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ブロードバンドの現状と課題 学習会報告

 パソコンやスマートフォンを活用して、ネットショッピングや動画の視聴、コミュニケーションツールの活用など、インターネットを利用する機会が増えています。

 また、新型コロナウィルス感染症の拡大防止として政府より示されている、「新しい生活様式」の中で、テレワークやオンライン授業のためにも、高速で通信できる光回線などのブロードバンドが必要不可欠なものとなっています。しかし、こうしたブロードバンドを全国に配備し、維持・管理を行っていくためには、大きなコストがかかると言われています。

 総務省では、2020年4月より「ブロードバンド基盤の在り方に関する研究会」において、ブロードバンドなどの通信インフラにおけるユニバーサルサービスの在り方について論議が進められています。離島などの地域でも、地理的格差が発生しないようなブロードバンドによる通信環境の維持をめざすには、ユニバーサルサービスの導入が解決の手段の1つと言われています。消費者はどの程度の負担をすればよいのか、また公平性の観点から問題はないのかなど、ブロードバンドの現状と課題について、基本的なところから学ぶ学習会を開催いたしました。

【日 時】9月16日(水)14時00分〜15時30分 〔Zoomを活用したオンライン学習会〕

【講 師】香月 健太郎さん
(総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 事業政策課 調査官)

【参 加】42人

概要(事務局による要約)

■ブロードバンド基盤の在り方について

香月 健太郎さん

◇ブロードバンドの現状について

 ブロードバンドは、時代とともに進化し、通信速度も速くなり、大容量の動画を瞬時に見られるなど、様々なサービスを生み出しています。

 有線を使ったサービスの進化では、音声通話の「電話」から、「ISDNサービス」を経て、「ADSL(高速デジタル通信)」によりインターネットが高速で見られるようになりました。また、「CATV(ケーブルテレビ)」では、放送と共にインターネットサービスも提供し、「FTTH(光ファイバ)」では、各家庭まで、より高品質で大容量のデータを送る、受け取ることが可能になりました。

 一方、無線サービスの携帯電話は、「第3世代デジタル方式」になり、メールが送れる、インターネットが見られるようになり、今は「第4世代(LTE/4G)」が主流となっています。今後は、より高速で低遅延となる「第5世代(5G)」になっていきます。

◇ブロードバンド(有線・無線)の特徴

 ブロードバンドには、最大伝送速度(理論値:名目速度)がありますが、使っている人でシェアするので実効速度(実際の速後)は下がります。有線のブロードバンドでは、マンションや地域の戸数でシェアされています。無線の携帯電話は、ビルの上などにある基地局と携帯端末間の電波の送受信により通信されます。基地局から電波の届くエリアは決まっていて、そのエリア内で利用している人数でシェアすることになります。また、ビル影や天気(雨、雪)などの環境により電波が届きにくくなる場合があります。無線の方が不確定要素が多く、実効速度を確保するのが一般に困難と言われています。

◇第5世代移動通信システム(5G)

 5Gの主要性能は、「超高速:2時間の映画を3秒でダウンロードできる(第4世代LTE/4Gは5分)」「超低遅延:送信側と受信側とのタイムラグが0(リアルタイムが実現)に近づく(LTE/4Gの10倍の精度)」「多数同時接続:複数(約100個)の端末と接続ができる(LTE/4Gは数個)」です。

 5Gのサービスは始まっていますが、メリットを最大限機能させるためには、基地局を変えるだけではなく、ネットワーク全体を5G用に置き換えなければならないので、まだ時間がかかると言われています。

◇現在の整備状況と今後について

 「FTTH(光ファイバ)」の整備状況は、世帯カバー率で98.8%(2019年3月末)です。総務省の補助金を活用して、地方自治体や民間で整備が進んでいます。未整備の地域は、離島や山間地等を有する地域で、約66万世帯になります。

携帯電話のサービスエリアの整備状況は、居住人口のカバー率で99.99%になっています。エリア外人口は約1.3万人になります。総務省の補助金活用や、電波の割当ての際に提供エリアの拡充を携帯電話事業者に促してきた結果と言えます。

 総務省では、2023年度末までに携帯電話のエリア外人口を全て解消し、2021年度末までに光ファイバ未整備の66万世帯を18万世帯に減少させる計画をしています。

 光ファイバや携帯電話基地局は、民間事業者による整備を基本としていますが、条件不利地域(離島や過疎地域)では、公設公営(国や自治体による設置と運営)や公設民営(国や自治体による設置と事業者による運営)も見られます。しかし自治体の負担も大きいことから、民設民営(民間事業者が設置、運営を行う)への移行を促してきています。

◇ユニバーサルサービスについて

 現行の電気通信分野でのユニバーサルサービスとしては、固定電話、公衆電話、緊急通報があります。家にある固定電話について、NTT東西は、全国どこに住んでいても提供する義務がありますが、条件不利地域では、電話網の維持にコストが掛かるため、固定電話事業者や携帯電話事業者が、NTT赤字分の一部を補填しています。(ユニバーサルサービス交付金制度)

◇ブロードバンド基盤の在り方に関する研究会の検討事項について

 総務省では、ブロードバンドの基盤の在り方について検討しています。

 第Ⅰ期(2020年4月〜8月)の検討では、ユニバーサルサービスを検討する上での留意点や、ブロードバンドをユニバーサルサービスと位置付けた場合の内容などについて検討を行いました。具体的には、①ブロードバンドの位置づけ、②ブロードバンドの内容(伝送速度、安定性、通信容量)、③ブロードバンドの料金水準、料金体系、④ブロードバンドの提供地域、⑤ブロードバンドの提供手段(有線、無線)、⑥整備、維持のどちらを支援対象とするか、の6点について論点整理が行われました。その後、パブリックコメントを募集し、現在は意見の整理中です(9月16日時点)。

 第Ⅱ期(2020年9月頃以降)の検討では、ユニバーサルサービスとして位置付ける場合に、ブロードバンドの提供主体、交付金による補填対象、交付金の負担の在り方、などが検討項目として予定されています。

■その後、質疑応答・意見交換が行われました。

 今後の第U期の検討で、より具体的な論議が進んでいきます。ぜひ注視していきましょう。

以上

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