[このページについてのご意見、お問い合わせなどはメールにて webmaster@shodanren.gr.jp までお送りください。]

全国消団連・トップページへ戻る


まさに青天の霹靂!
特定商取引法・預託法における拙速な書面交付のデジタル化に反対する!
緊急オンライン院内集会 開催報告

 今国会で改正される予定の特定商取引法および預託法において、2020年の年末に急遽盛り込まれた、「書面交付の電子化」問題は、私たちにとって、まさに「青天の霹靂」でした。この問題は2020年8月に報告書がまとめられた消費者庁の検討委員会でも、まったく論議されていない内容です。

 消費者の利益を守ることを目的に策定されている両法律の趣旨からすれば、社会のデジタル化が進む中においても、書面による契約書等の交付の意義を踏まえて、慎重に検討されるべきであるとして、「全国消費者行政ウォッチねっと」と共催で、緊急オンライン院内集会を開催いたしました。

【日時】2月24日(水)12時00分〜13時00分

【内容】1.これまでの経緯と書面交付デジタル化の問題点 池本誠司さん(弁護士)
2.相談現場から見たデジタル化の問題点〜書面交付に関連するトラブルの実態〜
石田幸枝さん(全国消費生活相談員協会)
3.各団体からの声
4.参加議員からのご挨拶

【参加】約300人

概要(事務局による要約)

1.これまでの経緯と書面交付デジタル化の問題点

池本誠司さん(弁護士)

 消費者庁は、特定商取引法の訪問販売・連鎖販売取引等の取引類型や、商品預託法の預託取引契約について、消費者の承諾を要件に、書面交付義務の電子化を認める法改正を進めようとしています。

◇契約書面の交付義務とは

 特定商取引法・預託法では事業者は契約内容を一覧できる契約書面を消費者に渡すことが義務付けられています。契約書面を受け取った消費者は、不利な契約内容やクーリング・オフ制度に気付き、考え直すことができます。

◇書面交付義務が電子化されると

 訪問販売などの不意打ち的な勧誘では、内容をよく理解しないで不本意な契約をしてしまうことなどから、年間7〜8万件の相談が寄せられています。マルチ商法も商品預託取引もトラブルが多い取引です。

 契約書は通常でもA4版×2〜3頁あります。訪問販売の際、タブレットで契約内容が示されても、その中で自分に関係する情報を探すことは困難です。業者の説明を信じてしまい、タブレット画面にサインをして契約が成立してしまうことになります。また、契約書面は電子データで良いと消費者が「承諾」すると、クーリング・オフに気付く機会を失うことになるのではないかと考えます。

◇電子化についての政府の動き

 デジタル社会の推進の中で、書面の電子化については政府内で論議されてきました。2000年11月8日IT書面一括法の国会審議の消費者担当大臣答弁では、契約書類の電子化について、「契約トラブルが現に多発している法律、例えば、サラ金規制に関する貸金業規制法、マルチ商法規制の訪問販売法等は、本法の対象としない」と明言しています。また、2011年1月20日高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT 戦略本部)での論議では、「(消費者庁・経済産業省)特定商取引法が対象とする取引は、通常の商取引と異なり、自ら求めない突然の勧誘を受ける取引や、ビジネスに不慣れな消費者を勧誘する取引により、消費者が受動的な立場に置かれ・・(中略)・・、高齢者を含む消費者が、電磁的交付について積極的な承諾の意思表示を行い得る環境であるとは言い難い」と述べました。

 しかし、2020年11月9日規制改革推進会議成長戦略ワーキンググループ会議で、「オンラインによる英会話指導契約の事例を紹介し、書面交付義務のためにオンラインにより契約が完結しないことについて、書面の電子化を検討されたいと要請」があり、2020年12月21日規制改革推進会議議長・座長会合で「(消費者庁)特定継続的役務提供における書面交付義務について、消費者の承諾を要件として、電磁的方法を可能とするよう改正措置を講じる(通常国会で提出)」と回答し、さらに、2021年1月14日消費者委員会本会議では「オンラインによる契約類型に限らず、対面取引による訪問販売・連鎖販売取引・預託取引等まで含めて一律に書面の電子化を進める方針」であると説明がありました。

◇デジタル社会の推進の中においても、本当に全てを電子化する必要があるのか

 デジタル社会の推進は社会全体のニーズであるとの考え方がありますが、今回の規制改革会議の要請からすれば、オンラインで完結する特定継続的役務提供の契約だけを対象とすれば足ります。対面取引ではその場で直ちに契約書面を交付する義務があり、電子化によって取引の迅速化につながりません。「国民が安全で安心して暮らせる社会の実現」を目指すために、消費者被害が拡大する施策には反対です。

2.相談現場から見たデジタル化の問題点〜書面交付に関連するトラブルの実態〜

石田幸枝さん(全国消費生活相談員協会)

 訪問販売や電話勧誘販売でのトラブル・被害は、高齢者に多くなっています。現在は、こうした高齢者の被害については、家族や見守りの方々が契約書面等を見つけて気付くケースが多くあります。オンライン書面交付になってしまうと、本人以外は気付くこともできず、被害が拡大する恐れがあります。

 高齢者の相談では、スマートフォンの操作に不慣れで画面を確認することができず、消費生活センターに来所をしてもらい相談を進めることはよくあります。オンラインで書面交付をされたり、マイページなどに書面を送付されても、そのページを確認できない人もいるため、クーリング・オフの機会を逸することになりかねません。

 若年層の連鎖販売取引の場合、勧誘者が知人や友人であることも多く、信用してしまいがちですが、契約とともにオンラインでの交付を安易に承諾してしまうと、「PDF を送っておいたから後で確認して」と言うだけの説明で確認しないこともあります。また、PDF が専用のソフトなどを入れなければ閲覧できないスマートフォンもあり、契約書の確認ができないなども考えられます。そもそも連鎖販売取引は、概要書面・契約書面の交付が必要で、書面の枚数はかなり多くなっています。それらの書面をオンライン交付された場合、小さなスマートフォンで契約内容すべてを確認することは容易ではなく、プリンターを所持していない消費者も多く自分で紙媒体にすることもできず、契約内容を確認しないままとなると危惧されます。

 メールで契約書面を送付されても、様々なメールに紛れて気付かないことや、ネットワーク障害や端末の故障などで受け取ることが出来ない場合もあり、クーリング・オフの期間が過ぎてしまう懸念もあります。

 特定商取引法における契約書面交付の電子化に反対します。

3.ご発言いただいた参加団体

 「全国消費者団体連絡会」「全国消費者行政ウォッチねっと」「日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会(NACS)」「日本消費者協会」「日本弁護士連合会」「日本司法書士連合会」から、特定商取引法・預託法における拙速な書面交付義務の電子化に反対するご発言がありました。

4.ご参加の国会議員からご挨拶をいただきました

   
立憲民主党 衆議院
柚木道義議員
  立憲民主党 衆議院
尾辻かな子議員
  日本共産党 衆議院
畑野君枝議員
         
   
立憲民主党 参議院
宮沢由佳議員
  国民民主党 参議院
田村まみ議員
  社民党 参議院
福島みずほ議員

以上

≫ 開催案内はこちら