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学習会「食品ロスの現状と施策パッケージの概要について」を開催しました

 食品ロスを削減するためには消費者の行動変容が重要です。我が国の食品ロスを削減する目標達成のために、政府が取りまとめた「施策パッケージ」の概要と、食品ロスを取巻く現状を学ぶための学習会を行いました。

【日 時】12月13日(水)14:00〜15:30

【参加者】67名

【内 容】「食品ロスの削減の推進について」

【講 師】消費者庁食品ロス削減推進室 室長 田中 誠さん

概要(事務局による要約)

●世界の状況

 2015年に国連で採択されたSDGsの「目標12(つくる責任 つかう責任)」において、2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄(Food Waste)を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失(Food Loss)を減少させるという目標が掲げられています。
 世界全体の食料生産量は約40億トン、そのうち廃棄に回っているものは年間約13億トンで、全体の約3分の1が廃棄されています。また食品ロスに起因するCO2排出量は、世界全体の温室効果ガスの排出量の約8%を占め、食品ロスは地球温暖化に大きな影響を与えていることが分かります。国際的にも食品ロスの削減は大きな課題となっています。

●日本の状況

 食品ロスの削減の定義を「まだ食べることができる食品が廃棄されないようにするための社会的な取組」として掲げ、多様な主体が連携し国民運動として食品ロスの削減を推進するために「食品ロスの削減の推進に関する法律」が令和元年10月に制定されました。令和2年3月には「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」が閣議決定され、行政・事業者・消費者等の相互連携で取組みが進められています。本方針により食品ロスを2030年度までに2000年度比で半減させることが目標になっていますが、コロナ禍の影響を除いた直近5年間の平均の食品ロス量は614万トンで、食品ロスの半減目標を達成するためには、なお100万トン超の削減が必要です。

●消費者に求められる役割と行動

 買物の前に家にある食材をチェック、定期的な冷蔵庫内の在庫管理、料理は食べきれる量を作る、外食時は食べきれる量を注文する、宴会時の3010運動の実践、残った場合は自己責任の範囲で持ち帰るなど、日々の生活の中でできることを一人ひとりが考え行動に移すことで、食品ロスの問題を「他人事」ではなく「我が事」として捉え行動に移す、という内容が基本方針に盛込まれています。

●事業活動による食品ロスの削減の推進

 食品製造業や卸売業においては、事業活動による食品ロスを把握し、商慣習を含めて見直しに取組むことが基本方針に謳われています。具体的には未利用の食品を必要とされるところへ寄付する仕組みの促進と、外食産業における食べ残し料理の持ち帰りの促進が、食品ロスを削減するための重要な視点となります。食品の寄付については法的責任のあり方について検討する必要があり、食べ残し料理の持ち帰りについても、留意事項の周知等について必要な措置を検討する必要があります。

●食品の寄付に関する諸外国の法制度と日本の状況

 諸外国において制度的な促進策は大きく3つ、税制優遇、免責制度、廃棄規制、の施策が取入れられています。免責制度に関して、アメリカやイギリスの場合、善意の行為によって食品を提供した場合は、万が一事故が生じても提供した者の法的責任は問わないというルールがあり、これによって企業側が安心して食品の提供ができる仕組みになっています。またフランスでは免責制度の導入ではなく、間に入るフードバンク団体に民間の保険の活用を推奨しています。韓国では企業側の免責制度と最終受益者の保険による救済とを併用しています。
 廃棄規制について、フランスでは売れ残ってまだ食べることができる食品の廃棄を禁止する法律があります。韓国では住宅から排出される食品廃棄物の従量課金制度(生ごみの有料化)が導入されています。
 日本においては、上記に挙げた諸外国のような、税制優遇、免責制度、廃棄規制について、現段階で具体的な規定はありません。施策パッケージではここが議論の中心となります。

●食品ロス削減目標達成に向けた施策パッケージ

 食品ロスを2030年度までに2000年度比で半減させることを目標に「食品ロス削減推進会議」において「食品ロス削減目標達成に向けた施策パッケージ」が取りまとめられました。具体的な施策は、①未利用食品等の提供と消費者の行動変容の促進、②食品廃棄物の排出削減、の2項目になります。
 ①の施策には大きな2つの柱があり、1つ目は、未利用食品の寄付を促進するための法的責任の在り方や民事的な制度の導入の検討、2つ目は、外食時の食べ残しの持ち帰りに伴って生ずる法的責任の在り方と持ち帰りを促進するためのルールの整備、この2点が重要な項目になります。
 ②の施策には、事業者における1/3ルールを始めとする商慣習の見直しの促進、環境省を中心に進めている「デコ活」によるライフスタイルの変革促進、学校給食を実施する学校への栄養教諭の配置拡大と食育の推進などが掲げられています。

●「食品ロス削減推進会議」での議論より(抜粋)

 ・食品の寄付に関する法的責任について、「消費者に健康被害が生じた際にメーカー側の法的責任を緩和してしまうことについては慎重に検討すべきである」、「無償でもらったものであってもメーカー側が責任を負わずに受益者が泣き寝入りする結果になってはならない」、「免責制度が導入された場合、事故が起きても責任が問われないことによってフードバンクへの押し付けやモラルハザードが起こりかねない」、「このような観点から日本における免責制度の導入は時期尚早ではないか」、「寄付する側もされる側も一定の信頼性を確保する必要性があるのではないか」、などの意見がありました。
 ・食べ残しの持ち帰りに関する法的責任のあり方について、「飲食店内で食べる行為を前提としているため、持ち帰りは本来の契約の範囲ではない」、「自己責任だと了解していたとしても事故があった際に飲食店の責任は逃れきれない」、「食べ残したものの所有権はどちらにあるのか、厚生労働省ではテイクアウトのガイドラインはあっても持ち帰りについては定められていない」、などの意見がありました。どちらの論点についても、整理が必要であるということが最終的な結論となりました。

●質疑応答より(抜粋)

Q:クリスマスケーキ、お節料理、恵方巻などイベント食品の食品ロスはどの位減っているのでしょうか。

A:具体的な数字はありませんが、恵方巻は政府として予約制の導入を呼び掛け、多くの事業者がそれを実施したことで廃棄率が大きく削減できました。またクリスマスケーキやお節料理は昨今の冷凍技術の進歩により、冷凍保存・事前予約が可能になり、食品ロスの削減につながりました。消費者としても予約制について理解し、ともに食品ロスの削減に努めていただきたいと考えます。

Q:食べ残しを自己責任で持ち帰りたいと言っても拒否する飲食店があるのを不満に思います。出されたものはお客のものではないでしょうか。自己責任で行動することを拒否するのはいかがなものでしょうか。

A:現状で食中毒が起きた場合は店側の責任が問われる可能性があり、消費者契約法においても「完全免責は認められない」ということになっています。食べ残しの所有権についても法的な整理がないため、今後施策パッケージの中で検討していきます。

以上

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