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悪質な商法をなくすために!
〜特定商取引法および預託法の改正に向けた取り組みについて〜
学習会報告

 消費者庁「特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会(以下、検討委員会)」では8月19日に報告書がまとめられ、公表されました。

 報告書には、大きな社会問題となった豊田商事・安愚楽牧場・ジャパンライフ・ケフィア事業振興会・WILL(株)など、高齢者をはじめ、多くの消費者に財産被害を及ぼす悪質な販売預託商法については、本質的に反社会的な性質を有し、行為自体が無価値と捉え、「販売を伴う預託等取引契約の原則禁止等」と明記されました。

 また、消費生活相談で増加している、お試しのつもりが定期購入問題は規制を強化、消費者の不安につけ込む、マスクなどの送り付け商法(ネガティブオプション)についても、何ら正常な事業活動とはみなされないものとして制度的な措置を講じる必要があるとされました。

 この報告書の内容に沿って法改正が進むことを望み、消費者庁より説明をいただき、今後の運動につなげていくため、学習会を行いました。

【日 時】10月6日(火)14時00分〜15時40分〔Zoomを活用したオンライン学習会〕

【講 師】笹路 健さん(消費者庁 取引対策課長)

【参 加】109人

概要(事務局による要約)

■特定商取引法及び預託法における規制・制度改革に向けた検討について

笹路 健さん

◇規制・制度改革の方向性

1.基本的考え方

①「販売を伴う預託取引」など、これまで数々の消費者被害を発生させてきた悪質で詐欺的な事業者にターゲットを絞り、実効的な規制・制度改革を行うことが必要であると考えています。

②消費者取引をめぐる環境の変化では、ネット通販の活用が増加しています。便利である反面、トラブルも多く、「詐欺的な定期購入」問題など、消費者の誤認を誘発させる契約も起こっています。新しい環境に、先手で対応することが必要であると考えています。

③「新しい生活様式」が模索される中で、劇的に生活の変化がありました。「マスクの送り付け商法」など、環境変化の中で不安につけ込むような事例もあり、消費者の不安を払拭するための環境整備が必要であると考えています。

2.具体的なアクション(特定商取引法・預託法の改正)

(1) 消費者の脆弱性につけ込む悪質商法への抜本的な対策強化

 取引の際の状況次第で全ての消費者が脆弱性を持っていると言えます。消費者の脆弱性につけ込んで不当な利益を追求する悪質商法に対して厳正に対処すべきであるとし、抜本的な規制・制度改革を行っていきたいと報告書がまとまりました。

<預託法の改正>
「特定商品制の撤廃」
「販売預託の原則禁止等」

 販売を伴う預託取引は、消費者が購入して預かったとされる商品が、実際には存在していない、著しく少ないなどのケースがほとんどです。加えて、購入者への配当収入が別の消費者に売った代金を配当することで、自転車操業的に利益の還元を装っています。検討委員会では、販売を伴う預託等取引契約は、本質的に反社会的な性質を有し、行為それ自体が無価値と捉えるのが相当であることから原則禁止とする、との結論になりました。その前提で、抜け道を作らないためにも、対象の明確化等を実務的に検討し、違反行為(禁止したのに行った場合)の十分な抑止力を持った法定刑を設け、締結された契約は民事上無効とすること(そもそも公序良俗に反するので無効)としました。検討委員会の委員は、事業者、弁護士、専門家、消費者など、様々な立場から参加し論議を行いましたが、委員総意での報告書とすることが出来ました。

(2) 信頼性のある通信販売市場の発展に向けたルール・環境整備

<特定商取引法の改正>
「詐欺的な定期購入商法への対応」

 詐欺的な定期購入商法は、定期購入であることが容易に認識できない広告表示や、いつでも解約可能としながらも契約解除に応じないなどの問題があります。顧客の意に反して通信販売に係る契約の申込みをさせようとする行為等の規制を強化するよう検討していきます。詐欺的な定期購入商法で意に反して契約の申込みを行わせる行為等を念頭に、解約・解除を不当に妨害する行為を禁止するとともに、民事ルールの創設等をする必要があるとされました。

 特定商取引法の「インターネット通販における『意に反して契約の申込みをさせようとする行為』に係るガイドライン」の見直しを行います。ガイドラインは悪い例には該当しないと事業者が抗弁することがありますが、消費者が誤認するような契約は合法ではないので、事業者の言い逃れができないように整備し、取り消しルールや解約妨害も禁止行為として位置付けたいとしています。

(3) 「新しい生活様式」における課題への機動的な対応

「通信販売市場の信頼、透明性、公正性を確保する官民の取組・連携の強化」
「送り付け商法について諸外国の法制も参考に必要な実効的な制度を措置」

 マスク等の送り付け商法(ネガティブ・オプション)では、特定商取引法で受け取った消費者側に14日間の保管義務がありますが、報告書送り付け商法は正当な行為ではなく、ビジネスではないとされました。消費者に保管義務が生じるような、不条理なことがないようしたいと考え、EUや諸外国の法制を参考に、より実効的な制度的な措置を講じる必要があるとされました。

3.スケジュール

 消費者庁の検討委員会では、委員の方々の精力的な議論により、消費者をだますような悪質な商法への対応についてまとめることができました。現在、法律改正の具体的な内容をつめているところです。実務的な検討をさらに行った上で、来年の通常国会に法案を提出し、成立させたいと考えています。そのためにも、一人でも多くの方に理解してもらい、各地域でこの改正が国民にとって重要なものであること、できるだけ早く実現することが大事であることを、みなさんと一緒に手を携えて進めさせていただけばと思っています。

■全国消団連の取り組みについて

 全国消団連では、検討委員会報告書を踏まえ、『「特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会」の報告書に関する意見』を9月7日に提出しました。

http://www.shodanren.gr.jp/database/438.htm

 豊田商事やジャパンライフなど、長年にわたり大きな社会問題となった販売預託商法や、消費者相談が急増している詐欺的な定期購入商法などをなくすために、預託法及び特定商取引法の改正に向けた取り組みを全国で進めることが必要であると考えています。

 全国消団連から、各地域の消費者団体や地元弁護士会などと一緒に、「地方議会から国への意見書提出を求める取り組み」について、呼びかけを行いました。

以上

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