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「消費者契約法の改正に向けて」学習会を開催しました

 消費者契約法は、消費者と事業者の情報力・交渉力の格差を前提とし、消費者の利益擁護を図ることを目的として制定された法律です。昨年の通常国会で法制定以来の改正が行われ、今年の6月に施行されました。

 しかし、その検討の際に積み残された論点があり、内閣府消費者委員会「消費者契約法専門調査会」にて継続審議が行われていましたが、本年8月に報告書がとりまとめられました。

 消費者委員会の答申書は、報告書の内容を踏まえつつも、検討の中でコンセンサスが得られなかった論点のうち3点について、「早急に検討し明らかにすべき喫緊の課題」として付言されたものとなりました。

 成年年齢引き下げを定める民法改正案が秋の臨時国会に出されるという動きもある中で、消費者契約法改正を実現することは消費者団体としての大きな課題です。現在、消費者庁では、報告書に基づきまとめた「消費者契約法の改正に関する規定案」に対し、パブリックコメントを9月15日(金)締切で募集しています。パブリックコメント募集に対し、一人でも多くの消費者及び消費者団体の皆さんが提出できるよう、志部淳之助さん(弁護士)より専門調査会報告書のポイントなどを解説していただきました。

【日  時】 8月24日(木) 13:15〜15:15

【会  場】 主婦会館プラザエフ 5階会議室

【参加者】 42名

【講  師】 志部 淳之助さん
(弁護士、「消費者契約法の改正を実現する連絡会」事務局長)

●概要(事務局による要約)

 志部先生は京都で活躍されている、消費者問題に詳しい若手の弁護士です。まず「消費者契約法とは」「平成28年改正の概要」をお話しいただいた後、今回の内閣府消費者委員会消費者契約法専門調査会の報告書のポイントを解説いただきました。

 ここでは、報告書で「措置すべき内容を含む論点」とされた、以下の7点について解説していただきました。

①不利益事実の不告知の主観的要件に「重大な過失」を追加(法第4条第2項)

②合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させる類型(消費者の不安を煽る告知、勧誘目的で新たに構築した関係の濫用)の追加(法第4条第3項)

③心理的負担を抱かせる言動等による困惑類型(消費者の意思表示前に履行してしまう、など)の追加(法第4条第3項)

④「平均的な損害の額」に関し、消費者が「事業の内容が類似する同種の事業者に生ずべき平均的な損 害の額」を立証した場合には、「当該事業者に生ずべき平均的な損害の額」と推定される旨の規定を設ける(法第9条第1号)

⑤不当条項の類型(消費者の後見等の開始による解除権付与など)の追加(法第8条)

⑥条項使用者不利の原則に関しては、条項を定めるに当たり条項の解釈について疑義が生ずることのな いよう配慮するよう努めなければならない旨を明らかにする(法第3条第1項)

⑦消費者に対する配慮に努める義務に関しては、消費者契約の目的となるものについての知識及び経験 についても考慮した上で必要な情報を提供するように努めなければならない旨を明らかにする(法第3条第1項)

 このうち、④は本来は事業者が立証責任を負うべき、消費者が立証する際は事業者が必要な算定根拠資料を提供すべきであり、⑥は本来は条項使用者不利の原則を明文化すべき、⑦は考慮すべき要因となる個別の消費者の事情に「当該消費者の年齢」も明記すべき、とコメントいただきました。また、報告書で「上記以外の論点」として挙げられている「勧誘」要件の在り方(法第4条第1項,第2項,第3項)については、ご自身が関わられたクロレラの最高裁判決(広告も「勧誘」に当たりうる)が出されたことにより、当面は個別事案における法の解釈・適用に委ねつつ、今後の課題として検討すべきと熱く語られました。

 さらに今回は消費者委員会の答申の中に、「早急に検討し明らかにすべき喫緊の課題」として付言された事項が3点あります。

  1. 約款の事前開示
    消費者契約における約款等の契約条件の事前開示につき,事業者が合理的な方法で,消費者が契約締結前に,契約条項(新民法第548条の2以下の「定型約款」を含む。)をあらかじめ認識できるよう努めるべきこと。
  2. つけ込み型勧誘の取消権
    合理的な判断をすることができない事情を利用して契約を締結させるいわゆる「つけ込み型」勧誘の類型につき,特に,高齢者・若年成人・障害者等の知識・経験・判断力の不足を不当に利用し過大な不利益をもたらす契約の勧誘が行われた場合における消費者の取消権。
  3. 年齢への配慮
    消費者に対する配慮に努める事業者の義務につき,考慮すべき要因となる個別の消費者の事情として,「当該消費者契約の目的となるものについての知識及び経験」のほか,「当該消費者の年齢」等が含まれること。

 これらの事項は、そもそもの諮問の背景が「情報通信技術の発達や高齢化の進展を始めとした社会経済状況の変化への対応等の観点から」であったこと、また「消費者委員会 成年年齢引下げ対応検討ワーキンググループ報告書」の中でこうした点が対策として求められたことなどから、専門調査会の中でも相当な議論が重ねられました。しかし専門調査会でコンセンサスに至らなかったことで、異例の答申への付言となりました。

 最後に志部先生からは、法改正につなげるため、一つでも多くの消費者団体、一人でも多くの消費者の皆さんにパブリックコメントを出していただきたいとお話がありました。法改正が確実に成されるよう、今回消費者庁から出された「報告書における消費者契約法の改正に関する規定案」に関してはすべて賛成した上で、特に「知識・経験・判断力不足につけ込む勧誘に対する取消権」についての規定の制定ができるように意見を出す必要があると説明がありました。

●知識・経験・判断力不足につけ込む勧誘

ひとり暮らしで,認知症の疑いがある高齢者のAさんが,契約の内容を理解していないことにつけ込んで,必要もないのに,高額な宝石,布団,かばん,健康食品などを次々と契約をさせられた。後日、家族が見慣れない宝石や布団に気付いて、Aさんに事情を尋ねたが、ほとんど覚えていなかった。Aさんは、老後の生活のために貯めていたお金2000万円をすべて使ってしまっていた。今回の改正提案では,このような事例でAさんを救うのは困難です 高齢者,若者の判断力低下につけ込んで契約させた 場合に取消しできるという規定をつくるべきです!!

※消費者契約法の見直しに関する意見募集については以下からアクセスしてください。

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=235030029&Mode=0

提出の締め切りは9月15日(金)です。

●全国消団連でも9月1日にパブリックコメントを提出しました。提出した意見はホームページに掲載いたしましたのでご参考にしていただき、ぜひ皆さんも提出をお願いいたします。

以上

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