合が初めて2割超、21年度は23.3%。5000万円の高額被害者も発生した。
- 県内市町の相談対応については、津市は相談件数の約6割、伊勢、松阪、桑名、名張各市も6割〜8割を県に依存している。市町の相談窓口が十分に機能しておらず、住民に身近な相談窓口になっていない。市町首長の理解不足による。小規模市町には広域連合の促進などをすすめたい。消費者行政活性化基金3億1千万円で、県に181,300千円、市町に128,700千円。市町に求められる役割は消費生活相談の実施、消費生活センターの設置、消費者事故情報の通知なので、市町の取組みをさらに前進させたい。
- 消費者の視点で消費者の代表として行政や企業に意見を言えるのは消費者団体のみ。消費者団体には、「行政と対等のパートーナー」「行政推進協力者」「行政の御意見番」「消費者のオピニオンリーダ」として期待し、そのように位置付ける住民を巻き込んだ消費者行政が必要。昨年、消費者・事業者・行政が連携・協力し、啓発活動を行う団体「みえ・くらしのネットワーク」を創設した。そのためにも、消費者団体の活性化が必要。がんばっていただきたい。
3. |
消費者ネット・しがの設立までの経緯と活動紹介
消費者ネット・しが代表 土井裕明さん |
- 全県網羅の消費者組織を作るために2009年3月から準備を進め、2010年3月10日に設立総会を開催した。自立した消費者を目指し、消費者力を高める取組みや、行政への制度・政策提言に取り組み始めた。また、消費者被害防止に向けて適格消費者団体の認定取得の検討グループを立ち上げた。
- 滋賀県は全市に消費者相談窓口が設置されている珍しい県であるが、消費生活センターの役割など、県と市の役割関係が見えないなどの声もあった。そこで、実態を知るために消費者ネット・しが設立準備会として「市町消費者行政のヒアリング調査」を行った。
- また、2010年度の活動計画として「県内の大学」で消費者被害講座15回を企画し、取組み中。大学の学生部とタイアップして実現した。
4. |
神奈川県の消費者行政充実のために 消費者会議かながわの取組み
消費者主体の新行政組織実現神奈川会議(消費者会議かながわ)幹事 松井弘子さん |
- 2008年4月30日「消費者会議かながわ」結成。県消団連、県消費生 活相談員ネットワーク、弁護士会、司法書士会など幅広い構成となった。設置の背景には福田元総理の「生活者・消費者目線発言」があった。
- 「消費者会議かながわ」では、県及び市町村へ「要望書」を提出し、県内33市町村の訪問活動を行った。あわせて消費者行政アンケートを行い。前年度の結果を取り纏めて、問題点と提言・要望をとりまとめ、33市町村を再度訪問した。また、地元に住んでいるメンバーが地元自治体を訪問するよう心がけた。この繰り返しから「行く、会う、見る、聴く」の姿勢を大切にしてきた。
- 県内各地域ごとの消費者行政には、ばらつきがある。小さい市町村では、茅ヶ崎市と寒川町のように消費者相談で相互乗り入れしていたり、平塚市・大磯町・二宮町は中心市の平塚市に相談業務を集約しているなど、広域連携しているところもある。また、他の部局との兼務が平均70%になるが、具体的にどんなことを兼務しているかを把握することがとても重要になる。訪問活動を継続しながら、実態に即した政策強化を各市町村に提案していく必要がある。
- 消費者行政予算は、2008年度は2000年度との対比で県が55%、33市町村は31%も減少していた。しかし、2009年度は活性化基金等もあり市町村・県とも伸ばしたが、4年目以降を考慮して「使いきりがた予算」で行く傾向も見受けられる。以前、5年間限定で神奈川県から出されていた市町村消費者行政支援金が終了した翌年から、各市町村の消費者行政予算が減少した例もあり、活性化基金の結末を想像させる。「刹那的活性化」ではない、各自治体ごとのしっかりした消費者行政予算が必要になる。
II.分散会
8人ずつ10テーブルに分かれ、それぞれのメンバーで活動交流をしました。その中で、市町村の消費者行政充実のために(1)市町村に期待すること(2)都道府県に期待すること(3)消費者団体ができること(4)国に支援して欲しいこと、の4つの視点から意見をまとめました。
(1)市町村に期待すること
- 市民にもっと参加できる情報、市民の声
- 機会あるごとに意見の具申、政策提言、委員会、審議会への参加、行政と市民の声に耳をかたむけ、施策に反映してほしい
- 相談員の安定確保(場所、時間、給与、雇用)、都道府県との連携、移送、スムーズ化
- 消費者団体を育てる
- 首長などの意識改革
- 自主財源の確保
- 「増えた相談を施策に生かしてPR」のような前向きな姿勢
(2)都道府県に期待すること
- たて割なくす、首長のスタンス、近隣との連携、懇談会等設置
- 懇談会の設置、定期的会合の開催、行政から予算等の提示
- 首長のスタンスに左右されない、行政内部のタテ割解消の取組み
- 基本計画に盛り込む(重要事項におく)
(3)消費者団体ができること
- がんばっている行政への追い風、新たな連携
- 担い手の減少、消費者側の関心の後退を改善
- 「生来の人間としての消費者」の代弁者として、活動〜行政への積極的運動、“協働”が目的ではない、結果として“協働”、首長に直接提言
(4)国に支援して欲しいこと
- 消費者教育、文科省の他労働企画、活性化基金のまとめ
- 地道に継続すること
- 消費者教育について、庁との文科省の連携
- 消費者教育〜消費者行政の底上げ〜「消費者の権利」の実質化
- センターの設置基準(人口○○人でいくつなど明確に)
- 相談員の配置
- 自由度の高い財政支援
- 常に一定レベルが維持できる仕組みの提案
III.アンケートより(抜粋)
・第1部 報告についての感想
○ |
赤井さん→ |
とにかく、活性化基金でいろいろな取り組み(センター設置、相談員増、相談日増)はすすんでいるところがあるが、小規模自治体の住民はおきざりにされている。(行政の体制がとれない)ことがよくわかった。住んでいるところによって、消費者相談サービスに格差があるのは困る。さてどうして解決するか? |
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伊藤さん→ |
消費者団体の役割を整理してくださり、ありがとうございます。もっともです。 |
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土井さん→ |
消費者側の調査により、相談員の待遇の問題、よくわかりました。 |
|
松井さん→ |
消費者グループが行政を訪問する活動はよいですね。 |
○ |
生かせると感じたキーワード「行く、会う、見る、聞く」「もの言う消費者団体」 |
○ |
消費者の窓口はあってあたりまえと思っていましたが、ないところも多いことにおどろきました。 |
○ |
行政の方のお話しは、神奈川県とも共通点があり、行政側が抱えている問題は、全国共通である。 |
○ |
学生向けの消費者教育は大事だなと思いました。地域間格差が大きいことも良くわかりました。 |
○ |
具体的に、調査の活かし方や訪問のノウハウまでも知り、自分の県、市のとり組みについて、もう一歩踏み込んだ行動が必要だなと感じました。 |
・第2部 分散会についての感想
○ |
行政(県・市・町)・消費者の立場でそれぞれ交流が出来、たいへん有意義でした。 |
○ |
本音のトークができたと思う(行政・団体・相談員など)。 |
○ |
現場に足をはこぶこと。行政をかえるには住民の消費者力と発言力である。 |
○ |
行政(市・県)の方の問題意識を聞く事ができて良かったと思います。 |
○ |
消費者行政はマンパワーの比重が本当に高いと感ずる。 |
○ |
行政のかかえているジレンマを知ることができ、やはり、行政と消費者(消費者団体)が協力して進められる事がたくさんありそうですし、1+1=3にできる可能性を持っていると思いました。 |
○ |
参加者が各県、市へ一人一人の声を上げることが大切と思った。 |
○ |
時間が足りなかったので残念、行政の方が前向きに発言して頂いて感激しました。同じ目標を持っている人が手をつなぐ事は重要、この輪をどう広げていくか、コツコツと草の根から。 |
○ |
行政訪問の心がまえと大切さ、必要性を学びました。相談員のフォローも大事だと気付かされました。 |
○ |
行政側の方に色々な質問、解答、個人的な考えも聞くことができ、参考になりました。他県の消費者団体のとりくみも、納得、はげみに。市町村の団体への投げかけに活かしたいと思います。 |
○ |
消費者団体の方の生の声を聞けて良かったです。こういう議論の出来る関係を地元でも作っていきたいと思います。 |
*本日の交流会に参加して今後取り組んでみようと思ったこと
○ |
消費者力とは何なのか?情報がちゃんと届くとは…先ず団体の中から地域へ広げられるよう取り組んで行きたい。先ずは行政訪問から始めます。 |
○ |
行政の現場を訪問する事の大切さを認識しました。アンケート調査にこだわらず訪問してみる事が必要であると思いました。 |
○ |
一人の住民、消費者として、より暮らしよい社会になるように微力ながら強力していければ、と考える。 |
○ |
分散会の中でも出て来た、消費者団体どうしでつながらない、つながりたくない…あまりにもくだらないけど現実的に存在している。課題を考えて実行して行きたいと思います。 |
○ |
自分自身の考え方が少し変わりました。見方を変える事とか、一方的な見方はよくない。 |
○ |
市町へのアプローチを仕方を変え、現場への訪問を増やす。 |
○ |
市町村消費者行政調査に関する訪問をしたいと考えました。 |
○ |
調査訪問して、その後が大切なのだと思いました。 |
○ |
県域の組織としての市町との連携。 |
○ |
様々な立場、団体の方とのコミュニケーション。 |
○ |
基金の活用について参考にしたいと思った。 |
○ |
消費者行政の現状をどう沢山の方に伝えられるか考えたい。消費者と行政の間の風通しを良くしていくこと。 |
○ |
首長懇談等で、職員が変わっても消費者行政のレベルが下がらないように要請していきます。 |
○ |
消費者団体として、消費者へ啓発や消費者力の向上に増々つとめなければと思います。「物言える消費者」を多く作ることが課題ですね。 |
○ |
把握している消費者団体だけでなく、よりよい消費者行政となるように各種の組織とのネットワークを持ち、交流や学習を通して、消費者力をつけていけたらと思います、とても参考になりました。 |
○ |
基金事業専任職員の雇用(〜23年度まで)を検討していますが消費者団体の方から雇用しようかと考えています。 |
*その他
○ |
行政の方が第1部で「消費者団体に苦言」を呈していたのは画期的なことであったと思う。三重県職員さんの「消費者団体」への苦言について評価する…という内容をアンケートに記しましたが、多分、昨日の集会に参加された団体の方々には全く関係のない点だったとは思います。行政が本音を言いはじめた→消費者団体のすい退を真剣に心配しはじめたこと。消費者団体がこわい存在でなくなったこと。が顕在化したことと思う。これはとても貴重なことと受けとめて今後に活かしていきたいと思う。(消費者団体に所属しつつ、相談員をしている立場から、三重県の方の意見に強く共感しました)ある消費者団体のMLが出発した時に、消費者団体の知人数名にML登録するように声をかけましたが、20〜30年間活動を続けてこられた地元の消費者団体の関係者の方々は、入ろうとはしませんでした。地元の消費者団体の会長が、ITを扱うのは難しいにしても、40代、50代の会員にML登録させ、情報を収集させ、活用する。そういう団体自身の努力は不可欠ではないか!と思います。二大政党論という言葉がありますが、それと同じように消費者行政と消費者団体が、同じくらいの力を持ち、好ましい緊張関係がありますと、消費者行政は上手く進みます。神奈川県内の消費者団体が高齢化し衰退化し、団体の力が弱まったことにより、かの悪名高い『神奈川方式』が取り入れられてしまった!という残念な思いが私にはあります。 |
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