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学習会『食品添加物の表示』〜検討会報告書の内容と整理されたポイント〜
開催報告

 食品添加物とは、食品に添加することで味を調える、長期保存を可能とする、色や香りをつける、等の効果が得られる物質のことです。安全性と有効性が確認され、国が使用を認めた指定添加物が465品目、既に使用され、長い食経験があり、例外的に使用が認められている既存添加物は357品目、ほかに天然香料、一般飲食物添加物があります。

 加工食品の添加物表示は、原則として使用したすべての添加物を物質名(簡略名等も可)で食品に表示しますが、例外的に一括名で表示可能なもの、用途名の併記が求められるもの、残存しないため表示不要のもの等があり、一部の消費者からは分かりにくい表示制度といった意見もあります。また、食品関連事業者が任意で行う添加物の不使用表示について、その内容が正確に消費者へ伝わっていない状況が示されています。

 この食品添加物の表示の在り方について広く検討を行うため、2019年消費者庁において「食品添加物表示制度に関する検討会」が開催され、2020年3月に報告書が公表されました。今回はこの検討会で論点となったことや整理されたこと、取りまとめられた報告書の内容についてのお話を聞き、食品添加物表示制度全般について学ぶため、消費者庁食品表示企画課から講師をお迎えして学習会を行いました。

 またこの検討会の報告を受け、新たな検討の場として2021年3月に「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン検討会」がスタートしています。この不使用表示に関するガイドライン検討会についても、発足に至る背景や、現在の進捗状況などの報告をいただきました。

【日時】3月30日(火)14時00分〜15時30分
〔Zoomを活用したオンライン学習会〕

【講師】消費者庁食品表示企画課 課長補佐
高橋 亨さん

【参加】169名

【プログラム】・報告「食品添加物の表示」
 〜検討会報告書の内容と整理されたポイント〜
・質疑応答、意見交換

現行制度と今後の整理の方向性について

 「食品添加物表示制度に関する検討会」は主に以下の4つを論点として検討が行われました。

1.一括名表示、簡略名・類別名表示の在り方/用途名表示の在り方

現行:原則として物質名で表示されますが、一部の添加物は一括名での表示や、簡略名・類別名での表示が可能となっています。また8つの用途に限り用途名を併記しています。

整理の方向 ⇒ 30年来のなじみがあること、表示部分のスペースが足りない中で表示の見やすさの問題、各国で食品添加物の規制そのものに違いがあるので、現行制度を維持することが適当とされました。なお、消費者のニーズを踏まえ、使用した個々の物質や目的については、事業者から消費者への自主的な情報開示に努めることが望まれます。

検討の過程では消費者意向調査やコーデックス規格による表示例を引用し、番号制も含めたコーデックスの表示方法や機能分類と日本の現行表示制度を比較するなど、表示例を慎重に精査して検討が行われました。

2.無添加、不使用の表示の在り方

現行:消費者の誤認を招く無添加表示について指摘されています。その要因としては、無添加等の表示の根拠やルールが曖昧なこと、表示禁止事項の解釈を示す通知が不明確なことがあります。同じく人工甘味料や合成保存料などの用語にも問題があることが指摘されています。添加物の表示は天然と合成の区別なく表示することが平成元年に整理されており、そもそも人工や合成と天然を表示上区別していないため、天然の文言は禁止であること、また合成(例:合成保存料)や人工(例:人工甘味料)と表示する場合、「無添加」「不使用」を使うために被せる言葉として「人工」「合成」が使われているのではないかという指摘もあり、(例:合成着色料不使用)これらの様々な矛盾が消費者の誤認を招く結果となっています。また、そもそも基準のない用語(例:化学調味料の「化学」の部分)が使われていることも問題点として挙げられます。

整理の方向 ⇒ 無添加や不使用の表示が食品表示基準の禁止事項に当たるか否かを明確化するためのガイドラインを新たに策定することが提案されました。また、消費者の誤認を防止する観点から「人工」「合成」の用語を削除することが適当であるとされました。

「人工」「合成」に関する食品添加物の表示基準の改正
この検討会の報告を受け、食品表示基準より「人工」「合成」の用語を削除する改正案(内閣府令)が提案されました。パブリックコメントと消費者委員会食品表示部会の審議を経て、2020年7月に改正した食品表示基準が施行されました。経過措置期間は2022年3月までとなっています。

3.栄養強化目的で使用した食品添加物の表示

現行:食品表示法制定前のJAS法においては栄養強化目的で使用された添加物は表示をするとされ、食品衛生法では別途栄養成分で表示することが適当とされ、添加物表示は不要となっていたため、両法の表示基準部分が合体した食品表示法では、表示義務がある食品とない食品が存在しています。

整理の方向 ⇒ 消費者の分かり易さの観点から原則全ての加工食品に栄養強化目的で使用した食品添加物の表示をする方向になりました。ただし消費者意向調査や、事業者がどの程度の影響を受けるのかなど実態調査を行い、消費者委員会での議論も尊重しながら検討することとします。

4.食品添加物表示の普及、啓発、消費者教育について

現行:食品添加物やその表示に関し、消費者の理解が進んでいないことが課題になっています。

整理の方向 ⇒ 理解を進めるために行政・消費者・事業者が連携し、特に世代に応じたアプローチを実施していこうとなりました。消費者意向調査では、安全性評価されたものや長い食経験があるものとして国が使用を認めたものが使われていることを知っている人は35.8%という報告があり、なかなか使用目的や機能までは理解されていない結果となっています。食品添加物に関する情報をどこから得ているかは世代によって違いがあるので、学生向け、子育て層向けなど世代を分けて、関係団体と連携しながら効果的なアプローチを今後は行っていきます。

●無添加、不使用の表示の在り方に関するその後の動き

食品表示基準第9条には「表示禁止事項」の考え方があり、実際のものより著しく優良または有利であると誤認させる表示が禁止されています。「無添加」や「不使用」の表示がこの第9条の表示禁止事項に当たるかどうかを判断するためのメルクマールが必要ではないか、という意見が検討会の中で出されました。この検討結果を受け、新たに「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン検討会」が2021年3月にスタートしました。おおよそ一年かけてガイドラインを作成、公表、関連Q&Aの改正などを行う予定です。検討に際しては2020年度に行った消費者意向調査の結果も参考にします。また、ガイドラインの対象は容器包装上の表示となりますが、本ガイドラインを参考にすることで既存の公正競争規約のバラつきが統一されることや、食品表示上は規制の対象でない広告やWeb上での不使用表示が消費者の誤認に繋がっている事例が縮減されることを目指します。

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