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全国消団連 ホントのことを知りたい!!学習シリーズ

「東京電力福島第一原子力発電所事故を知ろう!」
東電Q&A報告

 8月2日の学習会は下記の日程で開催され、速報的な報告を9月5日の当会ホームページに掲載しました。この学習会は企画内容をより良いものにするために参加者の皆様に質問事項を事前に提出して頂きました。また、当日も時間の許す限り会場からの質問を頂きました。
 これらの質問について学習会の各講師から丁寧な回答を頂きました。今回これらの質問から、東京電力に関わる内容について「Q&A」スタイルにて取りまとめましたので掲載させていただきます。

全国消団連ホントのことを知りたい!!学習シリーズ
東京電力福島第一原子力発電所事故を知ろう!

と き: 2011年8月2日(火)13:30〜16:00
ところ: 東京都千代田区六番町15主婦会館プラザエフ8階スイセン
【当日のスケジュール】
13:30 開会挨拶
全国消団連事務局長 阿南 久
13:35〜 福島第一原子力発電所事故の説明
東京電力株式会社 原子力・品質安全部長 川俣 晋さん
14:25〜 東日本大震災への対応状況について
消費者庁 消費者政策課長 黒田 岳士さん
14:40〜 福島第一原子力発電所事故への対応と安全対策について
経済産業省 原子力安全・保安院原子力発電検査課 企画班長 今里 和之さん
15:00〜 休憩
15:10〜 事前質問への回答
質疑応答
16:00 閉会

「東京電力福島第一原子力発電所事故を知ろう!」東京電力とのQ&A

問1 「炉心溶融」「メルトダウン」「メルトスルー等」の3.11事故後の炉心の状況を表す用語の定義と使い分けを教えてほしい。
答1: 「炉心溶融」,「メルトダウン」,「メルトスルー」という用語は様々な場面で,いろいろな使われ方をしています。当社が実施した原子炉の炉心状態の解析では,「炉心露出」,「炉心損傷」,「原子炉圧力容器破損」という用語をそれぞれ以下の意味合いで使っています。
  (1) 「炉心露出」
燃料棒の有効部(燃料被覆管の燃料ペレットが充填されている最上部)が露出した状態
  (2) 「炉心損傷」
原子炉炉心の冷却が不十分な状態の継続や,炉心の異常な出力上昇により,炉心温度(燃料温度)が上昇することによって,相当量の燃料被覆管が損傷した状態(このとき,燃料被覆管に封じ込められていた,希ガス,ヨウ素等が放出されますが、燃料ペレットの溶融※はありません。)
※燃料ペレットの一部が溶け出している状態
  (3) 「原子炉圧力容器破損」
溶融した燃料が圧力容器下部に蓄積し,圧力容器下部の制御棒駆動機構が収納されているハウジングと圧力容器の溶接部等が損傷した状態をそれぞれ指します。
問2 電力が落ちてしまった大震災発生直後では,現場状況を本当に把握できていたとは思えないが,どのような判断・想定条件でどのような組織で実施されたのか。
答2: 当社の初動体制につきましては,3月11日14時46分に発生した地震により,直ちに会社としての非常態勢を発令し,15時6分には「非常災害対策本部」を設置して,被害状況の把握,停電等の復旧に当たりました。
その後,史上稀に見る津波の襲来により,福島第一原子力発電所で全ての交流電源が喪失したため,15時42分に原子力災害対策特別措置法第10条第1項に基づく特定事象(全交流電源喪失)が発生したと判断し,関係行政機関への通報を実施しました。同時に,原子力災害に対応するための「緊急時態勢」を発令するとともに,「非常災害対策本部」に加えて,原子力問題に特化して対処する「緊急時対策本部」を設置しました。
福島第一原子力発電所の緊急時対策本部については,免震棟に設置され,非常用発電機により照明等を使用できる状況であり,本部長である発電所長が必要な指示を出していました。一方,中央制御室については,津波の影響により交流・直流電源を喪失し,監視計器類の確認ができない状況となりましたが,とにかく原子炉を冷却することを最優先に,注水に全力を尽くしました。
また,原子炉水位や格納容器圧力の計器を復旧するため,構内の企業からのバッテリーの収集や発電機の設置を行いました。中央制御室で確認した情報は,緊急時対策本部とホットラインや固定電話で適宜連絡・共有し,ベント等の準備を進めました。
さらに,本店対策本部と福島第一原子力発電所等にそれぞれ設置した対策本部との間で,TV会議等により緊密な連携と情報共有を行うとともに,役割・機能別に組織した各班長の指揮命令による災害対応を実施しました。
問3 発電機車が地震直後にすぐ何台も投入されたが,使い物にならなかったと聞くが,真実はなにか?
答3: 1号機から3号機のSLCポンプを起動させるため,2号機パワーセンター(※)及び4号機パワーセンター(※)に接続しようとした発電機車については,1号機,3号機の爆発による影響を受け,使用することができなかったものの,他の発電機車を用いて5,6号機の仮設海水ポンプを運転しており、使用できなかったということではありません。
※パワーセンター:所内低電圧回路に使用される動力電源盤
問4 炉心溶融は何時時点でおきたのか?
答4: 事故解析コードを用いた解析では,1〜3号機の炉心損傷(※)開始時間はそれぞれ地震発生後約4時間,77時間,42時間後と評価しています。
【出典】
H23.5.24東京電力プレスリリース 当社福島第一原子力発電所の地震発生時におけるプラントデータ等を踏まえた対応に関する報告書の経済産業省原子力安全・保安院への提出について
http://www.tepco.co.jp/cc/press/11052401-j.html
  原子炉炉心の冷却が不十分な状態の継続により,炉心温度(燃料温度)が上昇することによって,相当量の燃料被覆管が損傷した状態(このとき,燃料被覆管に封じ込められていた,希ガス,ヨウ素等が圧力容器内に放出されます。その後,燃料ペレットの温度が更に上昇し、溶融したと評価しています。)
問5 現在までに当該施設から離散した「放射性物質の総量はどの位か?」その根拠と共に説明してほしい。
答5: 気体状の放射性物質の放出量は,原子力安全・保安院や原子力安全委員会の評価によると,ヨウ素換算値で10の17乗ベクレルのオーダーであると考えられています。
【出典】
H23.4.12原子力安全・保安院プレス 東北地方太平洋沖地震による福島第一原子力発電所の事故・トラブルに対するINES(国際原子力・放射線事象評価尺度)の適用について
http://www.meti.go.jp/press/2011/04/20110412001/20110412001.html
  H23.6.7首相官邸ホームページ 原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書−東京電力福島原子力発電所の事故について−
http://www.kantei.go.jp/jp/topics/2011/iaea_houkokusho.html
  また,液体状の放射性物質のこれまでの放出量は,ヨウ素131,セシウム134,セシウム137あわせて10の15乗ベクレルのオーダーと評価しています。(2,3号機の取水口スクリーン付近からの放出)
【出典】
H23.5.21東京電力プレスリリース 排出基準を超える放射性物質濃度の排水の海洋放出に係る影響に関する報告書の経済産業省原子力安全・保安院への提出について
http://www.tepco.co.jp/cc/press/11052103-j.html
  算出方法については,各出典をご参照ください。
問6 ホットスポットを含め,原発事故被害地域における「現在放射線量」は。
答6: 放射線量やそれに伴う注意事項は,文部科学省のホームページで公表されていますのでそちらをご確認ください。なお,海域の調査結果は当社ホームページで公表しています。
文部科学省ホームページ 放射線モニタリング情報
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/
  当社ホームページ 発電所周囲の放射線量について
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/index-j.html
問7 放射性物質は,今後の降雨・降雪により「水の低き」に向かって流れていくと思うが,その経緯をどのようなモデルで考えているのか?時間軸を入れた説明がほしい。
答7: 内閣府原子力被災者生活支援チーム及び文部科学省は,事故状況の全体像を把握するとともに、計画的避難区域等の設定の評価に資することなどを目的とする「環境モニタリング強化計画」の一環として,警戒区域及び計画的避難区域を対象とした詳細な空間線量率の調査を実施することを6月13日に公表しました。
上記の対象地域内のうち,都市部で多様な環境を有する浪江町・富岡町駅付近2地点を選定し,「基礎データ収集モニタリング」を実施し,その結果をもとに,対象地域における「広域モニタリング」を実施しております。詳細は,文部科学省ホームページをご確認ください。
【出典】
H23.7.1 警戒区域及び計画的避難区域における基礎データ収集モニタリング結果の公表について
H23.9.1文部科学省ホームページ 警戒区域及び計画的避難区域における広域モニタリング結果の公表について
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/monitoring_around_FukushimaNPP_collect_basic_data/
問8 今後水の汚染が危惧されます。地下水脈の汚染を防ぐために,どんな手段を考えていますか。有効な方法は金がかかるというので,宙にういていると聞いていますが。
答8: 現時点では,原子炉建屋やタービン建屋内の滞留水の水位はサブドレン水(地下水)と同程度であるため,地中内へ大量に流出することはないと考えていますが,滞留水が,万が一漏れて地中内に流出し,海洋汚染を拡大させないために,1〜4号機の既設護岸の前面に十分な遮水性を有する遮水壁(海側)を設置する予定です。これとあわせて地下水の管理について検討し,海洋汚染拡大防止に対して万全を期すこととします。
問9 放射能汚染は何故ここまで広がったか?初動対策のミスはないのか?
答9: その時々の判断にあたっては,政府と緊密に連携と取りながら,メーカーや社外の専門家の意見も踏まえ,その時に考え得る最善の策を講じてきました。
問10 貯蔵されていた「低レベル汚染水」1万トンを海洋放出しましたが,その汚染レベルを教えて下さい。
答10: 海洋へ放出された低レベル滞留水等の全放射能量は約1.5×1011Bqです。
なお,この低レベル滞留水等の海洋放出にともなう影響としては,近隣の魚類や海藻などを毎日食べ続けると評価した場合,成人の実効線量は,年間約0.6ミリシーベルトと評価しております(一般公衆が自然界から受ける年間線量は2.4ミリシーベルトです)。
問11 原子力発電は安いといわれているが,試算に入っている費用と入っていない費用は何か。
答11: 平成16年度総合資源エネルギー調査会電気事業分科会コスト等検討小委員会では,プラント建設・運転・保守,燃料の採掘・加工,プラントの廃止・解体,再処理,放射性廃棄物処理・処分に関わる費用を含めて試算されており,原子力発電にかかる費用は全て含まれています。
問12 40年という高経年化した原子炉の運転延長に対して不安はなかったのか。
答12: 原子力発電所は定期的に運転を停止し,法令で定められた点検を実施しています。当社は,定期検査の際に実施する通常の保全活動に加えて,計画的な機器の取替え等,必要となる保全活動を実施しています。また,国は,事業者に,原子力炉の運転を開始した日以降30年を経過する日までに,安全確保上の重要機器の技術的な評価とその後10年間の保全計画の策定を義務付けており,当社は,10年間の保全計画に基づき計画的な予防保全対策を行っています。
さらに,当社は,原子力安全委員会あるいは規制当局が定める技術指針や法令等が変更された場合には,その都度適合性の評価を行い,必要な場合は改善を行うことで信頼性の維持・向上に努めてきました。
問13 土木学会の提示した津波対策の基準数値について社内で見直し議論は行われなかったのか。
答13: 2002年に「原子力発電所の津波評価技術(土木学会)」が刊行され,2002年にこれに基づき,原子力発電所の津波に対する安全性について評価を行い,評価結果を踏まえて安全性を確保するための対策を実施しました。
その後も,最新の海底地形データ等を考慮した上で,「津波評価技術」に基づく安全性評価を行い,必要な対策を実施しているほか,未確立の新たな知見に対しても調査・検証を行うなど必要な対応を行ってきております。
問14 1号機はGEからのノックダウン設計と聞いているが,安全装置に関しては米国における想定条件と,三陸海岸に面した当該設置場所との相関に関して,いかなる検討が当初なされたのか。
答14: 原子力発電所の設置に当たっては,基本設計の段階から,当該立地場所における気象,海象,地盤,地震,津波等の想定の妥当性を含む安全対策の妥当性について国の審査を受けます。福島第一原子力発電所においても,当該立地場所における気象,海象,地盤,地震,津波等の想定(設計条件)について国の審査を受けたうえで設置の許可を受けています。
なお,当社は,技術の進歩・新たな科学的知見により原子力安全委員会あるいは規制当局が定める技術指針や法令等が変更された場合には,その都度適合性等の評価を行い,必要な場合は改善を行うことで信頼性の維持・向上に努めてきました。
問15 当該地区では過去の大津波におそわれた歴史があり,その事実が原子力発電所の設計段階でどの様に評価・検討されて,設計の安全性に込められたのか,その経緯を知り今後の教訓とするために,つつみ隠さず説明してほしい。
答15: 福島第一は昭和43年〜47年,福島第二は昭和49年〜55年に設置許可を取得しています。福島第一1〜6号機,福島第二1〜4号機の設置許可時は,小名浜港で観測された最大の潮位として1960年のチリ地震津波による潮位を考慮していました。
その後,津波解析技術の進展を踏まえ,2002年に「原子力発電所の津波評価技術(土木学会)」が刊行され,2002年にこれに基づき,原子力発電所の津波に対する安全性について再評価を行いました。
「原子力発電所の津波評価技術」は,過去最大の津波の波源をもとに不確かさを考慮したうえで,想定される最大規模の津波を評価する手法であり,当社としては,同手法に基づき、対策を実施してきました。
問16 その後経験を積んで東芝と日立が設計を担当したようですが,東京電力としてはこれ等両社の設計能力の判断はいかなる基準のものになされたのか。
答16: 両社の設計したプラントでは,プラントの設計・製造に起因する停止頻度が極めて少ないなど,良好な運転実績を示しており,十分な技術力・信頼性を有しているものと考えています。
問17 原子炉は釣鐘型とフラスコ型があると聞いていますが,福島第一原子力発電所の炉は何型ですか。又両者のメリット,デメリットを教えて下さい。
答17: 福島第一原子力発電所の1〜5号機はフラスコ型(Mark-T型),6号機は円錐型(Mark-U型)です。それぞれ下部に非常用の水源を有する圧力抑制型の格納容器であり,想定事象(冷却材喪失事故等)に対し,内圧や温度上昇に耐えることを解析及び定期検査時の漏えい検査で確認しています。
Mark- II 型の方が,やや格納容器の空間体積が大きく,定期検査時の格納容器内での作業性は向上しています。
問18 燃料棒プールについてはあまり論じられないが,実態はどうか?なにも問題がなかったのか?
答18: これまで実施した使用済み燃料プール水のサンプリングの結果からは,使用済燃料が損傷している可能性は低いと考えています。
なお,1〜4号機すべてについて,仮設熱交換器を利用した循環冷却によりプール水位,プール水温は安定しています。
問19 原子力発電所の寿命は何年ですか。30年以降はチェックといっていましたが統計上は何年なのでしょうか。
答19: 原子力発電所の寿命について,特に定めはありません。
問20 原発事故以来、節電が義務付けられ、悪環境に耐え体力を消耗しながら過ごしています。現在の火力発電所は何基あり稼働率は何パーセントかなど、電気供給量の見通しの根拠をわかり易く、総合的に示してください。
答20: 火力発電所は89基稼働率は今年7月で大体6割。昨年7月は4割。ここでいう稼働率は
発電電力量/設備容量×24h×31日
火力の場合は、補修、メンテナンス、トラブル、出力調整などによりこういう数値になっています。
問21 個人や会社などの発電(自家発電)による電力買取を進める上での障害は何か。
答21: 基本的な障害はありません。
問22 今回の事故における損失は、事故対策や住民対策を含めて最低いくらかかるのか?
答22: 事故事態が収束していないので、今のところ何とも申し上げられない状況です。
問23 賠償金の支払いが遅々として進んでいないとの評価が多く聞かれます。申請の手続き概要と手続きの滞りの要因、今後の改善・見通しについて教えて下さい。
答23: 初混乱してご迷惑をおかけいたしましたが、徐々に改善されてきていると聞いております。今後は対応要員を数千人規模で増員して対応していきます。
問24 今後エネルギー源の転換が必要なのでしょうか?もし必要な場合に必要なエネルギー源の種類、必要な施策は何でしょうか?
答24: エネルギー政策につきましては、次回の学習会をされるということなので、そちらの方で考えていただけたらと思います。

*「答」中に「当社」とあるのは(株)東京電力です。

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