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「遺伝子組換え表示制度に関する学習会」を開催しました

【日  時】 7月24日(月) 14:00〜16:00

【会  場】 主婦会館プラザエフ5階会議室

【参加者】 35名

【プログラム】

14:05〜14:35 「遺伝子組換え食品の表示制度をめぐる情勢」
消費者庁食品表示企画課長 赤ア 暢彦さん
14:35〜15:20 意見報告① 主婦連合会 河村 真紀子さん
意見報告② 消費生活コンサルタント 森田 満樹さん
意見報告③ 食品産業センター企画調査部長 武石 徹さん
15:20〜15:55 質疑応答・意見交換

○開催趣旨

 遺伝子組換え表示制度については、2011年9月から2012年8月まで消費者庁主催で開催された「食品表示一元化検討会」において、積み残し課題となっています。そのため「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」が2017年4月から開催され、年度末を目途に取りまとめを行うとされています。

 遺伝子組換え技術は導入から20年が経過し、遺伝子組換え食品のDNA等に関する分析技術の向上やゲノム編集技術の進歩、遺伝子組換え農産物の作付面積の増加により流通の実態など大きく変化している可能性があります。

 遺伝子組換え表示制度と組換え技術の現状を学び、どのような課題があり、どのような表示制度がふさわしいのかを考える場としました。

○概要(事務局による要約)

「遺伝子組換え食品の表示制度をめぐる情勢」 赤﨑 暢彦さん

●世界の遺伝子組換え農産物の栽培状況は年々増加しており、2015年は1億7970haとなっている。大豆(51%)とうもろこし(30%)綿実(13%)なたね(5%)の4品目が大半を占め、アメリカ・ブラジル・アルゼンチン・インド・カナダが作付面積の90%を占めている。日本では商業栽培されている遺伝子組み換え農産物はない。

●日本は主に大豆・とうもろこしをアメリカから、なたねをカナダから、綿実をオーストラリアから輸入しており、それぞれ作付面積は90%以上が遺伝子組換えとなっている。

●遺伝子組換え食品を輸入・販売するには、安全性審査を受ける必要があり、審査を受けていないものは、食品衛生法で禁止されている。また、品目ごとに食品安全委員会でリスク評価を行い、厚生労働省で安全性を確認したうえで流通が認められている。

●遺伝子組換え食品の表示制度は、8農産物(大豆・とうもろこし・ばれいしょ・なたね・綿実・アルファルファ・てん菜・パパイヤ)とこれを原材料とする33加工食品群が対象となっている。「遺伝子組換え」「遺伝子組換え不分別」は義務表示、「遺伝子組換えでない」は任意表示。

●日本では、最終製品に組換えられたDNA及びこれによって生じたタンパク質を検出できない品目(大豆油・しょうゆ等)については、義務表示の対象外としており、韓国、オーストラリア等も同様。EUはDNA等の検出の可否にかかわらず、表示義務がある。意図せざる混入率については、日本では5%、EUでは0.9%となっている。

※参考として、消費者意向調査の結果、EUにおける表示及び監視の状況調査を報告していただきました。

意見報告① 河村 真紀子さん

●表示は消費者が商品・サービスを選択する際の最も重要な情報である。消費者の知る権利、選択の権利に応えるため、遺伝子組換え表示は必要。

●現状は消費者にとって分かりやすい表示ではない。購入しようとするものが「遺伝子組換え」であるか否かをシンプルに判断できる表示制度を望む。「意図しない混入率5%以下は表示義務なし」だが国際的に見ても高すぎる。引き下げるべき。

●わかりやすく誤認させない表示とするために、遺伝子組換えのものに「遺伝子組換え」と表示することが望まれる。従って「遺伝子組換えでない」という表示は必要ないと考える。

●最終製品からDNA・たんぱく質が検出できなくても、書類確認等で裏付けは可能。トレーサビリティ制度の構築を求める。

意見報告② 森田 満樹さん

●現状については、義務表示を見かけることはほとんどなく、「意図せざる混入率5%」以下であれば、任意表示「遺伝子組換えでない」と表示できるため、誤認を招くことがある。

●「自主的かつ合理的な選択の機会の確保」の観点からすると、義務表示の拡大の検討が求められるが、実行可能性など「食品表示一元化検討会報告書」の基本的な考え方を踏まえるべき。・正しい表示・検証可能な表示・誤認を招かない表示・分かりやすい表示が望ましい。

●これからの見直しに関しては、以下がポイントと考える。1.対象品目は組換えられたDNAが検出できるものを原則とする。2.意図せざる混入率についてはスタック品種の増加による検査コストも踏まえる必要がある。3.「遺伝子組換えでない」と表示するための混入率について、消費者を誤認させない観点から、新たに検討してはどうか。4.事業者ガイドラインを検討してはどうか。5.容器包装以外の表示の代替方法としての情報提供の可能性を探る。6.食品表示法の基本理念にある「消費者の自立の支援」のために消費者教育が必要。

意見報告③ 武石 徹さん

●国内で流通している遺伝子組換え食品は食品安全委員会のリスク評価を踏まえ、厚生労働省、農林水産省が総合的に審査し、安全性に問題がないものが流通している。遺伝子組換え表示は「安全性」に関わる情報ではなく、「消費者の自主的かつ合理的な選択」に資する情報である。

●企業のお客様相談では、遺伝子組換え表示に関するものは割合は低いものの、多くの消費者が遺伝子組換え食品に対して不安を持っているのも事実。不安解消のためにはリスコミなどの地道な取組が必要。

●食品業界は中小事業者が多数(全体の99%)を占めており、度重なる表示の変更は経営に打撃となる。遺伝子組換え表示の義務対象品目の拡大については、表示スペースが限られる中にあって、安全性に関する表示を優先するという「食品表示一元化検討会報告書」の指摘を踏まえた慎重な議論が必要。

質疑応答・意見交換

◇最終製品でDNA・たんぱく質が検出できない食品の検証の可能性について◇意図せざる混入率5%を引き下げることについて◇対象品目をどうしていくか◇日本とEUの制度の違いについて◇消費者への周知、普及、啓発について◇相次ぐ表示制度の改正で、ラベルの改廃など事業者も大変だが、消費者の理解も追いつかない等、様々な角度から意見交換が行われました。

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