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「デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における
環境整備等に関する検討会」の論点整理についての意見を提出

 消費者庁の「デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備等に関する検討会」では、8月24日に論点整理が公表されました。今後、論点の中から、必要性が高く優先的に対応が求められるものについて、必要な法的な枠組みも含め年内を目途に検討されることになっています。

 「新しい生活様式」により、インターネットでの買い物、とりわけデジタル・プラットフォームの利用が広がる中において、消費者がより安全な環境で安心して利用できるよう、デジタル・プラットフォーム企業の場の提供者としての責任をしっかり持って事業を行うための法整備が必要であると考え、全国消団連では、11月6日に以下の意見を「内閣府消費者担当大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長、国民生活センター理事長、デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備等に関する検討会座長」に提出いたしました。

2020年11月6日

「デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における
環境整備等に関する検討会」の論点整理についての意見

一般社団法人 全国消費者団体連絡会

 消費者庁の「デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備等に関する検討会(以下、検討会)」では、8月24日に論点整理が公表されました。今後、論点の中から、必要性が高く優先的に対応が求められるものについて、必要な法的な枠組みも含め年内を目途に検討されることになっています。

 デジタル・プラットフォームに関する法整備としては、今年5月に「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」が可決、成立しました。この法律では、主にデジタル・プラットフォーム企業から出店者・出品者に向けた情報開示や、相互理解を深めるための措置などの規制が導入されています。しかし、消費者に向けた措置は、ランキングの算定方法の開示など一部に限られており、デジタル・プラットフォームと消費者との関係における法律は、十分に整備されていない状況です。

 「新しい生活様式」により、インターネットでの買い物、とりわけデジタル・プラットフォームの利用が広がる中において、消費者がより安全な環境で安心して利用できるよう、デジタル・プラットフォーム企業の場の提供者としての責任をしっかり持って事業を行うための法整備が必要であると考え、以下の意見を申し述べます。

1.デジタル・プラットフォームに悪質な出店者・出品者が存在しないよう、本人確認をより厳格に行うための、法整備を求めます。

 消費者は利用するデジタル・プラットフォーム企業を信頼した上で、そのプラットフォーム上にある商品を購入しています。デジタル・プラットフォーム企業は、取引等の場の提供を主な事業としている以上、その責任として出店者・出品者の情報を正しく把握し、偽物などの違法な製品を販売する、あるいは消費者からの問い合わせに応じないなどの悪質な事業者は、排除されていることが当然だと考えます。しかし、実際の消費者被害として、偽物や不良品が販売されている、場を提供しているデジタル・プラットフォーム企業自身が出店者・出品者と連絡が取れない、などの事例があります。

 こうした悪質な出店者・出品者が存在する実態を踏まえれば、より厳格な本人確認ができるよう、一定の法整備をすべきと考えます。消費者被害の防止が未然に図られることで、紛争解決や被害回復が必要となる機会が減少し、消費者もより安全な環境で安心して利用できるようになるとともに、デジタル・プラットフォーム企業としても、対応のためのコストを削減することができると考えます。

 これまで消費者のくらしの利便性に寄与してきたデジタル・プラットフォームが、今後も健全な場として発展していくためにも、悪質な出店者・出品者が存在しないよう、本人確認をより厳格に行うための、法整備を求めます。

2.デジタル・プラットフォーム企業が取引における仕組みやルール、安全・安心を確保するための取り組みを消費者にわかりやすく開示するための、法整備を求めます。

 デジタル・プラットフォームにおける仕組みやルールについては、利用規約などに示されています。しかし、利用規約に記載されている情報量が多いうえに内容もわかりにくく、また提供するサービスが多岐に渡ることから、何種類もの規約がある場合もあります。売買契約の成立や返品、免責、個人情報の取り扱いなど消費者にとって重要な項目については、より分かりやすい場所に、より分かりやすい文言で情報提供が行われる必要があります。

 また、デジタル・プラットフォーム企業では、これまでも消費者の被害防止等に向けて自主的な対応を進めていることは承知していますが、こうした取り組みについては、消費者に広く知られていません。消費者の安心につなげるためにも積極的に開示し、周知していく必要があります。

 消費者がデジタル・プラットフォームの仕組みや特徴を理解し、ニーズに合ったサービスを適切に選んで利用することができるよう、それぞれのデジタル・プラットフォームの仕組みやルール、消費者の安全・安心を確保するための取り組みを消費者にわかりやすく開示するための、法整備を求めます。

3.デジタル・プラットフォームを通じて把握されるパーソナルデータについて、消費者が自ら利活用される対象や範囲を把握し、意に反して他者に利用されることがないよう、取り扱いに関するルール作りを求めます。

 デジタル・プラットフォームの利用にあたり、消費者は個人情報を含め、購入履歴や閲覧履歴など、自らのパーソナルデータを提供します。デジタル・プラットフォーム企業による消費者の情報の利活用については、基本的に利用規約やプライバシーポリシーなどに大枠の方針が記載されているものの、その詳細な対象や範囲が明確に示されていない場合が多くあります。そのためターゲッティング広告など消費者の意に反して他者に利用されることもあり、パーソナルデータの取り扱いに関するルール作りが必要です。

 デジタル・プラットフォームを通じて把握されるパーソナルデータについて、消費者が自ら利活用される対象や範囲を把握し、意に反して他者に利用されることがないよう、取り扱いに関するルール作りを求めます。

4.デジタル・プラットフォームにおいて消費者被害が発生した際、円滑に解決し被害を回復するための法整備を求めます。

 1.で求めた本人確認の厳格運用が行われるようになったとしても、デジタル・プラットフォーム上に悪質な出店者・出品者が存在する場合や、故意ではない形で違法・危険な商品が販売される等により、消費者被害が発生する可能性があります。

 こうした被害を未然に防止し、消費者がデジタル・プラットフォームを安心して利用できるよう、違法・危険な商品等の出品を排除することはもちろんですが、たとえトラブルが起こってもデジタル・プラットフォーム企業自身が紛争を円滑に解決し被害を回復する、またはその協力をするための、法整備を求めます。

5.社会のデジタル化に取り残される消費者がでないよう、インターネット全般へのリテラシーを高める消費者教育を強化するとともに、消費者団体等が制度の整備・検討に参画できる仕組みの構築を求めます。

 「新しい生活様式」が求められる中で、インターネットでの買い物をはじめ、学校の授業や企業の会議等、社会におけるデジタル化が急速に進んでいます。しかし、全ての消費者がこうした環境にすぐに対応できるものではありません。

 社会のデジタル化に取り残される消費者がでないよう、デジタル・プラットフォームの利用だけでなく、インターネット全般へのリテラシーを高めることが必要です。そのための消費者教育の強化に取り組むことを求めます。

 また、デジタル・プラットフォームを含め、社会のデジタル化に関する様々な検討に際しては、デジタル・デバイドへの対応も考慮する必要があり、様々な場面における消費者の脆弱性について知見を有する消費者団体等が、制度の整備・検討に参画できる仕組みの構築を求めます。

以上