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電気通信サービスの課題と消費者保護〜第3弾〜 学習会報告

 全国消団連では、2021年より電気通信サービスの課題と消費者保護をテーマに学習会を開催してきました。今回は第3弾となり、2019年に改正された電気通信事業法の制度の見直し状況の報告、また携帯電話の中古端末市場の拡大など、モバイル市場の動向や消費者保護ルールの在り方に関する検討会の状況と消費者保護ルールについて、説明いただきました。

【日時】 7月11日(火) 15時00分〜16時30分〔Zoomを活用したオンライン学習会〕

【講師】 中島明彦さん(総務省 総合通信基盤局電気通信事業部 料金サービス課 課長補佐)
竹内史生さん(総務省 総合通信基盤局電気通信事業部 消費者行政第一課 課長補佐)

【参加】 32人

概要(事務局による要約)

電気通信分野の最近の動向

中島 明彦さん

モバイル市場の動向 (1)通信市場の動向
 携帯電話料金(MNO)の海外都市(ニューヨーク、ロンドン、パリ、デュッセルドルフ、ソウル)との比較では、東京の支払額は、2GB、5GB、20GBで低い水準であり、50GB、100GBでは中位の水準となっています。
 2021年頃に携帯電話事業者各社が低廉な料金プランの提供を開始したことで競争が活発化して、新料金プランへの移行状況は増加傾向にあります。2023年4月末時点では契約は、約5,360万件(契約数の約36%相当)になっています。MNO(総務大臣の免許を受けて、自分で携帯電話の電波を発射する基地局などを設置して、携帯電話サービスを提供する事業者。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル等)とMVNO(自分では免許を受けず、基地局なども設置せず、MNOから通信回線を借りる等して、携帯電話サービスを提供する事業者。IIJmio、マイネオ、ビッグローブモバイル、J:COM Mobile、日本通信等)の利用者動向については、MNO3社の旧来プランから新料金プランへの移行は活発ですが、MVNOの契約数は横ばい状態です。また、世帯の消費支出における携帯電話通信料は2017年をピークに減少傾向になっています。
 利用者意識調査では、新料金プランに乗り換えた方の約6割が、月額約2,000円安くなったと回答されました。また、新料金に乗り換えるつもりはないと回答した方の理由では、「現在のプラン内容に特に不便を感じていないから」「手続きを行うことが面倒だから」「現在の通信会社が最も信頼できるから」となっています。
 競争ルールの検証に関する報告書2023のまとめとして、「料金の動向」では、今後のMVNOの創意工夫の促進に期待。「利用者の動向」は、自身のニーズに合った移行のメリットや手続が必ずしも複雑ではないことについて正しく伝えていくことが重要。「公正な競争条件の確保」では、5GSA(5Gの高速・大容量の通信サービス)の普及が見込まれるので今後も注視、となっています。
(2)端末市場の動向
 端末の売上台数を2020年と比較すると、低価格帯が減少し高価格帯の割合が増加しています。また中古端末も販売台数が増加していて、今後も拡大する見込みがあるとされています。  まとめとして「中古端末を含む端末市場の動向」では、MNO4社による端末の大幅値引きにより、歪んだ競争状況になりつつあること、また中古端末も含めた消費者への正確な情報発信をすること。「5GSAやミリ波の動向」では、現時点においてサービスの提供に支障が生じている状況にはないですが、技術革新のスピードが速いことを踏まえると、5G対応端末の販売状況について引き続き注視することが適当であるとしています。
(3)覆面調査の結果・既往契約の状況
 「上限2万円規制の遵守の徹底」では、MNO4社において、販売代理店では利用者に誤解を生じないような説明の徹底やスタッフの教育・研修・指導の徹底・強化など。「端末購入プログラム」では、利用者に対する正確な説明や周知の徹底を継続することが必要。「既往契約」では、早期解消に向けて既往契約の状況を引き続き注視していくとしています。
電気通信事業法第27条の3の見直し
 「上限2万円規制」では、現在規制の対象外となっている通信サービスと端末のセット販売を行う際のいわゆる「白ロム割」を規制対象として、利益の提供の上限額を2万円から4万円とすること。「継続利用割引」では、長期(6ヶ月)に亘って将来を拘束する契約のみに限定し、継続利用に応じた利益の提供として通信料金割引(キャッシュバック等を含む)のみに限定すること。サービスを利用する意思を伴わない契約先の乗換え行為(「踏み台」行為)の抑止として、「踏み台」行為を是正する取り組みをせず漫然とMNP(今の電話番号を変えずに、他社の通信会社に乗り換えられる制度)による新規加入を優遇することを業務改善命令の対象とすることや、代理店によるSIMのみ新規契約における利益の提供を上限額2万円とすることを検討しています。
モバイル市場に係る課題 「短期解約ブラックリスト」
 MNOの販売代理店等において、短期(例えば、3か月以内や6か月以内)で解約を行うと、ブラックリストに入るとの案内をしている場合がありますが、この短期解約のみを理由として役務提供を拒否することは、業務改善命令の対象となり得ます。

消費者保護ルールの在り方に関する検討会報告書2023(案)概要

竹内 史生さん

令和元年改正電気通信事業法(消費者保護ルール関係)の施行状況と評価
 改正で導入した勧誘行為規制に関連する苦情の割合は減少しており、制度改正は一定の効果が出ているものと評価できます。ただし、一定数の苦情は継続しているので、不適切事例についての執行強化や事業者の自主的取り組みを促すことで法遵守の徹底を図るべきと考えられます。
 販売代理店の届出制度は2019年10月に開始し、2020年の約2.5万件が2023年には9.9万件となっています。届出事業者の多くは個人で、明らかになった課題(一部販売代理店のリテラシー不足、代理店起因の相当数の苦情、変更届出等の不徹底など)に対しては、代理店指導監督義務に基づく措置に、利用者に適切に説明できる能力や苦情相談等を電気通信事業者と連携して対応できる体制を追記する必要があるとしています。  「キャリアショップ店員に対するアンケート調査」(2023年1月実施)では、2022年8月以降、「消費者のニーズや意向に合わない何らかの不適切な勧誘を強く実施したことは無い」と回答した者が約7割(昨年は約4割)にのぼり、改善傾向にあります。ただし、約3割は不適切な勧誘を行ったことがあると回答し、引き続き不適切な勧誘が行われていることがうかがえました。
 MNO販売代理店の業務の適正性の確保のため、総務省は問題になりうることをガイドライン等で明示すべき。携帯電話事業者各社は、販売代理店の業務状況や利用者の苦情等を把握して、実態の改善と指導等措置義務が充足されているかを定期的に確認すべきとしています。

※「競争ルールの検証に関する報告書2023案」「消費者保護ルールの在り方に関する検討会報告書2023案」に対する意見募集が行われ、ワーキンググループで確認されて報告書が公表されました。

以上

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