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学習会「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)と
持続可能な農業の可能性」開催報告

 2050年のカーボンニュートラル(CO2排出実質ゼロ)目標に向けて、あらゆる施策が進められている中、「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」が注目されています。農業問題、エネルギー問題、地域活性化、持続可能な開発(SDGs)など様々な課題の解決に寄与するといわれる一方、それぞれに抱える問題もあり普及の加速化には至っていません。今回の学習会では、ソーラーシェアリングの第一人者である千葉エコ・エネルギー株式会社の馬上さんより、再生可能エネルギー発電と食料生産の両立による持続可能な農業の可能性についてお話を聞きました。

【日 時】2023年1月25日(水)10:30〜12:00(Zoomを利用したWEB学習会)

【プログラム】ソーラーシェアリング〜営農型太陽光発電と持続可能な農業の可能性〜

【講 師】千葉エコ・エネルギー株式会社 代表取締役 馬上丈司さん

【参 加】47人


農業生産と太陽光発電が共存する環境(学習会資料より)

概要(事務局による要約)

◇ソーラーシェアリングの概要

【特徴】

  • 農地に支柱を立ててその上にソーラーパネルを並べ、その下では従来通り米や野菜など農業生産を行っていきます。
  • 設置できる農地への制限は緩いので、農地としての利用規制が厳しい場所であっても太陽光発電設備を導入することができます。

【目的】

  • 当初は売電収入による農業者の所得向上を図ることでした。
  • 現在は農業における再生可能エネルギーの活用や、地域で再エネを増やすための電源の獲得、気候変動への適応やスマート農業との連携など、取組みが進む中で、活用の方向が広がっています。

◇ソーラーシェアリングあるある

  • 「農作物の生育や農作業に問題はないのか」⇒ 栽培する農作物や使用する農業機械などに応じて設備設計を変えていくことで大きな問題が起きないように設備を作っています。
  • 「台風などの自然災害にどの程度耐えられるのか」⇒ 2019年に台風15号が千葉県を直撃した際にも、太陽光パネルの破損や脱落は一切ありませんでした。適切な設計と施工がされていれば大丈夫です。
  • 「太陽光発電設備の寿命はどれくらいか」⇒ 近年では平均で25年程度、設備全体では30年程度が前提となっています。他の工業製品と同じくコスト次第の運用とも言えますが、長寿命化と同時に太陽光パネルの廃棄・リサイクル技術の開発も進んでいます。

◇農業・農村の抱える課題とソーラーシェアリングの果たす役割

  • ソーラーシェアリングに取り組む理由は、生きるために不可欠なエネルギーと食料を、持続可能な形で手に入れるためです。農業が消費するエネルギーの98%が化石燃料由来であり、脱化石燃料化を迅速に進めなければ、日本の農業は持続不可能になります。

◇エネルギー・食料安全保障とこれからのソーラーシェアリング

  • 農業者の所得向上、耕作放棄地や荒廃農地を再生するという目線から、幅広い社会課題の解決に向けた貢献という目的の転換期を迎えています。
  • 農業生産者の目線も多様化し、遮光環境を活かした気候変動への適応策による収量確保の手段としての選択もあります。
  • 世界的なエネルギー危機が進行する中で、農業の電化と共に電源として営農型太陽光発電の電気を活用することで持続可能性を確保し、食料安全保障の達成にも貢献します。

◇農業・農村における再エネ導入の課題

 営農型太陽光発電は農業の長期的な継続が大前提となるため、農業の担い手の存在が不可欠です。またインフラ事業として設備の安定性の確保が義務であり、また設備導入の初期投資が大きいことから、そのための体制と覚悟が必要です。地域の存続に向けた意志がなければ再エネは活用できません。消えゆく地域に導入しても何ら意味はなく、100年後も続く人の営みがあってこそ、ソーラーシェアリングは価値を持つものです。

◇再生可能エネルギーの持続可能性

 農業と共存するソーラーシェアリングが、事業開発から運用段階に至るまでの環境負荷、地域社会との共存、事業スキームの安定性などを含めて評価が広がっていくことが必要と考えています。また、再生可能エネルギーのコストの大小だけを問うのではなく、将来世代が今よりも豊かに暮らせる社会を作っていくという意志こそが最も重要です。「ソーラーシェアリングで100年先に豊かな未来を」を目指して取り組んでいます。

◇参加者アンケートより(抜粋)

  • 単なるエネルギー問題だけではなく、これからの地域問題、人口減少問題、さらには少子化に伴う就労、産業の問題など、全体で取組むべき深刻な課題であることがわかった。
  • 「持続可能な農業の為にも、脱化石燃料化の推進は必須」「100年後も続く人の営みがあってこそのソーラーシェアリング」という言葉が心に残った。
  • 再生可能エネルギーのコストの安さを求めるのではなく、何を未来に残したいか、本当の意味での持続可能なエネルギーは何かを考えていきたい。

以上

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