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「公益通報者保護法の一部を改正する法律案」の閣議決定にあたっての意見を
提出いたしました

 令和2年3月6日に「公益通報者保護法の一部を改正する法律案」が、第201回国会(常会)にて閣議決定されました。
 条文等 https://www.caa.go.jp/law/bills/

 全国消団連では、これまでも公益通報者保護法の法改正に関する意見を提出してきました。

2019年1月17日「公益通報者保護法改正を求める意見」

2019年2月22日「公益通報者保護専門調査会報告書」に関する意見

2019年12月3日「公益通報者保護法の来年通常国会での改正を求める意見」

 今回、「公益通報者保護法の一部を改正する法律案」の閣議決定に伴い、全国消団連では、以下の意見を「衆議院・参議院消費者問題特別委員会委員、消費者担当大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長、国民生活センター理事長」に提出いたしました。

「公益通報者保護法の一部を改正する法律案」の閣議決定にあたっての意見

2020年3月9日
一般社団法人 全国消費者団体連絡会

 2020年3月6日、「公益通報者保護法の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。 公益通報者保護法は平成18年4月に施行されて以降、法施行後5年をめどに必要な措置を講ずる旨が附則に記載されていたにも関わらず、ガイドラインの策定は行われたものの、抜本的な法改正は一度も行われてきませんでした。こうした中で、企業の内部通報制度が機能せず大きな不祥事に発展した事例や、通報者が企業から不利益処分を受けた事例が相次いでいます。

 公益通報者保護法の目的に示されているように、公益通報者の保護は国民生活の安定や社会経済の健全な発展に資するものであり、是非とも今通常国会で法改正を実現し、制度の実効性を確保することが必要です。

 法案の閣議決定にあたり、以下の意見を申し述べます。

1.本改正法案の今通常国会での成立を求めます

 当会はこれまでに発出した意見書において、少なくとも内閣府消費者委員会専門調査会報告書(以下「専門調査会報告書」)で合意された内容に沿った形で法改正が行われることを求めてきました。これについて、今回の法案は、

  • 通報者の範囲に、退職者・役員を含める(現行法は社員のみ)
  • 通報対象の範囲に、行政罰の違反行為を含める(現行法は刑事罰の対象行為)
  • 大規模事業者(国・自治体含む)に内部通報体制の整備義務づけ(現行法は義務なし)
  • 報道機関等に通報した場合の保護要件に、財産に対する重大な危害を追加(現行法は生命・身体の危害がある場合のみ)
  • 通報に伴う損害賠償責任について、通報者が保護の対象となる公益通報を理由とした損害賠償責任を負わない旨を規定(現行法は規定なし)

などの点において、専門調査会報告書にほぼ沿って整理されたものと考えます。

 加えて法案では、現行法には規定がない「守秘義務」が措置されることになりました。この論点は消費者委員会専門調査会でも、経済界委員を除く委員の大多数は措置すべきとの意見でしたが、報告書では合意をみなかった論点として扱われたものです。しかし、「守秘義務」を盛り込むことは、法律の実効性確保に不可欠な点であり、この点は特に「自民党消費者問題調査会 公益通報者保護制度に関するPT」のご尽力によるものと高く評価しております。

 以上のように、現行法より通報者保護が強化されるものと考えられることから、本改正法案の今通常国会での成立を求めます。

2.以下の論点について、国会での十分な審議を求めます

 「不利益取り扱いに対する行政措置等」の論点について、専門調査会報告書では、「通報を理由として通報者に不利益取扱いをした事業者に対する行政措置を導入すべき」として、「助言・指導・勧告・公表」について言及されていたものの、今回の法案では措置されず、附則第5条にて「施行後3年を目途とする見直し」が規定されるにとどまりました。消費者庁の現状の体制を前提とすれば、行政措置の前提となる「事実認定」を行う体制確保が困難であるためこのような判断になったものと推察されますが、公益通報者保護法の実効性確保のためには、本来はこの論点も対応が必要であり、引き続き国会の場で十分検討いただくことを求めます。※1

 また、法案のうち専門調査会報告書の通りにならなかった個所として以下の論点があり、国会の場で十分検討いただくことを求めます。

  • 「通報者の範囲」について、退職者の範囲が「退職後1年以内」に限定されたこと(報告書では「期間制限を設けないことが望ましいが、退職後一定期間内の者に限定する場合には、法制的・法技術的な観点から整理を行い、実態等に照らして合理的な期間を設定すべき」とされていた)
  • 通報対象事実の範囲について、追加されたのが行政罰の対象となる違反行為にとどまったこと(報告書では「行政罰・行政処分の対象となる規制違反行為の事実を追加すべき」とされていた)
  • 報道機関等に通報した場合の保護要件の拡充(特定事由への追加)が、「通報者の特定につながる情報を故意に漏えいした場合」とされたこと(報告書では「事業者が内部通報体制の整備義務を履行していない場合につき、客観的・外形的に判断可能な要件について法制的・法技術的な観点から整理を行い、当該要件を特定事由に追加すること」とされていた)

 このほか、専門調査会報告書において、今回は一致をみなかったとの理由で先送りとなった以下の論点についても、法律の実効性確保においては重要であり、今後の対応について国会の場で検討を進めていただくことを求めます。

(1)通報者への不利益取扱いに対して、刑事罰を導入すること。

(2)立証責任の緩和について、通報者が解雇及びその他の不利益取扱い(降格・減給・配置転換等)を受けたときは、通報を理由として不利益取扱いを受けたことの立証責任を事業者側に転換すること。

(3)通報を裏付ける資料の収集行為を理由とする不利益取り扱いから通報者を保護するため、資料の収集行為は免責される旨を法に規定すること。

(4)通報者の範囲に、取引先等事業者を含めること。

※1 公明党「公益通報者保護制度見直しに向けた提言」(2020年2月7日)では、「不利益取扱いの是正に関しては、専門調査会報告書が、助言・指導・勧告や企業名の公表を含む行政措置を導入するべきとしていることも十分踏まえて、今後制度を更に充実させる観点から行政の体制強化を図ること」とされている。

以上