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地方消費者行政の充実・強化を考えるシンポジウム 報告

 社会の高齢化・デジタル化が急速に進展し、社会環境も大きく変わる中、消費者の意識や消費行動も変化しています。全国消団連の地方消費者行政プロジェクトは、2022年度の都道府県行政調査として、消費者被害の未然防止が重要な取り組みであるとし、主に消費者安全確保地域協議会・見守りネットワークをテーマにしました。また、消費者庁、国民生活センターで検討されている消費生活相談のDX化の期待や懸念についても調査しました。

 シンポジウムでは、調査結果や意見書について報告するとともに、消費者行政のデジタル化、消費者安全確保地域協議会・見守りネットワークの在り方、消費者団体との連携・支援をテーマにパネルディスカッションを行いました。

【日時】3月8日(水)14時00分〜16時30分 〔Zoomを活用したオンラインシンポジウム〕

【内容】1.全国消団連2022年度「都道府県の消費者行政調査」報告
  釘宮悦子さん(地方消費者行政プロジェクトメンバー・NACS消費生活研究所 研究員)
2.パネルディスカッション
  パネリスト:
   阿部 龍斗さん(消費者庁 地方協力課 課長補佐)
   矢作 拓さん(神奈川県鎌倉市 共生共創部地域共生課 担当課長)
   尾嶋 由紀子さん(鎌倉市 消費生活相談員・全国消費生活相談員協会)
   釘宮 悦子さん(NACS消費生活研究所 研究員)
  コーディネーター:池本 誠司さん(弁護士)

【参加】169人

概要(事務局による要約)

1.全国消団連 2022年度 都道府県の消費者行政調査報告

釘宮 悦子さん

2022年度都道府県の消費者行政調査は、2022年7月〜8月に47都道府県を対象に実施しました。

①消費者安全確保地域協議会(以下、協議会)と見守りネットワークでは、都道府県の協議会設置は22県、設置していないのは25県。設置していない理由は、基本的には住民に近い市町村が設置するものであるためとの回答が多くありました。県に協議会を設置したことによる構成団体、行政全体に対する効果では「とても効果があった」「ある程度効果があった」の回答が、「あまり効果がなかった」「効果がわからない」より多くなっています。設置後の運用状況は、県で協議会を設置している方が把握や支援の割合が多くなっています。設置に至るまでの課題は、予算・人員体制や、他部門との調整などが挙げられました。設置後の課題では、活動内容や方法、個人情報の取り扱いについても挙げられています。

②厚労省の重層的支援体制整備事業との連携では、取り組みを行っている県や市町村の数は限られています。消費者被害防止に向けた課題では、福祉との連携が進む期待と、個人情報の共有が望ましいが難しくもある、との意見がありました。

③消費者団体の活動の支援では、一般消費者団体では、審議会委員の委嘱、消費者啓発や教育事業の委託があります。課題は、会員の高齢化や構成員の減少などです。特定適格消費者団体や適格消費者団体の支援では、消費者啓発や教育事業の委託、設立のための支援があります。課題は、財政上の課題や相談情報の提供について指摘するものがありました。

④成年年齢引下げに対応した消費者教育では、講師派遣事業、教員向け研修、「社会への扉」の活用、SNSや動画による啓発などが多くあります。消費者教育コーディネーターの配置については県により人数の幅が大きくなっています。

⑤2040年の消費者行政についてでは、AI・DX化の進展に期待する意見が多くありました。ほか、相談体制や行政サービス、広域連携などにも意見がありました。

⑥消費生活相談のDX化について、期待することとしては、相談員に関するものが最も多く(大幅な負担軽減や相談員の確保問題の解消など)、次に相談者に関するものについて(自らの解決支援の強化、相談をためらっている方が適切な情報を入手できるなど)、意見がありました。また懸念することとしては、自治体に関するものが多く、財政負担や事務負担、システムなどに意見がありました。

⑦消費生活相談員では、指定消費生活相談員と主任相談員についてお聞きしました。配置状況については、どちらもバラつきがありました。

⑧地方消費者行政強化交付金の活用は、活用が多い事業と少ない事業で2分される傾向が続いています。啓発事業などは多くの活用がありますが、デジタル関連は活用が少ない傾向があります。

⑨要望については、継続的・安定的・長期的な財政支援を望む声が多くありました。財政以外では、消費者行政事務の負担軽減・支援や交付金事業に対する事務負担の軽減、消費生活相談員の処遇改善・資質向上などの意見がありました。

これらの調査から「地方消費者行政の充実・強化のための意見」を2023年2月13日に関係各省庁に提出しました。(http://www.shodanren.gr.jp/database/486.htm

(1.「消費者安全確保地域協議会」の設置の促進と共に、協議会や見守りネットワークが、本来の目的である消費者被害の防止のための実効性ある取り組みになるよう、国は各地域の実態を把握し、具体的な運用を示したうえで、取り組みを推進してください/2.消費生活協力員や消費生活協力団体の位置づけの周知、地域内の見守り活動の担い手確保と活用を強化してください/3.地域の消費者団体に対しての把握のための実態調査と支援を講じてください。そして、消費者団体支援策の紹介と財政支援措置を講じてください/4.消費生活相談員の人材確保と処遇改善に具体的な対策を講じてください/5.消費生活相談のDX化については、消費生活相談現場の状況を把握し、自治体との丁寧な情報共有と意見交換を行いながら方針策定するよう進めてください/6.若者への消費者教育の充実を図り、消費者被害の防止に向けた取り組みを積極的に進めてください/7.地方消費者行政強化交付金について、十分な予算確保をするとともに、事業メニューは自治体のニーズを把握し、活用しやすいものにしてください)

2.パネル ディスカッション


 パネルディスカッションでは、消費者庁 地方協力課 課長補佐 阿部龍斗さんから「見守りネットワークの取り組みと地方消費者行政におけるデジタル化について」と神奈川県鎌倉市 共生共創部地域共生課 担当課長 矢作拓さんから「鎌倉市くらし見守りネットワークの取り組みについて」の報告がありました。その後、「消費者行政のデジタル化について」「消費者安全確保地域協議会について」「消費者団体との連携・支援について」意見交換が行われました。

■2022年度「都道府県の消費者行政調査報告書」をデータで提供いたします。
詳細は以下です。
http://www.shodanren.gr.jp/Annai/809.htm

以上

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