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2/4院内集会「実現させよう!公益通報者保護法の実効的改正」開催報告

 2020年通常国会に公益通報者保護法の改正法案が提出されます(3月6日に閣議決定されました)。通報者の範囲拡大、通報要件の緩和、不利益取扱いに対する行政処分などの重要論点について、実効的な法改正が実現するか重要な局面であり、諸団体の共催で院内集会を開催しました。様々な観点からの報告を通じ問題意識を深め、改正に向けた機運を高める機会になりました。

主催:日本弁護士連合会

共催:関東弁護士会連合会、全国消費者行政ウォッチねっと、全国消費者団体連絡会、市民のための公益通報者保護法の抜本的改正を求める全国連絡会

【日 時】2月4日(火)正午〜午後1時30分

【会 場】衆議院 第1議員会館 1階多目的ホール

【参加者】130人

【プログラム】

  1. 通報当事者からの報告(金沢大学事件)
    小川和宏さん(金沢大学准教授)
  2. 企業不祥事からみる公益通報制度の問題点
    大塚喜久雄さん(NACSコンプライアンス経営研究会)
  3. 第三者委員会報告の分析結果
    志水芙美代さん(弁護士・日弁連消費者問題対策委員会副委員長)
  4. 海外法制の動向報告
    林尚美さん(弁護士・日弁連消費者問題対策委員会委員)
  5. 獲得目標についての整理
    拝師徳彦さん(弁護士・全国消費者行政ウォッチねっと)
  6. 関係団体からの決意表明
  7. 消費者庁からの報告
    坂田進さん(消費者庁 審議官)

概要
 公益通報者保護法は2006年4月の施行から14年が経過し、附則で「施行後五年を目途として、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」とされていたものの、改正に至っていませんでした。2018年12月にまとめられた内閣府消費者委員会 公益通報者保護専門調査会報告書では、各論点について一定の方向性が示されました。現在、消費者庁にて改正法案の準備がすすめられ、今通常国会に提出が予定されています。

1.通報当事者の小川和宏さん(金沢大学准教授)報告

 公益通報した3件(①不正経理②医療事故③不正・不公平な成績)で受けた様々な嫌がらせや、通報漏洩された件の報告がありました。最初の通報から約14年が経過し、訴訟も起こしました。小川さんは医療・食品の研究教育者ですが、様々な妨害により、仕事が悲惨な状態になっているとのことです。

 法改正に向けて、「対象範囲を刑事罰付きの法令に限定せず広くし、窓口を一元化」「違反には刑事罰および行政罰を〜事実上容認している攻撃を抑制へ」「行政通報を基本として通報後の調査を可視化『行政通報手続き法』に」との提案がありました。

2.企業不祥事からみる公益通報制度の問題点 大塚喜久雄さん(NACSコンプライアンス経営研究会)報告

 企業内で長い間隠された不祥事が発覚し、社会全体の信頼を失うことが多いですが、発覚の経緯を見ると内部通報しても明らかにされなかったなど、通報制度が十分に活かされていない状況があります。内部通報で適切な対応が得られず外部通報を行う事例や、不利益取扱いを受けた通報者が民事裁判を起こし回復をするために長い道のりが掛かった事例の報告がありました。改善すべき点は、①事業者の通報体制の整備②行政の対応の迅速化と充実③通報者の不利益取扱いに対する行政措置であると提案されました。

3.大企業の不祥事案件での第三者委員会等の分析結果 志水芙美代さん(弁護士)報告

 2015〜2019年頃の公開された報告書、約120件について分析しました。内部通報制度が存在するにも関わらず指摘される問題点は、①制度自体の不備②従業員への周知不足や運用側の理解不足③通報者の通報への不安や通報制度への不信があげられます。内部通報制度が存在するのみでは足りず、従業員周知や通報者保護(守秘義務、不利益取扱いの禁止)の徹底は必須です。また、外部通報である行政通報を行う際の要件の緩和が必要であると報告されました。

4.公益通報者保護のEU指令について 林尚美さん(弁護士)報告

 2019年10月23日に承認されたEU指令は、各加盟国で国内法を整備させる上での最低限の基準です。通報者の範囲について、日本は公務員を含む労働者の地位を有する者だけですが、EU指令では自営業者や退職者なども含まれます。内部通報体制では50名以上の従業員を有する事業者に体制整備の義務があり、守秘義務は通報受付担当者及びフォローアップする権限を有する者に義務があり、違反がある場合は抑止効果のある罰則を課さなければならないとしています。報復(不利益取扱い)は多くのケースを禁止しています。罰則は通報の妨害や通報者に対する報復、通報者に対する濫用的訴訟提起、守秘義務違反が対象になっているとの報告がありました。これらを参考にわが国の実効的改正を進めてほしいとの要望がありました。

5.公益通報者保護法改正の獲得目標について 拝師徳彦さん(弁護士)報告

 昨日(2月3日)、「自民党公益通報制度に関するPT」の取りまとめが出来たようで、消費者委員会専門調査会報告書の内容をかなり取り込んでいただきました。専門調査会で先送りとなっていた守秘義務に関しても刑事罰付きで入れていただいたようです。これをベースに今国会で成立させていただきたいです。ただし、課題として残っているのは、「通報者に対する不利益取扱いを行った者への行政処分(勧告・公表・命令)や刑事罰導入」です。公益通報に関しては理不尽な事案もあり、通報者保護の徹底を図る必要があります。行政の体制問題という課題もあって難しいところもあるかと思いますが、国会の中で一歩でも前進できればと思っている、と訴えました。

6.関係団体からの決意表明がありました

 「関東弁護士連合会」「全国消費者行政ウォッチねっと」「主婦連合会」「日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会」「公益通報者が守られる社会を!ネットワーク」「欠陥住宅被害全国連絡協議会」「全国消費者団体連絡会」から意見を述べました。

7.消費者庁 坂田進さん(消費者庁審議官)より報告

 消費者庁では、消費者の安全・安心を確保するために、公益通報を通じた事業者の法令順守が確保されるよう、制度の実効性向上を目指し、公益通報者保護法の見直しに向けた検討を進めてきました。消費者委員会の答申や与党における審議を踏まえ、今国会での法律改正を行うための準備をしています。具体的な内容は今後、法案化していくことになります。企業には自浄作用を十分に発揮していただくこと、通報者に対する不利益取扱いを未然に防止すると共に、違法行為について早期是正を図ることが重要であると考えています。今後、国会審議もあるので、引き続きのご支援をお願いしたいと報告されました。

■ご参加いただいた国会議員

小倉將信様(自由民主党 衆議院議員)   柴山昌彦様(自由民主党 衆議院議員)
安江伸夫様(公明党 参議院議員)   尾辻かな子様(立憲民主党 衆議院議員)
大河原雅子様(立憲民主党 衆議院議員)   山本わか子様(立憲民主党 衆議院議員)
青山大人様(国民民主党 衆議院議員)   西岡秀子様(国民民主党 衆議院議員)
福島みずほ様(社民党 参議院議員)    
   
小倉將信様
(自由民主党 衆議院議員)
  柴山昌彦様
(自由民主党 衆議院議員)
  安江伸夫様
(公明党 参議院議員)
   
尾辻かな子様
(立憲民主党 衆議院議員)
  大河原雅子様
(立憲民主党 衆議院議員)
  山本わか子様
(立憲民主党 衆議院議員)
   
青山大人様
(国民民主党 衆議院議員)
  西岡秀子様
(国民民主党 衆議院議員)
  福島みずほ様
(社民党 参議院議員)

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