[このページについてのご意見、お問い合わせなどはメールにて webmaster@shodanren.gr.jp までお送りください。]

全国消団連・トップページへ戻る


学習会「食品添加物の基本と表示」
〜食品添加物の不使用表示に関するガイドラインを中心に〜 開催報告

 食品の表示について様々な側面から学んでいく企画の一環として、今回は「食品添加物」をテーマに学習会を開催しました。前半は厚生労働省より食品添加物の基礎知識(使用目的・種類・基準・安全確保の仕組みなど)をお話しいただき、後半は消費者庁より食品添加物の表示制度の基本部分のほか、3月30日に消費者庁が公表した「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」について、10項目の類型に沿ってご説明いただきました。

【日時】6月29日(水)15時00分〜17時00分〔Zoomを活用したオンライン学習会〕

【講師】厚生労働省 食品基準審査課 食品規格専門官 福澤 学さん
消費者庁 食品表示企画課 課長補佐 宇野 真麻さん

【参加】276人

概要(事務局による要約)

■食品添加物

(講師:厚生労働省 食品基準審査課 福澤 学さん)

◇添加物とは:食品を製造、加工、保存する目的で使うもので、調味料、保存料、着色料などの総称を言います。例えば豆腐という食品を作るには凝固剤や消泡剤が製造過程で必要となり、菌の繁殖を抑え食中毒を防ぐ目的では、保存料などが使われます。食品衛生法では、食品の製造工程で使用され最終食品に残存しないものや、防かびの目的で農産物の収穫後に使用されるものなども添加物に該当します。また、動植物から得られた添加物も、化学的に合成して得られた添加物も、区別なく添加物として扱われます。

◇食品添加物の種類:安全性と有効性が確認され、国が使用を認めた指定添加物が472品目、既に使用され、長い食経験があり、例外的に使用が認められている既存添加物は357品目、ほかに約600品目の天然香料、約100品目の一般飲食物添加物があります。

◇食品添加物の規格基準:食品衛生法第12条では、指定された添加物以外は使用禁止と規定されており、第13条では、添加物の基準及び規格を定めること、基準・規格に合わないものの製造・販売・使用は禁止ということが規定されています。

◇リスク分析と食品の安全確保の仕組み:リスク分析とは事故を未然に防ぎリスクを最小限にするためのプロセスで「リスク評価」「リスク管理」「リスクコミュニケーション」で構成されています。
内閣府の食品安全委員会では、科学的知見に基づいて食品健康影響評価(リスク評価)を行い、それに基づいて厚生労働省、農林水産省、消費者庁が規制等の措置(リスク管理)を行います。
また、リスクの管理者、消費者、事業者などは相互に情報交換(リスクコミュニケーション)を実施します。これらを含めた安全確保の全体の仕組みのことを「リスク分析」と言います。

◇リスクと許容一日摂取量(ADI):食品のリスクを「健康への悪影響」と捉えると、毒性の強さと摂取量(ばく露量)の程度で考える必要があります。毒性と摂取量との関係で言えば、例えば水も一度に飲む量によっては有害になると言えることから、多くの化学物質は使う量をきちんと決めて正しく使えば問題はなく、リスクとうまく付き合うことが大事です。実験等で求められた無毒性量をさらに100分の1にしたものが「ヒトが一生涯摂取し続けても有害影響が認められない量」すなわち「許容一日摂取量(ADI)」とされます。

◇摂取量調査:厚生労働省ではスーパー等で売られている食品に含まれる食品添加物量を分析して、実際にどの程度摂取しているか、一日摂取許容量(ADI)を超過するおそれがないかどうかを確認する調査を毎年行っています。今のところは特に問題は見受けられません。

■食品添加物の不使用表示に関するガイドラインについて

(講師:消費者庁 食品表示企画課 宇野 真麻さん)

◇食品添加物の不使用表示とは
食品を作る過程で使用した添加物は表示をするルールがあります。逆に使用していない添加物は表示をするルールはないため、任意表示として事業者に委ねられています。そのため事業者が「使用していない」と書きたいものが特別に表示されていることがあり、その表示の一部に消費者を誤認させるものがあると問題提起されました。それに基づいて今回ガイドラインが作られる運びになりました。

◇加工食品の食品添加物表示
使用した添加物については重量順に原則物質名で全て表示することになっています。この表示のルールは、本ガイドラインの公表によって変わることはありません。 加工食品の添加物表示は、原則として使用したすべての添加物を物質名(簡略名等も可)で食品に表示しますが、例外的に一括名で表示可能なもの、用途名の併記が求められるもの、残存しないため表示不要のもの等があります。

◇食品添加物表示制度に関する検討会
食品添加物の表示の在り方について広く検討を行うため、2019年に消費者庁において「食品添加物表示制度に関する検討会」が開催され、2020年3月に報告書が公表されました。またこの検討会において、無添加・不使用の表示が消費者の誤認を招くと問題視されたことを受け、2021年3月に「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン検討会」が立ち上がりました。

◇「人工」、「合成」の用語を削除
表示制度の検討会では、人工甘味料や合成保存料などの用語にも問題があることが指摘されました。添加物の表示は天然と合成の区別なく表示することとされており、そもそも人工や合成と天然を表示上区別していないため天然の文言は禁止であること、また合成(例:合成保存料)や人工(例:人工甘味料)と表示する場合、「無添加」「不使用」を使うために被せる言葉として「人工」「合成」が使われているのではないかという指摘もあり(例:合成着色料不使用)これらの様々な矛盾が消費者の誤認を招く結果となっていたことが問題とされました。その観点から「人工」「合成」の用語を削除することが適当であるとされ、食品表示基準より「人工」「合成」の用語を削除する改正案が提案され、2020年7月に改正した食品表示基準が施行されました。

◇食品添加物の不使用表示に関するガイドライン
2021年3月から8回に亘って行われた「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン検討会」における議論と、パブリックコメントで寄せられた意見を踏まえて、2022年3月に本ガイドラインが公表されました。ガイドラインの位置付けは「食品表示基準Q&Aの別添」の扱いとなります。このQ&Aは事業者にとって表示の教科書的存在であるため、本ガイドラインはそこに盛り込む形で策定しています。事業者が食品表示基準第9条に規定された表示禁止事項に当たるか否かの自己点検を行う際に用いることができるものとなっています。 このガイドラインは、消費者に誤認を与えないよう留意が必要な具体的事項を定めたもので、消費者の正しい商品選択を促すために適切な表示を行い、改めるべきことは改めてくださいと事業者に求めるものです。食品添加物の不使用表示を一律に禁止するものではありません。世の中から添加物の不使用表示が一切なくなるということではありません。

◇食品表示基準第9条
添加物が不使用である旨の表示は任意表示ですが、消費者に誤認を与える表示は「食品表示基準第9条」で禁止されています。しかし9条には詳細な規定がないため、どのような不使用表示が9条に規定された表示禁止事項に該当するか否かを判断するのは困難です。そのためこのガイドラインでは、不使用表示を行う際に注意すべき表示を10の類型に分け、その類型の中で「食品表示基準第9条に該当するおそれが高い」と考えられる表示の内容を整理しました。ただし表示禁止事項に該当するか否かは、様々な条件を基にケースバイケースでの判断となります。

◇10項目の類型

類型1:単なる「無添加」の表示
何を添加していないのかが不明確であるため、消費者が推察した内容が事業者の意図と異なる場合に消費者を誤認させるおそれがあります。

類型2:食品表示基準に規定されていない用語を使用した表示
食品表示基準で規定されていない「天然」「人工」「合成」「化学調味料」の用語を用いた食品添加物の表示は適切でなく、消費者を誤認させるおそれがあります。

類型3:食品添加物の使用が法令で認められていない食品への表示
例えばマヨネーズには、調味料(アミノ酸等)、酸味料及び香辛料抽出物以外の添加物は法令上使用できないルールがありますが、使用できない添加物をあえて無添加あるいは不使用と表示している場合は、消費者を誤認させるおそれがあります。

類型4:同一機能・類似機能を持つ食品添加物を使用した食品への表示
例えば保存料不使用と表示されているのに、それと同一機能、類似機能を持つ食品添加物(例:グリシン)が使用されていて、その違いが表示上で分からない場合、消費者を誤認させるおそれがあります。

類型5:同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示
例えば調味料(アミノ酸等)無添加と表示されているのに、それと同一・類似機能を持つ原材料(例:酵母エキス)が使用されていて、それが社会通念上食品とは考えられず消費者がそのような機能だとわからない場合、消費者を誤認させるおそれがあります。

類型6:健康、安全と関連付ける表示
使用していないことを、因果関係や根拠なしに、健康や安全と関連付けている場合は消費者を誤認させるおそれがあります。

類型7:健康、安全以外と関連付ける表示
使用していないことを、因果関係や根拠なしに、健康や安全以外の事柄(例:おいしい、変色の可能性など)と関連付けている場合は消費者を誤認させるおそれがあります。

類型8:食品添加物の使用が予期されていない食品への表示
例えばミネラルウォーターに着色料不使用と表示するなど、一般的な同種のものには添加物が使用されることがなく消費者が添加物の使用を予期していないのに、あえて不使用を表示している場合は、消費者を誤認させるおそれがあります。

類型9:加工助剤、キャリーオーバーとして使用されている(又は使用されていないことが確認できない)食品への表示
原材料の製造・加工の過程まで遡って食品添加物の使用の確認が必要であるにもかかわらず、確認結果に基づいた表示を行わない場合は、消費者を誤認させるおそれがあります。

類型10:過度に強調された表示
「過度」の意味を示す具体的な数値や色の基準はありませんが、消費者が一括表示を見る妨げとなるような表示や、他の類型項目と組み合わされることで他の類型項目による誤認を助長させるおそれがあるものは、消費者を誤認させるおそれがあります。

◇普及啓発
消費者庁では、現在事業者団体を中心に普及啓発を行っていますが、消費者に対してもこのガイドラインの意図を正しく伝えるための活動を行っていきます。また食品添加物そのものについての漠然とした不安や疑問を解決するために、食品添加物の正しい知識を身に着けるための普及啓発も進めていきます。

●質疑応答より(抜粋)

Q:食品添加物の日本の基準は海外と比べてどうですか。またその違いはなぜ生じるのですか。

A:日本の食品添加物の規格や使用量は、国際的な規格や基準を踏まえて定められていますが、日本と諸外国ではこれまでの長い食生活や制度の違いなどにより、添加物の定義、対象食品の範囲、使用可能な量などが異なっていることから、単純に比較することはできません。その国の環境や気温の差、食文化からもニーズの差が生じるので、国による基準の違いがあります。

Q:不使用表示が食品表示基準第9条の表示禁止事項に該当するか否かはケースバイケースの判断とありますが、この解釈そのものが難しいと思います。事業者による表示が自粛されて、消費者の知る権利や選択する権利が阻害されるのではないかと懸念しています。

A:消費者が誤認させられるような表示の存在が問題提起され、それを改めていくために策定されたガイドラインです。不使用表示に関して、これからもっと良くなっていくことを目指しているもので、事業者の利益に向けたものではなく、消費者のためのガイドラインと理解していただきたいです。

以上

≫ 開催案内はこちら