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ホントのことを知りたい!学習シリーズ!!
放射性物質汚染とわたしたちのくらし2

安心して食べるために知っておきたいこと

<文責:全国消団連事務局>

時間:2011年11月21日13:30〜16:30
場所:主婦会館プラザエフ8Fスイセン
共催:全国消費者団体連絡会・消費者庁

 今だぬぐいきれない食品への放射性物質汚染への不安に関連して、全国消団連は2011年11月21日(月)消費者庁と共催で専門家と担当省庁をお招きしてお話をうかがいました。

 会場は東京都千代田区のプラザエフ、参加者は98名でした。

 開会にあたり全国消団連事務局長の阿南久から「放射性物質のくらしに与える影響について、継続して『ホントのことを知りたい学習シリーズ』を取り組んでいる」こと、消費者庁の福嶋浩彦長官より「リスクコミュニケーション推進の立場で『簡易測定器貸し出し』などにも取り組んでいる」とのご挨拶をいただきました。

 最初に(独)放射線医学総合研究所の明石真言さんから「体内被ばくと食品汚染」という演題で話していただきました。「放射線の人体への影響」、「しきい値」、「内部被ばくの考え方」「食品を介した健康影響」「飲食物摂取制限に関する指標」などが解かりやすく解説されました。

  • 放射性物質は色もにおいもないのに、放射線検出器を使って測定すると数値を得ることができる。しかし、その数値がかえって消費者に不安を招く現状がある。
  • 放射性物質が身体の中に入るとはどのようなリスクなのか?何が危なくて、何が危なくないのか、「体内被ばくとリスク」について消費者が自分なりのモノサシをもって判断しなければならない。
  • 「被ばくには放射線を離れたところからあびる「外部被ばく」と放射性物質が身体に付着するか、体内に摂取することで放射線をあびる「内部被ばく」がある。
  • 自然界から受ける1人あたりの放射線の世界年間平均は2.4mSv(ミリシーベルト)になる。日本の年間平均の場合は1.5mSv(ミリシーベルト)になる。
  • 体内の放射性物質としてはカリウム40がある。ごはん、パン、干し椎茸、ほうれんそう等由来で4000Bq(ベクレル)になる。その他炭素14で2500Bq(ベクレル)、ルビジウム87で500Bq(ベクレル)、鉛・ポロニウムで20Bq(ベクレル)となる。筋肉質の成人は身体内に7000〜8000Bq(ベクレル)の放射性物質を持っている。
  • 放射線の人体への遺伝的影響はヒトでは観察されていない。本人への直接的影響としては確定的影響と確率的影響がある。確定的影響にはしきい線量があり、国際放射線防護委員会(ICRP)では100人に1人の割合で臨床的に異常が明らかな症状を示す線量として、しきい線量が人体器官や組織ごとに推定されている。確率的影響については動物実験での線量―効果関係が立証されていないが、がんや遺伝的影響について比較的低い放射線量を受けた場合にも現れることがあると考えられている。
  • DNAはしょっちゅう切れたりするが、細胞で修復作業が取り組まれる。放射線量が低いと影響がないことはこの修復作業が取り組まれることによる。
  • 内部被ばくは放射性物質の物理的半減期と生物学的半減期を勘案して実効半減期を導いている。飲食物の摂取制限に関する指標についても各放射線量は単位経口摂取量あたりの実効線量係数が使われている。我が国ではこれらの係数を使って食品衛生法の規制値を算定している。
  • 体内にどれだけの放射性物質を取り込んだのかはホールボディカウンター(WBC)を使って測定し、行動についての聴き取りを行ない、被ばく線量の評価・推測を行う。

 農林水産省審議官の姫田尚さんからは「食品等に含まれる放射性物質」との演題で農水省の農産物や畜産物の安全性を確保するための対策について報告いただきました。また、基礎知識としての「ND(検出されない)」についても説明がありました。

  • 今回の東電事故に関しては外部被ばくと内部被ばくのどちらが怖いかということではない、実効線量で考えるので天然の放射線も人工の放射線も区別することではない。
  • 食品検査はガンマ線スペクトロを測定するゲルマニウム(Ge)半導体検出器やNaIシンチレーション検出器を用いて行う。基本的に環境測定に使うサーベメータを食品に使うことはない。また、検査にあたっては検査経験を積む必要もある。
  • 検出下限と定量下限を常に意識する必要があります。食品安全分野では基本的に検出下限は基準値の十分の一、定量下限は基準値の五分の一です。
  • サンプリングは消費者が食べる状態にして測定する。野菜は土がついたままにしない。
  • 農産物調査の考え方として、事故直後に放射性ヨウ素の降下影響を受けやすいホウレンソウ、シュンギク、カキナ、ミズナ、コマツナを対象にし、現在は放射性セシウムが検出されていることを踏まえ、対象自治体を17都県とし、カブ、キャベツ、ブロッコリー、パセリ、セリ、ウメ、原木しいたけ(露地)、たけのこ、くさそてつ、生茶、荒茶、製茶、摂取量の多い米などとしている。
  • 水田土壌から玄米への放射性セシウムの移行指標を0.1に設定し、米の(1)警戒区域(2)計画的避難区域(3)緊急時避難準備区域における稲の作付け制限を行った。
  • 小麦、果実、茶、きのこなどで調査を行った。
  • 畜産物では牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵の調査を進め、飼料・肥料の規制を行った。
  • ND(検出されない)は検出下限未満の濃度であり、存在しないということではありません。
  • 食品からどのぐらい被ばくしているか推計したところ、いずれの推計方法でも被ばく線量が01mSvになることから、「食品からの実際の被ばく線量は相当程度小さいものに留まる」とされた。

 消費者庁消費者政策課長黒田岳士さんからは「消費者庁の取り組み」と題して、消費者への情報提供と検査機器貸し出しやリスクコミュニケーションの支援の取り組みを報告いただきました。

  • 出荷制限に関連して、消費者担当大臣としてのリスクコミュニケーションを心がけてきた。食品の表示については直接担当してきた。
  • 食品と放射能Q&Aは3万冊を印刷し、18万アクセスとなり隠れたベストセラーとなった。
  • 検査機器の貸与事業を行い、リスクコミュニケーション支援を進めている。

 意見交換ではJミルクの丸山事務局長から、消費者に牛乳について正しい知識を得てもらうための取り組み報告がありました。

 最後に会場から出された質問に答えて各報告者から回答いただきました。

Q&A

Q:預託線量についての考え方をさらに詳しく?

A:放射線量は測定したその日の数値が全てという事ではなく、放射性物質が体内に取り込まれてから、半減期を繰り返し放射物質が出なくなるか、放射性物質が身体から排出されてしまうまで、減りはするが毎日被ばく状態が続いている。核種による違いはあるが、成人の場合50年間を被ばくするとして、ガンになるリスクどれだけあるのかと予想して影響をたしあげていく。子どもの場合は70歳までの影響をたしあげる。体内被ばくではほとんど確定的影響が出るわけではないので、低線量被ばくの場合のガンになるリスクの予測計算を最初の段階で行う。

Q:放射性物質を身体の外に出せる食品はありませんか?

A:モノによっては代謝を促すモノはある。カリウムでセシウムをほんの少し身体外へ追い出すことは可能だが、そもそも大量のカリウムは心臓の毒になるので身体の外に出る仕組みになっており、現在は代謝や治療としては考えない方が良い。また、ストロンチウムが大量に身体内に大量に入った場合にカルシウムで置き換えることは可能だが、大量のカルシウムは身体にとって毒になり副作用をもたらすので、これもやめておいたほうが良い。

Q:健康に影響がないように規制するということだが安全であると何故いえないのか?

A:食品安全の基本として、リスクを減らすという概念はあってもリスクのない食品は存在しない。リスクをゼロにすることはできない。言い方を変えると食べ物の「安全宣言」をすることは本当のリスクを考えることにならない。

Q:海の水産物汚染はどうなっているか

A:水産物は福島県と茨城県が漁の自粛をしているのでデータが少ない。今後、調査海域を定めるべき課題となる。

Q:風評への取り組みは?

A:風評被害を受けるのは誰で、風評を流すのは誰かを良く考える必要がある。風評を流すのは消費者である。そこで、情報を解かりやすく伝え、間違った情報に基づく冷静でない行動をなくすように取り組んでいます。

Q:先生の説明を信じてしまって良いのか?説明は学会などで調整しなくて良いのか?

A:一つのテーマに様々な考え方が述べられ現状がある。学会や大学や実験ごとの答えの違いがあるが、それらが言いっ放しになっている面は確かにある。しかし、調整は極めて難しく、ワンボイスという言葉はあるが、WHOなどで「それは難しいのではないか?理想を言っているのでは」と言われた経験がある。

Q:商品の放射性物質を測定して表示する場合に優良誤認の恐れはないか?

A:測定の結果は基準値以下になっているので「安全です」と標記すると取り締まりの対象になります。

A:全商品を測定してから販売すると良いとの意見があるが、あらゆる場所での商品を測定することは現実的でなく、コスト面でも膨大な費用となってしまいます。

Q:カリウムが筋肉に存在するとのお話しがありました。「食品と放射能Q&A」の記述のようにセシウムは身体全体に広がり、臓器特異性はないとの解説で良いのですか?

A:「食品と放射能Q&A」はヨー素との対比でセシウムの臓器特異性はないとの記載内容は適切です。チェルノブイリ原子炉事故の後でセシウムによる膀胱ガンの増加が言われましたが、セシウムは水に溶けやすいので膀胱を通過はします。しかし、確認試験の結果「臓器特異性はない」ことが解かりました。

Q:雨が降ってモニタリング値は上昇しますか?

A:木の葉や屋根などにあるものが、少し数値をあげるのであり、新しい放射性物質が飛んで来たということではない。

Q:測定データはネット以外のメディアの発表はしないのですか?

A:マスコミには出しているのですが、基準値をこえない場合はニュースにならないということのようです

Q:きのこの移行データはありますか?

A:チェルノブイリの際のデータは少ないので、さらにデータ取りをしていく予定です。きのこをめぐっては、きのこ採取に山に入ることがむしろ問題になることがあります。

意見交換

  • 被ばく量を「外部被ばく」と「内部被ばく」を足し合わせた「総被ばく量」として捉えることは正しい見方であるが、我が国の場合はこれらの数値を評価する欧米の独立した放射線防護機関がない状況にある。ICRPは独立機関だがここの勧告を裁量するのはそれぞれの国ごとになる。
  • 暫定規制値の「暫定」の意味は、我が国は緊急時において食品安全委員会の意見を聞かなくても、ICRPでも定めているように5〜20の間に収めることができることになっている。そこで低い方の5を採用して定めた規制値であること、現在は食品安全委員会の答申を受けた規制値が検討されているところである(2011年11月)。
  • ある大手スーパーがゲルマニウム半導体検出器で少しでも検出されたら販売しないということをうちだしたが、このことは優良誤認にあたるのではないかとの意見があったが、優良誤認とはあくまでもある数値をクリアしたので安全であると記載した場合においてであって、販売しないからということではない。

≪参加者アンケート集約結果≫

 「消費者が安心して食品を購入するためにはどのような取り組みが必要か」から

  • マスコミ等で、今日の講演(者)の報告内容が正しく伝わること。
  • 政府発信情報への国民の信頼回復(継続的リスクコミュニケーション)、正確、誠実な情報開示。
  • 食品事業者や生産者とのコミュニケーション。消費者の食品に対する知識向上。

 などの意見がありました。

  • 専門の方、行政の方の意見や情報を伺えるいい機会でした。ありがとうございました。ホルミシス効果だけは信じたかったです。
  • 明石先生のお話は、科学的知見からのご説明でたいへん説得力があるお話でした。厚労省・食品安全委員会の方のご参加があるとなおよかったと思います。
  • パネラーの方がどの方も素晴しかった。(しっかり取りくみ、志をもっている)
  • 内容がわかりやすく、よく理解できました。但し、会場と講師の方との話し合いがあまり出来ない事が残念です。
  • 食べ物のリスクコミュニケーションとして、私にとっては大変有意義な半日でした。
  • 東日本大震災からあまり時間が経ていない時に聞きたかった内容でした。とてもよかったと思います。
  • 明石様、姫田様の内容は大変勉強になりました。消費者から寄せられる問いあわせや質問など具体的なところを消費者庁の方から聞けたらよかったように思います。問いあわせの多い層や、知りたい内容などを参考に聞きたかったです。
  • すごく分かりやすかったです。食品会社に勤めており、学校給食関係から産地や加工地を聞かれる事が多いので、是非、今回のようなセミナーをたくさん開催して欲しいです。
  • 内部被ばくの特徴のところで・線量は治療により減少とあげられていますが、どのような治療(内部被ばく、セシウムと思いますが)、がされているのか?もう1問には誠実にお答えいただきありがとうございます
  • 風評にあおられたり政府不信が報道されている現状では、どのような対策をとっても消費者の安心は難しいと思います。
  • 結局は食べないと生きていけないので不安を感じている個人個人がどこで落ちつくか、それまでの時間だと思います。(食品関係者としてではなく個人的な意見です。
  • 暫定規制値から暫定をはずすこと。一日もはやく、正式な規制値のアナウンスが必要。
  • 間違った情報のてき発。消費者の不安をあおるような、ねもはもない発言・表示・宣伝に対する処分
  • リスクコミュニケーションをする場が少なく、特に講師と聞く者との話し合いの場面が、時間が無いという理由でカットされる事が多いと感じます。サイエンスカフェの様な、互いに話し合える場を多く持っていければ、安全と安心が近づくのではないでしょうか。
  • HPを中心とした情報伝達だけでは国民全体への伝達は限界があり、TVやラジオを使用したけん伝ルートを開択することが肝要と考える。(国民すべてがHPを運用しているわけではありませんし、特に高年令の方々に理解して貰うことが大事である)
  • 国による情報発信と食品事業者の連携(特に食品事業者は中小の企業が多いので過大な負担がかからない施策と正しい取組による発信か?)
  • 例えば、消費者自身が、食品の貯蔵や加工に参画するやり方が一番良いと思います。ICTの力を借りなければ無理ですが、農産加工品の企画などの段階でfacebookその他を利用する事が肝要かと思います。
  • 放射性物質についての正しい知識の普及
  • 放射性物質の検査結果の公表
  • マスコミ等で、今日の講演(者)の報告内容が正しく伝わること。
  • 政府発信情報への国民の信頼回復(継続的リスクコミュニケーション)、正確、誠実な情報開示。
  • 給食の牛乳を心配する親の不安が拡がっているように思います。まずはここからでしょうか。
  • 信頼につながる検査体系の拡充(人的にも)と公表(情報公開)
  • DVD(消団連でもみていただければと思いますので、機会をみて持参します。)を作成し(1,000部)もう残りがない位広がっています。
  • お忙しいと思いますが、講師をいくつかの団体に頼まれ、とてもむずかしい場面に立たされます。

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