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「LPガスの取引適正化問題に関する学習会」2022 開催報告

 LPガスはもともと自由な料金設定が可能なことから、料金体系やその内訳が消費者に開示されないなど料金の不透明問題、建築事業者および家主がLPガス事業者に無償配管やガス器具等の無償貸与を求める商慣習による料金への転嫁など、多くの問題があります。

 問題解決に向けて2017年に「取引適正化ガイドライン」が策定されました。また2021年に賃貸集合住宅でのLPガス契約に関する消費者トラブルを改善する新たな取組みとして、「賃貸集合住宅における入居前のLPガス料金情報提供」が始まりました。最近では、大手新聞の特集や、経済産業大臣の記者会見で取り上げられるなど、LPガスの取引適正化問題がクローズアップされています。

 今回の学習会では、北海道生活協同組合連合会、資源エネルギー庁よりLPガスを取り巻く状況や現在の取組みについてご紹介いただきました。続いてエネルギー関連の審議会委員を務められている橘川先生よりLPガス取引適正化に向けた取り組みの到達点と課題、行政・業界・消費者の役割についてお話しいただきました。

 最後に、多くの課題を抱えるLPガス問題について消費者は特にどの点に注目し、今後どのような施策を求めていくべきかを共有しました。

【日 時】2022年9月2日(金)10:10〜12:00(Zoomを利用したWEB学習会)

【参加者】60名

事務局による概要

消費者団体の調査及び活動報告

川原 敬伸さん(北海道生活協同組合連合会)

2021年度北大生協調査のまとめ

 北海道大学生協の協力を得て、2016年から続けている北大周辺の賃貸住宅のLPガス料金調査を2021年度も実施しました。同一地域内であっても基本料金や5m3料金は2.2倍の格差があり、これは調査開始時からほとんど変わっておりません。同じような配達条件にある灯油に例えれば同じ地域で1リットル100円の灯油と220円の灯油があることになります。LPガス事業者は消費者への説明が必要です。

LPガス問題の到達点と問題点

 各種調査・分析活動、諸団体の連携、行政・業界への働きかけ、社会・マスコミへの訴え、消費者の学習・啓蒙活動といった地道な活動が昨年から今年にかけての新聞報道、大臣発言につながりました。今年度に入りエネ庁は是正に向けて新たな調査を開始しています。しかし関係する他省庁との連携、またLPガス事業者の業界としての動きはまだまだだと感じています。

商慣行是正への問題意識と課題認識

 建設・不動産管理業者・オーナーなどは、LPガス事業者に設備の提供などの投資を求めて建設費・家賃を下げて利益を上げる一方、LPガス事業者も投資を受け入れる見返りとして顧客を確保する商慣行が続いてきました。しかしその費用はガス料金に上乗せされる形で消費者が負担し、料金の地域間格差など、料金不透明の要因になっていると考えられます。

 その是正に向け、地域に根差し、消費者から支持される、LPガスを目指して、行政(エネ庁)には、液石法の見直し、LPガス事業者の実態把握と課題抽出・解決策の起案、消費者庁・国交省・公取への働きかけと連携強化を求めます。

 LPガス業界・事業者は、LPガス事業を巡る環境変化認識強化、地域に根差し、消費者に支持されるビジネスモデル、LPガス事業のビジョン・中期計画づくりが必要と考えます

 そして消費者も学習・啓発活動の強化推進、自己点検シートの活用推進(賢い消費者・自己防衛)、調査・分析活動と社会アピールの継続(エビデンスづくり)を続けて行政、事業者に求め続けていく必要があります。そして行政・業界・消費者の連携推進が大きな鍵となると思います。

無償配管・無償貸与問題について

永井 岳彦さん(経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部石油流通課 課長)

LPガス産業の現況

 LPガスの需要は、LPガスの利用が多い地方の人口減少や給湯機などのガス機器の省エネ化などの要因により減少していますが、約38%の世帯が利用しています。

 LPガスは、タンクローリーでの配送やボンベによる小口配送により供給されるため配送費用が高コストになってしまいます。 国内需要の減少や、小規模事業者の後継不足によりLPガスを扱う事業者は減少傾向にあります。

料金透明化・取引適正化の動向

 無償貸与はかつてLPガス事業者が顧客獲得のための営業として賃貸集合住宅のオーナーにガス給湯器などを無償提供したのが始まりです。その後賃貸住宅のオーナーや建設業者からの要求によりエアコン、インターホンなどもLPガス事業者が費用負担し、後日LPガス料金で入居者から回収されるという商慣行に変化しました。多くの製品の費用を負担した場合、その物件のガス料金は高騰します。しかし消費者は賃貸住宅に入居してからLPガス料金を知るので不満があっても受け入れるしかない状況でした。そこで2021年6月賃貸集合住宅において入居前のLPガス料金情報を提示するよう関係業界に要請しました。昨年秋の調査では、約6割の事業者が情報提供、または情報提供に向けて準備しているとの回答でした。今後はこの活動への認識が弱い不動産関係者へのコミュニケーションを確立していきます。

 無償配管(貸付配管)は一軒家の建築の際に工務店・建設業者が提携しているLPガス業者に屋内配管工事をさせる商慣行です。配管工事費は住宅建築費用には含まれずLPガス業者が配管の所有権を持ったままガス供給を行うのですが、ガス事業者切り替え時の違約金支払いに関する裁判では配管の所有における契約書による合意や14条書面での説明があっても敗訴する事例が多くなっています。現在は裁判事例の分析、整理を進めています。

問題点整理と実施すべき対策

橘川 武郎さん(国際大学副学長、大学院国際経営学研究科教授)

LPガス4つの特徴

 LPガスは、①日本における基幹エネルギーの一つである②高い付加価値(高熱量、可搬性)③分散型エネルギーの代表格④有事の際の「最後の砦」という特徴があり、生活になくてはならないエネルギーです。だからこそきちんとした取引・料金制度が必要です。

LPガス取引をめぐる二つの問題

 LPガスには①取引適正化、②料金透明化の大きな二つの問題があります。

 ②の料金透明化問題は料金体系や内訳の不明朗の問題があり、2017年に取引適正化ガイドラインが策定されましたが、神奈川県消費者の会連絡会が毎年電話で料金を問い合わせて料金公表の実態を調査するなどの活動からは、実効性はまだ十分ではない状況です。

取引適正化への対応

 2021年6月、経産省は国交省との連携により賃貸住宅における入居前のLPガス料金情報提示の取り組みを始めました。複数省庁の連携による取り組みは大きな成果ですが、どの程度徹底されているか、実効性には問題も残ります。現実には2021年末の朝日新聞の記事、今年2月の経産大臣の記者会見での発言などにより、料金透明化の問題がなお未解決であることがわかります。

 また、取引適正化問題は賃貸と戸建てで何が問題かが異なります。

 賃貸住宅においては「被害者」は居住者になります。ガス料金にガス関連・非関連の設備費が「混入」することがあり、居住者間に不公平が生じます。ただLPガス販売事業者は必ずしも「仕掛け人」ではありません。

 この1年で実態把握が進んだ戸建て住宅の問題では「被害者」は配管・ガス設備を設置したLPガス販売事業者になります。液石法で所有権が認められているものの、新規LPガス販売事業者への切り替えが生じた際の裁判で、「消費者保護」等の観点から、未償却分を回収できないケースが相次いでいます。この場合「仕掛け人」は、新規LPガス販売事業者になります。

実施すべき対策

 個人的な提案になりますが、消費者が大きく関わる賃貸住宅問題に焦点を合わせると、二つの対策を実施すべきと考えます。

 一つは、LPガス料金にガス非関連の設備費を含めることを法律で禁止すること。もう一つはLPガスの三部料金制(基本料金、従量料金、ガス関連の設備料金(含まれない場合は「0」と明記))の法制化。

 これらを進めるため、業界の問題である戸建て住宅問題を含め、少なくとも液石法の改正は必要と考えます。

消費者(団体)の役割

 これまで、北海道生協連や、神奈川県消費者の会連絡会による継続的な実態調査や、様々な消費者団体の意見表明の取り組みがあったからこそ、ここまでLPガスの問題の改善が見られました。

 LPガス行政の体制変更もあり、さらに良い方向に進めるにはこれからも消費者(団体)の力が必要です。

全国消団連からの呼びかけ

 最後にLPガスの課題解決に向けて、私たち消費者が心がけることをまとめ、呼びかけました。

消費者が心がけること

①料金透明化問題について

  • LPガスを利用している賃貸住宅については、契約前にLPガス料金の確認をしましょう。
  • LPガス契約の際には、14条書面(契約の際に確認が必要な内容が記載された書面)の内容を確認し、疑問点を確認しましょう。
  • 石油情報センターのホームページで公表されている月別・地域別のLPガス価格を確認し、契約中のガス料金との乖離が大きい時には事業者に理由を問い合わせましょう。
    https://oil-info.ieej.or.jp/price/price_ippan_lp_gusu.html

②ガス関連設備の無償貸与問題について

  • 設備貸与の有無を確認し、ある場合には貸借契約を交わしましょう。

③無償配管問題について

  • LPガスを使用する戸建て住宅購入の際は、14条書面や重要事項説明書を確認し、疑問点はガス事業者、あるいは建設会社に確認しましょう。

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