[このページについてのご意見、お問い合わせなどはメールにて webmaster@shodanren.gr.jp までお送りください。]

全国消団連・トップページへ戻る


「スマホソフトウェア競争促進法に関する指針」に
対する意見を提出しました

「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律第三条第一項の事業の規模を定める政令等の一部を改正する政令(案)」等に対する意見募集が行われています。(締め切り6月13日)
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=110200064&Mode=0

 「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」は、特定ソフトウェア事業者を対象とした、公正競争推進・強化のための法律であり、今回パブリックコメント募集の対象となっているのは法施行のための政令案です。
 そのような前提によるものなのか、「消費者」「消費者安全」といった記載がほとんど見当たりません。
 競争が促進されても、スマートフォンを利用する消費者の安全が確保されていなければ、利用者は置き去りにされて、競争だけが進み、消費者にとってのメリットを見出すことは困難です。全国消団連では以下の意見を6月13日に提出いたしました。

※意見提出には、枠内の公正取引委員会の示す「基本的な考え方」は削除しました。

2025年6月13日
一般社団法人 全国消費者団体連絡会

「スマホソフトウェア競争促進法に関する指針(案)」に対する意見

意見1 別紙4「スマホソフトウェア競争促進法に関する指針」
p53(2)第2号(関連ウェブページ等における取引等を妨げることの禁止)

公正取引委員会の示す「基本的な考え方」
・法第8条第2号は、アプリストアに係る指定事業者が、指定事業者のアプリストアに関し、個別アプリ事業者がその提供する個別ソフトウェア(以下「本個別ソフトウェア」という。)の作動中に、ウェブページ又は本個別ソフトウェア以外の個別ソフトウェア(以下「関連ウェブページ等」という。)を通じて提供される商品又は役務の価格その他の情報(以下「外部誘導情報」という。)の表示を行わないことや、個別ソフトウェアから個別ソフトウェアの外のウェブページに遷移するリンク(以下「リンクアウト」という。)を含めないことを、当該アプリストアを通じて個別ソフトウェアを提供する際の条件とすることのほか、本個別ソフトウェアを利用するスマートフォンの利用者に対して、関連ウェブページ等を通じて商品又は役務を提供することを妨げることを禁止。 ・こうした関連ウェブページ等における取引や決済を妨げるような行為を禁止することで、関連ウェブページ等における取引や決済に関する個別アプリ事業者による多様なサービスの提供等を通じ、個別ソフトウェアに係る競争を促進しようとするもの。

【意見】
「指定事業者」が自社アプリストアの外部サイトに誘導することで、競争促進とともに利用者の選択肢を増やして利便性の向上につなげることを目的とした指針と受け止めます。
「個別アプリ」から「リンクアウト」して、外部サイトでの契約や決済に誘導されて実行した場合、例えば、契約を解除する、或いは決済状況を確認したくとも、直接相手先ウェブページに進むことが出来ず、解約等を実行出来なくなることが想定出来ます。また、選択肢が増えることは、却って何を選べばよいのか判断不能の状態を招きかねず、利用者の利便性向上に素直に繋がるものではないと考えます。
 加えて、指針は「指定事業者」に対しては自社と同じ条件で「個別アプリ事業者」による「個別アプリ」を審査することを認めていますが、「個別アプリ」から「リンクアウト」した先のウェブページについて、「リンクアウト」する旨の注意喚起表示を「個別アプリ事業者」に求めることは出来ますが、「リンクアウト」先のウェブページ自体を審査することが出来ず、「指定事業者」は安全性確保措置を取れません。そして利用者にとっても「リンクアウト」して接続した外部サイトの安全性を判別することは困難で、利用者を危険にさらす状態を生み出します。 このことは、ウェブページのURLについて、総務省などがフィッシング詐欺抑止やマルウエア感染防止のため、メールなどに添付されてきたURLに安易に接続することの危険性を注意喚起していることと照らし合わると、矛盾を生み出すことになります。
 多様な選択肢の提示による消費者利益の向上もさることながら、消費者の安全性確保を第一に考え、「指定事業者」から「個別アプリ事業者」に対して、「リンクアウト」先ウェブページの安全性確保を求められるようにするなど、安全で安心してスマートフォンを利用出来るような手立てを講じてください。
 併せて、リンクアウト先ウェブページによる消費者トラブルが発生した場合に、速やかな注意喚起と対応方の公表、利用者相談の実施などを「指定事業者」のみならず、「個別アプリ事業者」も対応するよう、「事前規制」の中に盛り込んでください。

意見2 p20 3 法第7条(基本動作ソフトウェアに係る指定事業者の禁止行為)

公正取引委員会の示す「基本的な考え方」 ・法第7条第1号は、基本動作ソフトウェアに係る指定事業者が、当該基本動作ソフトウェアを通じて提供されるアプリストアを当該指定事業者又はその子会社等(以下「指定事業者等」という。)が提供するものに限定することのほか、他の事業者が当該基本動作ソフトウェアを通じて代替アプリストアを提供し、又はスマートフォンの利用者が当該基本動作ソフトウェアを通じて代替アプリストアを利用することを妨げることを禁止。 ・こうした基本動作ソフトウェアに係る指定事業者による代替アプリストアの提供を妨げるような行為を禁止することで、代替アプリストアの新規参入を促し、アプリストアに係る競争を促進しようとするもの。

【意見】
 現在は、アップル(Apple Inc.)やグーグル(グーグル合同会社)のアプリストアでは、両社それぞれが基準を設けて、掲載するアプリの安全性審査を行っており、これまでの被害防止の実績からも利用者の安全と安心を一定程度担保していると考えます。
 実際のところ、代替アプリストアの審査基準が両社と比較してどのレベルにあるのか、消費者には判断しかねる状況です。消費者・利用者の視点に立てば、代替アプリストアやそこに掲載された個別のアプリの安全性や使い勝手などの評価基準を明確化して、事業者が正しく対応出来るように配慮すべきです。更に、審査や監視、悪意のあるアプリが発見された場合の速やかな削除と消費者への注意喚起は必要な施策です。このような施策とセットにした上で、禁止行為を想定するべきと考えます。また、代替アプリストアの管理等の担い手についても明記するべきです。

意見3 p27 c スマートフォンの利用に係る青少年の保護
d スマートフォンを利用して行われる犯罪行為の防止

公正取引委員会の示す「基本的な考え方」 ・法第7条各号及び第8条第1号ないし第3号(第8条第3号については、同号の個別ソフトウェアがブラウザである場合を除く。)においては、スマートフォンの利用に係るサイバーセキュリティの確保、スマートフォンの利用者に係る情報の保護、スマートフォンの利用に係る青少年の保護その他政令で定める目的(以下「サイバーセキュリティの確保等」という。)のために必要な行為を行う場合であって、他の行為によってその目的を達成することが困難であるときは、いわゆる「正当化事由」が認められることになる。 ・すなわち、法第7条各号及び第8条第1号ないし第3号に外形的に該当する行為であっても、正当化事由が認められるのであれば、法第7条及び第8条に違反することとはならない。

【意見】
 基本的な考え方として、「スマートフォンの利用に係るサイバーセキュリティの確保、スマートフォンの利用者に係る情報の保護、スマートフォンの利用に係る青少年の保護」を目的とした場合を、「代替アプリストアの提供又は利用を「妨げる」行為」を禁止しない「正当化事由」としていますが、「サイバーセキュリティの確保」「利用者の情報に係る保護」「青少年の保護」では対象範囲は狭すぎます。今やスマートフォンは全世代が活用するようになっており、高齢者が巻き込まれるトラブルも多発していることから、より広く「消費者の保護」「消費者安全の確保」という文言を加えるべきです。
 そして「正当化事由」による目的を、スマホソフトウェア競争促進法施行令では、
@スマートフォンを利用して行われる賭博その他の犯罪行為の防止 Aスマートフォンの動作の著しい遅延又は停止その他のスマートフォンの異常な動作の防止」  としています。スマートフォンを入口とした消費者トラブルには、マルチ商法勧誘や副業トラブル、架空請求など様々な事例があります。更に、犯罪に繋がる「闇バイト」などの有害で悪質なアプリも存在しています。「その他の犯罪行為」に留めず、これら犯罪の一歩手前ともいえる事態も目的に加えるべきです。
 そして、「正当化事由への該当性に係る基本的な考え方」にも上記内容を反映してください。

意見4 P80 (2)スマートフォンの利用者へのデータの取得等の条件の開示

公正取引委員会の示す「基本的な考え方」
・法第10条は、指定事業者によるデータの取得又は使用に関する条件及び特定ソフトウェアを利用する事業者による取得の条件を、特定ソフトウェアを利用する事業者及びスマートフォンの利用者に開示することによって、指定事業者の取得したデータの使用状況を外部から検証することが困難な状況を解消し、当該データの使用に係る禁止事項を定めた法第5条各号の遵守を担保することを狙いとするもの。 ・また、特定ソフトウェアを通じた取引の透明性を高めるとともに、特定ソフトウェアを利用する事業者によるデータの取得が容易となり、イノベーションが促進されることも期待される。

【意見】
「データの取得等の条件の開示の方法は、スマートフォンの利用者にとって明確かつ平易な表現を用いて、スマートフォンの利用者が指定事業者によるデータの取得及び使用の状況を容易に理解できる内容を記載すること」等が提案されています。利用者にとってどのようなテータが取得され、そのデータがどのように活用されるのかの懸念があります。指定事業者に対して、法の規定を遵守していることを公正取引委員会に対して報告を行うこととされたことについて、しっかりと事業者の監視を行うことを求めます。
 なお、この指針は、指定事業者のみを対象にしていますが、特に個人に係るデータの管理にも関わる内容であり、個人情報保護委員会、総務省などとも連携して、指定されていない事業者の管理も含めて対応し、安全で安心なスマートフォン環境を構築してください。

意見5 全体について

【意見】
「スマホソフトウェア競争促進法」は、特定ソフトウェア事業者を対象とした、公正競争推進・強化のための法律であり、今回パブリックコメント募集の対象となっているのは法施行のための政令案です。
 そのような前提によるものなのか、「消費者」「消費者安全」といった記載がほとんど見当たりません。
 競争が促進されても、スマートフォンを利用する消費者の安全が確保されていなければ、消費者被害やトラブルが増加することにもつながり、却ってスマートフォン利用における信用を損ねることを危惧します。政令の中で「消費者安全の確保」を強く打ち出すべきです。
 今やスマートフォンは子どもから高齢者まで、幅広い国民が日常的に活用しています。しかし大半の利用者が、スマートフォンについて詳細な知識を持っていない中でも日々安心して利用出来ている背景には、これまで提供されてきたシステム・仕組みにおいて安全性が一定確保されてきたからであると考えます。また、日々技術は進歩し専門性も高くなっており、トラブル防止には消費者のリテラシー向上だけでは対応不可能な状況です。
 今回の法律が消費者のスマートフォン利用にどのような影響を与えるのかを分かりやすい内容で広報することは必要な取組みであることともに、今回の法施行後に発生する「リンクアウト」などによる消費者被害やトラブルについて、公正取引委員会や総務省、消費者庁で連係して防止策を講じることや消費者向けの相談窓口を設置することを、対となる施策として求めます。

以上