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学習会「有機農業ってなんだろう?」 開催報告

 食の安全や健康への関心とともに「有機農業」や「有機JASマーク」の認知や関心が高まっています。店頭でもそれらの食材を多く見かけますが「有機」について言葉は知っていても、認証取得の基準や表示に対する規制などについて、消費者が正しく理解しているとは言えません。今回は有機JAS制度を担当している農林水産省の担当官からお話を聞き「有機農業」の理解を深めながら、環境に配慮した有機食品の表示である「有機JAS制度」について学びました。

【日 時】11月18日(金)14時00分〜15時30分
〔Zoomを活用したオンライン学習会〕

【テーマ】有機農業ってなんだろう〜有機JASを中心に〜

【講 師】農林水産省 食品製造課 基準認証室
酒瀬川 智代さん

【参 加】56人

概要(事務局による要約)

■有機農業をめぐる事情

◇有機農業・有機農産物とは:我が国では有機農業を「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業」と定義しています。有機農業によって生産された有機農産物に有機である旨の表示をする場合は「有機JASマーク」が必要となります。有機農業全体としては色々なレベルがあり、環境に配慮した農業を基本として「特別栽培農産物」「有機農業」「有機JASの認証」のように進化していく枠組みで考えられます。

◇みどりの食料システム戦略:2050年までに目指す姿として「耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を25%、100万haに拡大」というものを掲げています。これは野心的な数字ではありますが、有機JASの面積だけを指すものではなく、同様の取組みをしていればカウントするというものになります。

◇有機農業生産者の課題:有機農業に取組む生産者の殆どから「環境のため、今後の社会のために必要と思っている」との声が聞かれ、拡大したい理由の上位には「よりよい農産物の提供」「環境負荷の軽減」「生物多様性の保全」が上がっています。一方で課題としては「人手が足りない」「栽培管理の手間」「資材コスト高」「消費者に意識が伝わらない」などが上がっています。近年、若手の新規就農者は、有機に取組みたいと考える傾向が見られます。有機農業の推進に向けた行政側のサポートとしては、交付金による資金の援助、モデル的先進地区の創出、人材育成、販路拡大の推進支援などがあります。

■有機農産物のJAS

◇有機農産物の生産の原則:有機農産物のJASでは、「農業の自然循環機能の維持増進」を図るため、化学的に合成された肥料・農薬の使用を避ける、土壌の性質に由来する農地の生産力を発揮させる、農業生産に由来する環境への負荷をできるだけ低減した栽培管理方法を採用したほ場において生産することが生産の原則として定められています。この原則に従って有機農産物のJAS基準が定められています。具体的には、ほ場、種苗、資材、汚染や混合、表示のことがそれぞれ定められています。(下:参考資料)
管理したことを記録に残すことが基準認証の世界では重要なポイントとなります。

■有機食品の信頼性

◇JAS法による「有機」表示の規制:農産物、畜産物、これらの加工食品は有機JASマークがないと「有機」や「オーガニック」の表示はできないことがJAS法で決まっています。有機JASマークを付けるには有機JASの「認証」を受けて有機JASに適合した方法で生産・製造することが必要です。JAS認証に当たってはは、登録認証機関によって認証の技術的基準に適合しているかが審査されます。登録認証機関は、国際的な登録基準に適合しているかの審査を経て農林水産大臣に登録された機関です。
認証とは「要求事項を満たしていることを第三者が実証する仕組み」です。このため、「第三者が客観的に判断できるように示すこと」が重要であり、そのためには、役割を決めて管理できる体制作り、文書化された手順書やマニュアルに従った管理、根拠を提示できること、記録を作成することが重要になります。なお、登録認証機関に対する調査や検査は、独立行政法人のFAMICというところが行っています。

◇不適合が検出された場合:登録認証機関は事業者(農家)に是正処置を要求し、農家は原因究明をして修正・改善の報告をしますが、それができない場合は登録認証機関によってJASマークの除去・抹消請求、出荷停止請求、業務停止請求、最悪の場合は認証の取消しなどの措置が行われます。

●質疑応答より(抜粋)

Q:有機農産物が良いのはわかりますが、価格が高くなることが気になります。

A:これは切実な問題で、消費者が許容する販売価格と供給する側の努力が噛み合うのは難しいところです。個人的な見解ですが、みどりの食料システム戦略で掲げた目標を推進する中で有機の取組みが増え、ハードルが下がり、価格についても明るい展望に期待できる部分もあるかと思います。

Q:有機農業を広げるうえでの課題はなんですか。

A:有機JASの観点から言うと、認証の取得の中で生産者の負担が考えられます。一方で、有機JASの信頼性をしっかり確保していくことが消費者にとっても生産者にとってもメリットになることを確信していますので、信頼性を確保した上で、生産者の皆様が有機JASに取組みやすくなるような環境を整備してまいりたいと考えています。また、消費者の認知が進まないことも課題と考えており、今後も消費者の理解促進の取組みを広く進めていきたいと思います。

以上

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