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安心なネットショッピングに向けて
〜デジタル・プラットフォームにおける課題〜 学習会報告

 「新たな生活様式」の暮らしで、インターネットを利用する機会が大変多くなりました。総務省の「家計消費状況調査」によると、ネットショッピング支出額は7月に昨年度比較で15.1%増加しています。特に、様々な商品を1つのサイトにまとめたデジタル・プラットフォームは便利であるため、利用は大きく増加していますが、利用の中では、「商品代金を払ったのに商品が届かない」「事業者に問合せても電話もつながらない」「届いた商品が不良品であった」などのトラブルも発生しています。

 昨年12月より消費者庁で開催の「デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備等に関する検討会(以下、検討会)」では、8月24日に論点整理が公表されました。この秋以降、この論点整理を基にして、引き続き検討会が行われる予定です。

 この学習会では、デジタル・プラットフォームにおける課題と論点について、相談事例を踏まえながら学習しました。

【日 時】10月27日(火)14時00分〜15時40分〔Zoomを活用したオンライン学習会〕

【講 師】黒木理恵さん(消費者庁 消費者制度課長)
玉木祐介さん(国民生活センター 相談情報部 相談第2課)

【参 加】61人

概要(事務局による要約)

■デジタル・プラットフォームに関連する相談の概要と課題

玉木祐介さん(国民生活センター)

 プラットフォームの中でも、取引の場を提供するプラットフォームには、「オンライン・ショッピングモール」「インターネットオークション、オンライン・フリーマーケット」「チケット転売仲介サイト」「オンラインゲームプラットフォーム」などがあります。

 インターネット通販全体での消費者相談は、2018年度約20万件、2019年度約22万件、2020年度はこれまでで約13万件の相談が寄せられており、前年度の同時期と比べても増加傾向になっています。

◇相談事例と課題

①「オンライン・ショッピングモール」

事例)注文した商品が届かず、販売業者と連絡が取れない。デジタル・プラットフォーム企業(以下、運営業者)にも連絡したが販売業者と話し合うようにと回答された。

課題)運営業者が利用規約を理由に、販売業者の連絡先を教えてくれない。
運営業者が、苦情の対応が不十分な販売業者に対して改善を求めることをしない。
販売業者が特定商取引法の表示(事業者の名称、住所、電話番号など)がない。

②「インターネットオークション、オンライン・フリーマーケット」

インターネットオークションの相談は減少傾向ですが、消費者同士で不用品などを売買する、オンライン・フリーマーケットは増加傾向にあります。

事例)商品が偽物であった、商品が写真と異なっていたなどの問い合わせに対し、運営業者からは個人間取引なので介入できない、当事者双方が合意すれば返金処理は可能との回答だった。

課題)運営業者は利用規約により当事者間で解決することとしている。
取引相手の連絡先が個人情報であるために運営業者から教えてもらえない。
出品禁止商品(現金、偽ブランド品など)は、運営業者も取り締まりをしているが、出品が継続されている場合もある。

③「オンラインゲームプラットフォーム」

オンラインゲームの相談は増加傾向、特に、未成年者トラブルが増加しています。

事例)親のクレジットカードを子どもが無断で使用して課金していた。

課題)ゲーム会社はアカウント情報などを把握していないため交渉相手にはならない。
海外のゲーム会社の場合、特定商取引法などの表示がなく、連絡が取れないケースがある。

◇デジタル・プラットフォームに関連する要望

 デジタル・プラットフォーム企業は、安全・安心な取引環境を消費者に提供する責任があります。そのため、事業者・利用者(出品者・購入者)に対して、連絡先の確認、商品・サービスの内容や広告・表示の内容のチェックなどの対応を行う必要があります。また、販売業者と消費者との間のトラブル発生時における解決や被害回復に向けた対応や、ルールを守らない販売業者への指導や措置(商品・サービスの取り扱い中止、取引・アカウントの停止など)を十分行う必要があります。

■「デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備等に
  関する検討会」での論点整理について

黒木理恵さん(消費者庁)

◇デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引

 デジタル・プラットフォーム企業と、出品者(販売業者)の間における取引については、今年6月に「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」で規律されています。また、出品者(販売業者)と購入者(消費者)の間には特定商取引法(通信販売)が適用されています。しかし、デジタル・プラットフォーム企業と購入者(消費者)の間の規律がありません。

 デジタル・プラットフォームにおける消費者取引は、BtoC(事業者から消費者)だけではなく、売主が個人(消費者)であるCtoC(消費者から消費者)市場の規模も拡大しています。さらに、コロナ禍により昨年3月と比較をすると、ネットショッピングの頻度はあらゆる年代で増えています。また、デジタル・プラットフォームにおける取引においては、販売業者(出店者・出品者)から購入しているのか、デジタル・プラットフォーム企業から直接購入しているのか、よく理解していない消費者もいます。

 消費者トラブル事例として、購入したモバイルバッテリーから発火した事故が起こり、さらに運営業者から販売業者の連絡先を開示してもらえず、損害の大部分は賠償されなかった事例や、フリマアプリで要冷蔵の商品を常温で配送していた事例、偽ブランド品を販売していた販売事業者の特定商取引法の表示がデタラメで連絡が取れない事例、などがあります。ほかにも、レビューを信頼させて商品を購入させるための「やらせレビュー」問題があったり、購入履歴や閲覧履歴を活用して表示される「ターゲティング広告」などを不快に感じる消費者も多くいます。

◇検討会の論点整理について

 消費者庁の検討会での現在までの論議状況を論点整理としてまとめ、8月に公表しました。

 オンラインにおける商品取引の特徴として、販売業者とは非対面での遠隔取引になるので、信用力がない小さな事業者や個人、その他悪質事業者も容易に入ってくることができると言えます。購入者は多くの選択肢があり便利ですが、販売業者の信用を見極めることは難しく、基本的にはデジタル・プラットフォーム企業への信頼に基づいて利用していると言えます。

 今後の施策の基本的視点として、「消費者の安全・安心を確保する必要性」「様々な関係者による総合的な取り組みの推進と見える化」「悪質・重大事案への実効性のある取り組み」を基にしています。検討の方向性では、消費者の安全・安心と消費者からの信頼性の確保のため、①違法な製品や事故のおそれのある商品等に関わる取引による重大な消費者被害の防止、②緊急時における生活必需品等の流通の確保、③一定の事案における取引の相手方の連絡先の開示を通じた紛争解決・被害回復のための基盤の確保、④自主的な取り組みの促進と取り組み状況の開示を通じたデジタル・プラットフォーム企業のインセンティブの設計等については、必要な法的な枠組みも含め優先的に年内を目途に検討していきます。それ以外、中長期的課題についても引き続き検討をしていきます。

■全国消団連では「デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備等に関する検討会」の論点整理についての意見を11月6日に提出いたしました。

http://www.shodanren.gr.jp/database/442.htm

以上

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