[このページについてのご意見、お問い合わせなどはメールにて webmaster@shodanren.gr.jp までお送りください。]

全国消団連・トップページへ戻る


消費者保護基本法制定 50周年記念企画

『地方消費者行政の充実・強化を考えるシンポジウム』 開催報告

 地方自治体の消費者行政は、消費者相談、消費者教育や情報提供(広報啓発)、法執行、消費者団体支援など、消費者のくらしの安全・安心のために重要な役割を担っています。

 全国消団連では、2009年まで取り組んでいた「地方消費者行政プロジェクト」をこのたび復活し、地方消費者行政の取り組みの現状を把握するために、本年6月に47都道府県に向けて消費者行政調査をいたしました。また、県内区市町村調査も地元の消費者団体において実施いたしました。

 都道府県調査結果と分析のまとめを報告し、地方消費者行政のさらなる充実・強化のために何が必要なのか、みなさんと一緒に考えました。

【日 時】 9月27日(木)13 時30分〜16時00分

【会 場】 主婦会館プラザエフ5階会議室

【参加者】 66人

【プログラム】

全国消団連・都道府県消費者行政調査結果の発表と問題提起
  飯田秀男さん(全大阪消費者団体連絡会 事務局長)
県内市町村調査の報告
  埼玉県内調査 岩岡宏保さん(埼玉県消費者団体連絡会 事務局長)
  山梨県内調査 斉藤いづみさん(山梨県消費者団体連絡協議会 事務局長)
パネルディスカッション
  コーディネーター   池本誠司さん(弁護士)
  パネリスト   佐藤宏之さん (茨城県県民生活環境部生活文化課課長補佐)
尾嶋由紀子さん(全国消費生活相談員協会 常務理事)
飯田秀男さん (全大阪消費者団体連絡会 事務局長)
地方消費者行政プロジェクトから意見

【主な内容】

 全大阪消費者団体連絡会 事務局長 飯田秀男さんからは、全国消団連・都道府県消費者行政調査結果の発表と問題提起がありました。今回の調査内容の特徴は、ひとつは予算に関して、交付金や自主財源がどのようになったのか、もうひとつは交付金の使い勝手で、消費者庁創設以来、自治体は基金・交付金を活用して相談窓口整備や相談員研修や養成や被害防止の啓発など取り組んできましたが、今年度予算で減額されるとともに交付金メニューも代わり、自治体はそれへの対応に迫られました。自治体の現状がどうなっているのかを把握し、対策を考える必要があることが報告されました。

 県内市町村調査として、埼玉県消費者団体連絡会 事務局長 岩岡宏保さんより埼玉県内市町村調査結果の報告、山梨県消費者団体連絡協議会 事務局長 斉藤いづみさんより山梨県内市町村調査の考察や今後の課題について報告がされました。

 後半のパネルディスカッションでは、茨城県県民生活環境部生活文化課課長補佐 佐藤宏之さんより、茨城県の消費者行政の体制や交付金の活用とその成果、自主財源の確保についてお話がありました。全国消費生活相談員協会 常務理事 尾嶋由紀子さんからは、交付金減額に伴う相談員研修などへの影響について現場での状況報告や、国に対しての恒久的な財政措置の要望の意見がありました。全大阪消費者団体連絡会 事務局長 飯田秀男さんからは、アンケート結果からの考察をもとに、自治体内で消費者行政部門の位置付けを引き上げる必要性やそのための国の支援のあり方、国や地方自治体の首長や地方議会に向けた働きかけの必要性について意見がありました。

 最後に地方消費者行政プロジェクトから、今回の都道府県調査を基にまとめた「地方消費者行政の充実・強化のための意見」を発表しました。

 意見書は内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、財務大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長、国民生活センター理事長に提出いたしました。

≫ 開催案内はこちら

2018年10月2日

地方消費者行政の充実・強化のための意見

(一社)全国消費者団体連絡会
地方消費者行政プロジェクト

 地方自治体の消費者行政は、消費生活相談体制の整備は進展がみられるものの、消費者教育、法執行、見守りネットワーク、消費者団体支援など、重要な課題が未だ不十分です。消費者のくらしの安全・安心を確保するために、消費者にとって最も身近な地方消費者行政の充実と強化は必須ですが、国の地方支援策は後退の傾向が伺えます。

 全国消費者団体連絡会・地方消費者行政プロジェクトでは、地方消費者行政の取り組みの現状を把握するために、本年47都道府県に向けて消費者行政調査を行いました。

 今回の調査により、地方消費者行政を推進する上で重要な地方消費者行政推進交付金の縮小や、今年度あらたに導入された地方消費者行政強化交付金の活用の困難性をはじめ、地方消費者行政の現状と課題が明らかになりました。また、地方自治体の消費者行政部門の自主財源確保の難しさや、地方交付税の基準財政需要額について自治体の消費者行政担当者が把握できていない状況など、地方消費者行政の充実強化に向けて、さらなる手当てが必要な課題が浮かび上がりました。

 今回の調査を踏まえ、以下の点について提言します。

 私たちは、全国の消費者・消費者団体と連携して、国及び地方自治体に対し、地方消費者行政の充実・強化の働きかけを強めます。

1.国は地方消費者行政への恒久的な財政措置を講じてください

 国は、これまで「地方消費者行政は自治事務」との考え方を前提に、期間限定で財政支援策を講じる姿勢を続けてきました。しかし、地方消費者行政の事務の中には、消費者相談を受け相談情報をPIO-NETに登録すること、国に対して重大事故情報を通知すること、特定商取引法や景品表示法等に基づく行政処分を実施することなど、国と地方に共通の利害を有する事務が含まれています。

 そこで、「地方消費者行政は地方自治」の考え方自体を一部見直し、地方財政法第10条(「国が、その経費の全部又は一部を負担する」とされている事務)に地方消費者行政を盛り込むなど、国が地方消費者行政に対し恒久的な財政措置を行える仕組みを講じてください。

2.地方消費者行政交付金は自治体の活用しやすさを考慮した制度設計をしてください

 地方消費者行政への交付金についても、地方自治体の自主的な取組を支援する財政措置の継続が不可欠です。2018年度の地方消費者行政強化交付金は、メニューが自治体のニーズに合っていない、補助率が1/2、といった活用しにくい課題があります。今後は地方消費者行政担当者の意見を聞き、より使い勝手のよい交付金制度とすることが必要です。

3.地方消費者行政の自主財源確保のため、国は地方消費者行政にかかる自治体ごとの基準財政需要額を周知・公表してください

 地方交付税の基準財政需要額について、自治体の消費者行政担当者自身が把握できていない状況が明らかになりました。国は地方消費者行政にかかる自治体ごとの基準財政需要額を周知・公表し、自治体が消費者行政の自主財源を確保しやすくするべきです。

4.消費者庁は地方消費者行政の充実強化のために、働きかけを強化してください

 消費者庁の地方消費者行政強化作戦で目標としている項目において、未達成なものが多くあります。特に消費者安全確保地域協議会(「見守りネットワーク」)の設置は身近な地域での消費者被害の防止に大きな効果が期待できるものと考えます。また、地方消費者行政が取り組むべき施策が大幅に増大している中、担当職員数が横ばいまたは減少している状況に対して、国は増員に向けた具体的な対策を講じる必要があります。また、地方公務員法・地方自治法の一部改正により会計年度任用職員制度が設けられることになりましたが、消費生活相談員の地位と待遇については、その求められる専門性に対して高い評価がされること、結果としてより質の高い相談体制が確保されることが消費者のために必要です。自主財源の増額や消費者安全確保地域協議会の設置など、首長の考え方次第で地方消費者行政の充実・強化が進む状況も見られます。強化作戦の達成を目指し、消費者庁は地方自治体への働きかけを強化してください。

以上