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総会記念学習会「フードテックをめぐる状況」を開催しました

 「フードテック」と称されるものには様々な分野があります。フードテックについて、全体像と現状を学び、現代社会における多様な食の需要と新たな食の可能性について考えるため、2023年度総会記念学習会として、下記の通り実施しました。

【日 時】5月18日(木)14:00〜15:30

【参加者】112名

【内 容】「フードテックをめぐる状況」

【講 師】農林水産省 大臣官房 新事業・食品産業部
企画グループ 高木徹男さん

概要(事務局による要約)

●フードテックとは?

 食に関する新しい技術の全般を言います。生産から加工・流通・消費へつながるものとして、社会課題の解決に向けた新たなビジネスモデルでもあります。

●フードテックをめぐる世界の状況と背景

 地球規模の環境的な側面では、世界の食料需要は2010年に比べ2050年には1.7倍になると想定されており、増大するタンパク質源等の需要への対応が必要となっています。また、生産資材や穀物の国際価格の高騰などの背景もある中で、食料の安定供給が強く求められています。

 個人の側面については、健康や栄養面で、世界的にも低栄養と過栄養が同時に存在する「栄養不良の二重負荷」が課題となっており、国内でも「食塩の過剰摂取」「若者女性のやせ」などが指摘され、栄養改善の取組みが不可欠です。また人々の価値観が多様化するなかで、好みや信条、宗教上の事情、嚥下障害や食物アレルギーのある人への環境整備など、食に求められるニーズは多様化しています。その他にも、増加している買い物困難者への対応として食料品アクセスを解決するための方策など、様々なニーズに新しい技術でどう応えていくのかという問題はフードテックが必要とされる背景になっています。

●フードテックの事例紹介

◇植物由来の代替タンパク質
 大豆ミート食品類としてJAS規格が制定されています。丸大豆を使っているものや黄えんどう豆を原料とするものもあり、日本では多くの商品が流通しています。

◇昆虫食、昆虫飼料
 日本では伝統的にイナゴや蜂の子、ザザムシなどの昆虫を食べる文化があります。昨今では、食品由来の餌を与えて養殖生産した昆虫を粉末にして利用した食品や、昆虫を使った飼料などの活用事例があります。

◇細胞性食品
 培養肉とも呼ばれ、生物を構成している細胞をその生物の体外で人為的に培養することによって得られる食品のことです。現在、世界中で研究が行われています。

◇食品ロスのアップサイクル
 端材パンからビールを製造するなど、食品ロス削減の観点から様々な技術開発が進んでいます。

◇3Dフードプリンタ
 食感や見た目に優れた食事を、おいしくタイムリーに提供することを目指して研究が進んでいます。

◇ヘルスフードテック(AI食、健康管理)
 健康や美容など個人の目標達成に最適化した栄養が摂れる献立を、AIを使って設計するサービスや、食事の写真やバーコードから簡単に健康管理ができるアプリ等が開発されています。

◇ヘルスフードテック(アレルギー情報)
 アレルゲンを含む食品かどうか、バーコードにかざすだけでわかるスマホアプリ等が提供されています。

◇ヘルスフードテック(減塩)
 おいしく生活習慣の改善をすることを目指して電気の力で減塩食品の塩味を約1.5倍に増強するスプーン・お椀の開発などが行われています。

◇ヘルスフードテック(介護食)
 家族みんなで同じ食事を食べられるようにすることを目指し、出来上がった料理を入れると見た目はそのままに柔らかなる調理家電などが開発され販売されています。

◇宅配サービス
 デリバリー分野では、コロナ渦に多様なサービスが誕生しています。自動運転技術を搭載した宅配ロボットなどの開発も行われています。

◇スマートキッチン
 外出時にスマホから冷蔵庫内が把握できるサービスなど、IOTを活用したキッチン家電等が提供されています。

◇スマート食品産業(AIロボット等)
 短時間でおかずの種類や盛り付け順、位置などを変える必要がある弁当工場で、人の隣に並んで食材の盛り付けができる人型協働ロボットの開発など、食品産業の人手不足に対応したAIロボットの開発などが進んでいます。

◇鮮度維持
 活魚を鮮度よく運ぶ輸送ボックスや、野菜・果物から発生するガスを吸着透過させて鮮度を保つポリエチレン袋なども提供されています。

●フードテック分野の投資

 近年、世界のフードテック分野に対する投資額は増加しています。投資額の1位はアメリカで2021年実績が210億ドルでした。日本への投資額は4億5,560万ドルに留まっております。

●フードテック官民協議会の取組み

 2020年にフードテック官民協議会が設立され、農林水産省が事務局を担っています。2022年12月現在、食品企業、ベンチャー企業、研究機関、関係省庁等 に所属する約1,090人が参加し、協調領域の課題解決と新市場の開拓に向けた議論等を行っています。2021年に閣議決定された成長戦略フォローアップでは「フードテック官民協議会において推進ビジョンとロードマップを策定する」としており、2023年5月にフードテック推進ビジョン及びロードマップが策定・公表されました。

〔参考〕フードテックに関する農林水産省ホームページ
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sosyutu/

以上

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