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クレジットのしくみと課題
〜割賦販売法 学習会〜 報告

 割賦販売法は、クレジットに関しての規制を定めている法律ですが、2008 年改正により、クレジット・サラ金多重債務の対策として、クレジットカード発行時に、信用情報機関の情報と支払可能見込額を調査することなどが義務付けられました。

 現在、経済産業省の『割賦販売小委員会』では、昨今キャッシュレス化が進み、新しいサービスも出てきている中で「テクノロジー社会における割賦販売法制のあり方」についての論議をしています。この中で、上記の規制の見直しも論点に挙がっています。

 学習会では、経済産業省の正田聡課長に委員会の論議状況の説明と、委員の池本誠司弁護士に論点について解説をしていただき、意見交換を行いました。

【日時】2019年4月15日(月)18時00分〜20時00分

【会場】主婦会館プラザエフ 5階会議室

【参加】41人

【講師】正田 聡さん(経済産業省 商取引監督課 課長)
池本 誠司さん(弁護士)

【スケジュール】

18:00   開会
18:05   現行割賦販売法の規制の概要と割賦販売小委員会の論議状況
論点について解説
19:40   質疑応答
20:00   閉会
        

【主な内容】

 はじめに、経済産業省商取引監督課正田聡課長より「現行割賦販売法の規制の概要と割賦販売小委員会の論議状況」について、説明がありました。

 割賦販売法とは、商品代金やサービス代金の分割払い・延べ払いに関する法律で、割賦販売等による取引の公平の確保や購入者(消費者)の利益の確保、クレジット番号等の管理措置を目的として、最終的には国民経済の発展に寄与するものです。

 前回の法改正では、クレジットカード情報の漏えい事故や不正使用被害が増加したこともあり、セキュリティー対策や加盟店管理などの措置を行いました。

 現在は、フィンテック企業(スマートフォンやインターネットを活用した決済サービス)の事業展開が拡大している社会の中で、クレジットカード決済は堅調に増加傾向にあります。フィンテック企業は決済分野において事業活動を広げていますが、注目すべきことは消費者目線でニーズに合ったサービスの展開をしていることです。日常生活品や趣味など、安価な商品サービス購入の際の立て替え払いなどとして、少額低リスクのスマートフォン等を活用した決済サービスが出現しています。

 現在論議されている視点について「@割賦販売法においてもリスクに応じた段階的に柔軟な規制を行う「リスクベース・アプローチ」の考え方を導入することについてどう考えるか」「A支払可能見込額調査という画一的な与信規定によるものではなく、技術に基づく与信を推進することで消費者保護をより精緻化することができるのではないか」「Bフィンテック事業者等の新規参入促進という要請に迅速に対応する観点を踏まえ、どのように対応することが適切か」「C決済情報の利活用」「DRegTech(事業者による先端技術の活用を通じた効率的かつ効果的な規制対応)/ SupTech(監督官庁による先端技術の導入を通じた監督・検査業務の効率化・高度化)」「E若年者対応」について説明がありました。

 次に、「キャッシュレス決済の進展とクレジット過剰与信規制の緩和」について弁護士池本誠司さんより論点の説明がありました。

 日本はキャッシュレス決済について世界各国と比較して21%と大変低い状況です。欧米諸国で約50%、中国60%、韓国90%になっています。日本のキャッシュレス決済を広げていく必要があるとの政府の方針があり、消費税引き上げ後にキャッシュレスで決済したら5%をポイントで還元し、決済比率を20%から40%に引き上げることを目標としています。便利になることは良いですが、弊害がないよう、安心安全な措置はきちんとしてほしいです。

 1990年代には、サラ金がテレビでも宣伝し、クレジットカードもキャッシングの機能を付ける、銀行もカードローンに参入するなどで多重債務者で自己破産申立件数の状況は、2003年に25万件のピークになりました。当時の割賦販売法の規定は、信用情報機関の情報に基づき支払い能力を超えると認められる割賦販売は行わないよう努めなければならないという努力義務でした。その後、2008年の改正で(貸金業法も2006年改正)、業界全体で多重債務を防止するために信用情報機関に債務の全体像を登録し確認するという法改正を行いました。近年10年間の破産申立件数は、規制のおかげで減っていましたが、今また増えてきています。

 割賦販売小委員会で現在、「@技術・データを活用した与信審査方法も選択できるようにしたらどうか、その場合、信用情報機関の照会義務を免除することはどうか」「A技術データを活用した与信審査を選択した場合、指定信用情報機関の信用情報の照会義務も免除してもよいのではないか」「B過剰与信防止の審査は多重債務防止のための制度であること、支払可能見込額調査の代替手段として認めるとすれば、どのような要件が必要なのか」「C利用限度額10万円以下の少額与信カードの場合、指定信用情報機関の信用情報の照会義務、与信情報・変動情報の登録義務を免除するのか」の論点が挙げられていますが、過剰与信規制の趣旨が損なわれるおそれがあります。

◆主な質疑応答や意見について

  • 小委員会のメンバーに消費者代表が入っていない。「支払可能見込額調査」をいかに免除しようとしているように思う。各社がAIの活用をすることはよいと思うが、「支払可能見込額調査」は今機能しているのだから、外してはいけない。指定信用情報機関は防波堤になってるいるので、キャッシュレス社会でもセーフティネットを取り払うようなあり方はいけないと思う。
  • 少額の借り入れやクレジット決済をくりかえし、信用情報の活用が十分ではないケースもあるよう。10万円が少額かどうかはその人の適合性によっても違う。
  • クレジットの少額だけではなく、オートチャージや後払いリボなど、少額とはいえ与信がないような決済もある。
  • 多重債務になる最初の借り入れは少額からというケースが多いのではないかと思うが、実態を把握した論議はされているのか。
  • 高齢者の年金生活者、生活保護の人もクレジットカードを持っている。1人で管理できないくらいカードを持っている場合もある。教育だけでは心配である。
  • 消費者保護を精緻化させる好循環を生み出すというが、多重債務になるリスクが減る方がメリットではないか。
  • 技術・データを活用した与信審査とすればするほど行政にコストがかかるのではないか。
  • AIを活用するの具体的イメージがわかない。エビデンスをしっかり示してほしい。

以上

学習会を受けて全国消団連では「クレジット決済の過剰与信規制の緩和についての意見」を提出しました。
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