[このページについてのご意見、お問い合わせなどはメールにて webmaster@shodanren.gr.jp までお送りください。]

全国消団連・トップページへ戻る


学習会「預託商法の法整備について」開催報告

 預託商法による消費者被害は、豊田商事・安愚楽牧場・ジャパンライフ・ケフィア事業振興会・WILL(株)など枚挙にいとまがありません。また、高齢者の老後のための資産が狙われているという特徴もあり、被害は深刻です。

 内閣府消費者委員会では「販売預託商法は、事業者が配当を実行している間は、契約者において取引の問題性を認識しにくいこともあり、現行の法律では悪質な販売預託商法に対処しきれないため、新たな法制度が必要ではないか」として、「物品等を販売することから始まる預託取引を規制対象とすること」「早晩破綻することが経験的に明らかな類型の取引形態を禁止し、罰則規定により担保すること」等を視野に入れた検討を行い、2019年8月に預託商法に関する建議及び意見を出しました。建議の中で消費者庁に対し、2020年2月までに法制度の在り方等について検討状況の報告を求めています。

 消費者庁は、預託商法に関する法制度整備に関して、長らく「現行法の執行強化」という姿勢にとどまっていましたが、2020年2月から「特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会」をスタートさせました。こうしたタイムリーな状況のもと、被害拡大を防ぎ、被害回復を促進するために、被害実態および預託商法に関する法制度整備のあり方について学習しました。

【日時】2月21日(金)13時15分〜15時15分

【会場】主婦会館プラザエフ 5階 会議室

【講師】石戸谷 豊さん(弁護士、全国ジャパンライフ被害対策弁護団連絡会団長)

【参加】48人

概要(事務局による要約)

 預託法(特定商品等の預託等取引契約に関する法律)が制定されたのは1986年です。社会問題化すると法律が後追いで作られるような状況で、かつ法律は1回作ってしまうとそのまま放置されるという課題もあります。

 販売預託商法は、事業者が販売した商品を消費者から預かり、別の消費者に貸し出すことで利益を得て配当金が払われ、元本保証があるとして消費者を勧誘しているものです。
 預託法を適用対象から考えると、

①「販売×預託型」(消費者から見れば、モノを買って預ける)
②「シェアリング・エコノミー型」(持っているモノを預ける)
があります。

 問題点として@については、

  • 参入規制がないこと(これにより、悪質業者による大型消費者被害が続発している)
  • 適用対象商品が政令指定制で限定されていること(被害が出ている状況になって後から商品を指定している)
  • 預託取引の部分だけを規制し、クーリング・オフや解除も預託契約に限定されている(モノの動きしか見ておらず、カネの動きを見ていない)
  • 出資法や金融商品取引法との関係で、実務的に不明瞭な部分が生じている

ことがあげられます。
 Aについては、所有物を預託するということでは同じ規制なのですが、シェアリング・エコノミーの業者としては、そもそも預託商法であると思っていない現状があります。

 預託法は、モノの取引だけを見ていて、カネの動きを見る必要が課題です。制定当時からこれでは被害防止ができないとの意見が多くありました。

 ジャパンライフは、2003年に販売預託商法を開始し、2015年9月の消費者庁の立ち入り調査ではモノがないことが発覚しました。2016年12月には1回目の行政処分、その後も行政処分が繰り返され、2017年12月には4回目の行政処分を受けました。2018年3月に破産手続きが開始され、2019年4月に強制捜査が入りました。ジャパンライフは消費者に商品を売り、その商品を預かりレンタル客に貸し出し、配当金を消費者が受け取る仕組みでしたが、利益を生まず、事業として成り立たない状況でした。商品がない、レンタル客もいない中で、次の消費者からの契約で配当金・経費を捻出するという自転車操業でした。

 消費者委員会は、2019年8月に「いわゆる販売預託商法に関する消費者問題について」建議と意見を提出しました。『法制度の整備』として、「物品等が存在しない場合や、預託されている物品の数量が著しく少ない場合などの悪質な類型に対して、罰則による禁止や契約を無効とするべき」との意見がありますが、それはモノのある、なしに着目しています。しかし、ジャパンライフ事件の場合、立ち入り調査に入るまでに12年もかかっています。問題はモノがある、なしには関係がなく、カネの動きに着目するべきだと考えます。

 また、『参入規制の導入検討』として、速やかに検討を進めることとの意見が出されています。この消費者委員会の意見に対して、消費者庁は「販売預託商法を行う事業者を対象とする参入規制を設けることについては、適切ではないと考える」との見解を示しています。その理由として消費者庁は、「参入規制として何らかの要件(許可、届出等)を定めても、悪質な事業者の無許可営業の横行のおそれがある」としていますが、安愚楽牧場やジャパンライフ、ケフィア事業振興会のような大型被害を出す商法(3社で7000億円の被害)を無許可で長時間続けることはできないと考えます。消費者庁は、「参入規制がなくても、制裁は行政処分と何ら変わらない」とも言っていますが、業務停止処分は業務の一部を一定の期間止めるだけにすぎず、ジャパンライフは業務停止期間中も営業をしていたし、登録制であれば取り消すことが出来て終わります。悪質な事業者を参入させない厳格な登録要件の登録制を設けるべきであると考えます。

 消費者庁創設の理念には大変感銘を受けました。質の良い公正な市場のもとで良い商品・サービスを、という基盤がなければイノベーションもありません。ちょうど消費者庁で検討会も始まりましたが、消費者庁はこの原点に立ち返って取り組んでもらいたいと思います。

以上

≫ 開催案内はこちら