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民事裁判IT化について 消費者が知っておくべきこと〜第2弾〜
開催報告

 全国消団連では2019年11月22日に、裁判手続のIT化で検討されている内容について、消費者が知っておくべき論点についての学習会(第1弾)を行いました。

 現在、法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会で検討がされた「民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する中間試案」のパブリックコメントの募集が始まっています。(5月7日締め切り)。その後も、検討がされ、2022年に民事訴訟法が改正される予定です。

 このパブリックコメントは消費者が意見を言う大事なタイミングです。裁判について消費者は不慣れなところも多くあり、またIT機器に慣れていない方もいます。オンラインを利用した裁判は便利であり、迅速に行われるように感じますが、国民の誰にとっても公平な裁判を受ける権利を考えていかなければなりません。

 講師の先生からは、裁判IT化における問題点や論点について、消費者に重要となる点を中心に、わかりやすく説明をいただきました。

【日時】2021年3月26日(金)10時00分〜12時00分〔Zoomを活用したオンライン学習会〕

【講師】鈴木 敦士さん(弁護士)

【内容】「民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する中間試案」について講演、質疑応答

【参加】57人

概要(事務局による要約)

■「民事訴訟法(IT化関係)の改正に関する中間試案」について

鈴木 敦士さん(弁護士)

 民事裁判手続のIT化の主な内容として3つがあります。
 「e提出」は、裁判に必要な資料をオンラインで提出すること。
 「e法廷」は、裁判所に行かなくてもウェブ会議などで裁判手続に参加できること。
 「e事件管理」は、裁判で使用する資料が電子文書になるので、電子的に記録を管理し、裁判運用を行うこと。これは、裁判所側の話になります。

 今回は、「民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する中間試案」の中でも、消費者の権利の観点から、権利救済に資すること、利用可能な費用でサービスが提供されることやプライバシーの保護の観点を中心に説明をします。
※各項目は中間試案にある項目です。

 中間試案の「インターネットを用いてする申立て等によらなければならない場合」では、IT化を義務化して、電子的に提出するか、義務化しないで紙の書面の提出も可とするかについて、3つの案が提示されています。
 オンライン提出のための機器を持っていない人や、その習熟度などの懸念もあり、裁判を受ける権利は重要な人権なので、書面でも提出できる選択肢を残した方がよいと考えます。また、書面でも電子的にも提出できるとすれば、電子的に提出する方が便利でないと誰も利用しなくなるので、書面でも電子的にも提出できるとした方が、使いやすいシステム構築につながるのではないかと考えます。

 「システム送達」の項目では、送達は、訴訟手続において、重要な書類を裁判所から送る方法ですが、現在は、郵便の特別送達で送られ、当事者が署名をして受け取り、郵便局から報告書が裁判所に届き、本人が受け取ったことがわかります。電子的に重要な書類を送ることについて提案されています。

 「公示送達」は、現在は裁判所の掲示板に連絡先が分からず書面を送れない相手方への連絡文書を貼り付け、相手方は、書面を裁判所で受け取れるとするものですが、ウェブサイトに掲載してはどうかという提案です。

 「新たな訴訟手続」では、裁判所での事件件数が減っているのは、裁判にかかる時間が予測できないので裁判手続が使われなくなっているとの考えから新しく提案されています。IT化とは、関係がありません。裁判は、消費者が交渉力や情報に格差がある中で、自分の権利が守られ、権利回復しやすい手続をすることが重要で、早く終わることに重きを置くべきではないと考えます。

 「和解」の項目でも、「新たな和解に代わる決定」が提案されています。和解は、お互いの合意があって成立するものですが、この提案は、裁判所が解決案を提示して、一定期間に異議を申し立てないと判決と同じ効果が生じるというものです。ある程度のニーズはあるとの意見もありますが、裁判官が事件を早く処理をしたいために、深く考えずに案を提示してくるのではないかとの懸念もあります。消費者事件は、証拠をよく分析し慎重に判断しないと消費者側が勝てるという結論にならないことがあります。また、消費者はその提案を断りづらい場合や不利な和解にならないか判断が難しい場合があるとの懸念があります。

 「訴訟記録の閲覧等」では、訴訟の記録を誰がどこで見ることができるのかについて提案されています。現在、判決の原本は50年、証拠や準備書面などは5年保存されていて、裁判所内だけではなく倉庫で保存されているものもあります。誰でも見ることができますが、事件番号などを特定しないといけないので、事実上は制約があります。また、コピー出来るのは、当事者及び利害関係のある人です。IT化によりデータで保存されるので、最寄りの裁判所で閲覧することができることになります。それに加えて、裁判所外の端末、すなわち自宅で自分のパソコンで見ることができるようにするかという問題です。自宅等のパソコンで表示された画面の写真を撮ることを制限できないことから、裁判所外の端末で閲覧できるのは、プライバシー侵害の問題があるのではないかと考えます。

 裁判において書面で提出された場合に電子化する必要があります。民事裁判IT化によって手数料は誰が負担をするかについて問題になります。書面でも電子的にも提出が可能とした場合、裁判所が電子化しても、裁判所の管理や相手方の閲覧が容易になるだけで、書面で出す人にはメリットはありません。書面で出した人の費用負担が重くなるのは、書面で出す人に不利益を課すことになり問題があるのではないかと考えます。

以上

■全国消団連では、「民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する中間試案」に関する意見を
 4月5日に提出いたしました。

http://www.shodanren.gr.jp/database/450.htm

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