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ブロードバンド基盤の在り方に関する研究会最終取りまとめ【案】
学習会報告

 現在、社会のデジタル化が進んでいますが、政府が掲げる未来社会「Society5.0」では、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方や暮らしの実現のために、テレワーク、遠隔教育、遠隔医療等のデジタル技術の活用が不可欠であるとしています。また、デジタル社会形成基本法では、「全ての国民が情報通信技術の恵沢を享受できる社会の実現」が基本理念として掲げられており、地理的な制約等に関わらず享受できる通信環境の実現が、国の責務とされています。これらを実現するためには、光回線(有線)や4G(無線)などのブロードバンド基盤の整備・維持が必要不可欠となっています。

 「ブロードバンド基盤の在り方に関する研究会最終取りまとめ【案】」では、不採算地域におけるブロードバンドサービスの確保・維持のために、電話のユニバーサルサービス制度などのように受益者負担の考え方のもと、新たな交付金制度が必要であると提言され、今後、ブロードバンドを利用する消費者の負担にも関わる内容となっています。今回は、本最終取りまとめ案について学習会を行いました。

【日時】2022年1月13日(木)14時00分〜15時30分
〔Zoomを活用したオンライン学習会〕

【講師】中田 響さん(総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 事業政策課 調査官)

【参加】40人

概要(事務局による要約)

■ブロードバンド基盤の在り方に関する研究会最終取りまとめ【案】について

中田 響さん

◇検討の背景

 有線ブロードバンド(光ファイバ等)の整備状況は、補助金等を活用した積極的な整備を行い、99.7%まで進展しましたが、依然として未整備地域が約17万世帯存在しています。とくに離島や山間地を多く有する地域において整備が遅れており、整備率の格差が発生しています。無線ブロードバンド(4G等)は、サービスエリアの居住地カバー率は、居住人口の99.99%超とほぼ整備がされており、2023年度までにエリア外人口はゼロになる見込みです。

 我が国が目指す未来社会「Society5.0」の実現のためには、動画などの大容量のデータ通信をリアルタイムかつ双方向で、常時行える通信環境が必要になります。そのため有線・無線いずれのブロードバンドの整備も必要ではありますが、有線ブロードバンドは通信速度が速く、遮蔽物などの影響を受けないなど通信の安定性があり、料金体系においても定額で無制限であるといった大きな特徴があります。

 有線ブロードバンドは、都市部を除くと、有線ブロードバンドの回線設備を設置している事業者が1者しか存在しないエリアがかなりの割合を占めています。地方における有線ブロードバンドサービスの重要な担い手であるローカル事業者は、人口減少に伴う利用者数の減少等により採算性が悪化しつつあり、今後、人口減少が一層進展した場合、地方における有線ブロードバンドサービスの維持が困難になる可能性があります。

 こうした背景を踏まえ、ブロードバンドのユニバーサルサービス化等について検討を進めるため、2020年4月から「ブロードバンド基盤の在り方に関する研究会」での検討を開始しました。現在、最終取りまとめ案のパブリックコメントを実施中で、それを踏まえ、2月上旬に最終取りまとめを行う予定です。

◇ブロードバンドサービスの「基礎的電気通信役務」化

 ブロードバンドにおける「基礎的電気通信役務」として求められる条件としては、①通信速度(大容量の動画を送受信可能か)、②遅延の程度(リアルタイムでの双方向のやりとりが可能か)、③料金体系(定額料金で原則無制限に利用可能か)の3点を総合的に考慮し、有線ブロードバンドのFTTH及びCATVインターネットのうちのHFC方式が適当であるとしました。

 なお、無線ブロードバンドサービス(4G等)については、現時点で継続的・安定的に利用するための手段としては、必ずしも十分でない場合があることや、新たな交付金制度の対象としなくとも、事業者間の競争を通じた自主的な取組により、全国的なサービス提供が確保されると想定されることなどから、「基礎的電気通信役務」としては、位置付けないことが適当であるとしました。

◇新たな交付金制度

 新たな交付金制度は、①不採算地域における有線ブロードバンドサービスの維持、②有線ブロードバンド未整備地域の解消促進、③公設公営・公設民営から民設民営への転換促進、の3点を目的としました。

 負担対象者は、電話に係るユニバーサルサービス交付金制度と同様に、受益者負担の考え方を採用し、不採算地域におけるブロードバンドサービスの提供が確保されることで利益を得る者全体に広く応分の負担を求める仕組みとすることが適当であるとし、ブロードバンドサービスの提供事業者を対象とすることが適当であるとしました。また、負担を利用者(エンドユーザ)に転嫁するかどうかについては、各ブロードバンドサービス提供事業者の判断に委ねることが適当であるとしました。なお、OTT事業者(インターネットを介した動画配信、音声通話、SNSなど、マルチメディアを提供する事業者)も受益者ではありますが、ネットワークのコスト負担の在り方全体を巡る議論の中で、中長期的な視点から検討することが適当であるとしました。

 負担金の算定単位は、原則としてブロードバンドサービスに係る契約数を負担金算定の単位とし、1契約当たりの契約単価により各負担対象者の負担金額を算定することが適当だとしました。ただし、集合住宅向けサービスや法人向けサービスにおいては契約数とエンドユーザ数が必ずしも一致しない場合もあり、新制度の施行までの間に、審議会等のオープンな場で検討していくことが適当であるとしました。

◇事業者に対する規律

 現行の「基礎的電気通信役務」制度は、基礎的電気通信役務の提供の適切性、公平性、安定性を確保するため、基礎的電気通信役務を提供する事業者に対して、①契約約款の届出義務、②会計整理義務、③役務提供義務、④技術基準適合維持義務等の各種規律を課しています。今回の制度改正において、有線ブロードバンドサービスを「基礎的電気通信役務」に追加する場合、電話と異なる有線ブロードバンドサービスの特徴や平成13年の基礎的電気通信役務制度創設時以来、約20年間における制度の運用状況を踏まえ、今回の制度改正を機に所要の見直しを行うことが適当であるとしています。

■全国消団連では、「ブロードバンド基盤の在り方に関する研究会 最終取りまとめ【案】」についての意見を1月21日に提出しました。

以上

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