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司法制度改革推進本部が裁判員制度についての意見を募集していました。
全国消団連として、事務局長名で意見書を提出しました。



2003年12月17日

司法制度改革推進本部事務局 御中

全国消費者団体連絡会
事務局長 神田 敏子
住所:東京都千代田区六番町15
プラザエフ6階
電話:03-5216-6024
FAX:03-5216-6036

裁判員制度にたいする意見書

 裁判員制度は、「広く一般の国民が、裁判官とともに責任を分担しつつ協働し、裁判内容の決定に主体的、実質的に関与することができる新たな制度」として導入される必要があります。その観点から2002年10月、2003年5月にも、同じような論点で意見を申しのべましたが、再度申し述べます。


1.基本構造について

(1)合議体の構成について

 裁判員が、専門家である裁判官に議論を誘導されることなく、市民としての一般常識にもとづいて判断できるよう留意されなければなりません。その点から、裁判員の数は、裁判官の数の3倍以上とするべきです。今年度全国消費者大会司法制度改革分科会のアンケート結果(資料1)においても、裁判官数と裁判員数の比は3倍から3倍以上を望む声が多数をしめました。

(2)評決について

 有罪・無罪の評決については、裁判員のみで行う独立評決制度とし、全員一致をめざして評議を行う制度とするべきです。ただし、裁判員が有罪と決定した場合であっても、全裁判官が一致して無罪と判断した場合は、無罪とする制度とします。

(3)対象事件の範囲

 導入当初は、重大な刑事事件を対象とすると審議会意見書で確認されていますが、運用状況をみながら、行政訴訟もその対象とするよう早期に検討すべきです。また、その他の刑事事件や、民事事件への拡大についても検討すべきです。消費者団体の議論の中では、消費者被害に関する民事事件は、市民としての一般常識をもって判断することが特に必要であるという意見が強いことを申し添えます。


2.裁判員及び補充裁判員の選任について

(1)裁判員の要件について

 裁判員の要件が、衆議院議員の選挙権を有する者となっていますが、これでは、現状においては在住外国人を裁判員として認めないことになってしまいます。国際化が進む日本社会において、その一員として生活をしている外国人の参加を排除すべきでないと考えます。日本語の語学力が一定程度必要ですが、その点は、選任の手続きの際に確認してはどうでしょうか。

 また、年齢制限も25歳という案には反対です。むしろ、少年法の改正によって少年にも大人と同じように刑事裁判の被告になりうることを考えれば、18歳以上の少年の参加も考慮するべきではないかと考えます。

(2)欠格事由について

 継続的に多様な職務につく可能性のある公務員と同様の基準で、裁判員の欠格事由を定める必要はないと考えます。万が一不適切な裁判員候補が選出されたとしても、忌避の制度によって対応できるものと考えられるからです。


3.裁判員の義務について

 裁判員制度の改善につながるような情報まで制限することは、国民の知る権利を侵害することにつながりかねないことから「国民の知る権利を侵さない」旨の規定は必要と考えます。

 平成15年度10月28日座長(案)7罰則(2)裁判員等の秘密漏洩罪は、例え裁判員のプライバシーなど守るべきものがあるにせよ、秘密漏洩罪の秘密の範囲が広すぎることや、懲役刑などの罰則が、裁判員の発言を萎縮させ、国民の司法への参加が阻害されるおそれがあります。

4. 公判手続きのあり方

 国民が裁判員としての義務をはたしやすくなるよう集中審理を行い、裁判の長期化を避ける必要があります。ただし、現在のような公判手続きのまま、集中審理だけを導入したのでは、被疑者弁護活動が困難になるだけです。十分な集中審理が行えるよう、公判前の証拠開示制度を導入し、弁護側・検察側とも十分な準備のもとに審理に臨めるようにすべきです。また、公判における口頭主義・直接主義を実質化し、裁判員が膨大な調書に目を通す必要がないようにするべきです。また、公判審理に裁判員が集中できるよう、リアルタイムで公判内容が確認できる速記録を採用すべきです。

 供述調書及び取り調べの信用性については、録音、ビデオの導入などをはかり、裁判員の求めに応じて確認できるように準備しておくべきです。