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学習・意見交換会
「輸入食品って安全なの?〜令和6年度版〜」を開催しました

 「輸入食品監視指導計画」は、日本に輸入される食品・添加物・器具・容器包装・おもちゃなどの安全性を確保するために、輸出国での生産から輸入後の国内流通までのそれぞれの段階で、厚生労働省及び検疫所などが取るべき対応について毎年定めるものです。毎日の生活に欠かせない輸入食品の安全性について、「令和6年度輸入食品監視指導計画(案)」の内容に沿って説明を聞き、その後に質疑応答と意見交換を行いました。

【日 時】2月9日(金)13:30〜15:00
〔Zoomを活用したオンライン学習会〕

【参加者】35名

【内 容】①報告「輸入食品の安全性確保について」
 〜令和6年度輸入食品監視指導計画(案)〜
 厚生労働省 健康・生活衛生局 食品監視安全課
  輸入食品安全対策室 室長 福島 和子さん
  輸入食品安全対策室 輸出国査察専門官 白坂 信和さん
②質疑応答・意見交換

概要<事務局による要約>

●輸入食品の現状

 日本の食料自給率は下がり続けている状況で、令和4年度の集計ではカロリーベースで38%でした。輸入の届出件数はこれまで右肩上がりでしたが、令和元年から2年にかけては新型コロナウイルスによる物流の変化などの影響もあって少し落ち込み、4年度には240万件まで数字が戻っています。輸入重量ではそれほど大きな変化はなく、重量ベースで一番多いのは、穀類を含む農産食品・農産加工食品、続いて畜産食品・畜産加工食品となっています。

●輸入食品の監視結果

 令和4年度のモニタリング検査実施状況は、計画数延べ100,021件に対し100,947件の実施、実施率は約101%でした。令和4年度の監視指導の結果は、違反件数781件、違反割合0.03%でした。令和2年度の届出の落ち込みから令和3〜4年度はやや数字を戻しましたが、違反率の増加はありません。

●監視体制の概要

 ◇輸出国対策・◇輸入時対策・◇国内対策の3段階で行われています。

輸出国対策

 在京大使館に日本の食品衛生規制を周知したり、二国間協議や現地調査、輸出国への技術協力を行うなど、輸出国対策は輸入時検査を効果的に実施するためにも力を入れて行っています。令和4年度に輸出国との安全対策に関する協議を行った例としては、スペインやフィンランドの牛肉について、対日輸出プログラムの協議や実施状況についての確認を行いました。また、タイのおくらとマンゴーは残留農薬の違反があったので現地でどのような対策が図られているか確認しました。コロナ禍においては現地に赴くことが難しい状況でしたが、オンラインによる現地調査の仕組みも構築されたことから、今後はそれぞれのメリットを生かす形で併用していきます。

輸入時対策

 輸入者は輸入する食品等について届出事項に沿った内容を厚生労働大臣に提出する義務があります。厚生労働省の検疫所では、届出書の審査や相談室での届出前の相談対応を行い、輸入時の監視指導体制を強化しています。全国の検疫所での食品担当部署は32箇所、食品衛生監視員は現在422名の体制になっています。

 輸入前相談は全国13の検疫所に相談室を設置して行っています。令和4年度では輸入相談前で1.5%を超えるものが日本の基準に合わない(違反に該当するもの)として発見されており、輸入前相談による違反の未然防止が効果的と考えられます。結果として、輸入時点での違反率は0.03%に抑えられています。

 輸入時には◇指導検査・◇モニタリング検査・◇検査命令というリスクに応じた検査制度があります。指導検査は、輸入者の自主的な衛生管理の一環として定期的な検査の実施を指導するものです。モニタリング検査は、日本に輸入される多種多様な食品が本当に安全なのか食品衛生上の状況をチェックするためのもので、年間計画に基づいて無作為にサンプリングし、検査を実施しています。検査命令は一番厳しいもので、健康被害の発生する恐れのあるもの、法違反の可能性が高いと見込まれる食品について検査を命ずるものです。輸入する全ての食品に対して届出ごとに毎回検査をします。費用負担は輸入者が行い、検査結果判明までは輸入不可となります。これらの検査は、統計学的な考え方を取り入れた採取量に応じ実施しています。また、繰り返し検査で違反が発見されるものについては「包括輸入禁止」として法的に輸入を禁止できる規定がありますが、これまでに該当する事案はありません。令和4年度は全体で約240万件の届出の中で約20万件の検査を実施し、検査の割合8.4%、違反件数781件、違反割合は0.03%です。

 令和4年度に食品衛生法の違反になったもので一番多かったのは食品衛生法 第13条の食品の規格基準に違反したものが6割弱を占めていて、残留農薬の基準値違反、微生物関連、添加物の使用基準違反などでした。次に第6条違反で、ナッツのアフラトキシン、キャッサバのシアン化合物の検出などがありました。

国内対策

 各都道府県等において、食品衛生の監視指導計画を作成して、パブリックコメント募集やリスクコミュニケーションを行うとともに、その結果もあわせ公表しています。国内での食中毒発生事案に基づいて監視強化を行った事例もあります。

●リコール情報の報告制度

 食品衛生法の改正の中で2021年度に「食品等のリコール情報届出制度」が創設されました。輸入食品においても、国内での流通があり自主回収の届出がされたものについては制度に則って適切に対処されます。

●海外情報への対応

 海外での食中毒の発生や食品リコールの情報などは速やかにキャッチして的確な対応を行っています。定期的に(実質的には毎日)海外の主要政府のホームページ上でリコール情報やアウトブレイク情報を確認し、国内の専門機関の情報も同時にチェックを行いながら情報の収集や分析を強化しています。必要な場合は回収の指示や監視の強化など適切な対応を速やかに行います。海外情報の中で、食物アレルギー表示の欠落などに関する情報は食品衛生法の対象ではありませんが、消費者庁へ情報提供を行い必要な対策をとっています。

●令和6年度輸入食品監視指導計画(案)について

 これまで通りの対策を継続しながら、より効果的なモニタリング検査の実施に努め、これまでの違反状況等を踏まえて微修正を行いながら、検査項目等の見直しや検査の強化を検討します。輸入時検査を中心とした監視体制に加え、輸出国での生産段階の安全性を確保する取組を継続します。モニタリング検査数は前年とほぼ同数の約10万件を計画しています。

●具体事例の紹介 〜輸出国での衛生確保対策について〜

 昨年2月〜3月にかけてタイの農産物の現地視察を行いました。タイ産農産物は、生鮮アスパラガス、生鮮おくら、生鮮バナナなど複数の検査命令を実施していますが、タイ農業局が定めた対日輸出プログラムを遵守している輸出者については、タイ農業局に登録され、輸入時における検査命令を免除しています。対日輸出プログラムとは、対日輸出農産品の残留農薬について、農家、包装業者、加工業者及び輸出業者が、プログラムに定められた内容に基づく管理を実施し、タイ農業局が指導検証を行うものです。

 今回は生鮮マンゴーと生鮮おくらの現地視察を実施しました。ドリフト対策としてネットの設置、肥料と農薬の管理と記録、収穫及び納品の管理と記録、選別作業時に農家毎・輸出ロット毎に作業台を区別、農薬の自主検査、トレーサビリティの徹底、農薬・肥料・資材の施錠管理など、各工程においてプログラムが遵守されていることが確認できました。

●質疑応答・意見交換<抜粋>

Q:食品添加物や残留農薬などの基準について、海外では禁止されていても日本では使えるものがある場合がありますが、どのような基準に基づいているのですか。

A:それぞれの国において使用実態等を踏まえて規格基準が設けられています。それぞれの国が安全性の評価を行っています。

Q:有機フッ素化合物(PFAS)の健康影響について関心が高くなっていますが、輸入時にPFASが検査の対象となりますか。

A: PFASの健康影響の評価については、食品安全委員会においてこの2月に評価書(案)がとりまとめられたところで、食品における基準に関する議論はこれからになります。現時点で輸入食品における検査は実施していませんが、国内での議論に注目しながら対応を整えていきます。

〔参考〕令和6年度輸入食品監視指導計画の策定について
厚生労働省ホームページ「令和6年度輸入食品監視指導計画」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000200506_00001.html

以上

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